スピットはコモドステージの上で、みんなを待っていました。
ちなみに、いるると深雪嬢はここで落ち。
ふたり減って、グリを追加した一行を、スピットは待っていました。
"hayate":「遅いな…
ぽつり、ハヤテさん。
"hayate":「暇だし…
"hayate":「
ダンスの練習でもしよう。
ステージだからね!?*2
"hayate":「レッツ、ダンス!!
spit:「いよっしゃー!
踊る二人。
*3
ステージ前に戻ってきたパーティメンバーが、遠巻きに、白い目。
Ridgel:「おどってるー!?
"hayate":「いぇい。
Ridgel:「男のダンスなんざ見たくねぇなー。
Hisato:「ヽ(´ー`)ノ
spit:「なにっ!?
Hisato:「んじゃあ、女装を。
Ridgel:「なお悪いわ。
と、たまたまステージ前を通りかかったプリさん(女性)が、ステージの上のスピットたちに向かって、言いました。
プリさん:「にいちゃん、
ぬげぬげー。
Ridgel:「なんと脱衣コールが。
Hisato:「スピさん!
Ridgel:Hisato:「
一肌脱ぐしか!?
spit:「…
spit:「
ちゃっちゃらちゃーん♪
脱ぐんだ!?
"hayate":「ちょっとだけよん。
spit:「
おりゃー!!
Ridgel:「
脱いでるー!?
プリさん:「おもいきって脱ぎますね。(*ノノ)
Ridgel:「本気だとは…漢だ。
Grill:「…そういうステージなのか?
appi:「…スピさんは、酔ってますか?
spit:「酔ってないよぉ〜。
aoiruka:「そういえば、さっきビールを飲んでいたような…
と、プリさんは「きゃっ」と立ち上がったかと重うと、
プリさん:「おひねり。
貝殻!?
"hayate":「股間に装着。
かなり、
マテ。
"hayate":「そして踊る。
aoiruka:「奥さんへの報告、期待してます。
Ridgel:「Σ( ̄口 ̄)
"hayate":「。・゚・(ノД`)・゚・。
そりゃ、ねぇ…
"hayate":「コモドの夜がみせた幻さ…
嫌な幻ですな。
と、そこへ最後のウィータがとことこ歩いて戻ってきました。
uxi-ta:「ん?
spit:「なんだ?
uxi-ta:「ステージにいるなら、なにかしろ〜。
spit:「じゃあ、オマエもおどれ!ウィータ!
uxi-ta:「…私?
"hayate":「
脱げ ヽ(゚▽、゚)ノ
Sylphienne:「ハヤテさんっ!!
uxi-ta:「セクハラです!
aoiruka:「 _φ(。。)
"hayate":「メモるなぁ。・゚・(ノД`)・゚・。
aoiruka:「むしろ、始末書。
わいせつ物陳列罪。
spit:「んならば、ハヤテさん!
"hayate":「おうよ、スピットさん!
spit:"hayate":「
最後の一枚まで、行きますか!!
spit:"hayate":「ばっばーん!
最低。
appi:uxi-ta:Sylphienne:「…
Ridgel:「むっちゃくちゃ、引きまくってる…
"hayate":「寒っ。
spit:「やっべぇ、やりすぎ!?
あわてて、スピットとハヤテさんは自分たちの服と装備を拾おうと…
きょろきょろ。
辺りを見回します。
*4
Domi:「ハヤテさんの装備と、スピさんの装備のいくつかは拾いましたけど?
ドミさんがいいます。
spit:「俺のパンツと、服は?
Domi:「…パンツは一枚しか。
Ridgel:「俺もいくつか拾いましたけど、パンツは…
spit:「…
拾われた!?
しかも、
女性騎士さん!?
spit:「はっはっは…お嬢さん、冗談がきついですよ。
フ…と、スピットは笑いました。
spit:「マヂ、裸は勘弁してください…
しかし、その騎士さんはまったく反応しません。
Grill:「ごめんね、アホがノリでやっただけだから、返してあげてくれない?
と、グリ。
spit:「アホ認定…
uxi-ta:「それ以外に、なにが?
しかし、騎士さんはまったく、スピットたちの言葉に、反応しませんでした。
不振に思ったリジェルさんが、騎士の前にゆっくりと歩み寄ります。
そして、彼女の目の前で、手をふりふり。
"hayate":「おや?
Sylphienne:「ハヤテさん、いいから、服を着てくださいっ。
Hisato:「反応がないですね…
Ridgel:「
BOTだ…
spit:「なんじゃそら。
身体をちぢこまらせながら、スピット。
appi:「はやく、服を着てくださいっ。
Domi:「とりあえず、ぼろマントは回収しておきましたから、着てください。
spit:「おお、ドミさん、ありがとう。
Grill:「BOTかもね…
グリもぽつりとつぶやきました。
Sylphienne:「なんです?
聞くシルさんに、グリが返しました。
Grill:「ようは、不正なプログラムで、自動的に戦ったりなんだりして、アイテムをかき集めたりなんだりする、自動人形。
Ridgel:「中の人はいません。ただ、戦い続けて、レアを集めたりします。
spit:「…
spit:「
魔女の呪いか!?
Ridgel:「まぁ…そのようなものです。
appi:「日記的に言うと。
*5
"hayate":「おもしろっ。何か、なげてみよーぜ?
Domi:「何かあったかな?矢とか、どうだろ。
ぽいっ、ドミさんは銀の矢を一本、放ってみます。
しかし、騎士さんは反応しません。
aoiruka:「ブレイドやってみましょう。
ぽい。
しかし、これにも反応しません。
uxi-ta:「…ブリーフ、反応していたような。
ぽい。
ウィータは倉庫から取り出したブリーフを投げてみました。
ぎんっと、その騎士の目が光ったかと思うと、すさまじい速さでそれを、ぱしっ。
aoiruka:「おおー。
Ridgel:「はやっ!
Domi:「脱ぎたて?
uxi-ta:「たった今、倉庫から出したやつで、ドロップそのままの、未使用品ですっ!
spit:「ハット、反応するかな?
ぼろマントに身を包みながら、ぽいと、スピットは鞄の中に入っていた、普通のハットを投げてみました。
しかし、これには反応しません。
spit:「ブリーフに反応して、ハットに反応
しないってのは、どういう了見だ、
ゴルァ!?
"hayate":「変態。
Hisato:「ソレダ!?
Grill:「リダ、結局、何とられたの?何か、二つくらいとられていたような…
spit:「んー?なんだろ。
と、スピットとハヤテさんはドミさん、リジェルさんから装備品を受け取り、確認します。
"hayate":「…特に取られたものはないな。
spit:「パンツと、服と、あと、
グローブがないな。
aoiruka:Ridgel:「グローブー!?
Domi:「あれ?グローブ、渡しませんでした?
spit:「あ、俺、両手にグローブしてたから、二個持ってるんだ。
Hisato:「実は、ブルジョワだったのかー!?
グローブというのは、お店では売っていないアクセサリです。
要は手袋で、これを装備すると、Dexという、器用さが上がります。この数値が上昇すると、攻撃のあたりやすさや、魔法の詠唱速度が上がるのでした。
appi:「…時価、300K越えの損失ですね。
uxi-ta:「…アホだ。
"hayate":「よかったー、木琴取られなくて。
Ridgel:「取られたら、死んでも死にきれんわな。
*6
Sylphienne:「あと、服もとられちゃったのですか?
spit:「んー、鎧の装備がとられちってるな。
Grill:「リダ、鎧は何装備してたの?
spit:「シルバーローブ…
Grill:「あ、それなら別に、それほど痛くはない…
spit:「
オブ デザート。
それは魔法士、魔導士ならば誰でもが手に入れたいと思っている、知力上昇の能力を秘めた、デザートウルフ(子ども)のカードを差した防具です。
*7
spit:「いやいや、マイッタネ。
uxi-ta:「激しく、アホだ…
appi:「スピさんが、弱くなった…
Grill:「マイッタネ、って問題じゃなーい!?
Ridgel:「…これは、上に報告した方がいいんじゃ。
"hayate":「んー、そうかもしれんなぁ…
uxi-ta:「報告しても、装備は戻ってこないかと思うけど。
*8
皆、その騎士を囲んでうーむとうなっています。
ひとり、スピットはカプラ倉庫をあけて、あまりのシルバーローブを探しています。「あ、そうだ。スピットさん、仕方がないから、これ」と、ハヤテさん。「ん?」渡されたのは、ミンクのコートです。それは、魔導士最強の防具。「使ってよ」「おぉ、ありがたい…しかも、あったかい…」
渡されたミンクのコートを着、いつものぼろマントをまとい、帽子をなおして、スピットは皆に向かっていいました。
*9
spit:「まー、取られちゃったものは、仕方ないよ。
appi:「…あっさりですね〜。
Ridgel:「よ、よいのですか?
spit:「そいつに、やる。
スピットは帽子をなおして、言いました。
spit:「俺は、また集めればいいだけの話だ。
Grill:「それはそうだけど…
spit:「まー、俺の装備もってったんだから、それは、可愛いマジ子さんに、安く売れよ。
スピットは言い、その騎士をぽんと叩きました。
"hayate":「そこまで達観できれば、たいしたものだ…
Ridgel:「ある意味、尊敬に値する…
spit:「俺は、BOTのことはようわからんし、レア装備が欲しい、金がほしい、手っ取り早く強くなりてぇとか、そんなつまらない理由はどうでもいいのさ。
ぴょいとステージから飛び降り、スピットはアークワンドを肩に乗せ、笑いました。
spit:「魔女の呪いか、人の心の闇か。どっちにしても、この騎士さんは、その力に負けたのさ。
uxi-ta:「スピさんは、強がり?
spit:「…かもな。
笑い、帽子をなおします。「んだが、俺はこんなことには、負けぬ」
そして、言いました。
spit:「俺は、冒険者だからな。
appi:「…さて、それでは、西洞窟に行きますか?
spit:「おぅよ!
Ridgel:「オチ!?
Domi:「マテイ!!
スピットはげらげらと笑いました。
spit:「また逢おう、騎士さんよ! そん時は、同じ、冒険者としてな。
*10
そして、一行はここでシルさんと別れ、代わりに途中参加のゼルクさんを拾い、西ダンジョンへと向かいました。
さっさと外しなさい。
"hayate":「ここか…
そして、西ダンジョン前。
Ridgel:「では…
Ridgel:「まてまてまて!
Ridgel:「だから言ったじゃないかー!?
学習能力皆無。
Ridgel:「ふー…
なんとか、半漁人の攻撃を退け…
spit:「はっ!? プリが、そういえば、アピひとりなのだった!!
appi:「おこしますよ〜。
Ridgel:「まことに遺憾ですが、みなさん…
"hayate":「どうした?
Ridgel:「SP減りまくり。
spit:「まー、もろもろ、
気にしない方向で。
リーダー!?
spit:「とつ、げき!
一行は、反時計回りに西ダンジョンを回ることにしました。
とりあえずは、北西の端っこにたどり着いて、一休み。
Domi:「…撮ってみましょうか。
"hayate":「よし、撮ろう。
Ridgel:「後ろから、半漁人が沸いてきて、ヌッコロされるオチだな。
前から来ました。
Ridgel:「そうじゃないだろ、半漁人ー!!
spit:「あれ?グリって、SG撃てるんだ。
Grill:「Lv1だけどネ。
spit:「んじゃー、今日はグリとアレをやってみっか。
Domi:「あれ?
appi:「そういえば、ここは水属性のモンスターが多いんでしたね〜。
spit:「いくぞ、グリ!
Grill:「おうよ!
spit:Grill:「
合体魔法!
Hisato:「すげぇ…
Grill:「滅殺ッ!
二つの大魔法の前に、襲いかかってきたモンスターは、一瞬のうちに消え去っていました。
spit:「およ?
appi:「どうしました?
spit:「んにゃ…気のせいだろう。
ただ、スピットはちょっと、首を傾げていました。
さて、一行は逆時計回りにダンジョンを巡っていきます。
と、西側と東側とをつなぐ中央部分の橋のあたりで、別のパーティの団体に逢いました。
「あ、すみません、団体で」
と、そのパーティのプリーストさんがスピットたちに向かって言いました。
アサシンさんが、それに続いていました。「ご迷惑をおかけします」
Grill:「いえいえ。
spit:「うちら、いつもだ。
Hisato:「こちらこそです。
uxi-ta:「お知り合い?
spit:「いや、全然。
appi:「同じ冒険者同士ですから。
Ridgel:「出会いは、大切にせねばなりません。
spit:「…いち、にー、さん、しー…
aoiruka:「何を数えて?
spit:「
人数。
Domi:「は?
spit:「負けたら、なんかくやしーじゃん。
Ridgel:「そういう問題ですか…?
Zeruk:「でもたぶん、レベル差なら、勝てます。
Ridgel:「85。
Zeruk:「32。
spit:「レベル差、
50以上!?
誰もが認める、
不公平パーティ!
Hisato:「すっげ。
さて、そんなわけで、一行は西のはしを目指して進みます。
*11
spit:「…進めない。
appi:「行けない。
Domi:「見えない壁がある。
結構、
おバカな光景です。
"hayate":「あー、こっちの壁にも、さっきの顔があるぞ。
ハヤテさんの声に、てくてく逆側の壁に向かうと、そこには先ほど北洞窟でみたのと同じ壁画がありました。
"hayate":「これって、やっぱり魔女の呪いに関係が…
Zeruk:「あるのですかね?
spit:「魔女の呪いは、もう見た。
Ridgel:「笑い話なのだろうか…
一行は、逆時計回りに進みます。
今度目指す先は、南西の端。
Ridgel:「とつげきー!
aoiruka:「おおー。
Grill:「ライトニングボルト!
spit:「ソウルストライク!! …おや?
uxi-ta:「どうしたの?
spit:「気のせいかな?
appi:「さっきから、スピさんが変なのです。
Grill:「リダ、敵がまとまって来た!一気に行こう!
spit:「おうよ!
なにやら、スピット、ちょっと
不調の様子です。
*12
spit:「…なーんか、違うんだよなぁ。
Ridgel:「なにがです?
spit:「いや、わかんないんだけど…身体がぎくしゃくするというか…とりあえず、この先が済奥っぽいから、そこまでいって、休憩しよう。
そして一行は端を渡り、南西方面、西ダンジョン最奥へとたどり着きました。
Ridgel:「アピさん、SP大丈夫ですか?
appi:「半分くらいです。
uxi-ta:「ここで、少し休憩してから、下方面をまわって、外?
"hayate":「そのルートを回れば、西ダンジョンも制覇だね。
Zeruk:「おお、制覇ですか!
spit:「
あっ!!
なんかおかしぃなぁと、自分の道具袋の中をみたり、身体を動かしたりなんだりしていたスピットが、突然、声を上げました。思わずみんな、びくりとして身体を振るわせました。
Ridgel:「どうしました?
spit:「いや、さっきから、どーも魔法の出が悪いなぁと思ってて…理由判明。
spit:「そういえば、グローブ、
片方しかしてないじゃん!
uxi-ta:「そういえば、ラバさんの転職の時も、同じようなことを言っていたような…
appi:「スピさんの動きがおかしかったのには、理由があったのですね。
*13
Grill:「っても、グローブなら、Dex+2でしょ?そんなに違うもの?
spit:「染みついた感覚ってのがあるからな。
Ridgel:「魔導士には、魔導士の感覚というものがあるのですか。
aoiruka:「じゃ、今度はスティングでも狩りにいかないとですねー。
spit:「ま、慣れだろ。たぶん。
uxi-ta:「しかたがないや。スピさん、貸してあげる。
と、ウィータは自分がしていたグローブを外し、ぽいとスピットに向かって投げました。「いや、いいよ。そしたら、ウィータが困るだろ」「いいよ」
uxi-ta:「私は、別にグローブなくてもなんとかなるし、せっかくだし。
spit:「なにがせっかくなのかは、よくわからんが…
受け取ったグローブを手に、スピットは笑います。そして右手に持っていたアークワンドをちょいと口にくわえ、受け取ったグローブを左手にしました。
口から、アークワンドを右手に取り、言います。
spit:「せっかくだから、ありがたく、借りておこう。
「おおっ」と威勢よく返すパーティメンバーが、歩き出します。
Ridgel:「あとは、入り口に向かって、前進あるのみ!
"hayate":「凱旋っ!!
しかし。
パーティ、プロンテラベンチの面々は、コモドの謎に迫りすぎたのか。
それとも、それすらも、
魔女の呪いなのか!?
Ridgel:「なにッ!?
"hayate":「バカな!?
aoiruka:「そういうオチ!?
Zeruk:「はじめて見た!!
Domi:「ありえないっ!!
Hisato:「これが、最後の敵!?
uxi-ta:「魔女の呪い!?
Grill:「なんにしても…
appi:「オチですかねー?
spit:「
キメラかよ!?
それは、この洞窟のボス。
魔法の力によって合成された魔獣、キメラ。
Domi:「ぶっ!
aoiruka:「なにー!?
"hayate":「ドミさんがやられた!?
Ridgel:「いってぇって!
aoiruka:「死ねる!死ねるー!?
appi:「ヒール!
spit:「くたばれ、魔女の呪いっ! ライトニングボルトー!!
spit:「よしっ。
ふんっと鼻を鳴らし、スピットは皆に向かって言いました。
spit:「
凱旋だ!
そういえば…
ここまで完全勝利な回は、
はじめてな気がします。
一行は胸を張り、コモドへと戻ってきました。
spit:「さて、んじゃ…
ちょいと帽子を直し、スピットは言いました。
spit:「プロに帰るか。
Ridgel:「ベンチですか?
"hayate":「っても、コモドにポタ屋なんかなさそうな…
appi:「カプラ転送サービスが、灯台までの転送サービスをしているはずですよ。
と、アピ。
uxi-ta:「灯台?
ウィータが首を傾げます。
appi:「はい。灯台から、イズルード行きの定期船が出ています。
spit:「船旅!
Zeruk:「船、乗ったことないです。
Ridgel:「船旅も、オツなもんです。
そして、一行はカプラ転送サービスを使い、ファロス灯台へと飛びます。
Hisato:「ひとりだけモロクに飛ぶとかいうバカをすればよかった!?
飛ばれても、皆、モロクはスルーしますが。
*14
Zeruk:「っていうか、船行きましょ、船。
はじめて船に乗るというゼルクさんは小走りに船着き場へと走っていきます。
砂浜の向こう、一隻の帆船。
『ルディルロス』
Zeruk:「おおー!
"hayate":「これで、伊豆まで帰るのか。
Ridgel:「いやいや、長い旅路だった。
Hisato:「ですねー。
乗船手続きを済ませ、一行はルディルロスに乗り込みます。
吹き抜けていくコモドの風が、皆の間を、潮の香りを乗せてすぎていきます。
船に乗り込んだ皆は、それぞれ思い思いの位置に陣取り、わいわい、楽しそうです。
「しかし、珍しいね」
不意にかけられた声に、スピットは振り向きました。
そこには、真っ白な帽子をかぶった、口ひげのおじさんがひとり。
一目でわかります。この人は、この船の船長でしょう。
船長は浅黒い顔でにっこりと笑い、対照的に真っ白な歯を見せながら、スピットに向かって言いました。
「灯台から、船でアルベルタやイズルードに帰るなんていう冒険者は、なかなかいないよ」
「そっすか?」
スピットは海風にとんでしまわないよう、帽子を片手で押さえ、口を曲げます。
「金がないんで」
船長は笑いました。
そして、皆を見回し、言います。
「これで、全員乗ったのかな?」
見回す先、ゼルクさんが甲板の片隅に置いてあったクレイモアトラップに触ろうとして、ウィータとドミさんに止められています。
あおいるかは乗っていたペコペコをどこにつなげばいいのかと、うろうろ。その後ろを、久人さんがついて、虎視眈々とペコペコを焼こうかとしています。
ハヤテさんは身軽にマストによじ登り、遠い海の向こうに手をかざして感嘆の声。下では、リジェルさんがマストをゆらしてやろうと、腕まくり。
笑って、アピ。
「みなさん、他のお客さんの迷惑になりますよ〜」
「他のお客は、いないがね」
船長は笑いました。
「そうなのですか?」
「よし、この船は、我々プロンテラベンチがジャックした!」
「シージャック!?」
「やぁ、そりゃあ大変だ」
大変という感じは全く見せず、船長は笑いました。
そして、船長は自分の帽子をなおしました。「じゃあ、海賊くんたち」
「我々に、命令を」
スピットは笑いました。
笑い、ちょいと帽子を下ろします。
にやり、口許を弛ませ、そして船首に向かって駆けていきました。
一段高くなった船首の舞台に飛び乗り、帽子をあげ、そして、
「行くぜ野郎ども! 出航だ!!」
言いました。
「おー!!」