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考えても分からない。では、どうすれば良いのか。
いつも最悪の事態を考えながら演習してきたわけであるが、そこに焦りという文字はありえなかった。今日、……いや、この時間までは。
センター試験二日目を迎え、一日目でそれなりに点を落としてはいたが、得意科目しか残っていないので余裕をかましていた事は認めよう。そして、最初に受けた数学IAがよもや満点かもしれないほど出来たので、かなり舞い上がっていたことも認めよう。何せTAの次のUBだもんなぁ。……いや、今はそんなことを考えている暇では無いのだ。
目の前に羅列されている文字も読める。理解できない言葉も無い。計算方法もわかるのだ。しかし何度計算しても一向に解ける気がしない。
困ったことに、飛ばすにしてはあまりに問題の程度が低すぎるのか、先に続く問いにほとんど繋がっているように見える。そもそも大問の中の始めの方なのだから仕方が無いといえば仕方が無いのだが。
自身の不甲斐なさに焦りが加わり、焦燥がじわじわと体の心から湧き上がってくる。いつもならば解ける問題なのに解けないのも、今日が特別な試験だから焦るのだということも理解できる。
しかし上辺だけの考えとは裏腹に、無意識に体温が上昇していくのが意識せずとも分かった。
「一度落ち着こう」誰にも聞こえないぐらい小さな声で自分に言い聞かせ、あまり身動きは取れないが音を立てないようにこっそりと息を吸い込んだ。
一呼吸置く事で、少しは気が晴れた。そして、とりあえずは大問ごと飛ばしてしまうことに決めた。たぶん、後ですれば解けるだろう。……タブン。……キット。
次の大問に進むと、幾つかの選択肢から二つを選ぶ選択問題となっている。どの問題を解けばより高得点が取れるだろうか。
とりあえずはペラペラと、数えてみると六つほどある問題を見てみることにした。
一つ目、二つ目と共には一般的な普通化高校で勉強する内容のものが続き、その後は暗号のような問題が続いている。やはりフツーにとくことに決め、一番最初の選択問題に戻ることにした。
…………。
…………。
わからない。い、いや、わかる……よ…………。
…………。
…………。
カラン、と静かな会場の中に澄んだ音が響く。
……はっ、思わずエンピツを投げてしまった。い、いや、遊んでいる暇ではない。解けたところまでをマークして、とりあえず次の大問に進むべきだ。
埒の明かない考えを断ち切り、とりあえずは埋められるところをマークしようとしたとき、
「残り時間十分です」
と、非情にも試験官の声が響く。いや、それ自体全く持って非常でもないのだが。
その声と共に沸々と焦りが蘇り、時間に全く目をやることの出来なかった事への嘆き、そしてまさかまさか本番に赤点になってしまう可能性を考えると、もはや通常の思考回路を取り戻すことなど出来なくなってしまう。
落ち着かないと考えがまとまらないことは理解している。ただ自我をも焦りが覆いかぶさり、もはやそれどころではないのだ。もちろんそれを理解できていても、それ打ち破る手段など持っていない。
とりあえず……、どうしよう。おそらくこのままではやばい。もう一つ選択問題はあるが、それよりも前の問題を解くほうが配点も高いはずだ。次の問題も一通りは見たが解ける気はしなかった。
…………。
…………。
よし、もう戻ってしまえ!
大問一つを投げ飛ばしてでも、配点の高そうで、一度解こうとしている問題を解く方が明らかに点数が伸びるに決まっている。なにせ詰まったのは最初の方で、基礎中の基礎なのだ。仮にも得意教科の数学で分からないわけが無いじゃないか。
もはや考えれば考えるほど時間を浪費し、且つ深みには待っていくことは目に見えている。思考を一時停止させ。可能性の一番高いところを突いていく事にした。
…………。
…………。
嫌な汗が体中から出ているのが分かる。
手が無駄にブルブル震えているのが鬱陶しい。
…………。
…………。
カ、カンガエテモワカラナイ。
ナゼ、ココデわいガデテクルンダロウ。
…………。
……。
ア、アレ。ワ、ワカッた?
…………。
あ、で、できたかもしれない。
となると、次も解ける。次も解けるじゃ――――――
「試験時間が終了しました。鉛筆をおいてください」
試験管の無常な声が響く。
えええええええええええええええええええ
まだマークしてnqあwせdrftgyふじこlp