さて、ここはプロンテラ。いつものベンチ。
spit:「あれ?アピって、この前プリーストにならなかったっけ?
appi:「気のせいですよー。
mayumi:「スピたん、それはつっこんではいけないところ!
spit:「そうなの?
*1
luvas:「いいじゃネェか。
ひさびさ、ベンチに姿を現したラバがいいます。
Abd:「そうそう。おかげでこうして、アピのプリースト転職をみんなで祝福できるんですから。
同じく、ひさびさベンチに姿を現したアブです。
spit:「なんのおかげ?
appi:Abd:mayumi:luvas:「
ふれてはいけない!
きっぱりはっきり。
appi:「それじゃー、そろそろ行きましょうかー。
luvas:「今日は大聖堂も混んでいそうだな。
*2
spit:「あ、ちょっとまって。今、イタと連絡とったから、待ってあげて。
appi:「はい。
立ち上がったアピは、またちょこんと座りました。
appi:「ところで…
アピが言います。
appi:「そちらの奥の剣士さんは…?
spit:「アピはニクロムにあった事ないっけ?
mayumi:「ニクロムくんです。
Abd:「ニクロム。
luvas:「低レベル剣士。
appi:「読者のみなさんは、
何がなにやらです。
spit:「
知りません。
Abd:「えっ!?そういうの、ありなの?
mayumi:「わーい。
spit:「マァテ。
*3
Nicrm:「さすらいの蟹漁師…
spit:「なにそれ?
*4
Nicrm:「パンティラプリーストの誕生というので、駆けつけ…
spit:「
マァテ。
mayumi:「…すとーかぁ?
Nicrm:「なぜ!?
spit:「もともとは、バイアラン島であった剣士だ。一緒に伊豆D3Fに突貫した仲でな。
mayumi:「そして死んだ、と。
spit:「見てないくせに。
luvas:「見なくてもわかる。
spit:「なんだぁ、オラァ!やるかショボコソ!!
luvas:「いい度胸だ!やってやる!!
ハイディング!!
appi:「それは違うと思います…
Nicrm:「時空の狭間で仲間になっていたということで。
mayumi:「重力が引き寄せたんだね。
Abd:「なんだかなぁ。
「あのー?
と、そんなスピットたちに声をかけてきたのは、モンスター、ムナックがかぶっている帽子をかぶった商人でした。
*5
ムナ帽の商人:「つかぬ事をお聞きしますが…
Abd:「はい?
ムナ帽の商人:「もしや、パーティ、プロンテラベンチのみなさんでは?
luvas:「違います。
mayumi:「違いまーす。
appi:「私も今は違うなぁ。
spit:「
マァテ!
ムナ帽の商人:「相変わらずですねぇ。
笑う商人さんに、スピット。
spit:「で、あなたは?
ムナ帽の商人:「お、わかりませんか。私、いるるです。
そう言って、いるるさんも車座に座る皆の中に入ります。
irurur:「以前、シュトさんたちと一緒に、オークDに突貫した…
spit:「おおっ、あの時の!!
luvas:「…あのとき、商人っていたっけ?
Abd:「私に聞かれても、覚えてないですねぇ。
irurur:「お久しぶりです。
spit:「おひさしぶりです。
appi:「いたんじゃないですか?スピさん、挨拶してるし。
mayumi:「スピたんの記憶はあてにならない。
irurur:「まさか、あえるとは思ってませんでした。
spit:「ミドカルドを冒険していれば、どこかで会いますよ。
スピットは笑います。
spit:「ああ、そうだ。これからアピがプリーストに転職するんですが、いるるさんも一緒に祝福しません?
irurur:「え?いいんですか?
spit:「駄目な理由がないです。
笑いながら返し、スピットは立ち上がりました。
ちょうど、イタがぺこぺこに乗ってベンチに姿を現したところでした。
アコライトは経験をたくさんつんで、jobレベルが40を越えると、上級職のプリーストに転職できます。転職すると、アコライトには使えないようなより上位の魔法が使えるようになり、パーティを守る柱となることが出来ます。
そして、その転職をさせてくれるのがここ、プロンテラにある大聖堂です。
大聖堂、プリーストへと転職させてくれる神父さんの前に、プロンテラベンチの面々が集まります。
ita:「それを言ってはいけません!
appi:「では、さくっと。
再び、アピはプリーストへと転職を果たします。
ita:「おめー。
Abd:「おめでとうございます。
luvas:「いいなー。
Nicrm:「パンティラプリ…
irurur:「立ち会えたー。
mayumi:「
インベナムー!
spit:「いきなり
汚すな!!*6
転職を終えたアピをつれて、みんなはまたベンチへと戻ります。
大聖堂はずいぶん混んでいて、ゆっくり話が出来るような状態ではなかったのです。
spit:「よいしょ。
スピットはベンチの定位置に座ります。
spit:「あれ?
mayumi:「アピたん、わすれてきちゃったー!?
ヲイ!!
遅れて、とことこアピが歩いてきました。
spit:「ああっ!?
すとんとスピットの前に座るアピ。
appi:「いいんですー。私なんか、置いてけぼりなんですー。
spit:「すねるなよ。
スピットはごそごそと道具袋をあさります。
spit:「機嫌直せよ、これ、あげるから。
と、スピットが取り出したものは…
アピじゃなくても、
いりません。*7
irurur:「アピさん、ご祝儀ですー。
appi:「ありがとうございますー。
ita:「あ、じゃ、ジェムストーンでも…
appi:「ありがとう、イタさん!
luvas:「俺もジェムストーンくらいしかないなぁ。
Abd:「私もですけど、ま、お祝いってことで。
mayumi:「かぶり物ならたくさんあるから、アピたん、あげるよー。
Nicrm:「むぅ。何かカードはあったかなぁ。
appi:「みんな、ありがとー。
spit:「…これ、いる?
appi:「いらない。
そっぽを向いたアピに、スピットは苦笑い。
spit:「わかったってばよ。
よいしょと立ち上がります。
spit:「ちょっと、倉庫行って来る。
ぶつぶついいながら、スピットは倉庫を目指します。たしか、プリーストが魔法を使うときに必要になる、青色ジェムストーンが倉庫にたくさん余っているはずでした。他にも染料の元になる薬品やらなにやら、いろいろとあった気がします。
で、スピットは町はずれのカブラおねーさんに、倉庫をあけてもらいました。
でも、結局、
spit:「…がらくたばっか。
結局、ジェムストーンを9つ持って、ベンチへと戻ります。
spit:「ガキじゃないんだから、ちょっとしたことで機嫌そこねんなって感じ。おーい、アピ…
角を曲がって、ベンチが見える位置まで来たとき、スピットはその光景に唖然としました。
spit:「なにしてんだーッ!?
Abd:「ああ、スピット。お帰り。
spit:「何かぶってんだよ。
appi:「いろいろ。
金髪のアコライト:「何が一番似合うかと。
spit:「うるさい、わかった。黙れ。
金髪のアコライト:「うぁ。初対面に言う台詞じゃない!!
アピの隣に座っていた金髪のアコライトの女の子が言います。スピットはすかさず返します。
spit:「初対面でもなんでもな、いきなりヒトに『はぁはぁ』言うような一族はな、よく知ってんだ!
金髪のアコライト:「うっ!
spit:「お前、なに・さくらだ!?
びしっとスピットは彼女を指さします。
spit:「まゆみ嬢の娘シリーズだな!
luvas:「シリーズなんだ。
ita:「そうなんだ。
miyuki:「佐倉 深雪ともうします。
spit:「みゆき・さくらか。わかった。
帰れ!
miyuki:「あぅぅ。
irurur:「まぁまぁ、スピさん、落ちついて。
spit:「って、いるるさん、商人からアサシンに変わってるし!
*8
irurur:「商人は敵を欺く姿です。
luvas:「そーなんだ。アサシンに早くなりたいなぁ。
ita:「違うだろうなぁ…
spit:「わかったぞ、オマエら、
RO日記を破綻させるつもりだな!
appi:「私には、何の話だかさっぱりわかりません。
miyuki:「さっぱりー。
…
?
spit:「こほむ。
気を取り直すように、スピットは咳払い。
spit:「じゃ、アピもプリーストになったことだし…
スピットは言います。
appi:「なんか、私、このパーティとはいつもオークに行ってるような気が。
miyuki:「オークDでパンティラー。
Nicrm:「どきどきパンティラ大作戦。
どんな作戦ですか?
miyuki:「ふふ。そんな訳で、私なのです。
spit:「なにがよ?
miyuki:「オークD、ポター!
すっくと立ち上がり、まゆみ嬢の娘、みゆき嬢はニクロムの近くに行きます。
miyuki:「足下に、ポタ出します。
Nicrm:「とばされるー。
miyuki:「ワープ、ポタル!
*9
立ち上る光の柱。
光の中に、ニクロムの姿が消えていきます。「さーらーばーじゃー」
spit:「追えー!
スピットのかけ声とともに、皆、その光の柱の中に飛び込みます。
ひとり、アブだけが動こうとしません。
spit:「どした?早く入らないと、消えちゃうぞ。
Abd:「あー…
アブはぽりぽりと頬を掻いて返します。
Abd:「私、今日は本当はここで別の待ち会わせしてるんですよ。
spit:「別の?
miyuki:「スピさん、早くしないと、ポタが消えちゃうよー。
spit:「おう。わかってる。
みゆき嬢に言って、アブに向き直ります。
spit:「じゃ、今日はみんなと一緒に冒険しないの?
Abd:「そーですねぇ…まぁ、私、もう
ウィザードになれるレベルなんでスピと一緒にゲフェン行こうかと思って、待ってるくらいですから。
spit:「そうか。
自慢か。
Abd:「今日は一次職でがんばってる子を、助けてあげようかと思ってまして…
spit:「うちのパーティのみんなをさしおいてかッ!
スピットはずいとアブに詰め寄ります。アブはうっと身を引いて返しました。
Abd:「スピ、ポタが消えます。
spit:「うぁ、ホントだ。
miyuki:「はやくぅ。
Abd:「だ、そうです。女の子が呼んでるんですから、早く行ってあげないと。
spit:「…他人の手伝いする暇があったら、今度、俺の手伝いしろよ!
びしっとアブを指さして、スピットはいいました。
そして、光の柱へと急ぎます。
Abd:「スピット!がんばってレベルあげてくださいよ!!
spit:「うるせー!だったら俺のレベル上げも手伝えってんだ!!
そして、スピットは光の中へと消えました。
miyuki:「では、行ってきます。
Abd:「いってらっしゃい。
miyuki:「アブさんも、がんばってくださいませ。
Abd:「何を。
miyuki:「おでぇとを。
そしてみゆき嬢もむふふと笑いながら、ポタの中へと消えました。
騒々しい連中がいなくなって、アブはふぅと一息つきました。
ベンチにそっと腰を下ろし、プロンテラの空を見上げます。
「…ったく、アピももうちょっと待っててやればいいものを」
つぶやく口許は、でも笑っています。
「無理か」
しばらくすると、噴水広場の方からひとりの女の子が小走りにベンチの方へとやってきました。
「あれ?」
彼女は第一声にいいます。
「アピは?」
「スピに拉致られ、オーク」
苦笑い気味に返すアブに、彼女は目を丸くして言いました。
「また!?で、転職はどうしたの?」
「した。してから、行ったよ」
「なんでー!?」
彼女は信じられないといった感じで言いました。「なんで私が来るまで、待てないかなぁ」
「性格的に、無理と言うことで」
「せっかくお祝いしてあげようと思ったのになぁ」
彼女は少し口をとがらせて、腕を組みました。その時にするりと肩口から落ちてきたアルバレストを直して、
「あ、でアブさんはオーク行かなかったんですか?」
聞きます。
「オークDは属性的にちょっときついんで。氷マジに不死属性はきついです」
*10
「あ、そーなんですか」
そして彼女は笑いました。
「じゃ、アブさんは今日はヒマ?」
「ですね」
「あ。じゃあ…」
金色の髪を揺らして、彼女は言いました。
「一緒に狩りに行きません?」
アブはベンチから立ち上がって言いました。
「よろこんで」
と、そこに、
「ほほーう?」
声がかかります。
「そういうことだったのかね、アブきゅん」
はっとして、アブは振り返りました。
プロンテラベンチの後ろ、壁の上からちょこんと顔をだしてふたりの姿を見ていた彼女が、にんやりと笑いました。
アブは「しまったー!」という表情で自分たちを見ていた彼女の名前を言います。
「ま、まゆみ嬢!?」
「あ、まゆみさん、おひさしぶりー」
「おひさー」
「あれ?まゆみさんもスピットたちと一緒にオークDにいったんじゃないんですか?」
「倉庫に用事があって、倉庫行ってたの。戻ってきてみたら、まぁ…」
まゆみ嬢は言います。
「昼下がりの情事!?」
「どこが情事だっ!?」
アブが言います。
「これはリーダーに報告しなければですよっ。スピたーん」
ひょいっとまゆみ嬢は壁の向こうへ消えてしまいます。アブはあっとして追いかけようとしましたが、相手はアサシン。追いつけるわけもありません。
「…変なこと言いふらすなよぉ」
ぽつりとつぶやくアブに、隣にいた彼女は小首を傾げていました。
「なにが?」
「あ、いえ。なんでも」
プロンテラベンチの前、アブは言います。
「じゃ、行きましょうか」
「はい」
金色の髪を揺らして、彼女はにこりと笑いました。
そして、それぞれの冒険が今日もまた、プロンテラベンチから始まっていくのです。
*11