spit:「で?
いつものベンチ。
スピットは頭をこりこりと掻きながら、電波の向こうのアピに向かって聞きます。
appi:「『で?』と、言われても…
spit:「いや、シンがギルド抜けたって話は、わかったさ。で?
appi:「えーと…えーと…その、理由を聞きに行ったりとか、連れ戻したりとか…
spit:「しない。
appi:「ええっ。
スピットは電波に鼻などをほじりながら、軽く返します。
spit:「風の噂じゃ、シン、自分のギルド作ったらしいしなぁ。俺ぁ、別に、それ潰してまで戻ってこいとか、そんな事はいわねーし。
appi:「そんな…スピさん、それでいーんですか?
spit:「俺たちゃあ、冒険者。何をするのも、何を考えるのも、それぞれの自由。
と、軽く言ったスピットの声に、アピが返しました。
それは、ちょっと、怒っているような物言いでした。
appi:「もーいいです!スピさんは、イタさんの時もそーでしたしね!!
そして…
spit:「…
Furiae:「誰がです?
uxi-ta:「痴話げんかみたいなものだから、ほっといてよし。
Furiae:「はぁ。
spit:「なんとも、こまったね…
ちょぃと帽子を直し、スピットは口許を曲げて見せました。
と、そこへやって来たのは、アーチャーのゼルクでした。
Zeruk:「こんにちわー。
spit:「お、ゼルクか。久しぶり。
Zeruk:「RO日記的には、ですが。
そう言うことを言うな。
Furiae:「ところで、あのー…
と、フリアイさん。
もじもじと、言いました。
Furiae:「スピさんに、お願いがあるのですが…
spit:「んあ?
Zeruk:「あ、スピ様、スピ様。こちら、どなたです?
spit:「ん?ああ、こちら、フリアイさん。お友達。
Furiae:「はじめまして。
Zeruk:「こちらこそはじめまして。スピ様の従者、ゼルクと申しますー。
spit:「んで、お願いって?
ちょいと帽子を直しながらのスピットに、フリアイさんは言いました。
こくりと小さく頷き、意を決したようにです。
Furiae:「ギルド、Ragnaokに、入れて欲しいのです。
uxi-ta:「ああー、なんだ、そんなことか。
あっさりとウィータは言いました。
uxi-ta:「いいんじゃない?ギルド、人数空いてるし。来る者は拒まず、去る者は追わず、でしょ?スピは。
Furiae:「そうなんですか?
Zeruk:「あ、それなら、俺も入れて欲しいなぁ…なんて…
spit:「…うむ。
こくりとうなずき、スピットは返しました。
spit:「ゼルクはかまわんが、フリアイさんはダメだ。
えっと目を丸くしたのは、フリアイさんだけではありませんでした。
uxi-ta:「スピが、
女の子を拒否するなんて!?
Zeruk:「男に走るのですか?
spit:「お前、入れてやらねーぞ?
Zeruk:「冗談です!冗談。ええ。何をおっしゃいます、スピ様。
乾いた笑いで言うゼルクに、スピットは目を細めます。
そして、ごそごそと鞄の中から、エンブレムを取り出しました。
spit:「ほらよ。
Zeruk:「おおー!?ギルド、Ragnarokのエンブレムだー!?
ぽいと軽く投げ渡されたエンブレムを受け取って、ゼルクは飛び跳ねんばかりに喜んでいます。
対照的に、フリアイさんは少しうつむきがちに、呟いていました。
Furiae:「ダ…ダメですか…そうですか…じゃあ、仕方がないですね…
spit:「…うむ。
腕組みをして、もごもごと口を動かすスピットを見、ウィータが言いました。
uxi-ta:「二人が入りたいって言ってるのに、片方しか入れないなんて、ダメマスターだ!!しかも、シン君が抜けたから、2つ余ってたのに!!
spit:「…うるせぇなぁ。
眉を寄せ、スピットは苦虫をかみつぶしたような表情のまま続けました。
spit:「今、ギルド拡張するんだから、黙ってろよ…
帽子を下げて、むにむにと、スピットはギルドマスターだけが使えるギルドスキルを使い、ギルドの加入人数を増やす手続きをしていたのでした。
*2
spit:「…これで、あと3人入れるな。
ふいと顔を上げたスピットが呟きました。
Furiae:「じゃ…
ぱあっとフリアイさんの顔が明るくなりましたが、スピットは「ちっちっち」と、左手の人差し指を立てて振りながら言います。
spit:「でも、フリアイさんは、まだダメだ。
uxi-ta:「じゃあ、何のために拡張したの。
spit:「フリアイさんを入れるため。
uxi-ta:「自分で何言ってるか、わかってる?
Zeruk:「スピ様、熱でもありますか?
Furiae:「何か、条件でもあるのですか?
spit:「別に。
スピットは帽子を直しながら、言いました。
軽く。
spit:「フリアイさん、ギルドもう入ってんじゃん。うちに入るなら、ちゃんとそのギルドのマスターに話を通さなきゃ、うちには入れられない。
Furiae:「あ…
フリアイさんは自分のエンブレムを見て、小さく声を上げました。
実は、フリアイさん、既にギルドに入っていたのです。
Furiae:「あ、このギルドは、抜けます。
もちろん、ギルドに加入している人は、自分の意志で簡単に脱退する事も出来ます。
*3
しかし、
spit:「そんなんじゃ、ダメ。
スピットは言いました。
spit:「俺は、これでもギルドマスターだからな。そのギルドにもマスターがいるだろ。その人にちゃんと脱退の理由を話して、そんでからでなきゃ、うちには入れられない。
Furiae:「…わかりました。
spit:「まぁ、拡張つかっちったし、予約席はあるから、気長に…
Furiae:「マスターと連絡とれました。
spit:「
はえぇよ!?
Furiae:「いえ、このギルド、身内ギルドなので…
そして、ほどなくして…
spit:「ようこそ、ギルド、Ragnarokへ。
にやり、スピットは口許を曲げました。
Furiae:「よろしくお願いします。
Zeruk:「同じく、お願いします。
*4
uxi-ta:「でも、別に拡張使わなくても、2人なら入れられたんじゃ?
spit:「アピにぶーぶー言われるよりは、拡張した方がマシだ。
uxi-ta:「?
spit:「んで、ゼルクは、なんか用があって、ベンチに来たんじゃないの?
Zeruk:「ああっ、そうだ!忘れてました!!
ぽんっと手を打って、ゼルクは言いました。
Zeruk:「
ハンターに転職しようと思って。
spit:「皆の者!フェイヨン、ハンターギルドに集合せよ!!
「了解!
ギルド電波から、ギルドメンバーたちの声が返ってきました。
spit:「いさ、転職!
しかし…
一行はそこで、ハンターギルド職員に、驚愕の事実を知らされたのでした。
「ハンターに転職するためには、
転職試験を…
spit:Zeruk:「
転職試験んっ!?
そうです。
冒険者たちが増えすぎた今、すべての二次職ギルドでは、転職の際にその実力を試す、試験をすることになっていたのです。
*5
spit:「いつの間に…
Grill:「時代は変わったネ…
そんなこんなで、軽いマナー関係の質疑応答を終えたゼルクに課せられた使命は「かたい皮9個、木屑、緑ハーブ3個を持ってくること」
レッツ収集!
とは言っても、そこはそれ。
二次職もりだくさんのベンチメンバーです。
苦戦することなどなく、
さくっと収集。
再びハンターギルドに戻ります。
spit:「なんだ、簡単じゃん、転職試験。
Zeruk:「ですねー。
「では、ハンター転職前に、フェイヨンにいるハンターギルドマスターに挨拶に…」
spit:「
おつかい系クエストかよ!?
Zeruk:「そ、そんな人には会ったことがない…
*6
さすが暇人。
Zeruk:「次は、アーチャーギルドのマスターに…
詳しすぎ!?
Leona:「ナンパしたアチャさんの転職でも、手伝ったの?
Grill:「なる。
spit:「バカな!?
挨拶をすませたゼルクは、そのまま最終試験を受けることになりました。
ついに、実技試験です。
素直に待ってろよ!?
ほどなくして、ゼルクが戻ってきました。
Zeruk:「ふー。
spit:「おー、クリアしたかー。
Zeruk:「しました!これで、念願のハンターに…
spit:「あ、その前に、もっかい話して、慧眼もらってこいよ。それがないと試験受かったことにならないから。
Grill:Leona:「
詳しすぎ!?
実技試験をクリアしたことを報告し、ゼルクは転職のために必要な証とも言うべきアイテム、慧眼を手に入れました。これで、あとはハンターギルドに行き、転職するだけです。
Leona:「ワープポータル!!
速っ!?
spit:「おめでとー。
Furiae:「おめでとうございますー。
Grill:「あめめー。
Leona:「おめー。
そして、魔法の炸裂は、静かに消えていきました。
spit:「いよーし!それじゃあ…
spit:「
逝くか!
当たり前ですよ?
spit:「レッツ、初死体!
Zeruk:「初死体ー!?
そして一行が向かったのは…
グラストヘイムは、カタコンペです。
Furiae:「あの〜…レベル上げをしてあげようという話では、ないのですか?
spit:「いーや。こうして転職出来たのは、みんなのおかげということで、初死体披露ですよ?
Grill:「儀式だネ。
Leona:「踏むのです。
spit:「そうそう。
spit:「
新品のバッシュみたいなモンだ。*7
なんか、違くない!?
Zeruk:「がくがくがく…
Leona:「大丈夫、支援なしなら、ころっと。
Zeruk:「ナシなのー!?
Grill:「まぁ、なに…
spit:「支援なしなら、みんなもコロっとー。
Zeruk:「ぎゃあー!レイスがキター!?
spit:「うおぅ!? いきなりこっちくんな!?
おや?
spit:「ふー、なんだ、突然こっち来たな…おい、ゼルク…
と、レイスを片づけたスピットは振り返りました。
わざとらしいですよ!?
Leona:「ふみふみ。
Zeruk:「ああっ!踏まれてる!?
spit:「儀式みたいなモンだ。
Grill:「じゃ、儀式も終わったし、帰ろっか。
Leona:「ワープポータルー!!
はい、
お約束。
spit:「なんでゼルク転職の回の話で、オチは俺の死にオチなの!?
Zeruk:「さすが、スピ様…
Grill:「オイシイね。
*8