studio Odyssey



あとがき


 さて、いかがでしたでしょうか。Ragnarok onBook。

 この物語は現在、studio Odysseyで、一部に好評連載中のRO日記こと、Ragnarok Onlineプレイストーリーの小説版です。
 そもそも、このお話を作ろうと考え始めたのは、たしかベータ2が始まるか始まらないかという頃だったと思います。

 Ragnarokというゲームをベータからプレイし続け、このゲームは面白いと感じ、よし、このゲームで二次著作物を作ろうと考えたのは、まぁ、簡単な流れでした。

 しかしまぁ、ご存じのようにRO日記はすべてアドリブの世界。
 誰が何を言うか、誰がどんな行動をするか。
 今日はベンチ前に誰がいるか、誰が現れるかなんて、すべては偶然の中から生まれます。

 その偶然の中から生まれたストーリーの縦糸を、うまく紡ぎ、RO日記内にも、様々な伏線を張り、そしてこの物語は生まれました。
 一部、破綻している伏線なんかもありますが、まぁ、それはご愛敬ということで。(アドリブだし、RO日記書いている時に、こっちの事、考えてないし)

 さて、この物語の中には、何人かのキャラクターが登場します。

 主人公はRO日記でも主人公のスピット。
 彼はみなさんもご存じのように、現実にRagnarok Onlineの世界、lokiサーバの住人です。正しくは、spit。
 カタカナでスピットは、別の方がアカウントを取っているらしく、僕ではありません。
 下手にWisとか、しないように。

 今回のヒロインとして登場したのは、ウィータ。
 彼女も実際にlokiサーバの住人として存在します。こちらはカタカナで、ウィータ。RO日記の方にも、最近、登場しました。

 つか、上記のふたり。
 日記と小説版で、全然キャラクタが違うんですけど?とか、言わないでください。
 あっちはあっち。こっちはこっち。

 すべてアドリブの世界である日記では、彼も彼女も、かなり無茶してます。
 一方、小説版では、まぁ、お話自体をね、面白く展開するためにもね、別の方向に、かなり無茶しています。

 ご愛敬。

 どっちが本物とかそういうのはまた別の話として、今回の小説版には、他にもインテ、フィアット、エアの三人が登場しました。
 彼らは、実際には存在しない人たちです。

 もしもいたとしても別人ですので、あまりご迷惑をおかけしないように。
 ちなみに、本当は彼、彼女らはカタカナ表記ではなく、英語表記があるのですが、小説版ではすべてカタカナでやっています。英語表記だと、見にくいので。(ちなみに、フィアットはfiatとつづる)

 今回の物語は、主人公のスピットが冒険者として旅立ち、そしてひとつの冒険を終わらせ、彼が転職するまでのストーリーとなっています。

 本当のことを言うと、Ragnarokのこの世界は、剣と魔法のファンタジー世界でありながら、プレイヤーたちのすべては現実世界に存在する人たちなので、もっと現実世界をネタにしたものとかも出したかったのですが、どうにも、インテやフィアットたちの性格付けがファンタジーに転んでしまい、やりきることが出来ませんでした。これはちょっと、後々の課題かなぁと思ってます。

 いや、本当はフィアットがエアを前にして「お兄ちゃんどいて!そいつ(以下略)」とか、Ragnarokプレイヤーの一部にはバカウケなことがやりたかったのですよ。

 いやぁ、惜しいことをした。(違うだろ)

 話を戻して、今回の冒険のお話ですが。

 このお話は、スピットの初めての冒険ということなので、背景の設定的には、ベータの初期の頃をイメージして作っています。
 出てくる敵役のシーフはダマスカス持ってるし、ナパームビートはネイパームビートだし。

 当然、ベータなので、二次職などもありません。
 二次職はこのお話の中では未来の話として出てきますし、物語の中核をなすエンペリウムも、このときにはまだありませんでした。っていう話をすると、古参プレイヤーの方は「お?」と思うところもあるでしょう。

 初心者修練所で出てくるファブルが、アクティブなんですけど?

 はい。ベータの頃はアクティブではありませんでした。

 えーっと、ご愛敬ってヤツで。


 もともと、本当はこのお話はオデではなく、くずせんべいという同人サークルの方のオフセット本として企画され、日記との関連はないという風に作ろうかという話だったのです。
 なので、登場人物もスピットがでるという話ではなかったのでした。

 でも、僕がごねたのです。

 うーん、みなさんがどう思っているかは知らないのですが、僕なら、どうせ読むならスピットたちの冒険を読みたいなと思ったのですよ。オデで公開する、しないに関わらず。
 そうすることによって、RO日記の中で語られるアドリブばかりの物語の中に、また別の視点がうまれて、面白くなるのではないか。なにか、新しい世界が見えてきはしないだろうか。そう思ったんですよね。もともと、書いてみたいなぁとは思っていたし。

 それに読者と想定される人たちも、基本的にはRO日記の読者の方だろうし、自分と同じように、Ragnarokでやるなら、スピットたちの冒険談を読みたいのではないか。別に、キャラクターが彼らでないのなら、Ragnarokでやる必要なんか、全くないんじゃなかろうか。そう思ったのです。
 つか、キャラクタ作り直すんだったら、オデの古くからの人なら、Wofシリーズ書けという意見も出そうなところだ。

 で、まぁ、その辺りでいろいろとありまして。

 書き下ろしでどうせやるなら、Ragnarokの世界でキャラクタを新規に作って、それでやろうとか、ベンチメンバーをゲスト的にして、パーティは小説版のみのキャラクタでやろうとか、まぁ、いろいろとあったわけですな。いろいろと。

 まぁ、細かい話は置いておいて、で、じゃあ折衷案として、スピットでやるけれど、彼はRO日記に出てくる彼とは違う人物ということにしよう、と。
 締め切りさまのご意見により、書き出し始めたのです。

 なので、このお話は彼の初めての冒険の時の話となったのです。
 で、ストーリーのクライマックスは、彼が転職するところ、と。

 初期稿では、彼は剣士に転職します。

 剣士です。剣士。

 魔法士ではありません。剣士に転職するのです。
 あそこでスピが剣士に転職したら、みんなびっくりするでしょ?
 そうしたら、日記と小説版は似て非なるものと、完璧に認識するでしょう?

 一番始めは、そうなる予定だったのです。
 今明かされる真実。(なので、この小説版では、クライマックスに大どんでん返しがない)

 ところが、この原稿は陽の目を見ることなく、闇に葬り去られます。


 落としたから。


 締め切りさまは待ってくれないのです。

 よって、onBookは宙にぷらぷらと浮いてしまいました。
 んー、リリースされる場も失い(と言って、落とす自分が悪いんだが)、ぷらぷらとしてしまった、onBook。じゃあ、やっぱりオデで面倒みてやるか…と。

 今回、こうして公開されることとなったのでした。
 つか、ウィータが日記の方にも出てきて、取り返しがつかなくなったという話も、なくはない。

 スピットは最後、魔法士として魔法を使います。

 初期稿では剣士でしたが、オデでやるなら、やっぱりスピは魔法士だろう。
 いや、魔法士でなければならないだろう。と。

 そしてこの、onBookが生まれたのでした。


 スピットが日記の初回からずっとかぶっている帽子。
 好きに取ればいいものを、実際にゲーム内でも風魔法(と、念魔法)しか使えないという、変なこだわり(プレイヤーの)の理由。

 日記でも、ふっと出てきて意味深な台詞を吐いていた、兄の台詞の意味。(ちなみにこのキャラは今もいる。意外と知られていないが、これが1st)

 そして、パーティ、プロンテラベンチの生まれた理由。


 書く必要は、別になかったかも知れません。
 本当の事を言えば、ゲームです。

 ゲームを始めた理由なんて、そんなにたいそうなこと事じゃありません。
 パーティ名がつけられた背景に、こんな物語はありません。
 スピットの帽子だって、本当は一番始めは、お店で売ってるのを買っただけです。

 でも。

 でも、彼らはミドカルド大陸に生き、冒険の毎日を送っているのです。
 だから、彼らの世界では、こっちの現実がうそっぱちで、このストーリーこそが、リアルなのかも知れません。

 スピットは世界の果てを目指して旅立ちました。
 Prontera-Benchというパーティを引き継いで。
 冒険者としてもらった、お気に入りの帽子をかぶって。


 作られたお話です。
 そう、このお話は、作られたお話です。


 でも。

 あなたがもしも、Ragnarok Onlineをプレイしているのなら。
 lokiサーバに、やって来てみてください。

 プロンテラベンチに、やって来てみてください。


 そこには本当に、彼らがいるんです。
 あなたが「物語」として読んだ世界の住人たちが、現実に、あなたの目の前でしゃべり、笑い、馬鹿やって、暮らしているのです。



 いかがでしたでしょうか。Ragnarok onBook。
 僕の作り出したかったファンタジーを、お楽しみいただけていたら、幸いです。







 あ。
 最後になりましたが、Ragnarok onBookが続くのかどうかという話について。

 みなさんからのご要望、応援などがたくさんあれば、もしかすると、書くかも知れません。(ご意見などは左のMailから、メールでいただけると、中の人たちは喜びます)

 あんまりないと、「onBookでご飯は食べれない」という結論に至るので、要注意です。

 まぁ、何はともあれ、先の事はわかりません。


 なにしろ、すべては、アドリブの上に成り立っている世界ですので。




2003/05/13 spitとその仲間たちへ、この作品を