退屈で、僕は空から一人の少年をずっと見おろしていた。
見下ろす世界の名は、ミドカルド。
神と悪魔とそして人間とが、共存する世界。
その世界に生きる彼の名は、
spit(スピット)と言った。
これは僕の、彼の観察記録だ。
彼は見ていて飽きない。
彼は変だ。
もともとは、彼は剣士になるべき存在だったんだ。
そう、運命は決まっていたはずなのに。
でも何故か、魔導士になった。
全然、
向いてない。
のに。
そんな彼に、僕は興味があった。
だからこれは、
僕の、彼の
観察記録だ。
その日、spitはいつものとおり、首都プロンテラのベンチの前に座っていた。
*1
いや、実は人待ちだった。
誰を待っていたのかというと、
行きずりの魔導士と
ショボイコソドロ(シーフ)とそして
ネコミミ剣士(♂)。
spitの友達だ。
いや、正確には、
勝手に友達にしている奴らだ。
spitは暇だった。
電波を使って
*2奴らに呼びかけた後だった。
spit:「なぁ、下水にいかネーか?
ショボイコソドロ lavus:「下水って、なんだ?
行きずりの魔導士 Abdough:「プロンテラの地下にある所だろ。最近、魔物が増えてきて、騎士団が魔物退治の冒険者を募集してるって話の。
ネコミミ剣士 ita:「下水ツアー?(w
*3
spitの電波がミドカルドを駆け抜ける。
程なくして、プロンテラのベンチ前、奴らの言うところの「プロンテラベンチ」に皆が姿を現した。
左から、*4
spit(スピット)
ショボイコソドロ luvas(ラヴァス)
ネコミミ剣士(♂) ita-u(イタ)
行きずりの魔導士 Abdough(アブドゥーグ)
電波人間が言う。
spit:「下水、自殺ツアー。
ita:「
自殺!?
Abd:「確かに、アコライト
*5のいないうちらは、自殺ツアーだねぇ。
luvas:「回復は自力で(w
なんやかんやともめるスピットたち。
やれ、「回復できないなら死ぬまでだ!」「コソドロは逃げる!」「ああ、私、魔法使えませんから」「pot
*6があれば、なんとかなるんじゃない?」「芋
*7連打〜!」
「気にするな。すべてを」
って、スピット。
今にも
特攻。
ita:「マテ!
spit:「ぬぁ〜
ita:「せめて、無駄でもいいから、パーティを募集しよう!
itaの提案に、みなうなずき。
spitはしぶしぶと、パーティ募集を掲げます。
spit:「ぬぁ!!
ita:「あ、ども。
なんと、近くを歩いていたノービス
*8さんがスピットたちに声を!!
K-9999:「下水に行くんですか?
ita:「行きます。
spit:「下水、
自殺ツアーです。
*9
K-9999:「混ぜてください。(w
自殺に!?
ああ、なんやかんやと、スピットたちが歩いていきます。
マテ!
オマエらは
回復のできるアコライト(♀)とお友達になりたかったんじゃないのか!?
意味ないぞ、パーティ募集!?
あぁぁ…
スピット一行に敵はなし!!
いや、
相手にされないだけだ。
*10
即席パーティを組み、下水入り口!
しかし、マテ、spit!
なんか、違わないか!?
しかし、そこはそれ。
だてに剣士とシーフのいるパーティではない。
たとえ、
ネコミミをつけていようと、回避力が
ショボかろうとも。
突然襲ってくるコウモリも難なくかわし、ノービスのKさんを守り(ちなみにスピットとアブは役に立たない。魔導士だから)、なんなく、地下2階へと続く入り口にたどり着く。
なんだ、余裕だったか、スピット。
え?
Kさん、
死んでる!?
スポアに殺されました…
助けようと、呪文を詠唱しているウチに、死んでしまいました。
役に立たないな、スピット…
しかし、スピットたちはツアー敢行。
なぜなら、
自殺ツアーだから。
迫る敵。
ゴキブリ、
キノコ、
カエル。
蹴散らし進みます!
スピットのSPが切れました。
*11
これはもう、死ぬのは…
しかし、なんだかんだと言っても、スピット。
簡単には死にません。
気合いで最下層までたどり着き、
アブとラバが倒されてしまっても、
負けるな、男の子!
(ちなみに緑色のゴキブリ2匹に囲まれています)
っていうか、spit…
魔導士じゃないの…
なんとか緑ゴキブリを退治するspit。
ポーションが切れたら、死ぬと思いながら、とことこ…
ま、負けるな、男の子!!*12
spit:「お、女の子になめられてたまるカー!!
いや、spit…
僕はちゃんと見てたよ。
よく戦ったよ。うん…
さて、程なくしてitaも死に、みんなで再び…
ここでなんと、Kさんがあと数%でレベルがあがり、念願の剣士になれると聞いたspit。
spit:「ツアー、変更!
spit:「
Kさんを剣士にするツアー!
言い出したら、ノリですべてを行うspit一行。
がんばれ、男の子。
どこからともなく、spitは
カタナを取り出し、Kさんに放る。
spit:「僕にはもう必要ないものだから。
と、
あげてます。
…spit、お前ってやつは。
*13
それ、
アニキからくすねたやつだろ。
ノービスとは言え、最強武器、カタナを手にしたKさん。
易々とバッタを狩り、ものの数分でレベルアップ。
spit:「おめ〜。
ita:「おめ〜。
って、spit。
祝福するのはいいが、サンダーストームを人にかけるな。
*14
spit:「さて。
ita:「おう。
spit:「本日のツアー、終了!
Abd:「おつ〜。
luvas:「つかれたなー。
ita:「うし、今回のツアー、終了!
と、おもむろに、spit…
プロンテラベンチに、spitの声が響きます。
Kさんはまだ旅をはじめたばかり。
「まだ、自分のパーティってないんですよ」
でも、spitは言います。
「僕らはでも、今日、ここでパーティ組んだんです」
itaも続きます。
「パーティなんか、すぐに何処でも組めますよ」
spitは言いました。
「ミドカルドは、そういう大陸です。
旅を続けていれば、きっとまたどこかであうこともありますよ」
おわかれです。
せっかく、親しくなりましたけど、おわかれです。
ミドカルドは広大です。
どこにでも行けます。
何でもできます。
なんにでもなれます。
360度、何処にでも世界は広がっています。
spitは言いました。
「これで、お別れですけど、また、どこかであったときには、
強い剣士になっていて、
それで、
僕を護ってください。 マヂで。
ita:「マテ!?
luvas:「感動シーンじゃないのか!?
Abd:「まー、そんなもんでしょう。(w
K-9999:「(w
Kさんは笑って、去っていきました
退屈で、僕は空から一人の少年をずっと見おろしていた。
見下ろす世界の名は、ミドカルド。
神と悪魔とそして人間とが、共存する世界。
その世界に生きる彼の名は、spit(スピット)と言った。
これは僕の、彼の観察記録だ。
次は誰と、何処に行く気だろう…