studio Odyssey



突入!炭坑ダンジョン!!



 そうだ、俺はミドカルド大陸のどれくらいの場所に行ったことがあるんだろう。

 ふと、スピットは思いました。
 てくてくとプロンテラの街並みを歩いていくと、たくさんの商人や冒険者たちの姿を見ることが出来ます。スピットたちも、その中のひとりです。
 でもたぶん、スピットはそこにいる多くの人たちよりも、たくさんの場所に冒険にいったことがある、という訳ではないようでした。

 商人たちの露天を見て回っていくと、スピットの知らないような武器、防具、アイテムがいっぱいあります。

 ミドカルド大陸は広大です。

 スピットが行ったことのない場所なんて、まだまだ、腐るほどあるのでした。

「たんこー」

 プロンテラベンチ前。
 今ではポタ広場として有名なこの場所では、世界中の街、ダンジョンに転送をしてくれるアコライト、プリーストであふれかえっています。

「たんこー、便乗どぞー」

 ひとりのアコライトが立ち上る光の柱の前で言っていました。

「…炭坑?」
 ぽつりとつぶやいて、にやり。
 スピットは頭の上の乗っかっている帽子を、右手でちょいと押さえながら、その光の柱の中に勢いよく飛び込みました。

 その先には、ゲフェンより北に少し行ったところにある、炭坑ダンジョンの入り口がありました。*1

突入!炭坑ダンジョン!!


炭坑入り口
spit:「ここが炭坑かぁ。

 と、スピット。
 話には聞いていましたが、来たのは初めてです。

 炭坑ダンジョン。

 古くはゲフェンはもとより、プロンテラで使用されていた石炭のほとんどを採掘していたと言われる炭坑ですが、今では魔物に支配されてしまい、閉山されてしまっていました。夜な夜な響く魔物たちのうなり声に、今では人も寄りつかない場所となっています。

 ただ一部の人間、冒険者たちをのぞいては。

 山の斜面にぽっかりと、ダンジョンへの入り口がありました。

spit:「いよぉし、いくかぁー。

 スピットはアークワンドを振るいました。

Nicrm:「その前にパーティくれ。

こんなところに!!
spit:「をうわ!

 びっくりです。
 直ぐ隣に座っていたのは、なんと蟹漁師こと、ニクロムだったのです。

spit:「しかもいつの間にか、騎士になってるよ!?
Nicrm:「細かいことをきにしるな。*2


 ニクロムはなんでも、ちょうど今、この炭坑ダンジョンからあがってきたところだったのでした。
Nicrm:「体力も回復したし、もういっちょ行くかね。
spit:「ニクロムがいれば、百人力だー。



Nicrm:沸くよ?

spit:「勘弁してください。*3


 そんなこんなで、二人は即席パーティをくんで、いざ炭坑へと進んだのでした。


 炭坑の中は、冒険者たちの剣戟の音であふれかえっていました。
 狸モンスター、スモーキーに、モグラモンスター、マーティン。蟻に真っ赤なコウモリまで、さまざまな敵がわさわさと沸いては襲いかかってくるのでした。

spit:「でも、そんなに強い訳じゃないね。
Nicrm:「うむ。1F、2Fはそれほどでもない。

 ニクロムを前衛に、スピットたちは奥へと進みます。
 とことこ、とことこ進んでいって、さて、2Fへと、スピットたちは降り立ちました。

Nicrm:「ここが2F。ちょっと敵も強くなるから、気をつけて。
spit:「んー、ふたりだと辛いかな?

 帽子を押さえながら、スピットは口を曲げました。
 むにむにっと、電波をとばしてみます。

spit:「あれ?

 すぐ近くに、反応がありました。
spit:「っていうか…
 スピットは振り向きました。

後ろにいたアサシン! Ahsgrimm:「よ、スピ。

spit:後ろかよ!?

Nicrm:「きづかなんだー。
Ahsgrimm:「気づけ。

 アサシン、アースグリムは言います。実は、ずっとスピットたちの後ろについていたのですが、気づかれていなかったようなのでした。
spit:「それはそうと…

 スピットはグリムの隣にいる二人を見て言いました。

spit:「こちらのプリさんとナイトさんは?
Ahsgrimm:「ああ。
 グリムは言います。

Ahsgrimm:俺の所属する、パーティの人。

spit:なにっ!?

 スピットはびっくりです。

spit:「美人プリさんで、うらやましいじゃねぇか!!

Nicrm:「あー、アピとまゆみ嬢に聞かせてやりたいのぅ。
Ahsgrimm:「殺されるな。*4

Leona:「はじめまして、玲於奈ともうします。

 天使のヘアバンドをつけたプリーストの女性はそう言って笑いました。*5


Leona:グリムの飼い主です。

spit:Σ(゜д ゜!!!

 隣にいた騎士さんも、笑って言います。

ShirokiKumo:ペット2号のシロです。よろしく。


spit:Σ(゜д ゜!!!



 この世界の女の子は、みんなそーなのか!?

Nicrm:「女性上位の世界よのぅ。

 そうしているだけって感もありますが。*6


Ahsgrimm:「ところで、スピは炭坑来たことあるの?
 グリムが聞きました。

spit:「んにゃ、ない。

Leona:「炭坑の2Fは迷路になっていて、ちょっとやそっとじゃ、3Fにいけないんですよ。

Nicrm:「うむ。
spit:「ほれ、大丈夫だ。ニクがいるし。

Nicrm:「俺も途中までしかワカラン。


spit:「…


spit:「おけ。

きっぱり断言!





 早くもオチが見えつつあります!!*7

そのサブタイもどうかと






 ありえません!





奇跡ですか!?









 むしろそれがありえません!



 そんなこんなで、一行は炭坑3Fへとたどり着いたのでした。*8

spit:「よーし!んなら、沸きポイントの近くで、戦いやすいところに陣取って、経験値稼ぎと行くか!

 ぶぅんっとアークワンドを振るうスピットですが、他のみんなはただぱちくりと瞬きをするだけです。

spit:「どしたの?

Ahsgrimm:「初めて来たんだけど?
ShirokiKumo:「私もです。
Leona:「同じく。

spit:「ニク…
Nicrm:「途中までしか、道は知りませんでした。




その通りです

 っていうか、きっと誰もたどり着けるとは思ってませんでした。*9


Leona:「とりあえず、ここはドルイドが出るはずだから…

 玲於奈さんは笑って言います。

Leona:「グリさん、2、3匹つれてきて。

中ボスクラスなんですけど
Ahsgrimm:「HP、13000。いいねぇ、あの強さ。

Nicrm:「じゃあ、ちょっくら…

spit:お前はいくな。


 で。



蟹漁師発動!

 本当につれてくるし!*10


ShirokiKumo:「スケルワーカーが迫ってきてますよっ!

 ドルイドの相手をしながら、シロさんが言います。
 見ると、坑の奥からアンデッドモンスター、スケルワーカーが迫ってきています。

Ahsgrimm:「こっちが片づかない!

 グリムはミストと戦いながら言いました。
Ahsgrimm:「スピ、玲於奈を守れ!


spit:俺か!?


 手が空いているのはあなたしかいません。

Leona:「プリが死んだら終わりだよー。
spit:「しかたねぇな。

 スピットはアークワンドを構えます。

spit:「ニク、とりあえず、盾にだけでもなってくれ!
Nicrm:「引きつければよろしいので?
spit:「よろしい。
Nicrm:「あい。

 ニクロムはドルイドと戦いながら、迫るスケルワーカーに自分を攻撃させるように動きます。気づいたスケルワーカーが、ニクロムに襲いかかってきます。

spit:「ろっくおーん!

 スピットはニクロムに群がるスケルワーカーの足下に向かって、手にしたアークワンドを突き出しました。

spit:「一気にまとめてほふってやるぜ!サンダー・ストー…


Leona:センチュアリ!



spit:Σ(゜д ゜!!!

 その魔法は高レベルプリースト魔法です。
 地面に聖なる領域を作り出し、その上にたつ者たちの傷を癒すという、パーティメンバーの誰からも尊敬されるような、リザラックションと並ぶ回復魔法なのです。
 そしてこの魔法は回復魔法、ヒールと同じく、アンデッドモンスターはその領域に入ると聖なる力に大ダメージを受けてしまうのでした。


光の領域
 むろん、アンデッドモンスターであるスケルワーカーも例外ではありません。*11

spit:「グリム!助けいらないよっ!?

Ahsgrimm:「あー…

Nicrm:「回復も出来て、一石二鳥とはまさにこのこと。

spit:「く、くやしぃ…


spit、敗北!


spit:「負けない!乱戦特化型Wizとして、範囲魔法では負けたくない!

Ahsgrimm:「変な敵愾心をもやしてるぞ。
ShirokiKumo:「範囲外に敵が出たり、先に倒されちゃったら、ただのスカ魔法ですからねぇ。

Leona:「ふふり。


spit:「見せてやる!! ニク!蟹漁師モード、発動!

Nicrm:「んじゃ、行ってきます。

Ahsgrimm:「蟹漁師モードって…まさか、噂に聞く…
ShirokiKumo:「私もちょっと行ってきますかね。


 程なくして、シロさんが走って戻ってきます。
spit:「きたか。

 スピットはふふりと笑いました。

 彼の後ろから、てくてくと、ニクロムが歩いてこちらに向かってきていました。

spit:「勝負だっ!

 びっしと、スピットはアークワンドの先で玲於奈さんをさしました。

Leona:「?
ShirokiKumo:「いっぱいつれて来ちゃいました!

 ニクロムの後ろには、大量のスケルワーカーがついています。

Nicrm:「大漁。
Leona:「うわ!
Ahsgrimm:「いすぎだーっ!?

spit:「乱戦ってゆーのは、これくらいでないと燃えないもんさ!

 スピットの声に、巨大な魔法陣が地面に生まれます。
 空気が渦を巻き、巻き起こるその風の中に、小さな雷のほとばしりが生まれました。

spit:「絶対スカらない範囲魔法を、今こそ見せてくれるわ!!

Ahsgrimm:「まずい!逃げろ!!
Leona:「この魔法はー!?
Nicrm:「うーむ。オレは逃げる訳にもいかんのだがなぁ。
ShirokiKumo:「って、範囲、広すぎ!


spit:「ロード・オブ・ヴァー…








 プロンテラの街並みを夕焼けが包んでいました。

 スピットはその中を、とことこと歩いています。

spit:「今日も疲れたなー。

 なんていう口許は、ちょっと笑っています。

 炭坑から出て、スピットは蝶の羽根を使って、いつものベンチへと戻ってきたのでした。

 ぶらりと旅立ってみた、今日の始まりを思い出してみます。

spit:「こういう旅も、わるくねぇな。

 いつも、別に何かを考えて冒険に出るわけではありません。行き当たりばったりです。
 でも、今日はいつもにも輪をかけて行き当たりばったりでした。
 でも、それでも今日の冒険も、いつもの冒険のように楽しかったのでした。

 スピットはベンチを立ち上がって、すすのついた頬をごしごしとこすりながら、伸びをして言いました。


ベンチにて



 そして次もまた、何も考えずに、まだ見知らぬ大地に旅立ってみようと心に決めていました。

 そこにはまた、新しい出会いが、転がっていそうな気がしたのです。


*1 中レベルダンジョン。まぁまぁの強さの敵がいる。転職前の剣士、シーフには結構稼ぎやすいところ。ベータ2以降に実装された場所で、spitはベータ2以降、あまり出歩いていないので行ったことがない。
*2 なんとちょうどこの日のちょっと前、ニクロムはナイトになったとの事でした。炭坑に入る前は剣士で、出てきて転職して、レベル上げに訪れていたという事だったらしいですが、ミドカルドはなんだかんだ言っても、狭いのかもとちょっと思ったり思わなかったり。
*3 蟹漁師の真価については、ベータ2日記の方を。
*4 殺されるかどうかはともかくとして、こちらはアースグリムの所属するパーティメンバーの方々。
 ちなみに今回の日記、製品版の方で入れてますが、実はベータ2次代の終了前日くらいにやった冒険の日記です。掲載遅くなってごめんなさいー。
*5 白い羽のやつ。結構なレアアイテム。これに対となるもので悪魔のヘアバンドというのもある。かっこいい。
*6 っていうかそんな事を言っているのは佐倉家の人間と玲於奈さんだけっていう話もなきにしもあらずな気もしないでもないが、spitの周りの女性ってそれくらいしかいないのでそんな感じもしなくもなく。
*7 3Fへいける道は碁盤の目状の2F中、ただ一つしかなく、そのルートを知らないとたどり着くのも大変だったりする。
*8 人はそれを奇跡と呼ぶ。
*9 本当に。
*10 さすがとしか言いようがない、漁師能力。
*11 センチュアリは高レベルプリースト魔法。回復魔法なので、アンデッドにはダメージですが、それ以外のキャラクターには回復として作用します。このフィールド状にいれば、HPが一定時間に一定量、回復します。