うららかな午後の陽光が、プロンテラの街に降り注いでいます。
ルーンミドカツ王国の首都、プロンテラ。
その宮前広場の北西。
通称プロンテラベンチは、そこにありました。
「いやぁ、懐かしいですな」
と、赤髪の騎士が言います。
「ですなァ」
と、返すのは赤髪のシーフ。
ずずりと、お茶をすすり…
どこから出した!?
「ベンチを囲む面々も、増えましたなぁ」
すずりとお茶をすすりながらのシーフの言葉に、
「ですなァ」
ずずりとお茶をすすりながらの騎士…っていうか、
どこからだした!?
「お変わりないようで」
帽子をちょいと直し、緑髪のウィザードもお茶をすすり…
そろそろ、突っ込みどころはそこではないかと。
「さて…」
赤髪の騎士は言いました。
ベンチを囲む、いつもの面々も、ひょいと彼を見ました。
「これだけ人数がそろうと、どこかに行きたいですな」
「ならば、再会を祝して」
「…ですな」
spit:「プロ北へ!!
Ridgel:「御意。
"hayate":「今じゃ、イグ葉も店売りか。
時を越え、再びスピットたちはかの地を目指します。
*1
一行はプロンテラ城を抜け、北門を通り、一路プロンテラ北ダンジョンを目指します。
そこはそう、今から一年ほど前に訪れた、
最強の敵がひしめく高レベルダンジョンです。
*2
spit:「懐かしすぎる…
Ridgel:「整列ー。ばんごー。
uxi-ta:「いち。
eve:「に。
Farmei:「さん。
"hayate":「
以下略。
spit:「とつげきー!!
番号、
意味ナシ!!
昼なお暗い、深い森。
その奥の、そのまた奥。
プロンテラの北に広がる森の奥に、そのダンジョンはありました。
プロンテラ北ダンジョン。
凶悪な魔物の住まう森。
この世界と、そしてもう一つの世界との境が、ミドカルドでもっとも希薄な場所。
多くの冒険者たちがこのダンジョンの最奥に挑み、そして倒れ、伝え聞こえるのは、恐怖の伝説ばかり。
そんなのは、
過去の話です。
今や、プロンテラ北ダンジョンを凶悪な魔物の住まう場所という冒険者はそれほどいません。
今となっては、古城、グラストヘイムにお株を奪われ、モンスターたちの湧きも緩くなり、このダンジョンも、あまり人気のあるタンジョンではなくなってしまいました。
spit:「カカッテコイヤ!!
ぶぅんぶぅんとアークワンドを振るいながら、スピットは言います。
と、そのスピットの近くを、何かが走り抜けました。
ぶーん…
そう、赤い、何かが!
Ridgel:「キター!
"hayate":「おおぉ!
それはまさしく、あの時に見た、
赤い彗星、ハンターフライです。
*3
uxi-ta:「アンクルスネア!!
spit:「…
"hayate":「…うむ。
Ridgel:「…ですな。
uxi-ta:「叩かないの?
spit:"hayate":Ridgel:「
時代は変わった。
"hayate":「叩けー!
Ridgel:「うおおぉ!!
spit:「ソウルストライク!!
Farmei:「何か、鬼気迫るものがありますね…
eve:「昔は、即死な敵だったからねぇ…
*4
一行は進みます。
うろ覚えの道をたどり、ついた先は…
"hayate":「うわー。
Ridgel:「なつかし〜。
Ridgel:「さて…
騎士、リジェルは立ち止まり、言いました。
spit:「キター!!
そう、その場所は、あの場所です。
Ridgel:「この橋の先が…
"hayate":「
グッジョブ!!
spit:「
思い切り、仰天してみましたッ!!
Ridgel:「と、いうのは、昔の話だったなぁ…
Farmei:「前に、中ボス見学にきたよー。
spit:"hayate":Ridgel:「
Σ(д ii
eve:「はいはい、ジェネレーションギャップを感じてない、そこ。
Ridgel:「さて、では、臨戦態勢に入りますか…
"hayate":「よし…準備万端だぜ。
uxi-ta:「プロンテラ北ダンジョンって、そんなにかしこまるほど?
Farmei:「グラストの方が、全然…
eve:「あの人たちの頭の中では、今でも最強ダンジョンなんだよ。
苦笑気味に、イブは言いました。
それはまだ、グラストヘイム古城への道が閉ざされていた頃の話です。
ミドカルド大陸で、最も凶暴なモンスターが住まう場所。
それがここ、プロンテラ北ダンジョンでした。
その頃のこの場所は、あまりにも凶暴なモンスターが多く徘徊し、歴戦の冒険者たちが挑むも、そのモンスターたちを退けることが出来ず、狭いダンジョン内に、あふれるほどたくさんのモンスターがひしめいていたのです。
モンハウと呼ばれるその中へ、冒険者たちはパーティを組み、戦い挑み、多くの者は倒れ、そして力ある冒険者だけがこの場所のボス、バフォメットと出会い、しかし、なぎ倒され、その中でも真の勇者と呼ばれるほんの一握りの者たちだけが、その最強のモンスターをうち倒してプロンテラへと凱旋することが出来たのでした。
それほどまでに、恐ろしかったダンジョンへ、今、スピットたちは挑もうと…
eve:「まぁ、昔の話だけど。
今では、プロンテラ北ダンジョンに挑むような冒険者の姿は、あまりありません。
*5
spit:「とつげきー!!
さぁ、スピットは橋を駆け抜け、その奥へと一歩を踏み出しました!
"hayate":「おめでとう!スピットくん!!
spit:「いざ!前人未踏の地へ!!
踏み荒らされまくりです。
spit:「進みますぞ!!
"hayate":「前人未踏の地へ!
今ではモンスターの数も減り、この地へ好んで足を運ぶ冒険者の姿も、
減ったんですが…
spit:「あっ!!
と、スピットは矢を放ったイブを見て、目を丸くしました。
eve:「ん?
spit:「今、ポポリン倒した!?
eve:「…倒せるよ。
spit:「強くなったなぁ、イブ…
eve:「…まぁ。
*6
spit:「そうだな…
ふっと笑って、スピットは帽子をなおしました。
にやり、笑います。
にやり、ハヤテさんは言いました。
spit:「違うのだよ!!
世界もな。
一行は、プロンテラ北ダンジョンを、ところ狭しと駆け回ります。
Ridgel:「どっち行こう。
uxi-ta:「狭いからやりにくい。
spit:「こっちだー!
"hayate":「黒蛇きた!?
spit:「一年前とは違うのだよっ!!
Ridgel:「おりゃああぁ!
eve:「うーん…いつもその気迫があれば死なないだろうに…
Ridgel:「って、前衛俺だけ!?
spit:「こっちだー!?
Farmei:「そっちは、赤芋部屋だった気が…
"hayate":「詳しいなぁ。
Ridgel:「うわっ!ホントだ!?
spit:「こっちだー!!
Farmei:「そっちはループです。
spit:「…不思議館めッ!!
"hayate":「何の魔法だッ!?
spit:「くまうまー!
"hayate":「くまうまー!
uxi-ta:「…はちみつくまさん。
spit:「Σ
*7
"hayate":「すすめーすすめーものどーもー。
spit:「てきをーてきをーけちらーせー。
Ridgel:「いや、若い人は絶対知らない。
*8
spit:「時代は、左向け、左!
"hayate":「ぴっ、ぴっ!
Farmei:「元気ですねー。
Ridgel:「しかし、モンハウもないなんて。
Ridgel:「!?
eve:「あっ…
"hayate":「しまった!反応遅れたっ!?
spit:「セイフティウォール、ソウルストライクっ!!
Ridgel:「スピアブーメラン!!
"hayate":「嗚呼畜生っ!
eve:「死んだ〜。
spit:「任せろ、ちゃんとイグ葉はある。
"hayate":「おっ!さすが!!
spit:「…プロ北にイグ葉はよく似合う。ふ。
Ridgel:「よし、先に行ってみてこよう。
"hayate":「よし、任せた。
Ridgel:「ぎゃー!死ぬー!!
spit:「むっ!?
Ridgel:「…何故来る。
spit:「ピンチなのかなと。
"hayate":「次の部屋に行け。
Ridgel:「うむ…安全。
"hayate":「ほほぅ…
Ridgel:「ごめん。
"hayate":「これで安全か。
Ridgel:「これで安全。
"hayate":「未来予測すなっ!!
spit:「じゃ、リジェルさん、その先を。
Ridgel:「ん…おぉっ!危険だ!!
Ridgel:「危険って言ったのに…
spit:「キケン、たのしー!!
eve:「意味ないじゃん…
Farmei:「ですねぇ。
uxi-ta:「今までの会話に、意味がないね。
spit:「しかし…
spit:「
ぬるい!!
ぐっと拳を握りしめ、スピットは叫びました。
spit:「プロンテラ北ダンジョンが、これでいいのだろうか!? いや、よくないはずだ!!
プロンテラ北ダンジョンには、ここ、ミドカルドに存在するモンスターの多くがいます。
そして今、スピット一行はこのプロンテラ北ダンジョンをすべて巡り…
ミリセク死など、遠い過去の記憶です。
spit:「プロ北は死んだのか!?
スピットはアークワンドを握りしめ、言いました。
森中に響くほどの、強い声で。
spit:「ここには、いないのか!? もはや、出会えぬのか!?
全滅好きだなー…
"hayate":「たしかに、ひしめき合うほどのモンハウ、なくなったね。
Ridgel:「うん、動けなくなるくらいのモンハウとかあったしね。
*9
spit:「
ザコ共が!!
中ボスです。*10
殲滅。
確かに、強くなったのです。
一年。
冒険者を続けて一年。レベルアップは遅くても、今ではスピットも昔のスピットの倍近いレベルになっています。
そうです。
ちょっとずつでも、ちゃんと、みんな強くなっているのです。
spit:「俺たちを全滅させられる敵は、いないのかー!!
でも、
考え方は変わってないようです。
Farmei:「ここにいないレベルの敵っていうと…
華ちゃんは言いました。
Farmei:「時計か、グラストかと…
即断、即決、
即実行!!
Ridgel:「えっ!?新Dは行ったことがないから…
"hayate":「問答無用。
Ridgel:「せめて遺書くらい…
eve:「私は帰るね、じゃ、逝ってらっしゃい。
Ridgel:「字が!?
"hayate":「あってる。
Farmei:「ワープポータルー!!
spit:「
とつげきー!!
そして一行が突撃した先は…
既に。
"hayate":「これはやばい。
イグドラシルの葉でよみがえったスピットを横目に見ながら、ハヤテさん。
"hayate":「おうち帰りたい… 。・゚・(ノД`)・゚・。
待ち受けるのは、死。
のみ。
Farmei:「後ろから!?
"hayate":「やったるわー!!
Ridgel:「ツーハンドクッイケン!!
uxi-ta:「とべー!鷹ー!!
spit:「ソウルストライクっ!!
Farmei:「SPないぉ。
"hayate":「次、逆方向来るぞ!!
Ridgel:「こら!?ハヤテ!?
"hayate":「今、かっこよかった?
Farmei:「?
spit:「右!レイド、1!!
Farmei:「左から、ライドワードです!
"hayate":「リジェル、左!!
Ridgel:「ハヤテ、右!!
一瞬で消し飛びそうなダメージです。
spit:「!?
消し飛びました。
spit:「これで、もうイグ葉はない。
最後の二枚のイグドラシルの葉を使い、スピットとウィータは起きあがりました。
spit:「しかし、二撃で死ぬとは。
"hayate":「俺も、かろうじて、二撃だな。
spit:「このままでは、ただ全滅を待つだけだ。
きゅっと帽子をなおしながら、スピットは言いました。
ってか、
全滅という選択肢以外は?
"hayate":「で、どうするね?
ハヤテさんが聞きます。
リジェルさんも振り向き、スピットの方を見ました。
spit:「…ただ、全滅を待つだけなんて、つまらないことはないですね。
軽く笑って、スピットはアークワンドを握りなおします。
そしてにやりと口許を弛ませたまま、言いました。
spit:「勝負しようじゃねぇか、グラスト騎士団のモンスターたちよ…
ぶんっと振るうアークワンドが、風を舞い上がらせました。
spit:「
俺たちの2F侵攻を、阻止して見せろ!!
"hayate":「心強くなったなぁ、スピットさんも…
Ridgel:「お強くなられて…
spit:「
行くぜ!野郎ども!!
"hayate":Ridgel:「
オオっ!!
uxi-ta:Farmei:「野郎じゃない…
振りかざしたアークワンドが生み出す風の進む方向へと、一行は駆け出しました。
その先の、騎士団2Fへとつながる階段へ。
阻止。
"hayate":「わははははは!
Ridgel:「こりゃダメだ!
spit:「本のバーカ!!
全滅はしましたが、げらげらと楽しそうに笑う声が、その場所には響いていました。