studio Odyssey



spitとその仲間たち。4



「やべぇ!」

 スピットは跳ね起きた。

「寝過ごした!」
 のである。

 鎧戸を開けて、首都プロンテラの時計台を見やる。案の定、寝過ごしていた。

 スピットは基本的に時間を守らない。いや、守る気はあるのだが、守れないのだ。
 今日も今日とて、プロンテラベンチでみんなと待ち合わせをしていた。何をするでもない、どこかにみんなで冒険に行こう、そんな約束をしていたのだ。

 手早く着替えをすませて階段を駆け下りる。
「スピット!」

「はいな!?」

 下宿先の帽子屋の主人に呼び止められて、スピットは店先で立ち止まった。まさか、仕事手伝えってんじゃ…つぅと額を汗が伝う。

「スピット、手紙が来てたぞ」
「はひ?」

 主人がスピットに羊皮紙の手紙を手渡した。スピットはそれを受け取ると、くるりと裏返し、差出人を見た。
「ん?」

 知っている名前に、スピットは手紙をポケットの中につっこんだ。
 あとでいいや。

 そう思って。

「ラブレターか?」
 主人が笑って言った。

「チガウ」

 怒ったように言って、スピットはプロンテラベンチに向かって駆けだした。

spitとその仲間たち。4


この前の名残り
spit:「この前のモンスター襲撃事件以来、人、多いナー。

 てくてくとスピットはプロンテラベンチに急ぎます。*1


 あ、途中、イタを見つけました。
spit:「お。ふふふ…

仕返し
 前回の仕返しです。

ita:「今、グローブ倉庫から出してたんよ。

spit:「アブとかはまだ来てないみたいだね。


ベンチ
ita:「みたいだね。

spit:「むぅーん。*2

spit:「アブ、来ないねー。
ita:「最近、ラバは見かけないなー。

spit:「だねー。


spit:「あ、そーだ。手紙が来てたんだ。
出現
Abd:「ほう?どなたから?

spit:「んー。


spit:イブから。

ita:「誰?
Abd:「なんて?
spit:「いや、まだ見てない。

 かさかさと、スピットは手紙を開きます。*3
Abd:「あ、ちょっと芋買ってくるわ。

 アブはすっと立ち上がると、人垣の中にきえていきました。
 スピットはその背中をちらりと見てから、手紙を開き…

 アブがすごい勢いでスピットたちの前を走って、北門の方へと進んでいきました。

 アブから、電波が届きます。


Abd:イブに似た人がいた!
spit:「は?

アブ、走る!
Abd:「もしかして、冒険初めて、今、ノービスとか、やってない?


spit:「いや、まだ手紙見てないし。

Abd:「早く読みなさい!
ita:「誰よ?


spit:「前略、スピット…。

Abd:「ふんふん。

spit:旅に出ます。

ita:「なんか、哀愁ただようなぁ。

Abd:「やっぱり、アレはイブだ!

即決!
ita:「で。誰なの?その人。

spit:「幼なじみだ。
Abd:「女の子だ。

ita:「それを先に言え。


 と、プロンテラを走り出す一行。

 イタが電波でスピットに聞きます。

ita:「その子、髪、何色?

spit:「…

spit:さぁ?

Abd:「ピンクじゃなかった?
spit:「青だったような…

ita:「本当に、幼なじみなのかよ。

spit:「3日あわないと、女は変わるんだよー。

 浮気性だから、覚えてないだけです。


 3人はプロンテラを走り回ります。しかし、見つかりません。

 とぼとぼと、プロンテラベンチに戻ってきました。

Abd:「ごめん、見間違いだったかも。
ita:「そもそも、顔を知らないしなぁ。

spit:「困ったなー。本当に、冒険者になるつもりなのかなぁー。

 スピットはもう一度手紙を取り出して、見てみました。
 あれ?

 二枚目があります。

 スピットはそれに目を通しました。


spit:;゜д゜)

ita:「どうした?

早く気づけ


ita:Abd:;゜д゜)


 フェイヨンと言えば、砂漠を越えて、深い森を抜けて、その先にある小さな村です。

 そこには、そう…

 アーチャーギルドがあります。


spit:「本日のツアー、決定!

 スピットは拳を握ります。
 アブも握ります。イタもこくりとうなずきます。

 スピットの声が、プロンテラベンチに響きわたりました。

ヲイ!


 マテ!


 しかし、スピットたちはすぐさま、近くの空間移動サービスに、フェイヨンへと運んで貰うのでした。*4


spit:「イブ狩りだー!

 かなり、イヤです。



イブ狩り  そしてフェイヨン。

 スピットは電波でイブとコンタクトを取ろうとします。

spit:「くそぅ、つながらない…

ita:「アブ、探しに行こう。
Adb:「了解。

 イタがギルドを見に行きます。
 アブは人混みの中をきょろきょろと探していきます。

spit:「むにむにむにー。

 スピットは電波をとばしています。*5


 イタから、電波が届きます。
ita:「こっちにはいない。

 アブからも電波が届きます。
Abd:「人混みの中にも、いませんね。


ita:「どうする、スピ?


spit:「むにむにむにー。

spit:「電気魔導士を、ナメルナー!
電波キャッチ!

spit:「いた!!

ita:「ナニっ!?
Abd:「何処に?
spit:「どこにいるんだ、イブ?

evelin:「…?
spit:「…


spit:迷ってるんだ…*6

evelin:「今、どこ?
spit:「フェイヨン。
evelin:「そっちに向かってます。たぶん。
spit:「知ってる。

イブ、救出作戦
spit:「外にいるみたいだ。探しに行こう。
Abd:「了解。
ita:「どんな子なの?

spit:「あってからのお楽しみだ。


 スピットたちはフェイヨンを飛び出します。

 そして、森へと続く谷の道を行く途中…

!?
spit:三゜д゜)


 いきなりすれ違い!

 しかも髪、金髪ショートです。

 誰も合ってないじゃん。*7


囲む!?


Abd:「囲めー。
ita:「囲むの!?

spit:ゴルァ!イブ!!



 そりゃ、逃げますって。


spit:「とりあえず、ここじゃなんだ。

 スピットは言います。

spit:「フェイヨンに言って、話を聞こうじゃないか。

eve:「別に話すことなんかないし。


spit:「コッチにはオオアリなんじゃ、ワレ!


 スピットたちはイブをつれて、フェイヨンに戻ります。
 どこか、ゆっくりはなせる場所を…と、スピットたちはフェイヨンの奥、屋敷の階段前に来ました。

spit:「あのな、イブ…

 階段に腰を下ろし、スピットは言います。

スピットとイブ
spit:「って、近づきすぎだ、バカ。

 何故かスピット、照れてます。
犬!?


 ぺたん。


spit:「…


spit:「アブ、後はまかせた。

 スピット、説得する気、消失。

Abd:「私ですか?

eve:「アーチャーになりたいんだけど?

Abd:「ああ、プロンテラに行きたいと言うことですね?

 って、にこにこ笑いながら、アブ。

spit:「アンタ、スゲーよ。
Abd:「何がですか?

eve:「アーチャーになるために、フェイヨンに来たんだよ。

Abd:「試練の森を抜ければ、なれます!

 です。*8

eve:「アーチャーギルドって、どこ?
Abd:「手強い。イタからも何か言ってください。

ita:「アチャコもかわいいから、別にいいよ。

Abd:;゜д゜)


 弱いぞ、男の子!

 スピットはのそりと立ち上がりました。

イブの決心


spit:「それは、どーしても、なの?

Abd:チャ、じゃなくて?

eve:「うん。

アチャになる!
eve:「アチャになる。

Abd:「あぁぁあぁぁぁ…
ita:「アチャコもかわいいぞ。

Abd:「そういう問題ではありません!

 じゃあ、

 どういう問題だ!?


 スピットはふぅと、ひとつため息を吐きました。

spit:「ま、いいか。


spit:「イタ。

ita:「ほい?
spit:「アチャギルドへ、道案内。

ita:「知らないだけだろ。

spit:そうとも言うな。


 イタを先頭に、4人はフェイヨンの奥、アーチャーギルドへと向かいました。

Abd:「気が変わったりはしてませんか?
eve:「…そう言われると、変わってくる気がする。

spit:「マテ、バカモノ!

 なんだかんだと、言いながら。




 そして、アーチャーギルド。
ita:「あ、これ、あげるわ。
イブはカプラバンドだ!
 先についたイタは、イブにカプラバンドをあげていました。
 スピットはびっくりです。

spit:「ブルジョワな。
ita:「ネコミミもあるよ?

 ブルジョワです…



 そして最後にアブも到着。
 イブはアーチャーギルドの職員に話しかけました。


イブ、アチャになる!



ita:「おめー。

Abd:「お〜め〜。


spit:「さー、祝砲だ!!

祝砲!





spit:唯一の楽しみなのにー!


 しないでください。



 転職を終えたとなければ、次は装備です。
 ここはアーチャーの村。
 アーチャー装備も充実しています。
 早速みんなで、買い物に繰り出すことにしました。

かいもの〜
spit:「財布は、イタがいるから心配するな。

ita:「マテ!
Abd:「アーチャーOKを出した罪です。アルパレストくらい買ってあげなさい。*9

ita:「そんな金は…!


ita:あるなぁ。



spit:「ブルジョワめ。


 武器屋さんです。
 イブは、じーっと、選んでいます。

eve:「何がいいのか、わからないなぁ。

ita:「ああ、アルパレストは買ってあげたよ。

spit:「ブルジョワめ!
ita:「何か、プレゼントしてあげないの?

spit:「…

 実はスピット。
 今ここにいるみんなの中で、一番のビンボーです。
 自分のグラディウスを買うために、せっせとためているお金以外、持ち合わせていません。

Abd:「タイツ、買ってあげたい。*10

spit:「そんなお金は、ひっくり返っても出ません。

 当然です。
 グラディウスが2本買えます。

ita:「タイツ…


ita:も、買えるなぁ。
しょぼーん


ita:「貧乏人め。



spit:「ああ、分かったさ!

spit:マフラー、買ってやる!

 かけるもので、アーチャー最高の防具です。
 と言っても、3000ゼニーしません。

 でも、スピットに取っては、痛い出費です。

 半ギレです。

足長おじさんズ





 あえて何も言いますまい。*11





 一通りの買い物を済ませ、「じゃ、ここからプロンテラまで、レベルアップがてらに歩いて帰ろうか」

 なんて話をしていた時です。


spit:「ん?

 スピットに、電波が届きました。

 懐かしい声が聞こえてきます。

「お久しぶりです、すぴさん!」

spit:「あ、その声は…

K-9999さん
spit:「Kさんじゃないですかー!*12
K-9999:「お久しぶりですー。

K-9999:「すぴさん、今、どちらにいらっしゃいます?


spit:「今?今はフェイヨンにいます。
K-9999:「遠いですね…
spit:「何かあったんですか?

K-9999:「はい。


K-9999:「俺のパーティの友達が、結婚したんですよ。


spit:「…


spit:マジで!?

 Kさん、初めて冒険を一緒にして、別れた時はまだパーティもいなかったのですが…
 スピットは電波で聞き返しました。

spit:「式は、どこでやるんですか?

 Kさんは返します。
K-9999:「あ、もう、終わっちゃったんですよ。

K-9999:「プロンテラ城で、1時からだったんです。



実は、これ

spit:!?

 そういえば、そんな話をしている人を、プロンテラで見ました。
 スピット、かなりのショックです。



K-9999:「あ、それで…

K-9999:「これから2次会やるんですけど、来られます?


spit:いかいでか!!

K-9999:「(w


 Kさんは笑って、2次会の会場を教えてくれました。


 スピットは買い物を済ませた皆と、そしてプロンテラベンチの方にふらりと立ち寄ったらしい、ラバに向かって、電波をとばしました。



spit:「Kさんから、お誘いだ!

Abd:「なんの?
spit:「結婚式の2次会!
ita:「おおっ!
luvas:「2次会?で、何処に行くって?
eve:「Kさんって、誰?


spit:「オマエら、当然、行くよな!?

Abd:ita:luvas:いかいでか!!


 スピットは電波でKさんに返します。
spit:「Kさん、5人、参加です。
K-9999:「はいはい。では、現地集合で。


spit:了解っス!!


ita:「で、どこでやんの?
luvas:「俺、移動しないとまずいか?

spit:「ラバはそこにいろ。

spit:「俺たちは空間移動を使って、プロンテラに戻るぞ。
ita:「あ、プロンテラなんだ。

spit:「おう。


spit:プロ北だ。




Abd:ita:luvas:マテ!!




 イブが目を丸くして聞きます。

eve:「プロ北って?


spit:詳しくは、欄外を読め!*13


 にやりと笑って、スピットは歩き出しました。

 ぽん。と、イブの肩をイタが叩きました。
ita:「まぁ、しょっぱなの冒険でプロ北なら、この先はなんとでもなるよ。

eve:「?

 イブは買ったばかりのアルパレストを不器用に抱えなおして、皆の後に続きました。


*1 ちなみに、このスクリーンショットは後の複線です。マジで。
*2 この日は実は、まだモンスター襲撃イベントの日の夜なので、出る可能性があったのです。
*3 Ragnarokの世界で手紙というものはありません。この辺のことは、脚色。ちなみに、これはe-Mailで実際に来ました。
 世界観とあわせて、遊んでいます。
*4 空間移動時空サービス。街から街へと、テレポートしてくれるサービス。ちなみに、お金はすべてイタに持たせているという…ビンボー魔導士2人。
*5 ちなみに、「ログインするよ」というメールを貰っていたので、電波は通じるはずだったんですが…ずっと、「いない人の名前です」と出て、つながりませんでした。名前、間違っているのかしら?と、何度もメールを見直してしまいました。
*6 フェイヨンへの道にある森は、初心者冒険者は必ず迷う。実はspit、evelinが必ず迷うことは目に見えていた。
*7 髪の色が合ってない理由。spit:「髪、evelinは何色?」 evelin:「女の子のデフォルト」
 いかにスピットたちが無知か分かります。
*8 言うまでもなく、それはアコライト。
*9 アルパレスト。二番目に強い弓。でもDexの修正とかがあるので、もしかすると角弓よりも強いかも。
*10 アチャ、最強の防具。Dex(器用度)の上昇がある装備。アーチャーは器用度が高いと、弓攻撃が強くなる。
*11 スピットは以前に、K-9999さんという方に、剣士最強の片手剣、ツルギをあげていたりしましたしね。
*12 Kさん。詳しくは、RO日記第1話。「spit、パーティを組む!」参照。
 下水、自殺ツアーでお友達になり、剣士になるまで一緒にバッタ狩りをした方。
*13 プロンテラ北にあるダンジョン。通称、プロ北。
 最強のモンスターたちがひしめく、恐怖の場所である。
 以前、「アコライトの試練!」の回で、「spitたちが行くことはあるのだろうか?シャレ以外で」という話が出たが、早くも、である。Kさん、ねらった?
 言うまでもないが、spit、Adbあたりは当然、瞬殺される。
 eveに至っては…コメントを控える…

 そして次回、「二次会、再会、プロ北ツアー!」に続く。