みなさんは、ご存じですか?
ミドカルド大陸に住むモンスターの何種類かは、人間のみなさんとお友達になりたいと思っているのです。
そして、ボクもその中のひとりなのです。
テイミングアイテムと人間のみなさんがいう、ボクたちの好物の食べ物とかアイテムとかがあるんですけど、それを使ってね、人間のみなさんとボクたちは仲良くなることが出来るのです。
*1
人間のみなさんは、そうして仲良くなったボクたちのことを、「ペット」と呼ぶんです。
それで、みんな名前を付けてもらって、ご主人さまと一緒に、この広大なミドカルド大陸を冒険していくのです。
ボクも、今はまだたまごの中です。
でも、ご主人さまとなるべき人が、ボクをふ化させてくれるのです。
そしたらボクも、このミドカルド大陸に、大冒険の旅に出るのです。
ああ、ボクをふ化してくれるご主人さまは、どんな方なのかなぁ。
かっこういい、騎士さまかな?
かわいい女の子のアコライトさんかな?
女の子なら、プリーストさまでもいいなぁ。きゅってだっこしてもらえたら、もぉ、ボクは真っ赤っかになって、くるくる目が回っちゃうよ。
あぁ、いったい、ボクをふ化してくれるのは、どんなご主人さま…あれ?
たまごの殻が割れてるぞ?
ご主人さまが、お呼びだ!?
よーし!
飛び出して、抱きついちゃうぞ〜!
ごしゅじんさま〜!
コワっ!?*2
さて、物語はすこし時をさかのぼります。
いつものベンチ、スピットがだるそうにしています。
それもそうです。罰ゲーム中のスピットは、やる気もなんにもありません。
頭剣に白ヒゲにサングラスといういでだちに、近寄る人もいやしません。
Leona:「…ププっ。
uxi-ta:「わ、笑ってはいけません…プっ!!
spit:「
ウルセェヨ。
スピットはぷいとそっぽを向きました。
そして道行く人たちを見ながら、言いました。
spit:「あのさぁ、最近、ポリンやらポポリンやらピッキやらムナックやらを連れて歩く人をよく見るんだけど、あれ、なに?
Leona:「…
uxi-ta:「…
玲於奈とウィータは目を丸くして、「なにを?」という感じで言いました。
Leona:「
ペットです。
spit:「だから、ペットって、なに?
uxi-ta:「
知らないの!?
一年以上の冒険者のくせに、さすがです。
*3
Leona:「テイミングアイテムっていうのを使って、ペットをお供に出来るようになったんだよ。
と、玲於奈。
spit:「へー…
と、スピットは街中を行く人を見ながら言います。
ふいに、ベンチの前をモンスター、イシスが通りました。
ばっとスピットは立ち上がり、「テロか!?」「いや、イシス様もペットだよ」ウィータの声に、「…うーむ」と、再び座り込みます。
Leona:「スピさんも、ペット飼えば?
spit:「…ペットねぇ。
やる気度80%減のスピットには、あまり興味の湧かない話です。
uxi-ta:「でも、ペットは捕まえるのに
運がいるっていうから…
ころころと笑いながら、ウィータは言いました。
uxi-ta:「スピさんには、
無理かも。
spit:「…
spit:「
よーし、行くか。
すっくとスピットは立ち上がります。
spit:「ペット捕まえたら日記ネタだし、この容姿なら、
イケル!!
神様は見てますかッ!?*4
さて、そんなこんなで、一行はフェイヨンへとやってきました。
いろいろとペット情報を集めてみたところ、「ペットは捕まえるのに、モンスター別のテイミングアイテムが必要」「ふ化には、携帯用孵化器を使う」「ふ化した後、すぐにエサをあげないと逃げられてしまう」「一度だけ、名前を付けることができる」「親密度が上がると、話す」「お腹がすぐに空く。お腹が空いたらえさをあげないと逃げてしまう」などという事がわかりました。
そこで、一行はフェイヨンへとやってきたのでした。
spit:「えーと…
スピットはメモを見ながらつぶやきます。
spit:「ポリンのエサはリンゴジュース…テイムアイテムは、まだ熟していないリンゴ…と。
Leona:「ジュースづくり職人はあっちだよ。
ジュースは、空き瓶とジュースにする元の果物をここ、フェイヨンのジュースづくり職人に持っていくと作ってくれます。
*5
spit:「くださいな。
と、スピットが言うと、
Leona:「ダメです。
Leona:「
怪しいお客様にはお出しできません。
uxi-ta:「ププっ!
ともあれ、スピットは空き瓶にリンゴジュースを詰めてもらい、道具袋の中にがちゃがちゃといれました。
uxi-ta:「ねぇ…
spit:「ん?
uxi-ta:「
捕らぬ狸のなんとやらじゃないの?
spit:「天は俺の味方だ。
いやむしろ、
読者のみなさんの味方です。*6
ともかく、一行はフェイヨン南に出ました。
Leona:「ポリンのテイミングアイテムは、ポリンが落とす「まだ熟していないリンゴ」たから、とりあえずは、ポリンを手分けして狩ろう。
玲於奈の言葉に、「おー」とみんなはフェイヨン森の中に散って…
spit:「そして、これがでないというのが、1時間くらい続くのが、お約束…
uxi-ta:「
あ、出た。
リアルラックの差!?*7
なんなくテイミングアイテムを手に入れ、次はついに運がすべての、
捕獲です
Leona:「んじゃ、次は殺さないで、弱ったところで捕獲。
*8
その容姿で言うと、怖いものがあります!
spit:「ポリン、はけーん!
茂みの向こうにポリンを見つけたスピットが、だっと駆けていきます。
そしておもむろに、ぐーパンチで…
拳で。
spit:「…と、こんなモンかな。
あと一撃でポリンを倒してしまう、というところまで攻撃し、スピットは手を止めました。
spit:「で、ここで未熟リンゴをあげるのか。
ごそごそと道具袋をあさり、中からポリンのテイミングアイテム、まだ熟していないリンゴを取りだし、「ほれ」と、ポリンにそれを放りました。
Leona:「るーれっと、すたぁとっ!!
uxi-ta:「クリックで止めるのです! SUCCES!が出れば、テイム完了。ポリンのたまごがゲットできますっ!!
spit:「え?なに?そういう説明コーナーなの?だったら…
バーニーガールとかがよかったですか?*9
spit:「…見える。ルーレットのドラムの、つなぎ目すらも…
Leona:「本当に!?
spit:「…
ここだっ!
ザワッ…
Leona:「…なんにも起こらないよ?
uxi-ta:「ポリンはえんえん、攻撃してるし…
spit:「…
お察しください。
spit:「さーて、それじゃ、フェイヨン森で、テイミングアイテムをゲットといこうかー。
uxi-ta:「いや、そこからつなげようって、無理あるし。
spit:「今のは、れんしゅう!!
Leona:「また、未熟リンゴ探すのかー…
と、一行はフェイヨン森に…
Leona:「
あ、出た。*10
リアルラックの差!?
uxi-ta:「これって、結構レアなはずなんですけどね…
Leona:「だよね…
spit:「天が味方している!
Leona:uxi-ta:「
次も失敗って事か。
Leona:「では、るーれっと、すたぁ〜とっ!
uxi-ta:「スピさん、今度は成功してくださいねっ。
spit:「じゃ、
バニーで…
ぷち。
spit:「ぐぉ…
ぽち。
Leona:「お?
uxi-ta:「あ。
spit:「ん?
spit:「
キター!?
Leona:「おめー!
uxi-ta:「普通に、おめー!
spit:「ふつうに、あり〜。
spit:「
この格好、さすが。
神はいます。*11
Leona:「では、続いて、ふ化!
uxi-ta:「孵化器がないと。
spit:「ふ化もさせるの!?
Leona:「ふ化して、
逃げられるまでが、今回の話です。
spit:「へー、
そうなんだ。
一行はフェイヨンに戻り、テイミング商人に携帯卵孵化器を売ってもらいました。
と、スピットはその商人の扱っている品物を見て、「うーむ」とうなりました。
uxi-ta:「どうしました?
spit:「ポリン用の鞄が売ってる…
Leona:「ペットにも、アクセサリがつけられるからね。
spit:「…かわいいなぁ。
ちょっと、スピットは考えてみます。
手に入れたこのポリンのたまごをふ化させ、出てきたポリンと一緒にイズルードの砂浜を…
uxi-ta:「どうする?
spit:「
アイフ…
CMネタはすぐに風化します。*12
そして一行はベンチへと戻ってきました。
spit:「で、これでどーすんだ?
と、携帯用卵孵化器をごんっと置いて、スピットは言います。
Leona:「知らない。
uxi-ta:「ペットなんて、まだ誰も持ってないし。
spit:「…
spit:「
ダメじゃん。
とりあえず、スピットは携帯卵孵化器の上に、ポリンの卵を置きました。
なんとなく、置くような格好をしているので、きっと置くのだと思ったからです。
spit:「そして…
携帯卵孵化器を見ると、ボタンのようなものがひとつ、ありました。
spit:「…ぽち。
spit:「
キター!?
uxi-ta:「はわわ!出てきた!?
Leona:「と、とりあえずスピさん!エサを!?
spit:「よし、リンゴジュースだな!!ポリン、このリンゴジュースを…
spit:「
ポリンって、ジュース飲むんだ…
uxi-ta:「いや、そんなこと関心している場合じゃないし!!
*13
とりあえずポリンの好物というリンゴジュースを飲ませてあげると、ポリンはにこにこと笑いました。
彼が何を考えているかはスピットにはわかりませんでしたが、とりあえずは「ほっ」と一息つくと、「あ、そだ」と、買ってあった鞄を早速ポリンにしょわせてみました。
spit:「(ちょっとかわいいかも…
uxi-ta:「そしたら、名前ですね。
Leona:「一回しかつけられないらしいから、よく考えないと…
spit:「お、そーだな。
uxi-ta:「
スピット2号。
Leona:「
負け犬。
spit:「
そんな名前はイヤだ。
インプリンティングですよ、先生。*14
Leona:「取ると逃げられる。
uxi-ta:「逃げるのよ、ポリン!だまされてるわ!!
spit:「なぜ!?
Leona:「で、名前は?
spit:「あ、そだ。
uxi-ta:「負け犬、へっぽこ、へたれ、
さぁどれ!!
spit:「その中から選ぶの!?
さあ、みなさんご一緒に。
uxi-ta:「
あなたのペットにふさわしい名前です。
ギルドの役職もそれだし。
*15
Leona:「ポリン、負け犬がいいの。
spit:「いや、後ろから聞こえたし、今。完璧に。
と、突然ポリンがもそもそと動きだし、スピットの膝を登ってこようとしています。
spit:「ん?
と、ペットステータスを見てみると…
spit:「さっきご飯あげたのに、
もうお腹の具合が普通!?
コストパフォーマンスが悪すぎます。
spit:「こ、これはご飯をあげた方がいいのかな。どうなのかな。
スピットはあたふたあたふた。
spit:「ぽ、ポリンの飼い方の本がほしい…
スピットは道具袋の中からリンゴジュースを取りだし、ポリンに与えます。
uxi-ta:「やっぱり、スピさんのペットたし、スピさん同様、負け犬、へっぽこ、へたれのどれか…
spit:「俺はへっぽこでは…
と、言おうとして、スピットははっとしました。
Leona:「?
uxi-ta:「…どうしました?
spit:「…いいことを教えてやろう。
ふ、と軽く笑って、スピットは言いました。
spit:「ペットステータスウィンドウを開きっぱなしにしておいてエサをあげると、未命名の場合、カーソルが名前の欄に来る。
システム的な話ですが、つまり…
spit:「エサをあげた直後に意図的にカーソルを動かさないと、
名前入力される。
Leona:uxi-ta:「
Σ*16
ぽつりと、玲於奈は軽く微笑みながら言いました。
spit:「
…運命だな。
ショックですー。
卵から孵ってみたら、目の前には変な人がいるし。しかも、その人がボクのご主人さまだし…
ううぅ…後ろにいたプリーストさんや、隣にいたアーチャーさんがご主人さまだったらよかったのに…なんで、よりにもよって、こんな変な人がボクのご主人さまに…
しかも、ご主人さま、ボクにつけた名前が、「へっぽこ」ですよー。
へっぽこって…何ですか、ご主人さまっ!?
他のペットを飼ってらっしゃる方々は、みーんな、ペットを飼う前に名前を決めていて、それで、やっとこペットを手に入れて、喜んで名前をつけるって言うのに、ボクは「へっぽこ」ですか?
しかも、その理由が、「つけるしかなかった」からなんですかっ!?
あんまりですよー。
うううぅ…
こんなご主人さまは、イヤです。
ボクは、もっとちゃんとしたご主人さまに飼われたいです…
清楚で可憐なプリーストさまや、りんとしたアーチャーさまがボクをテイムしてくださっていれば、ああぁぁ…なんでリンゴを拾ってくださったのはお二方なのに、こんなのにテイムさせちゃうかなぁ…
「おーい、へっぽこー!メシだぞー?」
あ、ご主人さまが呼んでます。
ご飯の時間ですかー。
んー…まぁ、でも、ご主人さまはちゃんとボクにご飯をくれるし、いろんなところに冒険に連れてってくれるから、いいっちゃ、いいんだけど…
「あ、ご主人さま〜」
「ほれ、さっさと食え。冒険に行くぞ」
待ってました、いただきま〜す!
パクパク。
「んー」
「…なんだ?」
「デザートに焼きゼロピーかなにかないですか?」
「ネェよ!!」