スピットはプロンテラベンチにいました。
仲間を待っていたわけではありません。
ただ、なんとなーく、その場所に座っていたのでした。
って、
ヲイ!
その子は、誰だ!?
さて、スピットが女の子と談笑しています。
にこにこ笑いながらスピットは談笑しています。
ええ、彼はすでに電波でイブやアピが
近くにいないことは確認済みです。
「へぇ」
と、スピットにかける声がありました。
「この前と違う子だな?」
どきりとして、スピットは振り返りました。
隣に座っていた女の子は、あわわわとスピットの影に移動します。移動して、顔を隠すように、帽子をすぽりとかぶりました。
赤髪の剣士が、よいしょとプロンテラベンチの前に座り込みました。
隣に、同じ赤髪のマジシャンもよいしょとばかりに座り込みます。
「何がだ。
spit:「っていうか、オマエ、相変わらず神出鬼没すぎ!
座り込んだ剣士は、ita-yuです。
*2
ita:「通りがかったら、いたから声をかけたんだが。
spit:「よし、先に言っておく。
ぴしりと、スピットは言います。
spit:「彼女はこの前、ここで俺が帽子を配っていた時に、あげた子だ。決して、噴水前広場とかでナンパしてきたワケではない。
*3
赤髪のマジシャン:「イイワケがましい…
spit:「初対面の台詞じゃネェな。赤髪、マジ。
赤髪のマジシャン:「失礼。私は、Grill-Porkといいます。
spit:「…
焼豚?
Grill:「初対面の台詞じゃネェな、緑髪、マジ。
どっちもどっちだ。
ita:「っと、スピ、これからどこか行くの?
イタが聞きます。
spit:「さー? 今日はパーティのみんなもいないし、別段、何も考えてないけど。
ita:「冒険者らしくないな。
spit:「今日の目的はまゆみ嬢とお話。
パーティに電波をとばしても、イブ、アピからは返事がないのは
確認済みです。
mayumi:「どこか行きますかー?
まゆみ嬢が言います。
ita:「あー、もうちょっと待って。今、もうひとり…
と、イタがいいながらくるりと辺りを見回しました。「お」と気づいて、イタは手を振ります。
ita:「こっちだ、こっち。
と、それに気づいて、これまた赤髪の剣士がベンチに向かって歩いてきます。
Grill:「おう。
グリが気づいて挨拶します。
赤髪の剣士:「よ。
赤髪の剣士も軽く返しました。
ita:「紹介しておくか。剣士のAruther Streit。
Str:「初めまして。
spit:「こんにちは。
mayumi:「はじめましてー。
spit:「というより、イタの兄貴以外はみんなはじめまして状態だけどな。
mayumi:「それもそうですねー。
プロンテラベンチ前。
スピットはたまたま集まったメンツに、にやりと笑います。
spit:「さーて。
ita:「何かたくらんでる顔だ。
spit:「即席パーティで、フィールドにでも繰り出すか!
*4
思い立ったら即実行です。
即席パーティを組み、いざ、スピットたちはフィールドに飛び出します。
ita:「それで、どこに行くんだよ?
spit:「あー?
Grill:「普段、ソロばっかりだから、パーティは新鮮だなー。
Str:「俺もだ。
mayumi:「初パーティ〜。
spit:「よし、目的、決定。
リーダー!?
ita:「み、南って、南に行って、何するんだよ。
spit:「知らん。
Grill:「さすがだ。
Str:「ウワサ以上だ。
spit:「…ゴーレム狩りでもしてみるか。
いいながら、てくてくとスピットは歩いていきます。
そのスピットの後ろについて行きながら、イタはいいました。
ita:「スピ、知らないと思うから教えてやる。
spit:「なにを?
Grill:「ゴーレム、強くなったんだよ。
spit:「…
何っ!?
ウワサには聞いていました。
スピットも、だてにベンチに座ってぼーっとしていたわけではありません。
理由は諸説ぷんぷんでした。
人間界と神界、魔界を隔離する魔壁から響いて来る轟音が、少し前からまた強くなっていること。さらに凶暴化する野生動物たち。今までよりも、より頻繁に起こるようになった地震と津波。
そして、あふれ出るように増えはじめた、魔物たち。
spit:「イミルの爪角か…
ぽそりと、スピットはつぶやきました。
ita:「平和の気運が崩れはじめてるって、話だ。
Grill:「イミル?
mayumi:「…爪角?
spit:「ま、何にせよ、だ。
立ち止まり、スピットは言いました。
ita:「だな。
冒険者たちの間にささやかれる、イミルの爪角の話なんて、スピットの知ったことじゃあありません。
そういう、世界を変えるような物語の主人公は、伝説の勇者と呼ばれるくらいの人たちに任せ、スピットたち、即席パーティ一行はゴーレムの住む砂漠へと飛び込みます。
*5
ita:「し、死ぬかと思った…
mayumi:「強すぎ…
Str:「あたらねー!
Grill:「反則的じゃん?
違います。
自分たちが
弱すぎるだけです。
spit:「いや、今のは不意をつかれたからだ!
剛気です。
読み間違えると、
無謀。
spit:「行くぜッ!
spit:「ああっ!
mayumi:「シュトさんが〜。
Str:「い、痛い…
ita:「…今、ごれむじゃなくて、バッタを叩いていたような…
spit:「一瞬の隙が、死を招く!
いや。
だから、
無理。
Grill:「んー。しかし、せっかくのパーティなんだから、なんとか力を合わせて…
グリはうーんとうなりました。
ita:「非力じゃ、何人集まってもなぁ?
spit:「何故、俺を見る。
mayumi:「3桁のダメージが当てられないですからね。
苦笑いの三人に、グリはぴーんと思いついた事を言いました。
Grill:「そうだ! この方法なら! いいか…
グリが、そっと耳打ちしました。
spit:ita:mayumi:「
それだ!
四人は構えます。
Grill:「行くぞ!
spit:「おう!
スピットはアークワンドを掲げます。
ita:「バッシュ、準備OK!
mayumi:「こっちも、OKです。
イタもまゆみ嬢も武器を構えます。
グリの眼前には、のっしのっしと歩く、ゴーレム。
グリはばっと両手を広げました。
Grill:「ナパーム…
速攻の念力魔法をグリが唱えます。
*6
瞬間、ゴーレムがグリの詠唱に反応し、襲いかかって来ました!
Grill:「それっ!
グリ、ダッシュ!
動きの遅いゴーレムです。グリのダッシュに、ゴーレムが追いつけるわけもありません!
Grill:「今だ!
叩け!!
ita:「うおりゃあー! ばっしゅー!!
mayumi:「ダブル、あたーっく!!
spit:「れべる、てーん!!
spit:「これぞ、必殺、パーティ横殴りアタック!!
Grill:「おおっ! 無傷も可能!
spit:「うむ。
ita:「あ…いや。
mayumi:「…なんか。
spit:「いうな。
腕を組み、スピットは目を伏せて言いました。
ita:「同感…
spit:「
言うなーッ!!
ita:「ってか、俺だけー!?
世界が少しずつ変わっていっても、スピットたちは、相も変わらずです。
spit:「…なんか、サンダーストーム、強くなったよーな…
*7