さて。おなじみ、プロンテラベンチ前。
に、スピットたちの姿はなく。
ここはゲフェンはゲフェンタワーの地下。
有名なゲフェンダンジョン前に、ギルドRagnaokの3色魔導士の姿がありました。
スピットが言います。
Abd:「負けませんっ!
Grill:「転生してマジに戻ったけど、負けるもんかー!
*1
なにやら、はじめる様子です。
魔法士、魔導士の基本的な魔法に、念属性魔法という魔法があります。
一時は魔法士のたしなみとも言われた魔法ですが、最近ではあまり人気のない魔法です。
その魔法の中に、ナパーム・ビート、通称、NBという魔法がありました。
これは単発の念魔法で、魔導士の魔力をそのままダメージに転換する魔法です。古くはネイパーム・ビートと言われていましたが、今ではナパーム・ビートと呼ばれています。
さて、なにやらスピットがアブ、グリにむんっと胸を張って言っています。
spit:「ルールの説明をするぞ。
Abd:「おう。
spit:「ルールは簡単。使っていい魔法は、NBのみ。
Abd:「でもって、回復アイテムは使用不可。
spit:「使用した人は、その時点で負け。長く生き残った人が勝ちという、単純明快なルール!
Grill:「むりだっちゅーねん。
Abd:「
なせばなる!
なにやら、やらかすつもりらしいです。
Grill:「しかし、なんでいきなりこんな事をはじめようと?
グリが聞きました。
spit:「あ?
Grill:「つうか、NBだけでゲフェンダンジョンに突っ込んで、誰が一番長く生き残れるかって、死ぬこと前提の勝負するヤツなんか、いないぞ?
spit:「
暇だし。
Grill:「
Σ( ̄□ ̄ii
じゃあ、
レベルあげろよ。
Abd:「デスペナ上等!
ぐっと拳を握るのはアブ。
ちなみにデスペナこと、デスペナルティ(死んだ時のペナルティ)は、
経験値-1%です。
っていうか、むしろ
自分で自分の成長を止めている気もします。
*2
しかも、
賭け!?
Abd:「
プロからアルデまで、一人歩き。
つか、
そのときも死にます!*3
spit:「でも、それだと、みんながみれないからつまらんなぁ。
Abd:「それもそうか。
spit:「じゃ、こうしよう。
相手によってはそれも
死にます!
Grill:「あくまで、死ぬこと前提かよ…
spit:「大丈夫。やったことあるから。
Grill:「マジで!?
spit:「にんじん、赤ポ、計100くらいつかったなぁ。
*4
spit:「なにはともあれ!
スピットはすっくと立ち上がって言います。
spit:「行くぜ!
3人はようようと、ゲフェンダンジョンに乗り込みました!
掲げた「挑戦者求む!」の看板をしまいながら。
*5
早速開始!
ゲフェンダンジョンはキノコモンスター、ポイズンスポアの沸きが非常によいことで有名です。
探さなくても、わさわさと湧いてきてはスピットたちに襲いかかってきてくれます。
Abd:「いてぇ!?
Grill:「死ぬ!死ぬ!
spit:「ソウルストライクなら、一撃なのにっ!?
Grill:「圧倒的に不利だ…
そりゃあ、一次職のマジシャンは、HPが1000越えていないですから。
spit:「あんまり早く死ぬなよー。
Grill:「
ごわっ!?
Abd:「
死にましたー。
spit:「
Σ( ゜□ ゜!!
ほぼ
同時。
spit:「早っ!?
Abd:「なんでスピはHPがそんなに余ってるんですかー!?
Grill:「ずるしてるだろ。
spit:「してねぇよ。
spit:「俺はAgiとVitが、オマエらより
20くらい高いからな。
*6
Abd:Grill:「
Σ( ̄□ ̄ii
ずるじゃないですけど、ずるです。
Abd:「なっとくいかねェ。
Grill:「同感…
spit:「フフリ。
しかし、そんなこと言ってられるのも、その時まででした。
わさわさと、洞窟の奥から、ポイズンスポア、ファミリアーの群れが湧いてきたのでした。
spit:「まずい!?
Abd:「死ね〜。
Grill:「死んで、死体3つだ〜。
その数は10にも迫ろうかという数です。
spit:「勝負はついた!力、解放。漏電モード!
Abd:「あ、こいつ。
spit:「俺は死なないっ!! ソウルストライク!!
さて、そんなバカみたいな勝負終了後、プロンテラベンチに戻ってきた3人は…
spit:「よーし、第2回大会ー。
まだやんのかよ!?
元気にスピットたちの向かった先は…
赤芋虫山こと、ミルニョーム山脈。
spit:「ギルド、Ragnarokの3色魔導士として、連携プレーの練習をしようじゃないか!
Abd:「おっけ!
Grill:「と言っても、リダのやることは攻撃以外ないけど…
spit:「…そうともいうな。
spit:「まずは蜘蛛の効率的な倒し方を考察!
spit:Abd:Grill:「
ソウルストライク!(9Lv、5Lv、7Lv)
無駄に
オーバーキル。
spit:「意味がない…
Grill:「つか、魔導士3人は火力がありすぎて使えない…
Abd:「赤芋虫いきましょう。
赤芋虫ことアルギオペは、高レベルモンスターに分類される格好の経験値稼ぎモンスターです。
アクティブモンスターで、かつ攻撃力が高く、攻撃速度も速いモンスターなのですが、
spit:「マヂで!?
スピットは言います。
Grill:「あれ?リダ、そのレベルなら、普段は赤芋虫を狩ってるんじゃないの?
Abd:「私らくらいのレベルだと、赤芋虫は絶好の敵だと思いますけどね。FWで止めるか、FDでとめて…
*7
言っておきながら、ふたりははっと気づきました。
Grill:「…リダ、足止め魔法、
何も持ってないんだった。
Abd:「ですねぇ…
spit:「10秒とめてくれたら、1撃で破壊する。
敵はふだんは10秒待ってくれません。
Grill:「つか、リダは普段どうやってレベルあげているんだろう…
てか、
あげてないんです。
Abd:「アルギオペ来たー!
ばっと、スピットたちは構えます。
赤い、うねうね芋虫が、グリを狙って迫ってきます。
Grill:「任せろ!ファイヤー・ウァール!!
ばんっと立ち上った火の壁が、アルギオペの行く手を遮ります。
spit:「はっしゃー!!
三属性魔法炸裂!!
spit:「無駄に火力が高い…
Abd:「ですねぇ。
Grill:「帯に短し、たすきに長し…
spit:「三人だと、敵じゃないね、この辺の。
Abd:「だね。
Grill:「おわ!?
グリの悲鳴に、スピットとアブは振り向きました。
見ると、彼の足下から、アルギオペが顔を出しているではありませんか!
Grill:「ファイヤー・ウォ…
しかしアルギオペの攻撃の前に、グリの呪文が最後を結ぶことはありませんでした。
Grill:「ぐぅ…
Abd:「こっちくんな!フロストダイバ!!
アブが氷結魔法を唱えます。
Abd:「凍らないー!?
迫るアルギオペ。
Abd:「ごは!?
あわれ、アブも倒れました。
Grill:「リダ!?
spit:「
あーめん。
Abd:Grill:「
Σ( ̄□ ̄ii(あきらめ、早っ!?
夕暮れのプロンテラベンチ。
ふたりと別れて、ふんふんと鼻歌を歌いながら、スピットはベンチ前まで来ました。
よいしょっとベンチに腰を下ろし、あたりを見回します。
このくらいの時間だと、冒険から帰ってくる人の姿もちらほらです。
こうしてベンチで座って待っていれば、いつもの仲間たちがもしかしたら通りがかって、今日の冒険の話でもしていってくれるかもしれません。
そしたら明日は何をしよう。
そんなことを考えながら、ベンチでスピットは赤く染まっていく空を眺めていました。
「あの〜」
そのスピットに、声をかける人がいました。
spit:「…俺?
声のした方を見ると、そこにはアコライトの女の子。
ついさっきまで、目の前でポタ屋を開いていた女の子が、こっちを見て話しかけていました。
*8
ポタアコ:「あの〜、第一回NB大会って、なんですか?
そういえばこのアコライトさんは、さっきスピットたちが一度ベンチ前に戻ってきた時からここでポタ屋さんを開いていました。
スピットたちはそのとき、大声で「第一回NB大会」の話をしていたのです。
スピットは苦笑しながら、説明します。
spit:「NBだけで、ゲフェンダンジョンでいつまで残れるかを競うものです。
ポタアコ:「それは壮絶(?)な…
spit:「死ぬこと前提。
ポタアコ:「何をするっていうんなら、生存確率はあるんですけどね。
spit:「生き残るか、ですからね。
ポタアコ:「大変な大会です。
spit:「参加者が集まらないのが、難点です。
けらけらと、スピットは笑いました。
ポタアコ:「それはそうですねぇ。
アコライトの女の子も、楽しそうに笑いました。
少し、スピットはベンチ前で彼女と話したあと、
spit:「っと、じゃ、僕はそろそろあがりますね。
ポタアコ:「はぁい。じゃ、おやすみなさい。
言う彼女に向かって、帽子のつばに手をかけてスピットは言いました。
ポタアコ:「ふふ。
アコライトの彼女は、ちょっとほほえんで言いました。
ポタアコ:「いつも、そこにいますもんね。
spit:「定位置ですから。
ちょいと、スピットは帽子をあげました。
そして一夜明けて…
いつものようにベンチに向かうスピットに、てててっと駆け寄ってくる姿があったのでした。
*9