studio Odyssey



spit、appiを賭ける!?




 今日も今日とて、プロンテラベンチ。

 てくてくとスピットが冒険にでも行こうかとベンチに立ち寄ると…


spit:「あ。
appi:「あ。

karyo:「?

spit:「おー、アピ。ちょうどいいや。ちょっと狩りにでもいくか?

appi:「…今日は予定があるので、失礼します。
spit:「あ、そーなん?
karyo:「あれ?アピさん、さっき、暇だって…
appi:「人と会う約束をしていたのを思い出しました。行ってきます。
spit:「ほーい。

 と、スピットはベンチのいつもの位置に腰を下ろします。
 対照的に、アピがすっくと立ち上がり。小走りにとことこと噴水広場の方へ、走っていきました。

 その背中を見送った迦陵ちゃんは、スピットに向き直ると、

karyo:「何かあったの?

 聞きます。

spit:「んー?気にすんな。ちょっとすねてるだけだ。

 ちょいと帽子を直しつつ、スピットは口許を曲げました。
 迦陵ちゃんは小さく頷きながら、ぽつり。

karyo:「スピさんがナンパでもしてるのを見て、怒っていると、そういう感じですか。
spit:「何故!?
karyo:「しそうだし。

spit:「そんなんじゃねーのよ。

 帽子のつばをおろして、スピットはベンチに寄りかかりました。「あー、今日も、いい天気だ」なんて、ぽつり。
 その横顔を見ていた迦陵ちゃんは、ふと、にやりと口許を曲げました。

 そして、言いました。

karyo:「スピさん、また、賭けしません?
spit:「あー?またかよ?

karyo:「今度は、私が負けたら、前のスピさんの『負けぱんだルック』をするということで。


spit:「乗った。


 二つ返事で、OKです。
 しかし…

karyo:「ただし、スピさんが負けたら…

 迦陵ちゃんはこっそりと、スピットに耳打ちしました。


karyo:「…で。



spit:なにょ!?

 スピットは目を丸くして迦陵ちゃんを見ました。
 しかし、迦陵ちゃんはにやりと笑いながら言うだけです。

karyo:「あれー?逃げるんですか?逃げるんですか?ま・さ・か・ギルドRagnarokのマスターともあろう人が、逃げないですよねー?




spit:「く…

karyo:「では、決戦は次の日曜日に。




karyo:みんながいる前で。



 そして…

 その決闘の話は、瞬く間にベンチの面々の元に広がったのでした。

「スピさんと、迦陵ちゃんが、決闘するって?」
「迦陵ちゃんが負けたら、『負けぱんだ』らしい…」
「でも、スピさん負けても、別に面白い話ってわけでもないしなぁー」
「いやいや、それが実は、スピが負けたら、アピに…」
「マヂで!?」
「アピさん、賭けの対象なんです?」
「本人知ってるの?」
「知らないらしい」
「それは面白いですね!スピ、負けろ!!」
「ってゆーか…」


「総力を挙げて、迦陵ちゃんの応援だ!!


おおーッ!!



 今、ベンチ最大の戦いの幕が、切って落とされようとしている事を、アピは知るよしもなく…


spit、appiを賭ける!?


決戦当日のベンチ

 そんなわけで、決戦当日です。


spit:「そろそろ、招集かけるかな。

 スピットはギルド、パーティに聞こえる電波で、皆に呼びかけました。
 ぞくぞくとベンチに、いつものメンツが集まってきます。*1


Max:「迦陵ちゃん、もってきたよー。
karyo:「ありー。

Zeruk:「…なにか、渡してますよ?
spit:「…なんだろう。


Max:「これで、MDef装備はばっちりだね。


spit:「対魔法特化ー!?*2

Furiae:「迦陵さん、頼まれていた白ポです。*3
karyo:「ありー。


spit:「オマエら、何結託してんだッ!?

karyo:「勝つため。
Max:「迦陵ちゃんが勝たなきゃ、面白くないし。
Furiae:「年貢のおさめ時というやつです。

ribbean:「スピさん。
spit:「ん?

心おきなく





spit:「おきなく?

みんなの願いですよ




spit:「みんな敵かよー!?
Zeruk:「だ、大丈夫です、スピ様!


弔いかよ!?


 それは死んでる。


Rove:「土葬火葬氷葬雷葬、承っております。
ribbean:「みんなの期待を、一身にせおって、ぜひに。
spit:「がくがくがくー!?



Rove:「では、スピさんに、これを渡しておきましょう。


蝶の羽根




 敵前逃亡用!?*4


spit:「ありがとうロブ! これで、いざというときには、脱走出来るね!!

Rove:「ええ、同職として放っておけない…



Rove:負けるの、目に見えてるし。




 こいつも敵だ。





Max:「逃げたら、殺すけどね。

spit:「がくがくがくー!?
Zeruk:「今、本気の目が見えました…


 と。



 そこへ…



appi登場


karyo:「キター。

spit:「げ…
Ahsgrimm:「げ…って、なんだよ。


いいタイミングです


spit:「陰謀めいたものを感じる…


 まぁ、全部陰謀で出来てるわけだけど。



spit:「く…

karyo:「ふ…

 今、火花散る戦いが…


spit:「俺は…勝つ!
karyo:「賭け、ちゃんと覚えてますね?



 切って落とされる!?





appi:「賭けなのですか?
Leona:「です。
karyo:「スピさんが負けたら…

その賭けの内容とは!?




Leona:「内緒のが楽しいかも。

appi:「?


spit:「ま…

大きく出たな!!




karyo:「フフリ…

ribbean:「ま、青ジェムはたくさんありますから、スピさん…





ribbean:心おきなく死ね。

spit:「イヤダ!!

Zeruk:「大丈夫ですよ!スピ様!!


だから、死んでるって!






 結局負け戦!?





 そして…



今、運命の決戦が…




 PvP、フェイヨン!!



spit:「…お祈りはすんだのか?
karyo:「スピさんがでしょう…

 吹き抜ける風が木々を揺らすその音が、しんとしたその場所にいた皆の耳に届きました。

karyo:「では…開始の合図は、アピさんで…
spit:「いいだろう…

appi:「それでは〜。


カウントダウン!



うぉぅ!?







Furiae:「圧倒的というか…
Zeruk:「先なむ…


うーむ…はやい…



 かんかんかーん。*5






 そして、ベンチ。


karyo:「フ…
Leona:「フ…


spit:「勝ち誇っていらっしゃる…


karyo:「さて、ではスピさん、負けたので、やってもらいましょー。
Leona:「覚悟はできてるよね?



思い出してはいけない!?


 出来てません。


karyo:「玲於奈さん、リカバリー。
Leona:「はい、じゃー、アピさんは、スピさんの横へ。
spit:「スルーかよ!?


appi:「なんです?

 と、玲於奈に手を引っ張られたアピが、スピットの隣に座りました。
国家規模の陰謀ですよ!?


spit:「くそ!今のうちに、逃げ…


さすがだ…



NERV:「アイスウォール!!


spit:「ネル!貴様、いつの間に!?
NERV:「フフリ…*6


 と、そこへラバがぷらぷらとやって来たではないですか。

luvas:「よー、なんか楽しそうなことやってんな。
spit:「ああぁ、ラバー!!


埋まるspit





spit:「みんなが虐めるんだー!

無論、即答






 素晴らしい仲間意識。



karyo:「さーて、では、みんな、壁際にせいれーつ。
Leona:「並べー。

Kagetsuki:「イッツア、グランドフィナーレ!!
NERV:「コソコソ。
DreamMaker:「|_・)ジー

並ぶ奴ら





appi:「なぜ整列?

刮目




 さぁ、グランドフィナーレ!


spit:「あー…

 スピットは帽子に手をかけると、むにむにと口を動かしました。
 そしてその帽子のつばをちょいとおろし、言います。

spit:「えーと…いやまぁ、なんだ…いろいろとあったわけだが、その…俺とアピの仲が悪くなると、なんだ、ベンチメンバーもその、気にするというか、なんだ…

karyo:「ぶー。
Leona:「違う。スピさん、飛ばすよ?
spit:「うるさい、黙れ。
karyo:「後ろ向いててあげるから。
DreamMaker:「向かないけど。
Zeruk:「(ワクワク

spit:「ま、まぁ、なんだ…こいつら、いつも通りにこうしてる訳だし、まぁ、機嫌を直してくれ、と。
appi:「別に、機嫌悪くはしてないですけど…

Leona:「っていうか、飛ばすよ?
karyo:「スピさん、さぁさぁ!
shintisu:「(なんか、あんまりだ…
Zeruk:「さぁさぁ。
Kagetsuki:「(/ω\)
luvas:「で、負け犬が何するの?
DreamMaker:「見てのお楽しみ。
NERV:「d(-_-;) しー



spit:「い、一回しかしないからなッ!

 スピットは帽子をちょいとおろしてその表情を誰にも見られないようにして、言いました。
 そして…


/ちゅ





 ちゅ。っと。




spit:「ゲフ…

 ぷいとそっぽを向いたスピットに、何がなんだか、よくわからないアピ。

karyo:「おめー。
NERV:「おめでとー。
shintisu:「おめー。(何
luvas:「おめー。

 はやし立てる、いつものメンツです。

Kagetsuki:「よし!連続写真(σ・∀・)σゲッツ!!
Furiae:「おめでとうー。
Rove:「おめでとうございます。
DreamMaker:「おめー。
Leona:「あれ?アピさんお返しなし?

appi:「え、えぇ?

Kagetsuki:「みなまでいうなですよ…スピさん…
spit:「なんじゃ?

 すっくと、影さん、立ち上がるやいなや…


ウェディングドレスー!?



Leona:「ドレスー。*7

spit:「いらんいらん!持ってカエレ!!

karyo:「どうぞアピさん、ご自由に持っていってください。
appi:「はい。


ウェディングドレス 1個獲得


spit:「だからこんな賭け、したくなかったんだよぉぉぉおぉ。


karyo:「ふふふふ…

 迦陵ちゃんはにやりと笑います。
 笑いながら、言います。


karyo:「ベンチだねぇ。

karyo:ひといっぱいあつまってるねぇ。



実は、ヴェールもあったりします


luvas:「だね。

Kagetsuki:「まあ予想はできるな…今後の展開…

Zeruk:「ですね。



spit:「こほむ…

 と、スピットは軽く咳払いをしました。

Kagetsuki:「スピさんシャラップ。

 と、玲於奈がスピットとアピの前に立ちました。

ま、まさか、この流れはー!?








spit:「フ…


 すっくと立ち上がると、スピットは帽子をおろし、口許をにやりと曲げて見せました。
 見上げるアピに、目配せします。

 と、気づいたアピもこくりと小さく頷きました。




 それではみなさん、生チャットログでお楽しみください!



*Leona* : さて、
appi : えと、あの・・・
F:\Program Files\Gravity\RagnarokOnline\ScreenShot\screenloki257.jpg is Saved.
screenloki257.jpg
******** : ODのポタないでつか〜?
spit : Rove、今、俺は、同職のお前に、ありがとうと言おう
フリアイ : すいません、取り込み中です
F:\Program Files\Gravity\RagnarokOnline\ScreenShot\screenloki258.jpg is Saved.
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******** : ごめん〜
*Leona* : ODナイデス
Rove : なっ。・
F:\Program Files\Gravity\RagnarokOnline\ScreenShot\screenloki259.jpg is Saved.
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shintisu : シッシッシ
Rove : まずい。
F:\Program Files\Gravity\RagnarokOnline\ScreenShot\screenloki260.jpg is Saved.
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ゼルク : 煤i ̄□ ̄; )
影月 簸様 : む
spit : フ…
******** : であ〜^^
ゼルク : 何をやっておるかシン君
F:\Program Files\Gravity\RagnarokOnline\ScreenShot\screenloki261.jpg is Saved.
screenloki261.jpg
影月 簸様 : 受け入れた?
karyubinga : さて、
appi : まあ、何を考えているかわかった気がします
spit : おまえら
影月 簸様 : 語るのであればどうぞ
spit : Roveが、この戦いの前に、
karyubinga : むしろ
ゼルク : 語ってください
Rove : とうとう人を捨てますか、あの禁断の道具を?
*Leona* : 新郎spit新婦appiの式を執り行います
spit : 俺にくれたものを、覚えているか!
F:\Program Files\Gravity\RagnarokOnline\ScreenShot\screenloki262.jpg is Saved.
screenloki262.jpg
ゼルク : お?
ゼルク : …
*Leona* : 黙れ
karyubinga : ぉー
NERV : GH修道院で
フリアイ : おー
spit : イヤダねっ
appi : じゃ、スピさん。せーので
F:\Program Files\Gravity\RagnarokOnline\ScreenShot\screenloki263.jpg is Saved.
screenloki263.jpg
フリアイ : いいところに
ゼルク : あおさんナイスタイミング
spit : せーの

ふたりの暗黙の了解








 そうです。


 覚えていますか?








蝶の羽根





 そうそれ。


 それは、セーブポイントへ一瞬でワープするアイテム。


 むろん、ワープポータルを持っていないアピも、標準装備です。



 にやりと皆に向かって笑ってみせると、二人は同時に、その蝶の羽根を使ったのでした。


 それはもう、その場にいた誰もが驚きに目を丸くするほどに絶妙な、寸分違わぬ、同じタイミングで。






spit:「ふははは!

 ギルドメンバーに向かって、スピットは高笑いに電波を飛ばしました。

Zeruk:「ドコ!?
aoiruka:「!?(゜Д ゜ ) 入るなり、なんかやってる!?

spit:「あーばーよー。
appi:「逃亡完了ですね。

luvas:「にげやがった。
Furiae:「スピさん逃げたー。


spit:「よーし、アピ!
appi:「はいっ!

spit:「南門から、逃亡だっ!!
appi:「はいっ!いっそ、地の果てまで逃げてみましょう!

spit:「…いや、なんかそれも違うような。


karyo:「おのれー!逃がすかー!!



 そして今回は続くのです!!*8


*1 そういえば、webのBBSでも告知したな、これ。
*2 MDef。魔法防御。spitは魔法攻撃が基本なので、通常装備よりも魔法防御をつけた方が強い。ちなみにMDef装備はウェディングドレス、ヴェール、ガラスの靴等がある。花嫁衣装で決闘かよ!?
*3 白ポ。白いポーション。HP回復アイテムの中で最も回復するポーション。
*4 蝶の羽根。セーブポイントに一瞬でワープするアイテム。
*5 セイフティーウォールを張れていない時点で、負け確定な気も…
*6 アイスウォールに埋め込まれると、方向によっては歩き出せなくなる。
*7 っていうか、MDef装備のウェディングドレスとか、ヴェールとか、準備いいなオマエら!?
*8 次回、「spit、appiの逃避行!?」に続く!ちなみに、後日談。「なんで蝶で飛ぶってわかったの?」と言うベンチメンバーの問に答えたアピ。「なんとなく」と。実は、Wisで打ち合わせとか、全くしていなかったのです。SS見ればわかるように、そんな暇もなかったし。「じゃ、なんで同時に飛べたの?」「『せーの』とスピさんが言ったので、消えるタイミングだと思ったからです」つきあい長いと、暗黙のうちにわかるものなのですな。