studio Odyssey



ナイト誕生!



 ざぁざぁと遠くから聞こえる水の音。
 それを覆い尽くすほどの、剣戟の音。

 息切れの音も、かすかに聞こえている。
 モンスターたちの咆哮も、聞こえている。

 暗い、洞窟の奥。
 イズルードダンジョン。

 たくさんの冒険者たちが修行する中、同じく、スピット。

 そのスピットに、かけられる声。

eve:「よ。

謎の影!?
spit:「なんちゅーカッコしてんだ、イブ…
eve:「格好いいでしょ。

spit:「よくないよ…*1



ナイト誕生!


mayumi:「スピットさん、ちわ。
 と、イブの後ろには、まゆみ嬢の姿もあります。

まゆみ嬢
spit:「意外な組み合わせだな。
eve:「そうかな?

mayumi:「あ。


 突然、まゆみ嬢が洞窟の奥を見て言いました。
 スピットもイブも振り返ります。

洞窟にて
ita:「よ。
 そこにいたのは、剣士のita-yuです。

eve:「あら、イタさんまで。
spit:「最近、よくあうなぁ。
ita:「つーか、弟の方は最近、冒険してないからな。

spit:「どーらくモノの兄だけがぷらぷらと…

ita:「斬ってやろうか?
spit:「ノゥ、さんきゅぅ。


mayumi:イタさん、はぁはぁ…

spit:ita:三 ゜Д ゜)


 ま、まゆみ嬢…それはキケンです。

 てくてくと近づいてくるイタに、まゆみ嬢、
mayumi:「ハイディング!*2

spitr:「消えるな。
mayumi:「だってー。

違います
eve:「将来の。と。
spit:「まだ剣士だしね。

ita:「なんなんだ、いったい…

spit:気にするな。


 普段から、スピットたちは、こんなもんです。



 さて、せっかく洞窟のこんなところであったのだしと、みんなで経験値稼ぎにスピットたちは戦い始めました。

 イタはカニモンスター、バトンを中心に狩ります。
 スピットはクラゲのお化け、マリナとカエルモンスター、タラフロッグを狩っていきます。

 イブとまゆみ嬢は…

mayumi:「ところで、イブさんは今何レベルです?
eve:「38/28です。次のレベルアップで集中力向上でも覚えようかな。
spit:「うぁ。俺より上。(戦いながら聞いてる)
eve:「守ってあげるよ♪
spit:「!?
ita:「情けないな、スピは。(こっちも戦いながら聞いてる)

mayumi:「あ、守ってください。超兄貴から。*3
eve:「それはむーりー。 むしろ、まもってください。まゆみさん。

mayumi:「私は2回死ねます。

eve:「私は3回死ねます。

自慢かっ!?

ita:「なさけな!(w
mayumi:「w
eve:「w*4


 わいわい楽しくやっているのはいいんですが、女性陣は座って、戦ってません。
 あしげく戦う、男二人。


mayumi:「そういえば、兄貴村ツアーはいつですか?
ita:「うあ〜、やるんだ。(戦いながら聞いてる)
spit:「週末くらいにいくか?(戦いながら言ってる)*5

mayumi:「わくわく。
eve:「ハァハァ。
mayumi:「はぁはぁはぁはぁ。


spit:ヤメロ、女性2人!*6


 さて、そんなこんなで戦い続けていると…


レベルアップ
spit:「ふっふっふー。徐々に強くなってるぞ。
mayumi:「ぱちぱち。

eve:「でも、パーティ再弱。
spit:「うるさい。

ita:「お。


spit:「ん?


ita:「レベルあがった。

spit:「おー、おめでとー。
mayumi:「ぱちぱちー。
eve:「イタさん、何レベルですか?


ita:「…


ita:「ジョブレベルが、40になった。

spit:eve: Σ( ゜□ ゜!!


mayumi:ナイトさま〜!(はぁと*7




ita:「何故、今!?

 つぅーうとイタの額に汗が流れます。


spit:「蝶はねなら、あるぞ。*8
mayumi:「プロンテラへ、ごー!

 本人以外がやる気満々です。



 そんなこんなで…

プロンテラの騎士ギルド
ita:「ついてくるな〜。
spit:「祝福してやるから。

 言わなくても、祝福が何かわかる気もします。


mayumi:「ナイトさまぁ〜。

ita:「くるな〜。*9


 剣士のあこがれ。

 剣士の上級職、騎士。

 たくさんの修行を積んで、強くなった剣士だけが、騎士になることが出来ます。そして今、イタもこの騎士ギルドにやってきました。

 騎士ギルド職員に、イタが話しかけています。スピットとまゆみ嬢は、わくわくしながら待ってます。

ギルド内
 ギルド内では、次々と剣士さんたちが騎士になっていきます。
 その中…


ita:「俺の番だ…

 ぽつりと、イタがつぶやきました。

 騎士ギルド職員が、イタに何かを言っています。
 騎士の心構えでしょうか。
 スピットには、よく聞こえません。

 何かを話して、ギルド職員が、イタに向かって、何か、魔法の言葉のような、宣誓の言葉のような、そんな言葉をかけたときでした。


転職!
spit:「おぉぉおー!?

 イタの身体がまばゆい光に包まれたかと思うと、その姿が剣士のそれから、騎士のそれへと変わりました。

spit:「パーティ初の上級職の誕生だー!
mayumi:「ナイトさまぁ〜。


ita:マテ!


spit:「なに?

ita:「なんか今、変なことを言ったな?
spit:「なにが?


ita:パーティ初って、なんだ?






spit:気にするな。


 イタが言う言葉なんて、スピットには聞こえちゃいません。
 てくてくとまゆみ嬢はイタの近くに近づくと…
mayumi:「ナイトさまー!

衝撃の必殺技!
mayumi:「あなたの心を、スティール!*10


ita: 三 ゜д ゜)!!

spit:=w=)b (ビシッ

ita:「なんで俺がオマエらとー?

 だだだっと、イタは駆け出しました。

spit:「逃がすカー!
mayumi:「とうぜんー。


 プロンテラの街を走ります。
 スピットたちは走ります。

spit:「まてって、イター。
ita:「オマエらのパーティには、u の方がいるだろうが。*11

spit:「とか言って、弟のことは知ってんだー!

ita:「何がだ!
spit:「まゆみ嬢、路地裏から、まわり込むのだ!
mayumi:「了解です。スピたん!

spit:「…たん?

 だだっと、まゆみ嬢は路地裏に駆け込みます。


 それを見て、イタはゆっくりと足をゆるめました。
 スピットも追いつきます。
 追いついて、立ち止まります。

ita:「コワレ気味だな、彼女。
 イタが言いました。
spit:「たのしいパーティだろ。
 えへんと、スピットは胸を張りました。

ita:「…たん?
 指をさされて、
spit:「うるさい。
 顔を赤くするスピットです。

 スピットは言いました。

spit:「兄貴のパーティ、抜けたんだろ?
 プロンテラの剣士ギルド脇、スピットは帽子をちょいとかぶりなおして、言いました。

ita:「情報、速いな。
 返すイタに、スピットは帽子の位置をもう一度なおして、言いました。

spit:「あいつ、あいつらのパーティの方を追っかけてったって聞いたぞ。
ita:「くわしくは知らん。
spit:「そっか。

 ふいと、帽子をなおしたスピットは、その目を隠すようにしてつばを下げました。

spit:「俺は…

 スピットはちいさく言いました。

spit:「俺はこの世界の果てだとか、イミルの爪角とかにはあんまり興味がないけど…まぁ、ミドカルドに名前を残すような冒険者になりたいとは思うけど…
 プロンテラの空は、今日もよく晴れていました。

spit:「思うけど…

 スピットはふぃと、その空を見上げながら、言いました。

spit:「この空の下で、みんなでたのしく冒険できりゃ、それでいいやと思うんだ。

 スピットは、言いました。

スピットとイタ
spit:「ソロで冒険もいいけど、こうやって祝福してくれる仲間がいる方が、楽しいだろ。


ita:「…足手まといはいらん。


spit:おぅあ!?


 スピットは笑いました。

 イタも軽く、笑ってました。



 ごそごそと、服の中をスピットはあさります。
spit:「よいしょ。
 そして、腰の後ろから、ひと振りの大きな剣を取り出します。

ita:「なんでお前がツーハンドソードなんか持ってんだよ。*12
spit:「選別だ、もらっとけ。

 なれない手つきでスピットはツーハンドソードをくるりと回すと、その柄をイタの方へと向けました。

spit:「ただのツーハンドソードじゃないぞ。カードスロットが、2つついてる。
ita:「マジで?*13

 イタはぱしりと、その柄に手をかけました。
ita:「…ほんとだ。

spit:「俺には、もう必要のないものだかんな。
ita:「もらって、いいのか?
spit:「おうよ。


 そしてスピットは胸を張って、言いました。

マヂで?

spit:リーダーからの、選別だ。



ita: 三 ゜д ゜)!!

spit:=w=)b (ビシッ

 プロンテラの街並みの向こうから、まゆみ嬢が走ってくるのが見えました。
spit:「お、きた。

ita:「うあっ!きた!

mayumi:「ナイトさまー!

spit:「よーし、んなら、最後にひとつ…

 にやりと、スピットは笑いました。
 気づかなかったイタが、言いました。

ita:「あ、いろいろありがと…


 でもその言葉は、スピットの耳には、届きませんでした。



結局それか


 空は、新しい仲間を祝福する、青色でした。

ita:「殺す気かー!
mayumi:「巻き添えですー!


*1 見にくいですが、似合わない丸眼鏡をしています。
*2 姿を消す、盗賊のスキル。一説には、のぞき用。(くわしくは「街巡り 〜アルベルタ〜」編を参照)
*3 超兄貴。オークのボス、オークヒーローの事。強い。バカみたいに強い。ベータ2でさらに強くなりました。
*4 w と書いてますが、これは、笑いの意味。結構、よく使います。wの笑いには、嘲笑の意味もあるとかないとか言いますが、あんまり気にしません。みんなよく使います。
 ちなみにこの話は、まゆみ嬢がオークヒーローに1撃で1500のダメージを受けたという話から出ています。
 マジでスピットは5回死にます。(防御がないので、6回くらいいけると思いますが)
*5 この辺、実際の会話。
*6 ちなみに、「はぁはぁ」言ってるのは壊れているからではなく、兄貴こと、オークが近くに来ると、効果音として「ハァッハァッ」という、イカスサウンドエフェクトがスピーカーから聞こえてくるので。
 まゆみ嬢はどうやらそれがお気に入りのご様子。
*7 ジョブレベル40で、上級職に転職できます。剣士の上級職はナイト。
 イタ、ナイトになれるようになりました!
*8 蝶はね。「蝶の羽」のこと。ドラクエで言うところの、キメラの翼。セーブしたポイントに戻ることが出来る。よく、移動中にサーバと接続できなくなって、「しばらくお待ちください」が「永遠にお待ちください」状態になる、カチョイイアイテム。
 2,3個持っておくと、いろいろ便利。
*9 ちなみにイブは途中で別れました。
*10 シーフのスキル。敵からアイテムを奪うスキル。プレイヤーキャラにかけても、何もおこりません。念のため。
*11 ita-yuの弟キャラ。スピットのパーティメンバー。
*12 ツーハンドソード。剣士、騎士の武器。両手剣の中では上位に入る武器。ちなみに騎士にはツーハンドクイッケンというスキルがあり、両手剣の時だけ攻撃速度を上げることの出来るスキルがある。(両手剣鍛錬といって、両手剣の時だけ攻撃力が上がるというスキルも、剣士の頃からある)
*13 カードスロット。武器や防具に付いている、カードを差し込むスロット。カードはモンスターが持っていて、それぞれのモンスターにそれぞれの特徴別のカードがある。このカードを武器や防具に差し込むことによって、その能力を武器や防具に与えることが出来る。(攻撃力を上げたり、すばやさをあげたり)
 ちなみにツーハンドソードのスロット2は、ツーハンドソード内では最高値。(らしい)