studio Odyssey



娘さん、よーく聞けよ!





 その台詞が何度目かなんて聞くのは、ナンセンス。


幾度となく繰り返される台詞


 長い髪を後ろに束ねた魔法士の女の子が言います。

「ままに拾われたから、ぱぱなのー。

 「ほう」と唸ったのはヘリオス。


heriosu:「おかぁさんは誰だろう…

早いなっ!?



spit:「(即答ダッ!?

納得!?
疑いという言葉はないのか!?



 さぁ、初っぱなからキてます。


spit:「まぁ、それはそれとして。

 スピットは帽子を直しながら言いました。

逃げた!?


娘さん、よーく聞けよ!


spit:「あー、てすてす。

 スピットは電波を飛ばします。

appi:「はい?

 と、アピが答えました。

spit:「おお、繋がった。
appi:「スピさん、どうしました?

spit:「うむ、単刀直入に聞こう。

 スピットはベンチ前にいる魔法士の女の子を見ながら言います。

spit:「身に覚えのない女の子にパパ呼ばわりされているわけだが…



appi:よくあることでは?


 そいつはいっちゃあならねぇよ、お嬢さん…


spit:






spit:「言われてみれば、どうして俺はそれでアピに電波を飛ばすのだ?


 納得する男。*1



spit:「あー…違う違う。

 スピットはぶんぶんと頭を振って、電波で言いました。

spit:「この子、アピを『まま』だと言っているんだ。そうそう。
appi:「私ですか?

spit:「知ってる?
appi:「さぁ? でも、スピさんを『ぱぱ』だと言っているのですよね?
spit:「うん。
appi:「スピさんは、知らないのですか?
spit:「うーん…記憶にないなぁ…


 『ぱぱ』と『まま』のどこかおかしい会話。


appi:「その子のお名前は、なんというのでしょう?
spit:「しらん。


 聞け。


spit:「時に、娘。名を名乗れ。

 と、スピットは眼前の魔法士の女の子に聞きます。

Liede:「リーデ。

 ぽつりと返す彼女の名前を、スピットはそのまま電波で飛ばします。

spit:「リーデだって。
appi:「あー、リーデちゃんなら知ってます。


spit:まてまてまて!! 俺は知らないッ!?


heriosu:「何やら、スピさんがステキな慌てっぷり。
Liede:「ぱぱ?

appi:「リーデちゃん、どこかに行ってしまったと思ったら、ベンチに行っていたのですね。安心しました。
spit:「お前、いつの間にこんなおっきな子が…

appi:「2、3日前くらいでしょうか?


spit:…思いっきり、自然法則無視だな、ベンチ。


appi:「拾った卵の中から…
spit:「わかった。もういい。慣れた。そしてそれは、インプリンティングと言う。覚えておけ。*2
appi:「よくわかりませんが、わかりました。

 会話を終えて、スピットはリーデを見ます。

spit:「リーデは、なんの魔法が使える?
Liede:「かみなりのまほう。

spit:「…真似スンナ。
Liede:「ままのぱぱだから、同じにした。


spit:ままのぱぱとか言うな。


 聞き手によっては、誤解される発言です。*3

 ともあれ、スピットはちょいと帽子を直しながら、言いました。

何はなくとも、レベルが大事


Liede:「うーん…もうすぐ転職出来るし…もう一人前。

spit:「一人前とは、片腹痛いわ。
Liede:「でも、サンダーストームも10だよ。


spit:「どうしてお前は、そう、使えない魔法をとるのだ…
Liede:「雷魔導師だから。
spit:「いやいやいや…まだまだだろ。よし、ヘリ。レベル上げだ。行くぞ、つきあえ。
heriosu:「俺!?
spit:「無論。




spit:「一人前かどうかはともかく、さくっと独り立ちさせる事に関しては、速い方がよい!!

heriosu:「…デートに差し支えが?
spit:「むろ…いや、なんでもない。
Liede:「?




 そんなこんなで、一行がやってきたのは…

船でコモドへ

 コモド。

spit:「風魔法ならば、ここで、ワニを一気にぶちのめし、レベルアップだ!!

heriosu:「…ワニに誰が堪えるんだろう。
spit:「…

heriosu:「指さされたッ!?


 ともあれ、一行はココモビーチへ。
 早速と、弱ワニを見つけたスピット。

多分、痛いよ

 ぺちっと殴ってみます。

spit:「おおぉぉ!? いてえいてぇ!?

 弱ワニと言えども、後衛のスピットにはなかなかの攻撃力です。

spit:「ヒールしないと死ぬ!?
heriosu:「生暖かく見守る…
Liede:「見守る。


spit:「お前はライトニングボルトを撃て。っていうか、ヘリ、代わってくれ。死ぬ。

heriosu:「痛そうだなぁ…


 入れ替わり、リーデが弱ワニに魔法を撃ちます。

それが全力かッ!?


spit:「…弱すぎるぞ。
Liede:「Dex上げたから。

spit:「…さーて、帰るか。
heriosu:「早ッ!?


 とは言っても、せっかく来たので、一行は弱ワニをちまちまと狩ります。

 ふと、リーデが、

Liede:「そういえば…
spit:「ん?


Liede:「ぱぱは、何人子どもいるの?

心外なのか…?

heriosu:「スピさん、やり手だから…
spit:「人聞きの悪い事を…

Liede:「ルキノおねーちゃんに、わたしに…

spit:「何故、そこでルキノが出る!?
heriosu:「ルキノの母親、誰ー?


spit:「奴は、俺を陥れようとしているに違いないッ!!







rukino:「へっくし!!

suteinu:「ルキノっち、風邪ですかー?
rukino:「いや…誰か噂してるのかな…
heppoko:「言われた材料、とってきましたー。
rukino:「あー、そこ置いておいて。
heppoko:「ルキノさん、『でんたく』の新しいの作ってください。桁が足りなくて、計算できないのです。
rukino:「あー、そうだねぇ…へっくし!!
suteinu:「ルキノっち、風邪ですかー?
rukino:「誰かが、私の悪い噂してる…まぁ、想像つくけど。
suteinu:「いぬには、心当たりが多すぎて、わかりません。
rukino:「ご飯抜き。
suteinu:「すていぬ、全力でお手伝いさせて頂きます!!




spit:「我が財政が、奴のせいで、どれだけ切迫しているか!!

heriosu:「あー…いぬも増えましたしね…
Liede:「ぱぱー、お腹すいたー。
spit:「おおおぉぉ!? 貴様、魔法士のくせに、Int1か!? 殴るぞ!?殴るぞ!?


 そんなこんなで、ちまちま狩りを続けます。

 ヘリオスがタゲをとって、リーデが魔法を撃ち、スピットがたまにヒール。
 そんな感じで移動狩りを続けて行くと…
spit:「あれ?こっちに行くと、海岸線の方か…
Liede:「海だー。
spit:「海に行くと、ラッコが…

 つぶやいたスピットの声は聞こえなかったのか、てくてくと歩いていくリーデ。
 スピットは「ちっ」と舌打ちをして、そのリーデの前に出ました。

spit:「いてぇ!?

 即座にヘリオスがスピットと位置を入れ替わります。

そりゃ、弱ワニより強いし



heriosu:「いやと言いながら、何故行きますか。
spit:「リーデでてくてく行くから。
Liede:「らっこ、こいやー。

heriosu:「ラッコなら、娘さん、消し飛びますよ?
spit:「うむ。


「しかたないさ、ぱぱの子どもだもん」とLiedeは言う




spit:「なでられただけで、リーデなら死ぬな。

 さっと、迫るラッコとリーデの間にスピットは滑り込みます。





HPが半分消えた!?


spit:「いてぇ!? 今、すっげー痛かったぞ!?

heriosu:「プロボックー。
spit:「やめろおぉぉぉ!?


 自分も消し飛びそうです。


Liede:「いつの間にか、らっこ狩り。

 になった一行は、砂浜へ続く階段を降りていきます。

 と、そこにはラッコこと、シーオッターが数匹、待ちかまえていたのでした。

spit:「おおぅ!?
heriosu:「複数は、死ぬ!?

 ヘリオスが前に出て、らっこのタゲを集めますが、その高い攻撃力にヘリオスのHPがどんどん削られていきます。スピットはセイフティーウォールを出してヘリオスを守ろうとしますが…

heriosu:「お先〜。
spit:「うお!? マジか!?

 タゲのはずれたらっこが次に狙うのはリーデ。
 スピットは素早くセイフティーウォールを唱えます。



 自分に。


Liede:「見捨てられた!?
spit:「いや、だって、一撃で死ぬじゃんよ…

 案の定、リーデは一撃でぱたり。

spit:「やれやれ…

 スピットは小さくため息を吐いて、ちょいと帽子を直しました。

spit:「娘さん、よーく聞けよ。

 そして杖を振るいます。

spit:「これくらいが出来て、一人前の雷魔導師と言うのだッ!!

 言うまでもなく、らっここと、シーオッターの属性は水。
 風魔導師のスピットにとっては、恐れるような敵ではありません。

 素早く雷魔法、ユピテルサンダーを連続で唱え、シーオッターを自分を守るセイフティーウォールに接近させないようにして、個別に撃破して行きます。

ばーん!


spit:「とまぁ…こんなモンだ。




 帽子を直して、スピットはにやり。



あと一撃で死んでいた…






 本音。



heriosu:「本音を言わなければ、かっこよく終わったのに…
Liede:「よーし、雷魔法を極めるぞー。
spit:「やめとけ…

 苦笑しながら、スピットは道具袋に手を突っ込みました。

spit:「とりあえず、弱ワニでレベルアップして、転職してから…









spit:「あ…





なんたる失態!!


 イグドラシルの葉は、戦闘不能になった仲間を蘇らせる事ができる、大樹、イグドラシルの葉です。

 いつもはスピット、これを必ず5枚は持っているはずなのですが、今日に限って、道具袋の中に入っていませんでした。


heriosu:「俺も持ってきてないですよ?
Liede:「わたしも持ってるわけがない。

spit:「うむ。



spit:「んじゃ、仕方がないから、帰るか…

 スピットは道具袋の中に手を突っ込んで、蝶の羽を探します。
 と、ちょうどセイフティーウォールが切れました。






spit:「…あ。





なむー…





 一撃。




spit:「何故だ!? 何故人が別の事をしている時に、隣に突然湧く!?

heriosu:「仕様です。


Liede:「前言撤回。


しかも、向こうはTS狩り





 落としどころを知っていると言ってあげなさい。



*1 そんな慣れは嫌だ…
*2 インプリンティング。すり込みのこと。卵から生まれた雛が、初めてみた動くものを親だと思いこむあれ。Liedeは卵から生まれたとか、キャベツから生まれたとか、諸説ぷんぷん…
*3 パパの意味合いがかなり違うぞ!?

**今日の小ネタ
刺さってる刺さってる!?