studio Odyssey



ウェディングマーチ!




 いつものように、スピットは冒険から帰ると、下宿先の帽子屋の裏口から、こっそりと中に入りました。
 こっそり、には訳があって、そう言えば最近は全然お店の手伝いもしていないので、玄関から堂々と、という訳にはいかなかったからです。

「よう、スピット。帰ったか」
「って、見つかってるし!?」

 たいそう驚いて、スピットは思わず身を引きました。主人は笑います。
「たまには、店を手伝え」
「いや…なにかと忙しく…」
 とか言いつつも、今日もベンチでダベっていただけですが…

 主人は苦笑するように口を曲げると、言いました。

「手紙が来てたぞ」
「手紙?誰から?」

 主人から手渡された手紙を受け取り、スピットは差出人を確認します。
 と、そこにはAhsgrimmと、ギルドメンバー、グリムのサインがありました。

「グリムが手紙なんて、珍しいな…」

 小首を傾げ、スピットは手紙を開きました。


 そして、そこに書かれていた文に、目を丸くしたのでした。



結婚すんの!?


 そして、舞台はコモド、ファロス灯台へと、移ります。


 そう。

 夏の青空の下、グリムと玲於奈の、結婚式が始まろうとしていました。*1


ウェディングマーチ!


putiLeona:「んでは、そろそろはじめますかぁ。

 と、ぷち。
 ここはコモドの東にある、ファロス灯台。
 スピットは集まった皆を見回しながら、言います。

spit:「…ぷちが会場整理をしている。
appi:「ぷちちゃんも、大人になりましたねぇ。
miyuki:「おとなー。はぁはぁ…
aoiruka:「何か違う気が…

putiLeona:「新郎の関係者こっちがわー。新婦の関係者こっちに。

 と、ぷち。

irurur:「どっちの関係者でしょう?


 両方知ってるわけですが…*2

miyuki:「こっちってどっちだべ?
irurur:「両方知っているだけに…


どうどうと


miyuki:真ん中?



 激しく邪魔。


 さて、とにもかくにも、一行は整列をはじめます。

spit:「しかし、ついにグリムも結婚かー。
appi:「長かったですねぇ。

 と、話すスピットとアピの隣では、ギルドメンバーが、というよりは、深雪嬢が、ペットのさむそん*3を真ん中に出したりして、みんなから突っ込まれていたりしますが、スピットはそんなの無視です。

 スピットはぽつりと言いました。

spit:「婚約したのが…確か、いつだかに行った、炭坑の時だから…
appi:「え!? 婚約したのは、そんなに前なのですか!?
spit:「あー…ギルメンには言わなかったけど…えーと、グリムとアピと、アブとグリで行ったとき…

そういえば、そんな事もあったね

appi:「あー、あの、弱みの話ですか。

spit:「そうそう。


 ずいぶん前の伏線が!?*4


spit:「長かったなー。
appi:「ですねー。

 と、言い合う二人の向こう、ぷちが声を上げています。

putiLeona:「じゃはじめるよー。
聞こえますかー?




 ファロス灯台にいた皆が、彼女の声に…


aoiruka:「はっ!?そう言えば、アピさん、いつの間にプティなど!?
appi:「ふふ。スピさんに貰ったのです。
miyuki:「ドラゴン鍋。
appi:「だめー。
miyuki:「焼いたほうがいい?
appi:「たべないー。
miyuki:「あ、生で。しょーゆ、ちょちょっと。

 話を聞いてやれ。


putiLeona:「本日はお忙しい中お集まり頂きまして…


 ぷちは、進行を続けます。
 仕方がないので、スピットは言いました。


聞こえますかー?




spit:「あい、終了。


早!?

miyuki:「おつー。
irurur:「スピさん!?


 会話が交錯していますッ!?*5


putiLeona:「本日司会を務めてくれるのは…

 それでも続けるぷちは、えらい。

putiLeona:「マックスの所属ギルドのマスター、はねぺんさんです。*6


irurur:「パチパチ。
spit:「ぱちぱち。

「よっ、ナンパ師!
「羽だけに、軽いってことか。
karyo:「スピさんの敵?
Hanepen:「(;´д`)
irurur:「すぴさんのなかm(ry


putiLeona:「黙ってないと飛ばすぞー。


 強行!?

spit:「(がくがくがくー!?
putiLeona:「では、はねちゃんよろー。


 と、紹介されたプリーストのはねぺんさんが、すっくと立ち上がりました。

本日の司会進行
Hanepen:「新郎新婦両名の希望により、式は、参列者の皆様に誓いを立てる人前式となります。

spit:「人前式って、なに?

 ぽそりとスピット。隣のアピに聞きます。

appi:「宗教的なものをなしにした結婚式のことです。まぁ、グリムさんは暗殺者で、玲於奈さんは聖職者ですし…
spit:「なるほど。


Hanepen:「結婚式を執り行う際の注意事項ですが…

 はねぺんさんは続けます。

Hanepen:「式の最中の発言はお控え下さい。茶々入れ、突っ込み等はチャットにてお願いします。


なにぃ!?




 先に釘を刺された!?


spit:「(おのれ…やってくれたな…
appi:「(チャット発言ということは…今日は、SSの多い回になりそうですねー。



 裏事情はともかく。*7


Hanepen:「では新郎新婦の入場です。


 と、階段の向こうから、グリム、玲於奈がゆっくりと歩いてきました。


 スピットとしては、ヤジのひとつも飛ばしたいところでしたが、ぐっとがまんです。


 ヴェールを金色の髪の上に載せた玲於奈は、グリムの腕をとり、静かにスピットたちの前をすぎていきます。腕を取られたグリムは、心なしか緊張しているようにも見えました。
 ふたりは一番奥にまで歩いていくと、ゆっくりと皆の方に向かって、振り返りました。

 コモドの青い空を映す真っ青なの海が、ふたりの背中の向こうには、広がっていました。

玲於奈の頭に乗っているのは、ヴェールです

Hanepen:「それでは、只今より新郎、アースグリム、新婦、玲於奈の結婚式を執り行います。

 はねぺんさんの言葉に、グリムがゆっくりと続きました。*8


Ahsgrimm:「私たちは本日ご列席していただいたすべての方を証人とし…


どきどき…





 新郎サイドの証人は、いまいち信頼性がない気も、しなくはないですが…




Ahsgrimm:「私、アースグリムは玲於奈を妻とし、心を一つにして助け合い…


気が早いッ!


 まだ、実装されてません!?*9


Ahsgrimm:「そして…

すぱらしいんだか、なんなんだか




 レアもですか!?


Ahsgrimm:「この世界が続く限り、玲於奈を愛することを誓います。


 グリムの言葉が終わると、そっと、玲於奈がそれに続きました。


うんうん




Leona:「心を一つにして助け合い、ラグにも負けず…


マテ





 鬼ですかッ!?


Leona:「この世界が続く限り、アースグリムを愛することを誓います。

 ぱちぱちぱちと、仲間たちの中から、拍手が起こりました。
 それは、たくさんの人数ではありませんでした。
 仲間たちだけの結婚式です。
 何十人もの人が見守る結婚式では、ありませんでした。

 でも、見守るみんなは、ぱちぱちと、心を込めて拍手をふたりに送ったのでした。

 はねぺんさんが続けます。

Hanepen:「では、誓いを指輪に込めて交換を。

 グリムは銀の指輪をゆっくりと取り出しました。
 左手で、静かに、玲於奈の左手を取ります。

 そして、そっと、その銀の指輪を、彼女の薬指にはめたのでした。

 優しく微笑み返し、玲於奈もまた、グリムの左手を取りました。
 そしてその薬指に、銀の指輪をそっとはめました。


Hanepen:「それでは誓いのキスを。
 すばやく、はねぺんさんが祝福の祈り、エンジェラスを唱えました。

鳴り響く、祝福の鐘




 コモドの風の中に、鐘の音が、静かに響き渡ります。


誓いのキス

 そして誓いのキス。



きゃっ

 はねぺんさん?


Hanepen:「それでは、立会人を代表し、ここにお二人の結婚宣言を致します。




Hanepen:「では、両名の所属ギルドのマスターより、祝辞を賜りたいと思います。新郎の所属ギルドのマスター、spitさんお願いします。


 はねぺんさんに紹介され、スピットはすっくと立ち上がるやいなや…


こら

appi:「(す、スピさん!?

spit:「(だって、喋っちゃダメだってー。


Hanepen:「ど、どうぞ。

 はねぺんさんに促され、スピットはこほむと咳払い。

spit:「あーあー。


マイクかよ!?


 それがやりたかったのか!?


アピにつつかれるスピット



 怒られました。


spit:「えーと…まぁ、そんなわけで、おめでとう。長い祝辞も考えたけど、あれなので、ギルドを代表して、ひとこと。



祝辞!?

だけ!?







結論。



 スピットからネタを取ると、何も残らない。






Hanepen:「spitさんありがとうございました。続いて、新婦の所属ギルドのマスターkotiさんお願いします…



Leona:しょーりゃく。



 なぜなら、いないから!*10


Hanepen:「新郎よりみなさまへの謝辞です。


Ahsgrimm:「本日はお忙しい中、お集まり頂きまして有難うございます。ギルドマスターのspit、kotiさん(略)よりお言葉を頂き、大変うれしく思います。

はねぺんさん、おつかれさまー



Ahsgrimm:「これからも力を合わせて頑張って参りますので、よろしくお願いいたします。

うぉ



 あ。

うぉう!?







 あ…あえて、何も言いますまい…




Hanepen:「おまたせしました。

 待ちました!

Hanepen:「みなさま、両名をスキルで盛大に祝いましょう!


 当然です!

撃てー!!





撃て!




 そして…



さむそんー!?

 そんなオチ。*11





 スキル祭りも終わり、はねぺんさんが言います。

Hanepen:「それでは新婦、玲於奈さんによる、ブーケトスです。新婦、玲於奈さんの周り、2マス開けて女性のみなさん、お集まりくだい。


マテ






spit:「いよーし。
aoiruka:「腕まくりはどうかなぁ。


Hanepen:「次の幸せ者は誰だ!?


次の幸せものは…




 玲於奈の周りの女性陣が、彼女の手の中のブーケをじっと見つめ…

さむそん、ひとり勝ち


 マテ。



spit:「さむそーん!?
irurur:「オイシすぎる…
aoiruka:「さすがだ…*12



ぷちとかいるけど、気にしない方向で

 そして、玲於奈は手にしていた真っ白なブーケを、青い空に向かって投げたのでした。



はたして、ブーケを手にしたのは…


 あ。


「あー。
「おめ〜。
Leona:「おめー。
Hanepen:「おめでと〜。


さすが、佐倉家!


 やっぱ、お前か!?

miyuki:「栗毛きゅん…ハァハァ…


 今この瞬間、哀れな栗毛アコきゅんがまたひとり、生まれようとしていたッ!!





終了〜


「お幸せに。(´ω`)ノ

Ahsgrimm:「どうもです〜。
Leona:「 (〃∇〃)


 そして、結婚式は静かに幕を…




受け!?




 おろしません。

Ahsgrimm:「俺かヨッ!?


miyuki:「わくわく。
irurur:「今ここでお楽しみ?
miyuki:「をー。着衣プレイ?
spit:「あ、会話解禁なの?
aoiruka:「さぁ?



Hanepen:「え〜。新郎新婦より引き出物がございますので、順番に並んでください。
irurur:「何処に?
Hanepen:「新郎新婦の前にどうぞ〜。

こらこら


 たかっとる…

aoiruka:「ハイエナ。

Leona:「じゃ、落とすから、とってよー。


何故!?

miyuki:「をー。
「手錠プレイか。

これの意味するところは!? spit:「つか、何故!?

Leona:「3個づつね。
appi:「囚人服?
spit:「で、これを…

いるるん!?


spit:「なににっ!?
appi:「何に使うのですか?
irurur:「さぁ…
miyuki:「こすぷれ。
spit:「それは…


マテ




aoiruka:「危険な…
irurur:「キケンですね…

spit:「何故だー!?*13


 なんて、ギルドメンバーがやっている後ろでは、グリムと玲於奈にみんながプレゼントをあげています。
 「お?」とスピットはそれに気づくと、てくてくとふたりに向かって歩み寄りました。

spit:「実は、俺もプレゼントを用意してきたのだ!
Ahsgrimm:「珍しい…


spit:「グリムには、これ。

イシステイムアイテム


Ahsgrimm:「服従…
aoiruka:「グリムさんがつける、と。*14



spit:「玲於奈には、これ。


手綱って…



spit:「ばっちりだ!
Ahsgrimm:「手綱かよっ!?*15



spit:「あとは、真面目に、1こ。

「一年目の冒険者たち」参照


 それは、しおれないバラ。
 魔法の力にしおれない、永遠の愛の象徴なのでした。

aoiruka:「自分で使わないからって…(ボソ
spit:「そうとも言う。

 スピットは笑って言いました。



spit:「やる。

たまには…










spit:「おうよ。*16




 そして…


Hanepen:「では、二次会へー!





 待ってました!


 で。



カーニバルで、DOP倒したアサシンさん





 GH。*17


いい読みだ



 安心しろ!


 当然だから。




Leona:「パーティどうする?

 と、玲於奈。

Ahsgrimm:「へ?俺のパーティ?
Leona:「あー、スピさんは固定か…

spit:「/leave。


解散ですかッ!?

Leona:「いいの?

spit:「また組めばいいさ。ベンチはそう言うモンだ。
appi:「では、グリムさんのパーティに。



 そして…


ギリギリ

 みよ!この人数!!*18

Ahsgrimm:「では、古城2Fに!

前進(マーチ)!





「おー!




 そして一行は、古城2Fを…


おーい



 早いよ!?


irurur:「屍の山…
appi:「ある意味、あたりまえでしたねぇ。



 と、そこへ!



あれは…!?

irurur:「ぎゃああぁ!?
miyuki:「キター!?
aoiruka:「うわー!?


 深淵の騎士!


ちーん

spit:「たのしそうだな…
appi:「いるかさん死亡。

なむなむ

irurur:「グフ…


karyo:「ギルド別に見てみると、すごいですねー。
irurur:「たしかに。
spit:「っていうか、グリムだけー!?


 ええ。ギルド、Ragnarokで生き残っているのは。*19

spit:「ここはひとつ、グリム!我らのギルドの力を…



後ろー!?
玲於奈のみ!?

 そして…

キター!?


 ちーん。


Ahsgrimm:「全滅。
miyuki:「みんななかよく、なむー。
appi:「さすが〜。
karyo:「それにしても、すぐ逝けましたね。
Hanepen:「いい思い出に。_| ̄|○




やれやれ…




 壮観では、ある。



 そして二次会も含め、血痕…いや、結婚式は、幕を下ろしたのでした。


Ahsgrimm:「もっと強くなれるハズダー。
spit:「がんばれ、ちょーがんばれ。
appi:「妻を守る、夫ですからねぇ。
aoiruka:「誰かさんは即死してましたが。
irurur:「誰とはいわないが。


*1 と、言うことで、ギルメン初の、結婚話。
*2 でも、正確には、金髪の玲於奈なので、ギルドメンバーではなかったりする。
*3 ペットのオーク。さむそん。兄貴ネタがわかる人は、どれだけいますか?ちなみに、今回の影の主役は、さむそん。
*4 「魔導士と暗殺者と聖職者」参照。実は、婚約したのはこの頃の話。長かったなー。
*5 そんな、「はじめます」「終了」なんて、ネタじゃないよー。
*6 ハンターのマックス。マックスはギルドが違う。
*7 チャットウィンドウは、発言欄に出ない。
*8 ちなみに、発言とかは基本的にはそのままのものを使っていますが、ちょいと変えてあったりもします。
*9 実装されることは、決まってますが。
*10 落ちていたというオチ。開始前に、ぷちの手によって、強制撤去される…
*11 さむそん!?(ペットは勝手に喋るのです)
*12 伊達に、今回の影の主役ではない。
*13 ちなみに、とくに使い道はない。
*14 服従の腕輪は、イシスのテイムアイテム。
*15 馬の手綱は収集品。何故スピットがこんなものを持っているかについては、触れてはいけない。
*16 このしおれないバラは、「一年目の冒険者たち」で出てきたのと同じもの。なんとも伏線がたくさんですな。
*17 このアサシンさんは、カーニバルの時に玲於奈と一緒にドッペルゲンガーを倒したアサシンさん。
*18 はじめてと言ってますが、忘れているだけで、正確には2回目。パーティ、プロンテラベンチは、基本的にスピットだけ固定なのです。
*19 ほぼ、レベル順にやられていっていたりする。