プロンテラベンチ。
今日もベンチに人影はありません。
spit:「どこにいるー?
スピットは電波をとばします。
しばらくの間があって…
Abd:「下水。
アブからの電波が届きました。
spit:「こもってるねー。
Abd:「ま、今となっては
スピよりもレベルが上なんですけどね、私。
*1
しかしスピット。
そんなアブの言葉にかるーく、笑います。
spit:「まぁ、粋がってられるのも、今のうちだけだ。
Abd:「なんですか?
spit:「ふふふふふ。
不敵なスピットの笑いに、アブはスピットの位置を確認しました。
Abd:「(バイアラン島?スピットのいつものレベルアップ場ですね…一体、なにが?)
spit:「ふふふ。
spit:「じゃあね、
魔法の使えない魔導士、アブ。
Abd:「(一体、なにが?)
バイアラン島は、イズルードという街から高速船に乗っていく事が出来ます。
「安全と速度は別問題」という船員の耳慣れた言葉に躊躇もせず、スピットは高速船に乗り込みます。
spit:「ふふふ。
スピットはにやにや笑っています。
乗り合わせた他のお客さんたちが、遠巻きに見ています。
一体、今日のスピットは何なのでしょう?
さて、程なくしてスピットはバイアラン島につきました。
spit:「さー!
spit:「今日も元気に
カニみそ集め!*2
ようようと、スピットはバイアラン島のダンジョン、通称伊豆D。イズルードダンジョンへと、単身、乗り込みます。
元気にふるう右手の先、杖の周りに、青白い雷がぴりぴりとほとばしっていました。
イズルードダンジョンは、水棲モンスターが多くすみます。
よって、ここにはスピットと同じ雷魔導士がレベルアップのためによく訪れます。今日もダンジョン地下一階は、多くの雷魔導士たちであふれていました。
spit:「ばしばし行くかね!
杖を振るいます。
spit:「ライトニング、ボルトー!
スピットの雷魔法が炸裂します。
luvas:「よう、アブ。
ちょうどそのくらいの頃でした。
Abd:「ああ、ラバ。ごきげんよう。
luvas:「今日も下水で修行中かい?
Abd:「ええ、下水はモンスターの沸きがいいので。
luvas:「まぁ、確かに。
*3
luvas:「ところで、スピットは?
Abd:「バイアラン島に籠もっているみたいです。
luvas:「カニ相手か。
spit:「ライトニング、ボルトー!
雷をうち続けるスピット。
spit:「ふーむ。
ラバとアブの電波会話も聞こえない風に、なにやら羽ペンで手に持っていた本にかきかきしています。
spit:「なるほど。
納得しています。
luvas:「どれ、じゃあスピットをからかいにでも行くかな。
ラバの声がスピットに届きました。
spit:「!?
スピットはメモを書く手を止め、
spit:「ふふふふふふふふふふ。
luvas:「
壊れた?
Abd:「
いつもあんなな気もしますが。
程なくして、ラバがバイアラン島にたどり着きました。
スピットはお出迎えです。
spit:「来たね。
luvas:「ああ、からかいに来たぞ。
spit:「ふ…
スピットはニヒルに笑って言いました。
spit:「
ショボイコソドロごときが。
luvas:「
p ` <> `メ 漏電雷魔導士に言われたくねー。
ふたりはイズルードダンジョンへと潜ります。
潜って、早速です。
spit:「あ、カニー♪
スピットはアークワンドを振るいます。
spit:「ライトニングボルト!
青白い雷がほとばしり、カニが一瞬にして電気焼きになりました。
luvas:「ふん。
ラバも負けてはいられません。
luvas:「いくぜ!
うおおおぉぉぉおお!
ラバがつっこみます。
その先には…
spit:「…
luvas:「どーだっ!?
肩で息しながら言う台詞じゃないです。
*4
spit:「…
スピットはぴらりと手に持っていた本を開きました。
luvas:「なんだそれは?
spit:「魔術魔物大全だ。
スピットはそのページを見ながら、言います。
spit:「ロッーフロッグ。通称カエル。初心者冒険者には少々歯ごたえのある敵。水棲モンスター。雷に対して、弱い。
杖を近くにいたカエルの方に向けながら、スピットは言います。
spit:「威力調節…こんなもんか。
luvas:「?
spit:「
ライトニングボルトっと。
スピットが軽く言うと、いつものスピットの雷とは明らかに違う、貧弱な雷が走りました。
しかし、雷はロッーフロッグを襲います。そして、一瞬のうちにそれは蒸発してしまいました。
luvas:「
!?
spit:「まだ絞れるなぁ。
luvas:「い、一撃かよ!? しかも、なんか今の雷、いつもより全然弱かったぞ!?
スピットはラバの質問に、軽く返します。
spit:「当たり前じゃん。
spit:「
威力絞って使ったんだもん。
スピットは魔術魔物大全のページをくくりながら、今度は近くにいたキノコのモンスター、スポアに杖を向けます。
spit:「スポア。キノコのモンスター。水棲の一種。風属性魔法に弱い。モンスターレベルは初の中。こんなもんでどーだ?
spit:「
ライトニングボルトっと。
走り抜けた雷は、先ほどのものより少し強いものではありましたが、それでもスピットが普段使うものよりは明らかに威力の弱いものでした。
ラバは理解しました。
luvas:「
やべぇ!?
スポアも一撃で倒されていました。
ラバは理解しました。
luvas:「スピットがまじめに
威力計算して魔法使ってる!!
Abd:「何ですと!!
ita:「何があった!
漏電雷魔導士!?
spit:「マテ!いきなり電波とばしてきて、その言いぐさはなんだ、イタ。
ita:「いつでも最大魔力で暴発してるんじゃなかったの?
spit:「失敬だな。
Abd:「だからすぐに魔力が切れるんだと思ってました。
spit:「ふだんから、威力調節くらいはしてたもん!
spit:「ただし、最強と真ん中の
2段階だけだったけど。
luvas:Abd:ita:「
゜д゜)
…それ、
調節してないのと同じです。
*5
spit:「昨日、寝ながら考えたんだよ。
器用ですね。
spit:「なんで俺、すぐに魔力切れるのかなーって。なんか、もしかして無駄に魔力使ってるんじゃないかなーって。
Abd:「その通りです。
ita:「気づくの遅すぎ。
聞いてません。
spit:「なんつーか、雷魔法の道を究めようとしてる訳じゃん?ここらでやっぱり、自分の魔力と魔法攻撃力を熟知して、威力調節をちゃんと出来るようにならんといかんかなと思ったわけよ。
スピットは魔術魔法大全をラバに見せつけます。
luvas:「…やべぇ。まじめに強くなろうとしてる。
spit:「まぁ、
ショボコソのラバにはたどり着けない領域だろうな。
*6
luvas:「お、おのれ!!
ラバはスピットをにらみつけました。
スピットは気にもとめていない様子です。
spit:「あ、カニー♪
とてとてと二人の前を行くカニをスピットは見つけました。
spit:「バトン。通称、カニ。水棲モンスター。防御力は高いが、雷魔法はよく効く。こいつの魔法防御力はこんくらいだから、僕の魔法攻撃力から考えると…
スピットは杖を振るいます。
spit:「ラバ?
luvas:「な、なんだよ。
spit:「いつも全力で攻撃するばかりが脳じゃないぞ。
luvas:「
!?
spit:「ライトニングボルト!
Lv7!!
Abd:「バトン相手に、威力をおさえた!?
ita:「漏電じゃない!?
ラバは目を丸くしました。
spit:「ふ。
スピットはニヒルに笑っています。
彼の目の前には、電気焼きになったカニが一匹、転がっていました。
spit:「ふふふふ…
spit:「
ふはははははははははは!
スピットは高らかに笑いました。
spit:「極めつつある!極めつつあるぞ、雷魔法!
イズルードダンジョンに、スピットの声が響き渡りました。
luvas:「お、おのれ…
ラバは歯ぎしりしました。
その時です。
luvas:「あっ!
突然、ラバの隣にヒドラが現れました!
*7
ラバは身構えます。しかし、敵の攻撃が強すぎて、接近出来ません。
luvas:「スピット!見てないで助けろ!!
ラバは叫びました。
スピットは返します。
spit:「ヒドラ。移動はしないが、近づくと攻撃してくる、アクティブモンスター。属性は水。
luvas:「だったら、得意のライトニングボルトで…!!
spit:「ただし、魔法防御力が高いので、魔法はききにくい。
luvas:「
( ゜д ゜ii
spit:「まー、僕の魔法攻撃力より、ヒドラの魔法防御力の方が上ってワケ。
luvas:「見てないで、
助けろー!!
spit:「おのれの強さを知ると言うことはすなわち、敵の強さを知るという事だ。ラバ…
spit:「
素直に死ね。
いや、スピット…
誰の手助けもなく、ラバ。
ヒドラの前に破れました。
spit:「友よ、僕は君のことを…
見捨てた奴が、何を言う。
spit:「って、をを!?
と、スピット。
ラバを倒したヒドラが、
今度はスピットを襲います。
luvas:「ざまぁみろ。
spit:「まぁ、おのれの強さを知ると言うことは…
イズルードダンジョンに倒れる二人。
しばらくして…
プロンテラのセーブポイントまで戻されたラバをおいて、スピットは再びイズルードダンジョンに挑みます。
何か言ってます。
そういえば、最強がどうとか、言ってました。
そんなスピットの前に、カニが現れました。
スピットはアークワンドを振るいます。
その目が、ぎらりと輝きました。
一体、なにが…?
luvas:「気持ちわる。
ita:「どうした?
スピットはにやにやと笑っていました。
spit:「諸君。僕がなぜ、自らの力を制御できるようになろうとしたか、分かるかね?
luvas:「知るか。
spit:「道を究める者は、やはり、自らの力を知っておかなければ、という事だよ。ふ。
今日のスピットは、いつもにもまして、変です。
でも、すごく、うれしそうです。
スピットは電波で皆に言いました。
*8
なんとスピット。
雷魔法を、ついに極めました!
もう、これ以上、雷魔法のレベルはあがりません。
これから先は、自分の能力値によってダメージは変動しますが、ヒット数は、これで最強です。
いや、小躍りしたくなる気持ちも分からないではないですが…
spit:「ね、ね、ね! みんな、今、どこにいるの!?
聞きながらも、スピットは電波で皆の位置を探ります。
spit:「
下水!?
相変わらずにアブは下水。
ラバもイタも、アブに会いに下水に向かっているようでした。
スピットは言います。
spit:「いくかねー?
luvas:「自慢しに来るつもりだ。
spit:「ばーか。僕はそんな低レベルな事はしない。
Abd:「…
ita:「じゃあ、何しに?
スピットは意気揚々とイズルードダンジョンからプロンテラを目指しつつ、言います。
spit:「もはやカニも、Lv7で余裕。
spit:「よって、我が最強の攻撃を受けるにふさわしい敵に、我が最強の魔法を食らわせに…
ita:「まさか…
spit:「
ふははははははは!
スピット…
さっき、自分の力を知ることは敵の力を知ること云々って…
舌の根も乾かぬうちにとは、
まさにこのことでは!?
イタもアブもラバも思っていましたが、誰も言いませんでした。
スピットがうれしそうに、電波の乗せて鼻歌を歌いながら、プロンテラを目指していたからです。
ita:「自殺願望?
Abd:「どうでしょう?
luvas:「結局、
漏電雷魔導士なんだろ。
*9