studio Odyssey



4人目のWiz。



とぼけてスピット

 いつものベンチ。
 なにやらスピットが、とぼけた風にして言っています。


ebu:「聞こえませんでしたか?
 小首を傾げていうのは、えぶです。

Leona:「スピさんは、耳が遠くなった。
Ahsgrimm:「認めたくない気持ちも、わからんでもない。
aoiruka:「現実なんですけどねー。

spit:「も、もう一度言ってくれないか?

 と、スピットはえぶに聞き直します。

 えぶはにっこりと笑って、言いました。


job40!?


spit:「へー。



ebu:「転職します。

spit:スンナ。


みんな:Σ( ̄□ ̄;*1


4人目のWiz。


spit:「いいか、えぶ。

 スピットは帽子を直し、言います。諭すように、です。

spit:「魔法士は、job50まで育てると、たくさんの魔法が使えるようになる。最終的に強いのは、そういう人たちだ。
ebu:「お師さまも、40転職です。*2


spit:俺の話ではない。

Ahsgrimm:「じゃあ、いいんじゃんか?
aoiruka:「抜かれるのが嫌なだけじゃ?

Leona:「マジシャンのままでも、抜けますけど。


 っていうか、すでに抜かれているという話も?*3


spit:「はっはーん、わかったぞぉー。
 にやりと笑って、スピットはいいます。


spit:「実は、はやくLoVが撃ちたいだけだな?


 誰かと一緒にすんな!?

ebu:「…それもありますが…

Ahsgrimm:「あるんだ!?
Leona:「そ、そうなんだ?


ebu:「実は…

 そしてえぶはスピットがびっくりするようなことを言いました。


ebu:「実は、地属性に行きたいのです。
衝撃の告白!?
spit:「ち、ちぞくせい?
ebu:「そうです。
spit:「地属性って、あの?
ebu:「ぼこぼこ、ぐらぐらと。


spit:「…へー。


 魔法士の魔法には、いくつかの属性があります。
 まずは三大属性と呼ばれる、火、氷、雷の三属性。
 そしてそれに念、地と続きます。

 えぶは転職し、ウィザードとなって、その、地属性魔導士を目指すというのです。

 地魔法は、魔法士時代に覚えられるのはたったひとつ、石化の魔法、ストーンカースだけです。
 ほとんどの魔法はウィザードになった後に覚え、その魔法には地属性のボルト魔法と言われる、アーススパイク。範囲魔法、ヘブンズドライブ。敵の動きを遅くする、クァグマイヤがあります。*4

spit:「…へぇ。
ebu:「だ、だめですか?
Ahsgrimm:「弟子が消えたな…
 ぽんっと、グリムはスピットの肩をたたきました。

Leona:「弟子のが強くなってるし。
aoiruka:「まぁ、ソロ戦では、えぶさんの方が全然活躍できますからねー。



spit:「ふ…

 スピットは帽子をなおしながら、言いました。
そうなんだ!?

Ahsgrimm:「え!?いいの?
Leona:「意外…
aoiruka:「す、スピさん!どうしました!?

spit:「え、だって…


それかよ!?


 弟子とか、そういうのはどうでもいいそうです。*5



Grill:「お?みんな、あつまっとるねー。
火マジ、グリ
 と、そこへ焼豚こと、グリル=ポークが姿を現しました。

spit:「よーし、お前も行くか。
 と、首根っこをひっつかまれます。

Grill:「なに?なに?どこに?
Ahsgrimm:「ゲフェンに行って、転職だ。
Grill:「誰の?
spit:「そこの。
 と、スピットはえぶを指さし。

Grill:「え!? えぶさん、もう転職出来るの!?

Ahsgrimm:「っていうか、オマイはいつまで魔法士やってるつもりだ。


Grill:「最低、ジョブ48。



spit:ebu:「…ふ。

Leona:「遠い目してる、遠い目してる。

Grill:「いっそ、限界まで行ってもいいかなぁとか思ってる。



ebu:99レベルですか?

Ahsgrimm:「ソッチカヨ!!*6



spit:「いよぉーし、では、ゲフェンに向かって、しゅっぱーつ!

 スピットはぶんっと勢いよくアークワンドを振るいました。

Leona:「徒歩?
Ahsgrimm:「スピにそれ以外の選択肢はない。


 一行は、一路、魔法士の町、ゲフェンを目指します。
プロベンの移動は、基本的には徒歩だ
spit:「こうして、ゲフェンに向かってぞろぞろ歩くのなんか、ひさしぶりだなー。

Ahsgrimm:「スピの転職の時以来か?
Leona:「あ、私はいなかった頃だ。

Grill:「そうか、そうだなー。
ebu:「私もいませんー。

spit:「なつかしいなぁ。

 と、スピットはてくてく歩いていきます。
 懐かしい道程を、あの日、パーティのみんなと歩いた道を、今日はまた、みんなで歩きます。

spit:「今日は道、間違えないぞー!*7

 そしてたどり着くのは、魔法都市、ゲフェンです。


 街の中心にある巨大な塔。ゲフェンタワーを中心に、山の中の窪地に出来た町、魔法都市ゲフェン。
 一行は迷うことなく、その塔の最上階にある、ウィザードギルドを目指します。

 と、塔の途中まで登ったところで、えぶが立ち止まりました。

ebu:「あ。
spit:「どうした?


そういえば、ここは
spit:「ああ。

 その場所は、アブの突然のプロポーズの場所。
 そして突然の結婚式の場所でした。

Ahsgrimm:「課金直前か。
aoiruka:「懐かしいですねー。
Grill:「ずいぶん昔な気がするよ。
Leona:「私、まだみんなを知らない頃だ。

Ahsgrimm:「そういや、アブは?

 ふと、グリムが言いました。
Ahsgrimm:「娘の転職だというのに。

spit:「ちょっと、調べてみるか。

 と、スピットはむにむにと電波に皆の位置を確認しました。

spit:「お。
Grill:「いた?

spit:「いるるっち、はっけん。かもーん。
Ahsgrimm:「いや、アブなんだけど…

spit:「…アブは…


 むにむにと電波にアブを探すスピットですが、アブは見つかりません。

Leona:「冒険に出てないのかな?
Ahsgrimm:「かもな。
aoiruka:「ざんねん。

spit:「くっ。

 スピットは帽子をかぶり直し、言いました。

spit:「電気魔導士を、ナメルナー!



 スピットが飛ばすのは、超強力電波。
 ミドカルドの大陸の外にまで届く、必殺電波です。

 さすがは漏電雷魔導士。

 リアルWisとか、ゆうな。*8



spit:「…捕獲。
Grill:「お。
irurur:「ちわー。
 と、ちょうどそこに、いるるが姿を現しました。
irurur:「かけつけましたよー。
Leona:「ばんわー。

spit:「うむ、アブからの伝言を伝える。

 スピットは帽子に手をかけて、言いました。


spit:『一時間後には冒険に出られる』

ebu:「あうぅぅぅぅ。


亡き人のように

spit:「さーて、行くか。

Ahsgrimm:「待ってやらないのかよ!?


spit:「え?


 やらないらしいです。


ebu:「お師さま、えぶのわがままを聞いてくださいませ。


spit:イヤダ。

aoiruka:Σ(´ д `;

ebu:「ふつつかな弟子の、最後の頼みです。パパを待ってもらえませんか?


spit:「なに?聞こえんな?
job40!?


 すばらしい結束力だと思います。


spit:「(ぷすぷす…

Ahsgrimm:「ゲフェンダンジョンで、ちょっと時間つぶしするか。
Grill:「だね。
ebu:「ありがとうございますっ。
irurur:「あっ!?まともな武器がない!?
Leona:「ショートカットにリザいれてっと…

spit:(ぷすぷす…





spit:「まぁ、なんだ。

 スピットは帽子を押さえながら座り込みました。

おおっ
 ずいぶん余裕だな、スピット。

 ゲフェンダンジョン。
 以前、転職直後にここに訪れた時は、この辺りで倒れ…

aoiruka:「ここで、死にましたねぇ。
spit:「ま、俺も成長したしなー。





おおっ2




 安心しました、スピットさん。*9


Grill:「…何しにきたんだ、あんた。

spit:「えー、暇つぶしにきただけだろ。

aoiruka:「…暇つぶしで死ぬんだ…
Ahsgrimm:「仕様です。
Leona:「青ジェムはまだあるから平気。

 と、そんなこんなで時間をつぶしていると…
ebu:「あ、パパきましたー。

 えぶがパーティリストにアブを見て言いました。
 スピットもリストにアブの位置を確認し、

spit:「今、ゲフェDだよ。
Abd:「向かいます。
ebu:「ぱぱー。転職するよー。
Abd:「よしよし、よく頑張ったな。今行くからなー。

spit:「こっちからも、迎えに行くか。

回想録

spit:「って…


spit:同じところで死ぬなよ…



 聞こえんな?*10


 そして一行はゲフェンタワー最上階、ウィザードギルドへとたどり着きました。

いざ、転職 ebu:「では、行きますっ。

Abd:「がんばれ、えぶー。
spit:「ここに来て、何を頑張れと?
Ahsgrimm:「グリも話すか?
Grill:「決意が揺らぐから、イヤだ。
Leona:「どきどき。
aoiruka:「わくわく。
irurur:「4人目のWizですかー。


 ギルド職員に話しかけていたえぶの身体が、ぽっと、輝きました。

4人目のWiz!!
Leona:「おめー。
Ahsgrimm:「おめでとー!
aoiruka:「弟子、卒業。
irurur:「そうなんだ。
Grill:「俺だけ、マジ…
Abd:「大きくなったモンだ。
spit:「いっちょまえに、Wizか。

ebu:「カッコだけはです。

 いえ。



 今あなたはこの瞬間、この場にいるWizの誰よりも強いです。

spit:「アブ。
Abd:「はい?
spit:「なんでもえぶは、地魔導士になるそうだ。


Abd:「ある意味決まっていたことでは?

 ある意味、そうかも知れない。


Leona:「じゃ、えぶちゃん転職したし、さくっとレベル上げに、どっか行く?




spit:「ふ…

 スピットは帽子をあげて、言いました。

spit:「ならば、決まっておろう!!


 はい。

今度は入れます!!

グラストヘイム入り口。


spit:「あのときの、続きだー!

 スピットはアークワンドを振るいます。

ebu:「新婚旅行の続き?
Abd:「もち。

Ahsgrimm:「人数、少なすぎだけどなー。
Leona:「竜マップ、抜けられるものなんだー。

irurur:「いってらっさーい。俺は今日は戻りますー。
Grill:「あ、俺も今日は帰るわ。
spit:「あい。さんきゅー。

ebu:「新婚旅行の続きといっても、ママがいません。
Abd:「あぅ!?
aoiruka:「まぁでも、娘とというのもある意味…


Abd:「…




Abd:「それはそれで、アリですね。


spit:誰かコイツを斬ってくれ。


Ahsgrimm:「どこに行こうか?
aoiruka:「前回、行かなかったところがいいですかねー。



 そして一行はグラストヘイム、階段ダンジョンへと向かいました。

階段ダンジョン spit:「よーし、えぶ。がんがん狩るのだ!

ebu:「がんばります!!

Abd:「いけ!盾!!


Ahsgrimm:aoiruka:三゜д ゜)!!



Abd:凍らせますよ?

spit:「わーい、今回、みーてーるーだーけー。
Leona:「見てるだけだと、死ぬんじゃ?
spit:「今日はノルマもこなしたので、みなさんも大満足です。

ebu:みなさんって、誰でしょう?

 聞いてはいけない話です。

戦え!

Ahsgrimm:「ミミックきたー!?
aoiruka:「しかも、二匹!?

Leona:「がんばれー。

ebu:「クァグマイア!!

 えぶの魔法に、床がぼこぼこと波打ちました。すると、素早く動いていたはずのミミックがその波にのまれ、のろりのろりと…


Ahsgrimm:!?

aoiruka:「かわせる!?

 攻撃速度の落ちたミミックの攻撃を、前衛のふたりはかわしていきます。
Abd:「おおっ!!
ebu:「アーススパイク!!
 ついで、地属性のボルト魔法、アーススパイク。
 ばんっという音と共に大地が隆起し、ミミックを貫きます。

ebu:「うちとったりー。
Abd:「さすがはえぶだっ!

aoiruka:「うむむ、QM、侮りがたし!!
Leona:「回避アップで、十分補助魔法として使えるね。
Ahsgrimm:「攻撃以外は脳のない、どこかの誰かとは大違いだ!?


spit:「階段Dって、入り組んでて、道がわかんなくなるねぇ。


 オイ、そこのソイツ。

spit:「…?



まぁ、そうだろうな

 神さまは見ている。

ebu:「ヘブンズドライブー!!

Ahsgrimm:「おおっ!地の範囲魔法!!
aoiruka:「結構、強いですね。

Abd:「地属性魔法は、あまり属性によって効きやすい、効きにくいがないのです。
ebu:「同じ地属性にだって、ちゃんとダメージ通りますよー。*11

aoiruka:「へー。

Ahsgrimm:「詠唱後ディレイも短いらしいし、かなり強いな、地魔法。*12
Leona:「QMは補助魔法として、前衛にもうれしいですしねー。

Abd:「さすがはえぶだ!いいところに目を付けた!!

ebu:「えへへ…


 えぶは照れくさそうに笑って、ぽりぽりと頭を掻きました。


ebu:「さー!がんがん狩りましょー!!


aoiruka:「がんがんいきましょー!
Ahsgrimm:誰かの範囲魔法と違って、速いし、安定して強いHD!!
Leona:誰かとちがって、前衛の支援も出来る、QM〜。
Abd:「そして誰かと違って、愛すべきキャラクター!


ebu:「えへへ…






spit:「…すみません、起こしてください。


Abd:Ahsgrimm:Leona:aoiruka:あ、いたんだっけ?


*1 マジシャンはJobレベル40で二次職のウィザードに転職できる。
*2 詳しくは「spit、ウィザードになる!!」を参照。っていうか、今回はこのお話読む前に、このエピソードを読んでおくと、楽しさ倍増。
*3 氷雷の魔法がちゃんと使えるだけでも、十分スピットよりは強い。
*4 一応、略語表記を説明して置くと、アーススパイク=ES、ヘブンズドライブ=HD、クァグマイア=QMと、略語表記をします。
*5 LoVを撃つのはやめて、メテオストライクを撃つことにしたというのは、また別の内緒話。
*6 Jobではなく、ベースね。っていうか、そんなヤツは一生Mageやっていた方がいいのではと…
*7 詳しくは、「spit、ウィザードになる!!」を参照。っていうか、まだ読んでないでここまで読んじゃったあなた!読みましょう。(ネタバレする)
*8 携帯にメール。
*9 この魔法が何かわからないあなたはまだまだですな。(それだよ)
*10 本当に成長ねぇな、こいつら。(はい、してません)
*11 たしか、100%ちゃんと通る。スピットの雷魔法の範囲魔法、サンダーストームなどは属性によっては通常の25%しか効かないということもある。
*12 と、いうより、地属性の魔法の詠唱後ディレイ、キャスティングタイムは、設定をし忘れているのでは?と思うできばえだ。
 ちょっと許せないぞ。