spit:「むー。
スピットはふてくされていました。
イズルードダンジョンにすむモンスターは、そのほとんどが水属性のモンスターです。よって、雷魔法の使い手であるスピットにとっては、属性効果で大ダメージを与えることが出来るため、非常に戦いやすい場所なのでした。
spit:「ライトニングボルトの最大ダメージさえ出せれば、3Fの敵も論理的には突破可能なんだよ。
Abd:「その時間、敵は待ってくれません。
Grill:「敵を足止めする魔法もつかえねーだろーが!
spit:「むー。
*2
3F入り口。
スピットは待っています。
mayumi:「いっちばーん!
mayumi:「っていきなりHPへってるよっ!
spit:「気にするな。
appi:「
しろ。
ぞくぞくと、3F入り口にプロンテラベンチの面々が集まってきます。
appi:「スピさんのために、みんな集まってくれてるんですよー。
spit:「ありがたいことだ。
appi:「そして私もいる以上、スピさんは死なせません!
Grill:「おおぉ〜。
irurur:「プリの鑑ですね。
spit:「俺は死なないけどな。
appi:「
それはない。
appi:「はい。
spit:「…
ばちばちばちっと、ふたりの間に火花が散ります。
spit:appi:「
ふんっ。
Abd:「ま、まぁまぁ。どっちも戦力ですって。
アブが言います。
mayumi:「自慢になんないよー。
*3
spit:「よし、行くぞ!
そして3Fへと、一行は足を運びます。
いえ、
違います。
ってか、ここは
4F!?
Grill:「いきなり4Fはないんじゃ…
Abd:「無謀ですねぇ。
spit:「まゆみ嬢がてくてくいくから、ついてっただけだよ。
mayumi:「アヒャ。
appi:「んー。
irurur:「盾になってくれる騎士さんなしで、大丈夫ですかね?
spit:「なせばなる!
スピットは言いました。
spit:「いくぞ!
なりません。
Grill:「マルクとオボンヌの集中攻撃はなしだー。
spit:「へへん、アピー、ざまーみろー!
appi:「あううぅぅ。
Abd:「いや、自分も死んでますよ?
spit:「いいんだよ。
spit:「俺は死ぬのも
仕事だから。*4
マテ。
appi:「私はっ、生き返らせるのがお仕事ですっ!通りすがりのプリさん〜。
たまたま通りがかかったプリーストに、アピが声をかけます。「すみません〜」
mayumi:「私にひーるー。
irurur:「あ、わたしもほしいですねぇ。
Grill:「いや、通りすがりの人にヒールねだるなよ…
通りすがりのプリーストさんが聞きます。
「リザですか?
mayumi:「お願いできますか?
appi:「私だけ。
spit:「
マテ。
appi:「スピさんは、私が生き返らせるんです!
spit:「
…ならいいや。
通りすがりのプリーストさんにアピはリザラックションをかけてもらい、生き返ったアピにスピットたちも生き返らせてもらいました。
appi:「まゆみさん、ヒールは?
mayumi:「おねがい。
irurur:「私にもお願いします。
appi:「はいはい。
アピが皆の体力を回復しているのを横目に見ながら、スピットは言います。
spit:「戻るか。
Abd:「ですね。
spit:「アピのSPも微妙に心配だしな。
てくてくと、スピットは4F出口へと歩いていきます。
appi:「また、ひとりで歩くー!
mayumi:「自殺志願者?
後ろから、パーティメンバーがあわててついてきます。
さて、そんなわけで3Fに戻ってきたスピット一行。
4F入り口前で、少し休憩を取ることにしました。
appi:「わかってますか?スピさん。
spit:「なにが?
バックの中からバナナを取りだし、もぐもぐしながら聞きます。
irurur:「あ、バナナはおやつにはいりますか?
Abd:「入ります。
mayumi:「にんじんあるよー。使用済みにんじん。
Abd:irurur:「なにに!?
*5
appi:「いいですか、スピさん。今日は、スピさんのレベル上げにみんな来ているのであって、突貫ツアーではないんですよ?
spit:「…
本末転倒!?
appi:「とりあえず、3Fならみんなで戦えば十分対応できますから、ここで戦いましょう。
irurur:「ですね。
mayumi:「盾になるほど回避できないだろうなー。
そしてスピット一行は3Fをところ狭しと駆け回ります。
マルク、オボンヌといったモンスターたちも、スピットたちが束になってかかれば多少の混戦も突破できます。
まゆみ嬢、いるるさんが敵に先制攻撃を与え、グリがファイヤー・ウォールで迫る敵を防ぎます。
そしてスピットの放つ雷魔法。
アピは傷ついた仲間を癒し、アブは…
Abd:「お?
spit:「どした?
乱戦を終わらせて一息ついているとき、ふと、アブが言いました。
Abd:「すまん、ちょっと用事が出来た。
spit:「はぁ!?
Abd:「いや、いま、ちと電波が入ってな。助けを求められてるから、ちょっと行って来る。
spit:「…むしろ、
俺を助けろ。
Abd:「では、さようなら。
spit:「マテァ!
ゴルァ!!
mayumi:「ふふ。アブきゅん、オンナだな?
Abd:「はぅ!?
spit:「ぬなッ!?
irurur:「そうなんですか?
Grill:「おお〜、そんな話がー?
spit:「をいをぃをい!どこの誰だよ、ヲイ!
スピット、からみ方がオヤジです。
Abd:「いや…あー…
アブはぽりぽりと頭を掻いて言葉を濁らせました。が、
mayumi:「私、知ってるー!
spit:「よし、教えろ!
Abd:「わああぁ!待ってください!!
ばっと、アブはまゆみ嬢の口を押さえつけました。
mayumi:「じゃー、にんじんぷれいの刑でゆるす。
Abd:「それはいやです。
ってゆーか、
どういう刑だ?*6
Abd:「で、では、また明日〜。
spit:「マテェ!
しゅんっという空気を切る音とともに、アブは蝶の羽根の力に姿を消しました。
mayumi:「ちっ。
楽しそうに舌打ちするのはまゆみ嬢です。
irurur:「あ、私もそろそろ別の用事があるので、失礼しますね。
Grill:「戦力がたおちー。
mayumi:「がたがたー。
irurur:「また明日、お手伝いします。
と、いるるさんも笑って、蝶の羽根の力に姿を消しました。
ざぁざぁという水の流れる音が響くイズルードダンジョンの中、スピット、まゆみ嬢、グリ…
mayumi:「あれ?そういえば、アピたんは?
spit:「ああ、そういえばさっき、てくてく奥の…
スピットは電波にアピの位置を探します。
と、近くにもう一つ、パーティメンバーの反応があります。
spit:「!?
だっと、スピットは走り出しました。
mayumi:「なになに!?
Grill:「リダ!?
spit:「アピの近くにニクロムがいる!!
mayumi:「蟹漁師!?
そしてたどり着いて、スピットは落胆しました。
spit:「…やっぱり。
appi:「ニクさんを助けようとしたら…
Nicrm:「む、無念。
spit:「蟹漁師の力が、負に働くとは…
*7
mayumi:「ああっ、癒しアピたんいなくなって、どーすんの!?
Grill:「どーしましょうかねぇ。
spit:「ん?
スピットは洞窟の奥から歩いてくる、もう一つのパーティメンバーの電波に気づきました。
Panache:「こんにちは。
mayumi:「パナきゅーん!
spit:「ナイスタイミング!
Panache:「みたいですね。
appi:「じゃ、私はニクさんと一緒に戻ってきます。
spit:「よーし!だらば…
mayumi:「再突貫?
spit:「と、その前に…
spit:「ふーう。
Grill:「最悪。
spit:「おま、そういうキャラだったの!?
mayumi:「なんだかなぁー。
そしてニクロムとともに戻って来たアピに合流し、一行は…
4F入り口!?
appi:「だめですってばー!
spit:「わかってるってば。
appi:「もー!どうなっても…
こうなりました。
学習能力ナシ!!
spit:「なむー。
深い深い森の中。
ここはフェイヨン森の中。
セーブポイントがフェイヨンだったスピットは、よみがえってそのままとことことこの森の中に来たのでした。
appi:「スピさーん。
spit:「ん?
たまたまセーブポイントが同じだったらしいアピが、後からスピットを追いかけてきます。
appi:「フェイヨンだったんですねぇ。
spit:「アピもか。
フェイヨン森の中、スピットはよいしょと座ります。
本当はもうちょっと経験値をためておこうかと思ったのですが、アピも来ました。「しかたない」と、スピットは今日はこれで終わりにすることにしました。
spit:「ああ、そうだ。
と、スピットは思い出したように言います。
spit:「今日もお世話になりました。
と、ぺこり。
appi:「なんですかー、いったい。
spit:「いや、アピがいないと、うちのパーティはダメダメだな、と。
appi:「…
appi:「むしろ、スピさんが?
spit:「
むを!?
っていうか、そのとおりだし。
アピはちょっと笑いながら、言いました。
appi:「私がプロンテラベンチ専属プリになる日も、近いですかね。
spit:「ん? っていうか、すでにそうじゃん。
appi:「いえいえ。
アピは言います。
appi:「そーゆー意味じゃ、ないです。
spit:「じゃ、どういう?
appi:「スピさん、あとどれくらいでウィザードになれるんですか?
spit:「あと2レベルだな。
appi:「じゃ、あとちょっとですね。
spit:「週末はフェイヨンツアーだからな。準備しとけよ。
appi:「アブさんも、スピさんと一緒にウィズになるんですよね。
spit:「そう言ってたな。
appi:「ふふ。
アピはくすくすと笑いました。
appi:「たのしみ。
spit:「俺も楽しみだ。
appi:「そしたら、私も、ついにプロンテラベンチ専属プリですかね。
spit:「何言ってんだ?
appi:「ふふ。
頭にハテナを浮かべるスピットに、アピはにこりと笑って、言いました。
appi:「私は、スピさんたちと一緒に冒険できるようになって、ほんとーによかったなーと思うんですよ。
spit:「それはどーも。ま、こっちもおかげで助かってるしな。
よいしょっとスピットは立ち上がります。
spit:「アピ、そろそろ…
appi:「だから…
spit:「?
appi:「私は、これからもずっと、スピさんたちと冒険して行こうと思ってます。
そう言ったアピに、スピットは首を傾げます。
傾げて、口許を曲げて、「何言ってんだか」と頭の上の帽子の位置を整えようとしてそこに帽子がなくて、ひょいと肩をすくめました。
アピが吹き出すようにして、笑いました。
spit:「明日もその冒険の旅にでるぞ。
appi:「はいっ。
果てしないミドカルドの大地を包む空の色は、抜けるような青をしていました。
*8