studio Odyssey


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 message of 512Byte. 「夏の始まりの季節」は、studio Odyssey内で行われた、「夏の始まりの季節」という言葉から想像される何かを創作する企画の中で生まれました。

 結局、最終的に企画の完成品として残ったのは、このmessage of 512Byte.だけなので、message of 512Byte.「夏の始まりの季節」として公開しました。
 このmessage of 512Byte.は、「夏の始まりの季節」という言葉から連想する512Byteの投稿を募り、それを26編組み合わせ、1つのストーリーにしようという企画でした。最終的に26編ではなく、28編になってしまいましたが、投稿されて来る順序がそのまま順序になるというわけではなく、適当に「起承転結のどこらへん」という募集のかけ方をしたため、収まりきらなかったとも言えるでしょう。

 すなわち、この企画は、格好良く言えばインプロヴィゼーション。ぶっちゃけて言えば、行き当たりばったり企画だったのです!

 そんなわけで、普通に読み物として楽しむ事も出来ますが、以下より掲載される当時のログを読んでいただくと、別の楽しみ方も出来るかと思います。
 ストーリーとしてのネタバレも含みますので、まず「ストーリーとしてご覧になりたい方」は、先に全編をご覧になることをお薦めします。が…このアドリブのみで成り立つ512が、いかにして生まれたかは、ストーリー以前に、1つの作品として、お楽しいただけるでしょう。

 つーか、誰一人として、まとめる人の事、考えてなかっただろ?

  • 先に本編をご覧になるには、prologueへ。

投稿の際の512ルール

  • 512Byteはプレーンテキスト換算のバイト数であって、HTMLのサイズではありません。
  • Shift-JISのみを使います。
  • 改行はCRLFです。すなわち2バイトとして計算します。
  • 行頭スペースがあるものとないものがありますが、これは作者の意向です。バイト数に行頭のスペースも含まれるためです。
  • 同様に改行位置も作者の意向です。
  • すなわち全ての改行、及び句読点の位置も含めて、ひとつの512Byteです。

 わかりやすく簡単に言うと、メモ帳で書いて保存して、ファイルの実サイズを見ると言うことです。


夏の始まりの季節 - message of 512Byte.セクション その略歴

 この企画はつまり、「夏の始まりの季節」とい共通のテーマを抱えた512を26編集めて、それでストーリーを作ってみようという企画でした。
 そんなわけで、まずは私、しゃちょが第一弾として、全体を象徴するテーマ的な512を掲載したところかり始まります。

夏の始まりの季節

 そうだ。

 あの夏、
 僕は、恋をしていた。

 永遠に続くかのように思えた、あの夏の一瞬に、
 僕は、
 恋をしていた。

 青く抜ける空。
 真っ白な入道雲。

 やけた砂浜。
 はじける波のしぶきとそして、

 彼女の笑顔。

 そうだ。

 あの夏の日、
 僕は、恋をしていた。

 永遠に続くかのように思えた、あの夏。
 当たり前のように過ぎていった、彼女との時間。

 僕は、恋をしていた。
 あの、夏に。

 出会いは、
 あの、「夏の始まりの季節」だった。

 そして、これにスタッフのAが続きます。

始まりの僕と彼女

「あのね…」

彼女は、下を向いて言った。

「もぅ…、ムリだと思う」

僕は、

僕が恋をしている彼女が、何を言いたいか分からなかった。

アジサイが咲いている坂の上。

初めて彼女を見た時、その後ろには海が広がっていた。

「あたしね、この町には…」

知っているよ、その理由。
だから、僕は彼女を応援したかったんだ。

何もできない僕だから。

何かしたくて、

僕だけができる何かをしたくて。

「あのね。だから、ムリだと思うんだ」

そう言って。

彼女は、

「だから、友達やめよう…」

僕を見た。

 いきなり別れかよ!?
 A曰く、

「なんの続きでしょう? 分かりません。
 何がいいたいかも分かりません。なんとなくストーリーちっくなのを書いただけです。
 きっと、これを書くために、最終兵器彼女なんて読んだのが悪いんだ。」

 開き直りかよ、この野郎。

 これを受けて、512常連組スタッフに「がんばってください」というメールを投げかけると、e_が…

彼の嘘。見破る私

「いつか、話さなきゃって思ってた」

 小さな声で、彼が言う。
 夜の海のさざ波の中に、
 かき消えてしまうような、
 小さな声で。

 私はそっと目を開く。
 夜空には月。
 照らされる海。
 私は、
 見つめてる。

 それは、
 彼の声を言葉を聞かないために、
 私の意識のすべてを、
 その、
 消えていく季節に、
 集めるために。

 聞こえない。
 彼の言葉は、私の耳には、
 届かない。

「…だから」

 彼の言葉が、
 海のさざ波に消えていく。

 私の言葉が、
 消えていく。
「聞こえない」

 「ねぇ、キミ、26編で主人公の男の子とヒロインの女の子の別れのシーンが2回もできると思う?」と、激しく聞きたい。
 曰く、

「先の512が、彼女の方からの別れっぽかったので、あえて彼の方からの別れっぽい感じでいきました。
 さわやかはないぞ〜。泥沼だ〜。
 というより、どうも512の流れは、投げっぱなしでいい様子なので、とりあえずは、投げっぱなしにしました!」

 泥沼とか、26編で出来るわけないし、「夏の始まりの季節」って単語のどこに泥沼があるのか聞きたい…

 スタッフが暴走を続ける中、勇猛果敢に、一般募集から、柳(りゅう)さんが投稿してくださいました。
 貴方は英雄です…

忘れられない、季節の扉

夏?
もう少し、前。
でも勿論、春じゃない。


「おはよう」
続いて、
「おはよう」
いつもと違うけど、いつもの応酬。


あの、突拍子もないような出会いで。そのお陰で僕は、

彼女に出会った。


今はもう他人じゃなくて。
けれど恋人とかでもなくて。

友達――だろうか。違うかな。


でも、それも。唯それさえも。


今日で変わる。

まだ変わりたくはないし、止められるとも思わない…でも。
このままじゃ、いけない。

何かしないと。


そうして僕はこの扉を開いた。
一気に。


――そこにいたのは。

 「夏の始まりの季節 512」初の一般投稿は、きっかり512Byteから。
 ストーリーっぽいものが来て、ほっと一息。
 柳さん曰く、

「一応512きっかりに収めたつもりですが、アレでしたら編集等お願い致します。
 因みに、「承」作ろうとしましたが思いきり「転」な感じですね。
 ここまでのショートとか、詩書いたの初めてですしね。」

 意外と512Byteって少ないようで多く、多いようで少ないというサイズなんです。
 特に、450バイトを越えてからの世界は1バイトとの戦いになる世界なのです。それが面白いのですが。
 続いて、一般投稿から、thiさんの作品。

坂の上の空と坂の下の海と、坂の途中の

 雲が覆う。
 僕の頭上。見渡す限りの空。
 まっくらな空。
 まっくらな、僕の心。

 キミに触れないようにしていた僕の心。
 あの雲のように膜を作って避けてたんだね。
 この空が晴れたら、もう一度受け入れてみようかな。
 キミと、

 この世界を。


 見上げていた空に、微かに光が漏れる。


 僕はそっと、

 受話器を取った。

 彼の決心のようなシーンです。
 この辺りから、512のストーリー的なものが動きだし…
 と、その前にthiさん、曰く、

 流れの方、難しい部分で止まってるような気がしたので自由製作してみました。
 一本書いてみたら、600Byteから縮まらなかったので短文で。
 寧ろ短すぎたので改行やらなんやらで稼いでたりしました。

 88バイト、つまり、44文字ですが、512の中ではものすごい量なんですね。
 これが醍醐味。

 先の、『季節の扉』は、彼が決心をして、動き出す瞬間となっています。でも、その「決心」って、なんでしょう?
 512の中にある、「突拍子もない出会い」で出会った二人は、仲良くなって、「おはよう」「おはよう」と返す、関係になったわけです。
 でも、今日は違う。「いつもと違うけど、いつもの応酬」
 「他人じゃない。恋人でもない。そして、友達でもない」
 ふたりには、「止められないストーリー」が動いているとすると…それは、何か。
 彼は「変わりたくない」ことを望んでいる。
 けれど、「このままじゃいられない」
 彼は、季節に背中を押されるように、その扉を開く…

 もう一本、『坂の…』では、彼の悩みのようなものが見て取れます。
 いつか晴れる空。
 その空が晴れたら…と、やがて差し込む光に、彼は願いをかけます。
 彼は、彼女との距離を、何かしらの理由でとっていたようです。でも、それが彼の心の中で、もやもやとし続けていて…
 やがて空は晴れ、彼は意を決し、電話を手に取ります。
 その行動は、はたして…

 と、ここで一度、主人公とヒロインの彼女の設定に立ち返ることになり、「彼女は何者か?」という事を考えることになって…宇宙人とか、幽霊とか、女教師だとかアイドルだとかいろいろと出てきて…まぁ、512で決めますかと言うことで募集をかけたところ…thiさんが投稿してくれました!

逃れられない現実

それは、遠い世界。

僕の住む、この世界とは違う。
何かが…何もかもが。


それは予測された出来事だったらしい。
だから、覚悟はしていたらしい。

その世界は濃い闇に覆われて、


時代の変わり目で、
しょうがない事で、
放っておけば良いのに、

それでも…彼女は…


彼女は、この世界の生き物ではない。そう言った。
自分の居た場所が危ない。そう伝えられた。
だから…帰らなきゃいけない。そう、呟いた。

「…私」

一つの言葉が、風と共に僕に届いた。

 ≪私は悪魔なの≫

たった一言の、
彼女の告白。

 ムッコロス!
 と、マジで笑いました。
 thiさん、曰く、

「宇宙人とはいきませんが、悪魔にさせていただきました。(宇宙人と大差ないような…)
 『止められないストーリー』の辺りに当てていただけたらと思います。(?)
 やったもん勝ちの世界。
 やり逃げします。勝ち組です。
 二度目の投稿なので放置OKです。
 放置される…ということは、俺は負け組になるのか!?」

 「夏の始まりの季節」の512での優勝者が決定した瞬間。
 激しく、自分が負け組な気が!?

 ここで、募集に思い切り力を入れます。
「さぁ、勇者よ!立て!!
 今こそ、戦いの時!!
 この混沌とした世界をただすことが出来るのは、君しかいない!
 もしくは、この混沌を、取り返しのつかないほど混沌とさせることが出来るのも、君しかいない!
 さぁ、君はどっちにつく!!
 神につくか。(まとめる人)
 それとも、悪魔につくか!!(けっちらかす人)」

 そして、スタッフ、李が…

7月7日、空は

 窓辺に飾った笹の一枝。
 折り紙で作った七夕飾りと、想いをこめた短冊。

 そういえば短冊に願い事を書いたのなんていつ以来かな?
 子どもの頃には毎年願い事を書いてたのに。
「アンパンマンになりたい」だったかな。
 叶うわけないのに。
 お母さんもお父さんも笑ってたっけ。

 今はもっと叶わない願いを書いたかもしれない。
 でも、叶ってほしい。本気で。
 織姫様、彦星様。空の上で見てくれるのなら。
 お願い。
 私の願い、叶えてください。

「いつまでも、シュウちゃんと一緒にいられますように」

 忘れていればいいものを、Aのコメントにあった、「最終兵器彼女なんて読んだのが悪いんだ」を丁寧に拾い上げて、シュウちゃんとか言ってみたり、(しかも、まとめる気はないらしく、26枠を1枠潰しつつ、彼女の512が少ないねという理由で彼女の方を広げている)

青空

いつまでも続くと思ってた。

二人で歩いた街並み、楽しかった時間。
そんな毎日が、いつまでも続くと信じてた。

あの時までは。

あの時、君は僕に何を伝えたかったのだろう。

離れてしまった二人の想い。
はじめてわかる、本当の想い。

でも、手を伸ばしても、もう届かない。

あの時の君の言葉、
きっと、今ならわかる。

僕は、もう迷わない。
この想いは、机の引き出しに大切にしまっておこう。
いつかきっと、綺麗な琥珀になると思うから。

夏の始まりの季節。
僕は羽根を広げ、空へ羽ばたく。

新しい夏を探しに。

 スタッフのはっちぃーが、エンディングを先に書いて、退路を断ってみたり。

 そう。私は確信した。

 誰一人として、まとめる人の事、考えてないだろ?

 しかし…!

 そんなこんなで、「夏の始まりの季節 512」
 全26編ではまとまりませんでしたし、投稿していただいたものを、そのままの形で入れ込むには多少無理があったので、細部を変更させていただいたりもしましたが(許してください)、完成しました。
 果たして、どんな作品に仕上がっているのか…
 お楽しみください。

  • 夏の始まりの季節「prologue

投稿していただいた方々(順不同、敬称略)

  • e_
  • A
  • thi
  • はっちぃー