studio Odyssey



おはなしのつくりかた

 管理人、しゃちょ流のお話の作り方講座。

台詞をどうしよう。

 よほど特別なものでない限り、台詞なしでは「おはなし」は作れないでしょう。
 って事は、台詞って実はすっごく重要なんじゃ…

 って言うか、重要なんですよ。台詞というのは。

 喋らない人はいないでしょう。そんでもって、口癖のない人はいないでしょう。ない?いえいえ、ありますって、あなたにだって。

 よーく、身の回りの人の喋るときの言い回し、喋るときのイントネーションの付け方、その時の動作なんかを観察してみましょう。
 色々なタイプの人がいるはずです。んで、色々な口癖があるはずです。
 そしてそれが、キャラクターの個性というものに繋がって行くんですね。キャラクターの性格を一番簡単に表すものが台詞。
 よく言う「説明的な台詞」っていうのは、要はその個性が表れていないって訳なんですよ。

 んじゃ、今回は「台詞をどうしよう」って事について。


台詞を考えよう


たとえばの日記

「何してるんだ?」
 先生が聞く。
「いえ…別に」
 僕は机の上の絵を下敷きで隠しながら返した。


と、前回の文にこの文が続くとします。別に可も不可もない、普通のやりとりですが、これも台詞回しを変えればまた違ったイメージになります。

 たとえば先生の台詞。

「おい、何してるんだ?」と「もしもし、何をしているんだ?」では、先生のイメージが変わってくるでしょう?ここでもし「もしもし〜」の方を使うとしたら、語尾を「もしもし、何をしていらっしゃるんで?」とすれば、さらに先生のイメージがぴたっとハマってくる。

 これって言うのは、前回に触れた、イメージの薪をくべるのと同じ事なんですね。

 こうすると、先生のイメージが自分の中でもぴしっとしてきて、書きやすくなっていく。つまりキャラクターが動き出すという感じがつかめてくる。

 じゃ、今度は主人公。
 主人公の答え方も、「別に、なにも」なんて答える感じにすれば、ぶっきらぼうな、あまり良くない子のイメージが出てきますね。
 もしここで先生が「おい〜」の下りで聞いてきて、「別に〜」の下りで答えていたとしたら?

 「なんだその物言いは!?」

 とかって先生はきっと答えてくるでしょう。そうすると、今度は主人公がどう答えるかなってなって、話が進んでいく。

 よく、キャラクターの設定はしっかり作れって言う人がいますけど、それってつまりこういうことなんですよね。キャラクターの設定がしっかりしてると、どういう答え方をするか、どういう行動をとるかがよくわかる。すると、自然とストーリーが進んでいく。
 でもですね、毎回言っているように、あんまりでっかいこと考えちゃうとつぶれちゃう。
 いいですよ、細かいキャラクターの設定作っても。誕生日とか、血液型とか、スリーサイズだとか。
 でも、そういうのってあんまりいらないし、イメージの薪としては、結構ぶっとい枝で、使いにくいんですよね。
 じゃ、使いやすい、いいイメージの薪ってなにかなと考えるわけですよ。

 いいのがあるんですよ、これが。

 仲のいい友達ってやつ。
 古くからの知り合いであればあるほどいいですね。気の合うやつ。
 で、その友達の性格をそっくりそのまま使わせていただいちゃうんです。自分も含めて3人もいれば十分でしょう。それで十分話は進みます。

 お友達ですもの、いちいち設定なんて作ることないですよね。もう、初めから全部あるんですから。身長、体重、血液型、スリーサイズ、好きな食べ物、好きな異性のタイプ。

 これほど良くできているキャラクターはないですよ。本当に。

 じゃ、彼(もしくは彼女)の口癖はとか、喋るときのイントネーションとか、台詞まわしとかを想像してみましょう。掴めましたか?
 じゃ、その癖を掴んだら、その部分を書き出してみましょう。で、そこの部分をデフォルメ(強調)してしまいましょう。

 「っていうかー」って喋り出す友達だったら、その部分をデフォルメしちゃう。なんかの会話があっても、「っていうかー」って割り込んでくるとか。

 一人称の使い方ももちろんポイントですよ。その人は一人称をどう言います?僕?私?オレ?もしかして、ワイとか?

 あと語尾感。「〜なわけよ」って言ったりするとか、強調ぽい語尾でいつも喋るとかそういう部分が見えてきたら、その部分をぐぐっとデフォルメするんです。

 キャラクターって英語は、個性と言う意味ですからね。
 その人の個性を引っぱり出すことが、キャラクターづくりの第一歩。
 そしてその個性を引っぱり出すのが、つまり、台詞。

 個性を引っぱり出しさえすれば、台詞だけでも十分物語は書くことが出来るんですよ。


台詞だけで話を進めちゃう

「ねぇねぇ、知ってる?」
「あ?何を」
「この前さ、あいつ、女の子と一緒に歩いてたんだよ」
「あーっ!それ僕も見た!」
「知らねー。で?その子カワイイ子だった?」
「うーん…よくわかんないんだよねー。後ろ姿だったしぃ」
「僕知ってる。A組の女の子なんだよ」
「あんだアイツ。許せねぇな」
「オレを差し置いてーって感じ?」
「何を言ってるんだか…」
「でもよ、アイツこの前──」
「なっ!なんの話してんだよ。混ぜろって」
「おっ──なんだよ。何でもねぇよ」
「もー。いいトコだったのになぁ。ちっ」
「何がだよ。なぁ、オレも混ぜてくれよ」
「お前にゃカンケーないこと」
「うーわ、サイテー」
「なんだかなぁ…」


 たとえばこんな会話。
 この会話文には誰がどの台詞だとか、キャラクターの誰が男だとか女だとか、全く触れてもいませんね。だけれど、何となくイメージから誰が男で誰が女か、そして何人いるか、その性格はどんな感じかとか見て取れるでしょう。

 台詞まわしって、つまりこういうこと。

 キャラクターとは、つまり個性のかたまり。
 その個性を生かす台詞まわしを考えていくと、意外とストーリーはどんどん進んでいったりするものなんですね。