studio Odyssey



no title

Written by : harusame

風邪をひいた。
悪寒がするということは熱まで出てきやがった様だ。
一人暮らしな上に、恋人なんて上等なものは居らず、現時点では看病してくれる人も居ない。
「しんどクセェ・・・。」
自室で寝そべり、一人つぶやく。
6畳一間の、「ど」が付くほど汚い部屋。
こんな部屋に居たら、風邪の治りが間違いなく遅くなる。
しかし、病院へ行く気力もなく、そもそも立つことすらままならない。部屋を片付けるなど以ての外だ。
「マジしんどクセェ・・・。」
とりあえず何か食べようと、気力を振り絞って立ち上がり、冷蔵庫へ向かう。
リンゴが3つ、きゅうりが4本、トマトが2つ。
元々、生野菜や果物が好きだったこともあり、こういうときに食い物に困ることはない。
そもそも、病気なんてめったにならないのだが。
じゃぁ、何故風邪なんてひいたのか。理由は簡単だ。
風呂に入った後、ろくに体を拭かずに寝たからだ。
12月にそんなことすりゃ、流石に風邪のひとつやふたつはなるだろうよ。
まぁ、今は原因なんてどうでもいい。とりあえずは熱を下げないと、病院にすら行く気が起きない。
冷蔵庫からリンゴを1つ取り出し、再び布団へ潜り込む。
寝ながらもそもそとリンゴを齧り、友人へ学校を休む旨を伝えるためにメールを打つ。
食べ終わったところで、次に専門学校の事務局へと電話をかける。
もちろん授業を休む旨を伝えるためだ。
これだけのことで、体力の限界を感じてしまう。
まったくもって風邪とは難儀なものだ。
まぁ、やるべきこともやったし寝るか・・・。

・・
・・・
なにやら周囲でガサゴソと音がする。
おかげで目が覚めてしまったようだ。
まぁ、メールした友人の誰かが、授業が終わったので看病に来たのかもしれない、と思い携帯で現在時刻を確認する。
(なんだ、まだ昼前じゃないか。授業をサボって来たのか?物好きだな。)
そんな失礼極まりないことを考えながら、とりあえず相手を確認しようと体を起こす。
今朝よりはマシになっているようだ。多少、体が軽く感じる。
看病に来てくれたのは、なんと女の子だった。しかも結構どころか、かなり知ってる子。
つーか何故ここに居るのかわからん。聞いてみるか。
「説明を要求する。」
どうやら、向こうは俺が起きたことに気付いてなかったようだ。
口を半開きにしたマヌケ面をこちらに向けている。
驚いたときの顔がマヌケになるのは昔から変わらんな。
固まって動きそうにないので、もう一度さっきの言葉を繰り返す。
「説明を要求する。」
普通ならこれだけで伝わるかどうか微妙なところだが、古い付き合いなので大丈夫だろう。
そう、相手は幼馴染といってもいいくらいの付き合い。小宮祥子、小学校からのゲーム仲間だ。
「説明 を 要求 する。」
三度繰り返す。
流石に驚きから開放されたのか、半開きの口を動かす。
「あ、うん。えっとね、今日大学休みなのよ。で、こないだお母さんが下宿にに来てね、周のうちのカギ置いてったから。」
そういうことらしい。
・・・いや待て。何かおかしい。カギはかけておいたはずなのに、どうやって部屋に入ったのかと思ったら、そういうことだったとは。
何故こいつの親がうちのカギを持っているのか。
いや、犯人には目星は付いている。だが何故こいつに渡す必要があるのか。
まったくもって度し難い親たちだ。
「でね、明日土曜だし、久しぶりに耐久やろうよーって言うつもりだったの。ま、部屋の前まで来て周は休みじゃないんじゃないかなって思ったんだけど。」
「来る前に気付け。そしてアポを取れ。」
「まぁまぁ。そんなの気にする仲じゃないじゃない。でもまぁ休みだったわけだよね。寝てたし。」
「寝てたのは熱が出てるからだ、学校が休みだったわけじゃない。つーわけで風邪うつされたくなかったら帰れ。」
「あー、そうなんだ。じゃぁ看病してあげよう。だから明日には治してね。」
「いや帰れよ。」
もう聞いてないようだ。キッチンのほうへ向かっている。
(まぁ、ありがたいことはありがたい・・・かな。)
米は炊いてなかったはずだから、おかゆを作るにしても少し時間がかかるだろうと予想して再び横になる。
・・・
「おーい、起きろー。」
む、どうやら寝てしまった様だ。
「んー、起きたー。」
「はいじゃぁこれおかゆね。あと風邪薬も買ってきておいたから。」
「ん、ありがと。あ、風邪薬幾らだった?あとお前も飲んでおけよ。」
「あー、お金はいいよ別に。」
「む、そうか。」
ありがたい限りだ。
おかゆを受け取りもそもそと食べる。

・・
・・・
その後も看病を続けてくれ、夜寝るときにひと悶着あったものの、次の日にはほぼ完治していた。
看病してくれた礼というのもあれだが、土曜・日曜は祥子に付き合って24時間耐久ゲームをすることになった。
帰り際に紙切れとカギを受け取ったが、俺の部屋のカギではないようだ。紙切れのほうはどこかの住所と簡単な地図だった。
(・・・ま、今度はこっちから出向いてやるか。)
などと考えていると、携帯が着信を告げる。
知らない番号からの様だ。まぁ、流れ的に祥子だろうなぁ。
「もしもし?」
「あ、出た出た。」
やはり予想どおり祥子だったようだ。
「まぁ、お前だろうなって予想できたし。」
「だよねー。」
「で、なんだ?」
「あ、うん。いい忘れたことがあったなーと。」
「なんだそれ?」
「えーとね、夜這い期待してるねっ。」
"プチッ、ツー、ツー・・・"
(・・・行くのやめようかなぁ!)
結局は行くのだろうけど。


author:
harusame
URI
http://www.studio-odyssey.net/thcarnival/x04/x0407.htm
author's comment:
 「しんどくぇ」は、「しんどい」と「めんどくさい」の造語。
 初めてじゃないけど、まぁ3本目とかそのあたり。
member's comment:
<u-1> いいな、しんどくせぇw
<yuni> この語だけで、主人公の人格が構築出来ているなw
<pochiko> ですね、ナイスワード。
<kenon> しんどくせぇよ。というか、うまいですよ。
<yuni> え、これ初とか言わないよねw
<u-1> 3本目とかその辺りと。
<yuni> 語彙や会話のテンポが、明らかに書く人のそれなんだがw
<u-1> 主人公のしんどくせぇさ加減が、前半部分はよくでているな。
<yuni> 大雑把なイメージあるけど、特に粗も見つからないにゅう。
<u-1> 最後、しんどくせぇで終わって欲しかったかもしれんw
<Tia> それはいえてるw
<pochiko> あ、その終わり方カッコイー。
<u-1> マジ、しんどくせぇw
<kenon> シンドクセ。
<yuni> sndks
<Tyuram> シンドクセ('A`)
<u-1> これはこのキーワードで展開して言ってもよかったかもしれんw
<pochiko> 大流行ですね。
<kenon> イイ。
<yuni> なんだこのチャンネルはw