studio Odyssey



spitパーティを組む!



 退屈で、僕は空から一人の少年をずっと見おろしていた。

 見下ろす世界の名は、ミドカルド。
 神と悪魔とそして人間とが、共存する世界。

 その世界に生きる彼の名は、spit(スピット)と言った。

 これは僕の、彼の観察記録だ。

海を見つめるspit  彼は見ていて飽きない。

 彼は変だ。

 もともとは、彼は剣士になるべき存在だったんだ。
 そう、運命は決まっていたはずなのに。

 でも何故か、魔導士になった。

 全然、向いてない。
 のに。
 そんな彼に、僕は興味があった。

 だからこれは、
 僕の、彼の観察記録だ。


spitパーティを組む!


 その日、spitはいつものとおり、首都プロンテラのベンチの前に座っていた。*1

 いや、実は人待ちだった。
 誰を待っていたのかというと、行きずりの魔導士ショボイコソドロ(シーフ)とそしてネコミミ剣士(♂)

 spitの友達だ。
 いや、正確には、勝手に友達にしている奴らだ。

 spitは暇だった。

 電波を使って*2奴らに呼びかけた後だった。

spit:「なぁ、下水にいかネーか?
ショボイコソドロ lavus:「下水って、なんだ?
行きずりの魔導士 Abdough:「プロンテラの地下にある所だろ。最近、魔物が増えてきて、騎士団が魔物退治の冒険者を募集してるって話の。
ネコミミ剣士 ita:「下水ツアー?(w*3

 spitの電波がミドカルドを駆け抜ける。


 程なくして、プロンテラのベンチ前、奴らの言うところの「プロンテラベンチ」に皆が姿を現した。

spitと仲間たち
左から、*4
spit(スピット)
ショボイコソドロ luvas(ラヴァス)
ネコミミ剣士(♂) ita-u(イタ)
行きずりの魔導士 Abdough(アブドゥーグ)


 電波人間が言う。

spit:「下水、自殺ツアー。
ita:自殺!?

Abd:「確かに、アコライト*5のいないうちらは、自殺ツアーだねぇ。
luvas:「回復は自力で(w

 なんやかんやともめるスピットたち。
 やれ、「回復できないなら死ぬまでだ!」「コソドロは逃げる!」「ああ、私、魔法使えませんから」「pot*6があれば、なんとかなるんじゃない?」「芋*7連打〜!」

「気にするな。すべてを」

 って、スピット。
 今にも特攻

ita:「マテ!
spit:「ぬぁ〜
ita:「せめて、無駄でもいいから、パーティを募集しよう!

 itaの提案に、みなうなずき。
 spitはしぶしぶと、パーティ募集を掲げます。

オドロキの新展開!? spit:「ぬぁ!!
ita:「あ、ども。

 なんと、近くを歩いていたノービス*8さんがスピットたちに声を!!
K-9999:「下水に行くんですか?
ita:「行きます。
spit:「下水、自殺ツアーです。*9

K-9999:「混ぜてください。(w


 自殺に!?


 ああ、なんやかんやと、スピットたちが歩いていきます。

 マテ!
 オマエらは回復のできるアコライト(♀)とお友達になりたかったんじゃないのか!?

 意味ないぞ、パーティ募集!?

 あぁぁ…
意気揚々
 スピット一行に敵はなし!!
 いや、相手にされないだけだ。*10
その通りだ
 即席パーティを組み、下水入り口!

 しかし、マテ、spit!
 なんか、違わないか!?




B2まで…  しかし、そこはそれ。
 だてに剣士とシーフのいるパーティではない。
 たとえ、ネコミミをつけていようと、回避力がショボかろうとも。

 突然襲ってくるコウモリも難なくかわし、ノービスのKさんを守り(ちなみにスピットとアブは役に立たない。魔導士だから)、なんなく、地下2階へと続く入り口にたどり着く。

 なんだ、余裕だったか、スピット。




 え?

B2…
 Kさん、

 死んでる!?

 スポアに殺されました…
 助けようと、呪文を詠唱しているウチに、死んでしまいました。

 役に立たないな、スピット…


 しかし、スピットたちはツアー敢行。

 なぜなら、自殺ツアーだから。

すすめ!特攻隊!
 迫る敵。
 ゴキブリ、
 キノコ、
 カエル。
 蹴散らし進みます!


 スピットのSPが切れました。*11

 これはもう、死ぬのは…



 しかし、なんだかんだと言っても、スピット。
 簡単には死にません。

 気合いで最下層までたどり着き、
 アブとラバが倒されてしまっても、

まけるな、男の子!
 負けるな、男の子!
 (ちなみに緑色のゴキブリ2匹に囲まれています)

 っていうか、spit…
 魔導士じゃないの…


 なんとか緑ゴキブリを退治するspit。
 ポーションが切れたら、死ぬと思いながら、とことこ…


ま、まけるな、男の子!!
 ま、負けるな、男の子!!*12


spit:「お、女の子になめられてたまるカー!!


...
 いや、spit…
 僕はちゃんと見てたよ。
 よく戦ったよ。うん…






 さて、程なくしてitaも死に、みんなで再び…



プロンテラベンチ
 ここでなんと、Kさんがあと数%でレベルがあがり、念願の剣士になれると聞いたspit。

spit:「ツアー、変更!

spit:Kさんを剣士にするツアー!


 言い出したら、ノリですべてを行うspit一行。

 がんばれ、男の子。

 どこからともなく、spitはカタナを取り出し、Kさんに放る。
spit:「僕にはもう必要ないものだから。

 と、あげてます。

 …spit、お前ってやつは。*13


 それ、アニキからくすねたやつだろ。



 ノービスとは言え、最強武器、カタナを手にしたKさん。
 易々とバッタを狩り、ものの数分でレベルアップ。

剣士のK-9999さん spit:「おめ〜。
ita:「おめ〜。

 って、spit。
 祝福するのはいいが、サンダーストームを人にかけるな。*14





spit:「さて。
ita:「おう。

spit:「本日のツアー、終了!
Abd:「おつ〜。
luvas:「つかれたなー。


ita:「うし、今回のツアー、終了!
 と、おもむろに、spit…

 プロンテラベンチに、spitの声が響きます。
spitのことば

 Kさんはまだ旅をはじめたばかり。

「まだ、自分のパーティってないんですよ」

 でも、spitは言います。

「僕らはでも、今日、ここでパーティ組んだんです」

 itaも続きます。
「パーティなんか、すぐに何処でも組めますよ」

 spitは言いました。
「ミドカルドは、そういう大陸です。
 旅を続けていれば、きっとまたどこかであうこともありますよ」

 おわかれです。

 せっかく、親しくなりましたけど、おわかれです。
 ミドカルドは広大です。

 どこにでも行けます。
 何でもできます。
 なんにでもなれます。

 360度、何処にでも世界は広がっています。

 spitは言いました。

「これで、お別れですけど、また、どこかであったときには、

 強い剣士になっていて、

 それで、


 僕を護ってください。 マヂで。



ita:「マテ!?
luvas:「感動シーンじゃないのか!?
Abd:「まー、そんなもんでしょう。(w


K-9999:「(w



 Kさんは笑って、去っていきました




 退屈で、僕は空から一人の少年をずっと見おろしていた。

 見下ろす世界の名は、ミドカルド。
 神と悪魔とそして人間とが、共存する世界。

 その世界に生きる彼の名は、spit(スピット)と言った。

 これは僕の、彼の観察記録だ。

 次は誰と、何処に行く気だろう…

*1 このベンチは上に座れません。バグみたいなモンです。
*2 Ragnarok Onlineについている、インスタントメッセンジャー機能。通称『電波』
 ウィスパー機能というのが正解。
*3 もっともレベルの低いダンジョン。BOSSがいる。
*4 スピ、ラバ、イタ、アブ、と略していつも呼び合っている。
*5 回復魔法の使える、僧侶のようなキャラ。
 Ragnarok Onlineでのアイドル的存在。スピットの友達にはいない。
*6 POT。ポーションの事。赤いポーションなら、赤POT。紅、黄、白など、回復力の違うものが何種類かある。
*7 芋。Ragnarokと言えばコレ!な回復アイテム。安い。回復力はあまりないが、連打で使う。芋連打。
*8 ノービス。初心者冒険者。Ragnarokをはじめた時はこの職業から始まり、転職をして、剣士や魔導士になる。
 ちなみにK-9999さんには許可済み。
*9 Ragnarokにはβ版の今、死んだ際のペナルティはない。セーブポイントに戻るだけ。
*10 下水の敵はだいたい、Lv.20くらいから。(w;
*11 いわゆるマジックポイント。これがなくなると、魔法や技が使えなくなる。自然回復するので、しばらくするとまた使えるようになる。
*12 ちなみにこの右側にいる2人のキャラが、前出のアコライト。回復魔法の使えるキャラです。左側は女剣士ですね。
*13 武器。攻撃力が135、ある。片手剣でもっとも強い。剣士の多くが持っている。高い。Kさん、かなりいいもらい物。
*14 スクリーンショット、取り忘れ。