studio Odyssey



おはなしのつくりかた

 管理人、しゃちょ流のお話の作り方講座。

お話を作ろう。

 偏見かも知れませんが、僕がそうであるように、物書きをする人というのは基本的に自分の書き方とか、テクニックとかを公言してくれません。
 特にアマチュアの人は大体がそう。なんでかとゆーと、自分がせっかく積み重ねて得たものを、そう簡単にしられてたまるかっつーの。
 という所があるからでしょうね。

 あれですよ、実は僕もあんまり書きたくないんですよね。なんでかって言うと、これ書いちゃうと、僕が普段いかに何も考えていないで書いているかがバレてしまうから。

 だからって、書かなきゃこの「おはなしのつくりかた」の企画自体の意味がなくなってしまう。んじゃ、書きましょう。「しゃちょ@studio Odyssey.おはなしのつくりかた」
 言うまでもなく、僕の書き方ですから、もしかしたら、なんの参考にもならないかも知れないですよ。


おはなし的文体

 今まで文の書き方とか、台詞の作り方みたいなところを触れてきましたが、よく考えてみると、この二つを繋ぐことについて全く書いていないことに気がついた。これではおはなしが作れない。
 まずはこの二つを繋げる練習からしていって、それでから、「おはなし」の作り方について触れることにしよう。

 で。
 おはなし的文体について。要するに、


 彼女は僕に向かって呟くようにして言った。
「あのね…」
 消え入りそうになる声に、僕は耳を傾ける。心持ち、顔を近づけるようにして。
 彼女はうつむいたまま、足下のアスファルトに視線を泳がせて、ただ「あのね…あのね…」とだけ、繰り返していた。
「なに?」
 僕は少し眉を寄せて聞き返した。


 というような、「台詞」とそれを表現する「いつどこで誰が」文のくっつけ方について。

 とは言っても、これには実は全くと言っていいほど決まり事なんてないんですよね。それこそ、この文体の作り方と句読点の付け方、修飾語なんかの使い方が、書く人の個性になるんでしょう。

 って。それで片づけちゃったんじゃ、その辺の小説入門な本と変わらない。この「おはなしのつくりかた」では、そこにずばっと切り込んでいくことにしましょうか。

 まず、文というのは横書きの場合上から、縦書きの場合右から読み進めていきます。当たり前ですけど、結構重要。
 これって、時間軸の進行方向なのですよ。おはなしの中での。絶対的な。

 誰が初めにそうしたのかは知りませんが、そうなっちゃっているし、みんなそれで認識しているのなら、それを利用しない手はないでしょう。つまり、人間の動きなんかを書く場合、ちゃんと読み進めて行くべき方向に書いていけば、ちゃんとした動きを表現できるんですよ。当たり前なんですけどね。


登場人物の動きを見てみよう

 うつむいたままだった彼女は僕の言葉にゆっくりと顔を上げた。
 そして小さく息を吸い込んで、胸の前にあった小さな手をきゅっと握りしめ、意を決するように瞬きをひとつして、僕に向かって言った。
「あのね」


 彼女の動きは読んでわかるように、うつむいていた→顔を上げた→小さく息を吸い込んだ→手を握りしめた→瞬きをした→言った。
 と、わかりますね。文はただ並んでいるだけじゃありません。倒置法とか、そういうものもありますけど、基本的には今読んでいる文が現在進行形、前の行が過去形、次の行が未来形に、勝手に切り替わっていくものなんですよ。で、読み終わったとき、それは全部過去形になる。

 簡単なことなんですけど、それを意識しているのと意識していないのとでは、ものすごい差が出てきます。一応意識して書いてみましょう。その方が、読みやすくもなるので。

 さて、では次は句読点の置き方。改行の仕方について。

 好みです。

 って書くと、またこの企画の意味がなくなってしまうので、そこも突っ込んじゃいましょう。

 句読点はそうですね、「、」が一拍、「。」が二拍の休みと思って書くといいでしょう。で、その句読点のうつ感覚は、書いているあなたが「ここで一拍休みを入れてもらいたいな」と思うところに打っていけばいいんじゃないでしょうか。

 文には、音楽におけるメロディーのようなものがあると思ってください。

 そう考えると意外と理解しやすいです。たとえば早い展開の時(アップテンポの時)に、句読点(休符)が多いと、言うまでもなくそのメロディラインはテンポが出ずにつっかえてしまうでしょ。テンポを出そうとしているのにこれでは問題あり。

 で、逆にスローバラード(遅い展開とか)の時、これは休符を多用したりして、わざと間を持たせたりするといい効果となる。

 つまりですね、文を読んでいるとき、ほとんどの人は自分の頭の中で自分のテンポを作って読んでいるでしょう?
 このテンポに抑揚をつけて、文章を演出するのが句読点だと思っていれば、まぁ間違いはないというわけ。

 例文は改行の話と一緒にするとして、じゃ、次は改行。
 これも文章の演出の一部と考えた方がいいでしょう。

 改行されるまでの一文は、ほとんどの場合、現在進行形として認識されます。改行するまでの間だったら、登場人物達のとる行動はほとんど同じと考えても差し支えはないというわけ。
 で、改行されたら、その瞬間に今の文は前の文になって、過去の行動となる。これを上手く演出に使っていけばいいわけです。

 ただ、初心者の人が陥りやすい状況として、改行ばかりが目立つ文章というのがあります。

 こんな感じに、改行ばかり。
 一文終わると改行。
 で、またすぐ改行。
 これの繰り替えし。
 これはちょっと格好悪いですね。

 でもですね、初めはそれでいいと思うんですよ。それでもいいから、書いちゃってください。できあがった後で付け足したり、繋げたりすればいいんですから。それは、日記のまとめ方でも触れましたでしょ。

 「そんな格好わりぃ事イヤじゃい」と言う人は、じゃ、「いつどこで誰が」に注意して書くようにしましょう。そこでも書きましたけど、これを文の中に盛り込むと、文は2倍3倍の長さになりますからね。

 では、句読点と改行についての例文です。上にあった文と、この下の文、ちょっと変えてみました。
 本当に些細な変更なんですけど、それだけで受けるイメージが変わってくるでしょう?
 句読点や改行の持つ演出力って、つまりこれなんですね。


句読点と改行で演出

 うつむいたままだった彼女は、僕の言葉にゆっくりと顔を上げた。
 そして小さく息を吸い込んで、胸の前にあった小さな手をきゅっと握りしめ、意を決するように瞬きをひとつして、
「あのね」
 僕に向かって、言った。


 特に最後の3行。
 ここには演出的効果が集約されています。
 文が上から下、右から左に流れていくことは触れましたね。ここでは、台詞の前に改行が入っています。つまり、ここで時間軸が動いているんですね。
 けれど、流れ的には一連の流れ、それに最後の文には「言った。」の前に「、」を入れて一拍おいている。
 これだけなんですけど、これだけで読み手は一拍の間の印象が強まって、彼女のためらいがちな部分を受け止めることが出来るでしょ。ついでに、(そういっちゃなんだけど)「僕」の戸惑いも表すことが出来る。

 文章って、こうやって考えて書いていくと、非常に面白いんですよね。
 いや、でも上で触れたように普段は全然考えちゃいないんですが…

 ああぁ…お話をつくろうって話だったはずなのに、全然ストーリーの組み立て方に触れられなかった…それはじゃ、次回と言うことで…