studio Odyssey


第一話




 人類は恐怖した。(注*1)
 時に西暦一九九七年。(注*2)
「これは本当のことなのかッ!!」
 北米防空司令部の戦闘作戦センターで、作戦司令官ジョン・マッキントリックは大声を上げた。
 そんなに大声を上げなくても、インカムをつけているのだから部下たちの耳にはちゃんと──しかも大声で──彼の声は届いているのだ。
 マッキントリックは苛立っていた。
 このところ胃の調子が悪く、先ほどマーロックスを飲んだばかりなのだ。あの白い、決して美味しいとはいえない液体を。
 あれのせいでオレの胃はいつまで経ってもよくならないんじゃないだろうか…
 そんな風にもふと考えることがあるが、いまはそれどころではない。
「ミサイル警戒衛星の方はどうだ?」
 北米防空司令部──通称クリスタル・パレス──は初めての事態に右往左往していた。何度も何度もマニュアル通りの練習はしてきた。だが、現実となれば話は違う。
「赤外線反応はありません。(注*3)ミサイルではないようです」
「だとすれば、あれはなんなのだ?」
 眼前のエレクトロニックマップには、KHデジタル映像衛生のとらえたそれがでかでかと映し出されている。
 白く、暗闇の宇宙にぽっかりと浮かぶ卵のような物体。
「三分ほど前に突如として──か」
 説明的な台詞を吐いて、マッキントリックはちいと舌打ちをした。胃が痛む…何もオレが司令官の時にこんな事が起こらなくても…
「これが映画みたいにWOPRの暴走(注*4)なら、どれだけうれしいことか…」
 しかし、この中ではそれが現実である。
「物体は静止衛星よりもやや遅い速度で衛生軌道上を周回しています。どうしますか?」
「どうもこうもない!マニュアル通り、第一種警戒態勢だ!!」
 きりりっと胃が痛んだ。これが片づいたら、病院にちゃんといった方がいいな…
 マッキントリックはそう思った。だが、
「物体が移動を開始しました!」
 事態は急展開を迎えたのである。
「なにぃ!!」
「太平洋上にて降下を開始!」
「どこだ。どこに落ちる!」
「今…出ました!到達予想地点…いえ、Vanishing!進入角度が深すぎます。大気圏で消滅します」
「そうか…よしっ」
 消えてくれれば、隕石か何かで処理できる。いちいち正体不明の事件まで報告していたら、普段から無視してるUFOたちに悪い。などと、マッキントリックは考えた。(注*5)
「司令!たっ…大変です!」
「今度はなんだぁっ!」
 誰かが声を上げる度に胃が痛む。八つ当たりもしたくなる。
「物体が大気圏を突破します!全く燃えてません!」
「馬鹿な!!」
「大気圏突破まであと一○」
「着水予想地点はミッドウェー諸島半径一五○○!」
「ばか…な…ありえん…しかも…オレが司令官の時に…」
 つぶやきながら、マッキントリックは倒れた。
「司令!」
 彼の胃に、とうとう穴が開いてしまったのである。
「物体は着水しました!」
 時に西暦一九九七年。
 それは地球に飛来したのである。








 第一話  R‐0、起動。

       1

「おーおーおー…」
 双眼鏡を覗いて、彼はにやにやと微笑んだ。
 レンズの向こうでは、厚木基地からF‐15Jが次々と空へとあがっていく。
「いいねぇ」
 イヤホンのボリュームを少し上げて、彼はその中から漏れる音声に集中した。耳に入れたイヤホンは、もちろんウォークマンなどではない。違法改造を施しまくった、暗号解読も可能な『スバラシイ』(注*6)無線機である。
「どうやら、とうとうこの時が来たみたいだな」
 と、彼は再びにやりと微笑んだ。
 イヤホンからは、例の物体についての情報が絶え間なく聞こえている。
 だがしかし──
 彼は英語が分からなかったので、暗号解読が出来ようが出来まいが、それにはなんの意味もなかったのだけれど。


 こちらはまた、北米防空司令部──通称クリスタル・パレス。
「司令が倒れた今、緊急の指揮は私が執る」
 そして、その会議室。
 巨大な円卓の上座に座った男は、組んだ手で隠した口をにっと突き上げた。(注*7)副司令、ペーター・ローガンである。
 ふん。オレはキャリア組だぞ。たたき上げだかなんだかしらんが、あんな腰抜け司令官と違うところを見せてやる。
「まずは奴についての情報を聞かせてもらおう」
「はい、報告します」
 作戦部長が立ち上がると、円卓を囲んでいたすべての人間の視線が彼に集中した。彼はその視線を受けて軽く咳払いをすると、
「すべて不明です」
 と、一言告げた。
「そうか…」
 頷いて、副司令ペーター・ローガンは思った。
 オレはキャリア組だが、周りはそうではないからな。
「わかった。もう、いい」
 二時間後にもう一度会議を開くことを告げ、それまでできる限り情報収集をするようにペーター・ローガンは命じた。


 同刻、太平洋上──
「これが…シー・ライオンのとらえた映像なのか…」
 太平洋監査船ゴングに搭載された無人海底探査機、シー・ライオンは、限界深度をオーバーしながらも懸命に映像を伝えていた。大体、六○○○メートル近くあるこの辺りの海底に、五○○○が限界深度の機体で潜ろうというのが間違いなのである。(注*8)
「シー・ライオンが圧壊しちゃいますよ」
「うるさいっ!」
 技術屋の言葉なんて無視。軍人なんて、そんなものなのかしら。と、シー・ライオンのマニュピレーターは思った。
 しかし、だからといってこの映像がすごいことに変わりはない。人類初に違いない!
「バケモノめ…」
 ゴングの艦長がちっと舌打ちをする。モニターに映るバケモノ。人型をしてはいるが、身長はゆうに五十メートルはあるだろう。
「これ以上大きくできないのか?」
 距離が離れすぎていて、しかも光が届かないのでうっすらとしたバケモノの輪郭しかわからないのだ。
「無茶なこといわないでください。これで最大望遠なんですから」
「ならもっと深く潜れ。デブススイッチはこれだな」
 と、うむをいわせず、ぽち。
「あっ!なんて事を」
 ぐんぐんと下降していくシー・ライオン。徐々に、バケモノとの距離が縮まっていく。
 艦長はテブススイッチから手が放せなかった。マニュピレーターも、止めようとはしなかった。
 興味はあるのである。
 未知の生物。怪獣。エイリアン。
 近づくシー・ライオン。シー・ライオンは、奴の輪郭をはっきりと捕らえた。ぎらりと、奴の目が強力なライトの光に、暗闇の中で輝く。
 そして、
「!?」
 その次の瞬間に、その映像をはっきりと残して、シーライオンからの映像は途絶えた。
「あ…し、シー・ライオン…圧壊しました…」
 マニュピレーターは、小さくそれだけを呟いた。


「これが、シー・ライオンが海底でとらえた映像です。どうやら、あの卵からかえったのは人型のエイリアンのようです」
「最新の映像はこちらです。推定身長は五○メートル程度」
「魚雷による攻撃の有効性は認められませんでした」
「ミッドウェー諸島沖合で引き上げられた卵の形成元素は不明」
 次々と飛び交う情報。副司令ペーター・ローガンは平静を装って聞いた。
「で、奴はなんなんだ…」
「不明です」
 それは予想された答えである。
「何もかも不明──か」
 足を引っ張る連中だ。馬鹿者どもが。
「で、奴はどこへ向かっているのだ?」
 「不明です」という答えをなぜか期待していたのだが、
「は。それはおそらく…」
 作戦司令はA4レポートをぺらりとめくっていった。
「日本ではないかと」
「日本だと!!」
 副司令は声を荒げた。だが、日本なら我々が焦ることもあるまい──と考えたのも事実である。(注*9)


「時は来た」
 彼はにやりとほくそ笑んだ。
 この時が来るのを、どれだけ待ちこがれたことか。世間の人間からはマッドサイエンティストだの、ロボットオタクだのとつらい言葉を浴びせられ続けていたが、それ見たことか!やはり敵はやってきたではないか。
 ただ、彼は一九九九年に来ると思っていたので、まだ準備万端とはいかなかったが。
 日本、厚木市某所にあるT大学。(注*10)
 穀潰し呼ばわりされている研究室『脳神経機械工学研究室』において、今、日本を救うマッドサイエンティストたちの(注*11)会議が開かれていた。
 無論クリスタル・パレスほどの豪華な会議室などではなく、スチール机、そしてその上にジュースのペットボトルとお徳用ポテトチップスという、絵に描いたような研究室内での午後のひとときに始まったような会議であった。
「何がですか?」
 今までなんの話も聞いていなかった吉田 香奈が、ぽつりとつぶやいた。いつもぼうっとしている子なので、特にだれも驚きはしない。
「ほら、教授の追い続けてた恋人が、とうとう現れたって話」
 ポテチをぱりぱりとほおばりながら返したのは助教授、西田 明美。ちなみに、もうすでにおわかりのことと思うが、教授というのは先のマッドサイエンティスト平田教授の事である。
「あ、教授。恋人できたんですか!どんな人です?今度紹介してくださいね」
「うーん…もうコテコテの反応だね吉田さん」
 腕組みをしてうなったのは院生、中野 茂。通称シゲ。
 脳神経機械工学研究室(注*12)のメンバーは、基本的にこの四人で構成されている。基本的に──というのは、この研究室に入ってくる人間のほとんどは単位が足りてなく、研究よりも卒業。授業。単位。という人間がほとんどなのである。
 そんな研究室に入り浸っている学生二人。それが、四年生も二年目に突入しようかという吉田 香奈二二歳と、気ままな院生中野 茂二六である。
「恋人を紹介したいところだが、いまだに不明なところばかりでね」
 ふ、と笑う平田教授。
「不明、というより教授は英語が分からないだけでしょ」
 ウォークマンを聴きながら明美助教授がいう。聞いているのは先に教授が聞いていた無線の内容だ。
「間違いないんですか」
 押し殺した声でシゲが聞く。緊迫した雰囲気を作ろうとしているのだが、隣に座っている香奈には伝わっていない。
「ああ。間違いない」
「とうとう…」
「あれを…動かすときが来たか…」
「あっ…あれを!あれをやはり動かすんですか!」
 自分たちの台詞に酔っているのは、言うまでもないだろう、教授とシゲである。
「あれって、なんですか?」
 マイペースなのはもちろん香奈。
「ほら、地下のアレよ」
 ぱりぱりとポテチを食べながら明美助教授。
「明美さん…地下のアレってな言い方はないでしょう。地下ケージの中の  とか」(注*13)
 妙なことに反論するシゲと、
「秘密基地と言えないか?」
 教授の二人。
「何でもいいじゃないですか…」
「あ、あのロボットのことですか」
 明美助教授の嘆息混じりの声に、ぽんと手を打つ香奈の声が重なった。仕方がないのである。彼女はこう、いつもワンテンポずれているタイプの人間なのだから。
「ああ…そうだ」
 教授は気を取り直すべく声のトーンを落とし、
「R計画、最終プロジェクト。ついに始動させるぞ」
 思わせぶりな台詞を吐いて、にやりと微笑んだ。
 ふっふっふっ…そうとも。この時を、どれだけ待ち望んでいたことか!
 教授はもう一度、自分の台詞に酔ってみた。
「…時は来た」


「大変なことになったな…」
 そりゃ、そうだろう。
 未知の生物が自国──日本に向かってくるとなれば、総理も頭を抱えてしまう。
「では総理、米軍からのファイルをここに置いておきます。対策会議の方は…」
「わかった。君の方で時間を決め、皆を集めてくれ。私はそれまでにこのファイルに目を通しておく」
「わかりました。では会議は一七時からでよろしいですね」
「うむ」
 秘書の言葉に軽く頷く総理、村上 俊平。就任して半年、初の── いや歴代総理にだってこんな危機に直面した奴はいまい──大仕事ともいえる仕事だ。
 椅子に深く腰をかけて、秘書の置いていったファイルに手を伸ばす。癖か、出ていく美人秘書のお尻に思わず目がいく。
 まだ、余裕があるわけか。
 自嘲して。ファイルを開く。
 米軍のとらえた奴の写真と、わかっている限りのデータ。
 ちっ…なんだってこんなSFじみたことが…
 幼い頃、彼もロボットアニメやSF映画を、楽しく見ていなかったわけではない。そりゃ、一瞬くらいは「こんな事が現実に起こったらどうなるだろう?」などと考えたことも、ある。だが──実際、本当に起こってしまったとなると──
 思わず、村上総理は深くため息をついた。
 謎の宇宙生命体の襲来か…全く…なんでこんな事に…
 しかし、まずしなければならない事と言えばなんだろうな。
 村上総理は頭を抱えた。こんな事はマニュアルにない。何をすればいいのか、全く見当もつかない。ああ、大震災の時の総理も、こんな気持ちだったんだろうか。(注*14)
 まずしなければならないこと──そうだ!名称、名前だ!
 名前を付けることによって危機感が増し、より現実性をもつようになる。そうだ、敵の名称だ。うーむむむ…どうするかな。
 やはりお約束としては何々獣か。いや、しかしこの写真を見る限りでは獣じみていないしな。
 何々星人ではどうだ?しかし、どこの星のやつかわからんからな。
 悩むものだな。ああいう戦隊ものやロボットものの監督もこんな気持ちだったんだろうな。(注*15)
 姿形から連想させるか。人型、ヒトガタ、ひとがた…ヒトガータ。うむ、センスがないな。
 もっとこう…キャッチーでフレンドリーな──いや、フレンドリーである必要はないか──ばしっと来るものが欲しいな。
 そうだ。娘がハマってたアニメがあったな。なんと言ったかな、こんな敵が出てきていて…ちらっとビデオを借りてみてみたが…今はあんなアニメがはやっている時代なのか。私が学生の頃に熱狂したようなアニメは、もう時代遅れなのかもしれんなぁ。
 村上総理は頭を抱えた。ここで変な名前を付けようものなら、ワイドショーや週刊誌からたたかれるに違いない。変な名はつけられない。(注*16)
 がちゃりとドアが開いた。ふと顔を上げると、いつもの美人秘書がコーヒーをお盆の上に載せて立っている。
「お飲みになります?」
「ああ、もらおう」
 美女の申し出は断らない。それが村上総理のポリシーだ。
 コーヒーをすすって、総理はふと思いついた。
「そうだ。君、今いくつだったかな?」
「私ですか?もう二七になります」
 あら総理、私にいい人でも紹介してくださるのかしら?そうよね、私ももう二七。そろそろ身の回りを固めないと…でも、私を満足させてくれる人もなかなかねぇ…(注*17)
「君、このファイルの中身は見たかね?」
「ちらっとですが…」
 本当ははっきりと見た。美男子はどこにも乗っていなかったと記憶している。
「なにか…妙な怪物の写真のようでしたが…」
「うむ。そうだ。こいつは今、日本に向かって侵攻している」
 はぁ…このファイルの話なのね。私には関係ない──って。ええっ!?日本に向かって侵攻!?じゃあ、私にも関係おおありじゃないですか!?
「日本に向かって侵攻って、ゴジラみたいなものですか」
「うむ…」
 そうか、ゴジラか。その辺の名前は考えなかったな。
 嘘でしょう!?まだ結婚もしてないのに、こんなところで死ぬのなんて嫌ですよぅ!
「君に、一つ頼みたいことがある」
「なんでしょうか」
 彼女のような若い子ならば、奴にどんな名を付けるんだろうな…
 頼みたい事って──そんな…総理。命を落とす前に──と言うのはわかりますけれど、総理は奥様もお嬢様もいらっしゃる身。ですが──いいですわ。私も女ですもの。人類を滅ぼされないために、種族維持のためなら私…
 二人の会話と心の声が、どこかずれている様な気もするが、あまりその辺りには触れないことにしよう。
 村上総理はぽつりと、彼女の目を見つめて聞いた。
「君ならこいつに、なんと名を付けるかね?」
「は?」
 と、思わず拍子抜けして返す秘書の彼女。
 ちょっと、なんですかそれ。ちょっと期待してたりして…(注*18)まるで私、馬鹿みたいじゃないですか。
「名前…ですか…?」
「うむ。絶対に必要なものだからな」
「そうですねぇ…」
 どうでもいいような気もしますけど…適当な事でも言って、お茶を濁しておけば──敵でしょ。敵、テキ、てき。
「エネミー(注*19)なんてどうです?」
「エネミー!?」
 きゃっ!そんな、怒らないでください。ちょっと言ってみただけなんですから。
「うーむ。いいなぁ…」
 ほえ…
「うむ。エネミー、えねみー、敵、テキ、てき。うむ。以外とハマってるな…」
 え…ええっ?
「そっ、総理?」
「うむ。奴の呼称を決定した。エネミーと呼称する事にする」
「え…いっ…いいんですか…」
 そんな…私が適当に口から出任せで言ったインチキ英語なんかで…


 首相官邸──二階、閣議室。
「目標は時速一二○キロにて依然西北西に進行中との事です」
「東京到達予想時刻は約三○時間後。明後日、零時と推測されます」
 集まった日本の首脳陣が、未知なる生物──エネミーに対しての対策会議を開いていた。
「どうするのかね。総理」
「防衛庁長官の意見を聞こう」
「戦うにしても、米軍からの情報が正しいとすれば、魚雷による攻撃の有効性は認められていないとのこと──」
「まさか陸にあげるつもりなのか!?」
「東京を焦土と化すつもりなのかね君は!」
「しかし、日本の防衛戦略というものはそもそも──」
「エネミー…全くもってやっかいな奴だ」
「だが、なぜ日本なのだ?なぜ東京なのだ?」
「それはお約束というやつじゃないのか…?」
「米軍から、直接介入の案が出ていますが…」
「馬鹿な!核を使うつもりではあるまいな!?」
「有効な攻撃手段がないとなれば、人類最強の兵器を使うほかあるまい」
「防衛庁長官。軽はずみな発言は控えるように」
「失礼。だが、エネミーは我々の手には負えないぞ。どうするつもりだ?」
「核を使えば、日本はまた戦後からやり直すことになるぞ」
「安保か…やっかいなものだ…」
「総理…どうするのですか?」
「総理」
「総理…」
「総理?」
「うむ…」
 村上総理は目を伏せ、大きく息を吐き出した。
 やはり、こういう事態になったときに我々は完全に脇役になってしまうのだな。(注*20)


「はい、これ。エネミーについての情報」
 明美助教授が投げてよこしたA4の紙を受け取って、
「エネミー?なんだそれは?」
 と、平田教授はつぶやいた。
「エネミー、奴の正式な呼称よ。そーりだいじん様がそう呼称したらしいわ」
「センスがないな」
 教授のくせによく言う…
「教授が名前つけるとしたら、なんです?」
 と、香奈。それは聞いてはいけない質問である。
 教授はレポート用紙をめくりながら返した。
「そりゃ、ナントカ獣とか、ナントカ星人とか…」
 それではあの総理と脳味噌のレベルが一緒である。
「これ、どうやって入手したの?」
 シゲも明美助教授から手渡された資料を受け取り、
「ハッキング?」
 彼女に疑いのまなざしを投げかけた。明美助教授の方はすまし顔だ。
「クラッカー助教授…」
「失礼ね。私はハッカーだわ(注*21)」
「よくわからんが…人型だな。身長は五○メートル程度か」
「総理もセンスないな。これなら使徒って名付けりゃ、萌え萌え(注*22)だったのに…」
「使徒?」
「こっちの話です(注*23)」
「五○メートルって事は一○メートル程度の差か…」
「三八メートルですからね」
 香奈がそう言って振り向いた先、ずらりとコンソールパネルが並んだこの地下ケージ管理室の窓ガラスの向こうには、巨大な人型ロボットの顔があった。
 四人は、無言でその横顔を見つめた。
 おそらく、人類初の巨大人型ロボットであろう。
「あとはパイロットですか…」
 明美助教授がつぶやいた。その隣で、平田教授が小さく頷く。
「うむ。私個人としては、誰かがこれを盗んで乗ってくれるとうれしいんだが…(注*24)」
「教授、お子さんとかはいないんですか?」
 シゲの考えていることも教授と似たようなものだ。(注*25)
「いたらとうに呼んでいる」
「でしょうね」
「今、候補としてあがっているパイロットが一人いるが…」
「誰です?」
「香奈くん」
「はい?」
 呼ばれてにこりと微笑む香奈。多分三人の会話はあんまり聞いてなかったに違いない。
 教授は一つ咳払いをして言った。
「香奈くん。確か君には今年高校生になる弟がいたよね」
「はぁ…」
 巨大ロボットのパイロットは、出来る限り若く、そして、可能な限り制作者達に近い存在の人間でなければならない。
 それは巨大ロボットマニアたち共通のポリシーである。


 そんなわけで  
「一也!こっちこっち」
 東京駅。
 この大きな駅も、最終電車の出ていったあとのホームに人影は少なかった。
 だから、香奈にも弟がすぐに見つけられたのである。
「一也っ!」
 自分の弟、吉田 一也に駆け寄ろうとする香奈。しかし、少ししか走らないうちに、一也の方から彼女に向かって小走りに駆け寄ってきた。
 香奈は走るとすぐに転ぶと言うことを、一也は知っていたからである。
「まあ!一也ったら、ちょっと見ないうちに大きくなったわね」
「そんな…子供扱いしないでよ」
 と、香奈の弟、吉田 一也は苦笑いを浮かべて返す。
「僕だって、もうじき高校生になるんだから」
「もう高校生?ついこの間まで小学生だったのに…早いわねぇ」
「お姉ちゃんが上京して、四年も経つんだから──だから子供扱いは止めてってば」
「ごめんごめん」
 いくつになろうと、香奈にとって一也は、可愛い弟である。だが──教授にとって見れば、彼はあくまで理想のパイロットでしかなかった。
「初めまして、一也君」
 と、一也に歩み寄る教授。
 香奈は車の運転ができないので、こうして教授自らが一也を迎えに来たのである。
「あ…初めまして」
 少し驚いたように目を瞬かせ、一也は頭を下げた。この人が、お姉ちゃんの言っていた教授?
 一也が教授に抱いた第一印象は、『妙なオッサン』だった。
「吉田 一也です」
「君のことは香奈君から聞いている。私は、彼女の研究室の教授をやっている、平田という者だ」
 にやりと微笑み、片手を差し出す教授。とまどいがちに、彼の差し出した手に自分の手を絡める一也。
 教授が一也に抱いた第一印象は、『線の細い子』だった。
「よろしく頼むよ」
 と、にこり。しかし、その腹の内は──
 よしよしよしよし!イケてるぞ香奈君。理想的じゃぁないか。やはりあれに乗るからに
は、女の子にもそれなりにウケのいい顔でないといかんからな。──うん。
 大体──ジャニーズもそうだが──芸能界でカッコイイ奴なんて言うのは、要するに普通程度の顔の奴で、何か一個特技あるようなもんで十分なんだ。大体、奴らはTVに出てるってだけで、もてるんだからな。(注*26)
「教授?」
 一人、勝手に腹の内でニヤリングしている教授に向かい、香奈が首を傾げて聞く。教授ははっと我に返ると、
「あ?ああ、すまん。行こう。もうあと二四時間しかない」
 自分の腕に巻かれた時計を見て、言った。
「突然僕を東京に呼んで、いったい何なんですか?」
 一也が聞く。
「いいことだよ」
 と、教授は笑う。
「あ!そうそう、おみやげ。頼んでおいたおみやげの生八つ橋!買ってきてくれた?」
「はあ…買ってきましたけど…」
 でもフツー、おみやげって相手が頼むものじゃないよなぁ…
 一也は左手に提げたおみやげ袋を、ちょっと、持ち上げて見せた。
 『フツー』ではない。
 ──望まずとも、一也はそれを後で嫌と言うほど知ることになるのだが、神ならぬ彼がこの時点でそんなこと、知る由もない。


「巨大ロボット!?」
「そう、燃える展開だろ?」
 運転席で、教授はにやりと笑って見せた。
 助手席に座っている一也の方は、手渡された例の資料に見入っている。暗い車内で資料を見ようと、一也は窓ガラスの近くに顔と手を近づけた。
 ちなみに香奈は後ろで寝ている。
「これ…本当なんですか?」
 流れる街灯の明かりが、一也とその手の中の資料を規則的に照らし出した。宇宙より来たりし、未知なる生物──その資料を。
「これを…巨大ロボットで倒すんですか…」
「これ、ではない。エネミーだ。政府はそう呼んでいる」
「政府?平田教授は…政府との繋がりがあるんですか?」
「ない」
「じゃ、どうやって…」
「ハッキングだよ。日本の関係各省及び自衛隊の司令所は安保体制の建前やらで、通信システムが構成されている。腕のいいハッカーなら、たいして難しい事じゃないさ」
 さも自分の手柄のように言っているが、読者のみなさまにはご存じの通り、この資料をハッキングしたのは明美助教授である。
「巨大ロボットっていうのは…」
「私が作った」
 正確には私たちである。
「どうして僕がパイロットなんですか?」
 一也がそう聞くと、教授は少し目を伏せて黙り込んだ。
「特別な理由でも…?」
「いや…」
 ポリシーだ。
 と、言おうかどうしようか迷っているのである。
「で…でも、巨大ロボットで戦う必要なんてないかもしれないんじゃないですか?」
「なぜだね?」
 教授の方は一也の方から話題を変えてくれたので助かった。
「なぜ戦う必要がないと?」
「だって、日本には自衛隊だってあるし、その、安保とかでアメリカだって助けてくれるんでしょ?」
「自衛隊は役にたたないさ」
「どうしてです?」
「いや…」
 お約束だ。
 と、言おうかどうしようか迷っていたのである。
「安保は?」
「どうだろうね」
 またも一也の方から話を変えてくれたので助かった。
「安保の名の下に原爆を投下してくれるかもしれんな。東京が平らにならされた頃に」
「その前にこれを倒す?」
「そうだ。そして、それが人々の夢の一つでもある」
「夢?」
「ああ」
 教授は、物憂げに微笑んで見せた。
 教授が幼い頃から思い描いていた夢。それは──いつか宇宙の果てから飛来した謎の怪物が現れたとき、巨大ロボットがどこからともなく現れ、そいつを倒してくれる。
 子供じみた──しかし誰もが一度は想ったことのある夢。
 その夢が、今、まさに叶う時。
 自分が、その夢を実現させる。
 教授は助手席の一也を見て、大きく頷いて言った。
「乗ってくれるね」


「地下ですか?」
 長い階段を下りながら、一也は先を行く平田教授に聞いた。
「そうだ。立地条件からな、地下施設が作りやすい大学なんだ」
 それに秘密基地は地下でなければならない。──とは、教授のポリシーでもある。
「いま、研究員が寝ずに最終チェックを行っている」
 と言う教授の背中で、香奈はすやすやと幸せそうに眠っている。起こしたところで起きないことくらい、この二人はよっく知っているのである。
「さあ、入りたまえ。ここが地下ケージ管理室だ」
 教授が引き開けてくれたドアの中に入ると、
「みなさん…ぐっすり眠ってますが…」
 ソファーに明美助教授、机に突っ伏してシゲ。
 教授は小さく咳払いをした。
「まぁなんだ──」
「なんです?」
「これも主役の余裕というやつだ」
「はぁ…」









       2

 小笠原諸島、硫黄島沖合。
 晴天であった。波も穏やかで、平和に時が流れ、静かに陽は南天へと昇っていくかに思えたが、無論、そうであるはずがなかった。
 小笠原諸島、硫黄島沖合には、アメリカ海軍太平洋艦隊が集結していたのである。
「これは周辺有事である!」
 叫ぶのは、この太平洋艦隊を指揮する、帽子を目深にかぶった浅黒い男。腕を組み、声を張り上げるその姿には、何者にも屈しない、海の男の強い意志が現れているかに見えた。
 ──まあ要するに、彼は上の者の言うことなど聞きゃあしないということであるが。
 展開したアメリカ艦隊の各艦ブリッジでは、各艦長達が、彼の一声──その時が来るのを、今や遅しと待ちかまえていた。
 海中には、潜水艦隊の展開を終了しているし、上空には迎撃戦闘機の準備も整っている。準備は、万端というわけだ。
「腰抜け日本人どもは、着上陸阻止などとぬかしているが、我々無敵のアメリカ軍にかかれば、エイリアンなど、恐るるにたりんっ!」
 つまり、彼は持てる限りの火力をぶっ放せれば、それで本望というわけである。
「目標!ソナーが捕らえました!!」
 ブリッジに響く声。
「よし。わかった!」
 彼は声を張り上げ、言った。
「全艦任意に迎撃!!ジャップの自衛隊機が邪魔なら、撃ち落としてもかまわん!!」
 今ここに、人類初の宇宙生命体との本格的な戦闘が始まったのであった。


「報告します」
「なんだ…」
 村上総理はぼうっとしていた。寝てないのである。ふと腕にはめたローレックスを見ると、もう昼を過ぎている。そうか、腹も減ってるんだったな…
 自分でも自分のことがわからなくなってしまっているのである。
「エネミーを深海六五○○が捉えました。計算によると、現在は母島付近を通過しているものと思われます。(注*27)東京到達予想時刻には、修正ありません」
「うむ…」
「総理!」
 と、部屋に駆け込んできた青年が叫んだ。手には、四つ切りほどの写真を手にしている。
「どうした?」
「はい!母島で、エネミーの写真撮影に成功しました。米軍と…空自(注*28)もエネミーを確認しました」
「本当か!見せて見ろ」
 青年の手から写真をひったくって、村上総理は顔の血の気がざーっと音を立てて引いていくのを感じた。写真には、爆撃を食らっているエネミーの姿が写っていたのである。
「馬鹿な!攻撃を許可した覚えはないぞ!」
「米軍です。艦砲射撃及び、爆撃機による攻撃を行いました」
 村上総理は、写真を手にした手が震えているのがわかった。爆撃の中、揺らぎもせずに、エネミーはいくつもの艦を沈めていたのである。
 なんと言うことだ…これだけの攻撃を食らっているのに…
「それで…エネミーは?」
 総理は、わかりきっている答えを聞いた。
「はい。米軍の太平洋艦隊に壊滅的な打撃を与え、依然北上中です。攻撃によるダメージは、ほとんど認められていません」
 総理は目の前が真っ暗になるのがわかった。
 もう駄目だ。できることなら、今すぐ内閣を解散したい…


「到達予想時刻は明朝零時」
「あと、十時間ほどですね」
「そんなら、すぐやれそらやれとっととやれ!時間がないぞ時間が!」
「命令ばかりじゃなくて、教授もやってくださいよ」
 シゲがインカムのスイッチを切ってぽつりと呟いた。全長三八メートルもある巨大ロボットを、たった四人で整備しようと言うのが間違いなのである。いや、より正確には教授と香奈は何もしないので二人なのだが。
「乗ってみた感じはどうだい?」
 教授はコックピットの一也を覗き込んで聞いた。コックピットは首の後ろに入り口がある。強度と内燃機関の問題でそこにつけざるを得なかったのだ。教授個人としては、胸のした、みぞおち辺りに作りたかったのだが…
「こんなにスイッチがいっぱいあったら、覚え切れませんよ。無茶です」
「それは飾りだ。使わない」
「は?」
「雰囲気だよ。雰囲気。コックピット写真公開って時に、やけにさっぱりしてたらカッコつかないだろ」
「はぁ…」
 教授の頭の中では、理論よりも格好良さがすべてにおいて優先されるのである。
「こいつを動かすシステムはBSSって言って、一也君の脳の電気信号をピックアップして、そいつで各部アクチュエーターを動かす──ぶっちゃけた話、一也君の思い通りに動かすことができるというシステムを使っているんだ」
「すごいじゃないですか!」
「うん。ただし、BSSに対応するよう、一也君も手術しなくちゃならない」
「手術!?」
 声を裏返らす一也に向かって、教授は平然とした表情で言った。
「一也君。ヒーローになるためには、それなりにリスクを負わなきゃ。世の中、そんなに甘くはないよ」
 甘くないって…あなたが僕をここに呼んだんじゃないですか…
「別に、僕はヒーローになんてなれなくてもいいですよ」
「あれ?一也君。君、巨大ロボットに乗りたくないの?」
 教授は、にやりと微笑んだ。悪魔の誘惑にも似た、微笑みで──である。
「そっ…そりゃ…」
 そりゃあ、乗りたいですけど…男の子なら誰だって一度は夢見るものですもん。それに乗れるとなれば…いや、でも手術なんて…
 思案顔の一也に向かって、
「安心しなさい。手術と言っても、こめかみんとこに電極を埋め込むだけだから」
 教授は「歯の治療をするのと同じだ」とでも言わんばかりに笑った。
「そんな恐ろしいことを、笑いながら言わないでください」
「信用できないかね」
 教授は大真面目な顔をして、
「手術を行うのは、私の大の友人だよ」
 恐ろしいことを、平然として言った。


「大丈夫大丈夫!」
 と言う教授の笑い顔が、もっとも不安を煽る要因であると、彼自身は気づいていない。
「私の友人を信じなさい」
「──その人、名前なんて言うんですか?」
「えーと…黒…岩だかなんだか…まぁ我々の間ではBJと呼ばれているがね」
「──僕、帰ります」
「じゃ、一也君。しっかりと電極を埋め込んできてもらいなさい」
 むんずと一也の服を掴み、T大学正門前に停車したタクシーの中へ、教授は彼を押し込んだ。
「腕はいい人だから」
「は──ってなんなんですか!」
 そんなことを言う一也の声は、教授の耳には届かない。
「じゃ、香奈君。弟の方は任せた」
「はい」
 と、微笑みながら返す香奈。タクシーの中の一也が見えない訳ではないけれど、別に自分が痛いわけでもないので、彼女にとっては問題ないのである。
 「よいしょ」と、彼女は気づいてはいないだろうが、一也の出口をふさぐようにして、タクシーの中に身を滑り込ませた。無論、教授の策略で──である。
「あれが準備できたらケータイに連絡を入れるから。そこで落ち合う先を決めよう」
「わかりました」
 と、素直に答える香奈にも困ったものである。(注*29)
「一也君、安心していいよ。うちの大学病院は設備だけは一流だから」
 香奈の向こう、憮然とした表情の一也の横顔に向かって、教授は笑いかける。
「──だけ?」
「大丈夫大丈夫!」
「そうそう、お姉ちゃんも保証するから」
 教授と香奈にそう言われても、逆に不信感が募るだけだ。
「僕、今やっと僕がパイロットに選ばれた理由がわかったような気がします」
「そう?」
「はい。普通の人なら、教授達を信用して手術を受けようなんて思わないですもん」
 うん。それは正解かもしれない。──と、教授も思った。


「よしっ。これでパイロットもなんとかなった」
 地下ゲージ管理室のソファに腰を下ろし、教授は一息を付いた。
「なんとかした──じゃないんですか」
 起動システムの確認をする明美助教授が、ノートパソコンから顔もあげずに言う。
 と──
「明美君」
「はい?」
「君は僕のなんだい?」
「助教授」
「わかっていれば、よろしい」
 教授はこくりと、大きく頷いた。
「あとは輸送手段だけですね」
 チェックリストの最終確認を終えたシゲが、軽く息を吐き出しながら言うと、
「は?」
 教授はその言葉に、ぱちくりと瞬きをして返した。
「どういうことかね?」
「どういう…って」
「教授…これを、どこにどうやって運んでいくつもりなのか、私達に聞かせてくれませんか?」
 明美助教授の言葉に固まる教授。一つ咳払いをしてから、
「うむ。明美君」
「はい?」
「君の意見を聞かせてくれ」
「教授。やっぱり、何も考えてなかったんでしょ」
 明美助教授は深くため息を吐きだした。
「ま、そんなことだろうとは思ってましたけど…」
 明美助教授は立ち上がって壁際に歩み寄ると、OHP投影用のスクリーンを勢いよく引き下げた。
「私の作戦はこうです」
 電気を消し、スクリーンに映像を投影する。
「横浜…かね」
「そうです。横浜でやります」
 スクリーンに映し出された横浜の地図。明美助教授はにこりと微笑んで、続けた。
「エネミーの進路にもよりますが、大学からの距離、海底の深さ、適度な施設等を考えると、自然とこうなります」
「適度な施設…とは?」
「あれを組み立てる施設です」
「ばらしてもっていくつもりなんですか?」
「シゲくん。あんなでっかい物、どうやって持って行くつもりだったわけ?」
「やはりここは、専用輸送機を使用してですね──」
「まだ図面しかできてないもので、どうやって運ぼうというの?」
 と、明美助教授は嘆息。
「プラモデル作るのとは、わけが違うのよ。もう時間、ないんだから」
「むー…」
「まぁ、バラして持っていくとして──適度な施設というのは、具体的にどこを?」
 言いながら、無精髭をひっぱる教授。やはり結局、何も考えていなかったようである。
「適度な施設──ここです」
 明美助教授はレーザーポインターで、スクリーン上のそこを指し示した。
「横浜スタジアムです」
「なるほど。アレを組み立てるには十分な大きさだ」
 腕を組み、唸る教授。
「それから、ここまでの輸送手段ですが──」
 明美助教授は微笑んで、続けた。壮大な──言うなればペテンとも言える──計画の全貌をである。
「やっぱり、明美さんは教授の助教授なんですね」
 シゲが苦笑いと共に皮肉ったが、結局彼女自身もそれを否定せずに微笑んだだけだった。


 防衛庁におかれた対策本部から、ため息混じりに姿を現すのは村上 俊平総理。
 ため息もつきたくなる。米軍が小笠原諸島で、どう考えても『演習』とは言えないほどの火力を使ったのだ。マスコミに事がばれるのも、時間の問題であろう。
「官邸へ戻る」
 秘書の彼女に声をかけ、右手で差し出された新しい資料を受け取り、左手のローレックスに視線を走らせる村上総理。針は、時期に五時を回ろうとしていた。
「もうこんな時間なのか」
 六時台のニュースにエネミーの第一報が出るとすれば、混乱は必至だ。そのまえに  とは思うのだけれど、具体的な手段が何もない。もともと、日本は自衛隊などを持ってはいるものの、あくまで『着上陸阻止』を前提にしているので、『上陸されてしまったら』もはや打つ手がないと言うのも事実なのである。
「万一敵を早期に迎撃できなかった時は、内陸部で持久戦を行い、他の地域から部隊を集結して反撃いたします」
 とは、統幕議長の弁。その万一の事態が起こっているのだと、彼はまだ気づいていないのに違いない。──と、村上総理は思っていた。けれどそれ以前に、自衛隊などハナっからあてにはしていなかったのだけれど。
「官邸へ戻る」
「かしこまりました」
 防衛庁の前に横付けされたリムジンのドアを開けていた運転手が、彼の言葉に深々と頭を下げた。後ろには、バインダーほどもある手帳を開いた秘書がついてくる。
 彼が車の中へ身を滑り込ませると、
「いい、私が出る」
 待っていたかのように、車載電話が鳴った。
「もしもし?」
 ため息混じりの総理の声に、笑うような男の声が返ってきた。
「どうも始めまして」
 と──


「誰だね?」
 眉を寄せ、村上総理は聞く。
「名乗るほど、有名というわけではありませんが…」
 電話の相手──おわかりのことであろうが、平田教授である──は、軽く笑って、
「ここで電話を切れば、総理が一生後悔することになると言うことは、事実ですね」
 そんなことをさらりと言ってのけた。
 村上総理は、黙っていた。悪戯にしては、ここの電話にかけてくる位なのだから、周到な者である。それにこの話し方──この電話の相手は、奴のことをすでに知っているように思えた。
 顎をしゃくり、助手席の秘書に「出してくれ」とジェスチャーを送る村上総理。秘書の彼女は軽く頷いて、運転手に「出してください」と小声で言った。
「なにか、私に話でも?」
 ゆっくりと走り出すリムジン。
「消費税を上げないでくれと言う話なら、もう無理だよ」
 苦笑しながら、そんなジョークを言ってみたりする。
「ああ…それは実に惜しいことをした。もう少し早くに電話をしていれば五パーセントにもならずに…そう言えば、税金が上がる前にあれを買って──」
 ぼそりと呟く男の向こうで、誰か、女が「何の話をしてるんですか!」と怒鳴っているのが聞こえた。
 村上総理は何となく、この電話の向こうにいる男が、悪い奴には思えなくて仕方がなかった。少なくとも、自分にはいくらか近いタイプに違いない。
「用件を聞こう」
 と、声のトーンを落とす村上総理。
「そうですな」
 電話の向こうの相手も声のトーンを落とし、一瞬笑って、言った。
「ページの無駄ですからな」
「は?」
「いや、こっちの話です」
 こほんと、気を取り直すように咳払いをひとつ。
「エネミー…奴の日本上陸は、時間の問題ですか?」
 押し殺した──しかしすべてを知っているという声。それが作り物であろうとなんだろうと、事実とは相違ないので、
「ああ。明朝零時には、日本へ上陸する」
 村上総理は隠すこともせずに、言った。
「混乱は必至?」
「だろうな」
 ふ。と、村上総理は自嘲気味に微笑んだ。言うまでもないが、二人は自分たちを取り巻く空気に酔っている節があるので、あまり真剣になって相手をしてはならない。
 たとえば──
「用件だけ言って、切ってください。逆探されたら、かかりますよ」
 と、教授の耳元で彼をせかす明美助教授のように。
 教授は嫌そうに顔をしかめて、「こういうものは雰囲気を楽しまないと」と、小声で明美助教授に言って、思い切り足を踏みつけられた。
「うっ…!!」
 と、思わず呻く。
「?」
 村上総理は眉を寄せたが、彼がなにかを言うよりも早く、
「じ…自衛隊の方はどうです?」
 電話の向こうで、けんけんしながら教授は聞いた。
「どうかな…どこに上陸するかも、まだわからない。すべて後手後手を踏むだろう」
 村上総理はため息を吐き出す。そして、電話の向こうの相手がおそらく待っているであろう言葉を、ぽつりと呟いてみた。
「我々の手には、おえない状態だ」
 それは、幼い頃に同じ想いを胸に抱いたことのある者達だけがわかる、お約束的な台詞であった。
「──総理」
 電話の向こうの教授は、シリアス顔に、言った。
「最後の希望、我々に託してはみませんか?」
 村上総理は、この電話の男がどこまで本気なのか、実際わからなかった。だが、自分がこの電話をたたきつけるようにして切ることも出来ず、そして結局は彼の言う「最後の希望」を、この訳の分からない男に託すことになるのであろうと言うことを、否定できないのであった。


 首相官邸についたとき、村上総理はもう電話を終えていた。
 そして目をじっと閉じ、なにかを考えるように腕を組んでいたのであった。
「総理?先ほどのお電話は──」
 ゆっくりと止まるリムジン。
「ああ…」
 その中でゆっくりと目を開けると、総理は言った。
「賭をしないかと、誘いをかけられてな」
「賭?」
「日本の未来の明暗を──だ」
 自嘲するように笑う村上総理。その言い方に、秘書の彼女は軽い目眩を覚えた。
 ああ…何故この人が、この国の総理大臣なんてやっていられるのかしら…
 答えを聞くまでもなく、彼女には総理の出した答えがわかってしまったのである。
「自衛隊の輸送用ヘリを何機か用意しろ」
 ああ…やっぱりそうなんですね。
「日本の未来は、あの男に託す」
 それが無謀な賭であることは、言うまでもない。


「ふっふっふ…」
 教授は、横浜スタジアムのマウンドに仁王立ちして、不敵に笑っていた。
「機は熟した!」
 ばばばばばと、頭上からするローター音。巨大な、陸上自衛隊の輸送用ヘリコプターのローター音である。
「もはや、我々を止めるものは何もない!」
 ぐっと拳を握りしめる彼の周りでは、土煙が盛大に舞っていた。横浜スタジアムのマウンドの土である。ヘリコプターのローターが生む風に、ごうごうと舞っているのである。
「教授、あれが目に入ったらとか──」
 ぽつりと、着陸した小型ヘリコプターから降りたシゲのつぶやきに、
「考えてるわけないじゃない」
 同じように、ノートパソコンを小脇に抱えてヘリから降り立った明美助教授が続く。
「それに、もし目に砂が入ったとしても、今のあの人なら我慢するわ」
「なるほど」
 ぽんと手を叩くシゲ。彼の頭の中では、格好良さはすべてにおいて最優先なのである。
 明美助教授は軽くため息を吐き出すと、
「しかし、本当に乗ってくるとは思わなかったわ」
 頭上を飛ぶ何機もの輸送用ヘリコプターを見て、呟いた。
 この何機もの輸送用ヘリコプターが運んでいるのは、言うまでもなく分解した巨大ロボットの各部パーツである。
「──ある意味、今の総理の人間性を疑うわね」
 と、明美助教授はぽつり。本気で彼女も、こんなに上手くいくとは思ってもみなかったのである。額に流れた一筋の冷や汗を、隠しきれない。
 ゆっくりと下ろされる、各部パーツ。芝の地面が、その重みに沈んだ。
「よーしッ!!」
 拳を突き上げ、教授は叫ぶ。
「組み立て急げッ!!決戦の時は近いぞッ!!」
 無論、彼はやらないのであるが。


「報道官制…引かれてないのかな」
 シゲが頭上を飛び交うヘリコプターを見上げていった。
「関係ないさ。人類最初の、一大イベントだよ。報道陣も息巻いて、好都合じゃないか」
「あれのお披露目には最適──ですか?」
「どっちにしたって報道官制ってのは日本の報道機関にしか効かないからな。CNNがすっぱ抜くさ(注*30)」
 ちらりと、腕の時計に目をやって返す教授。
「しかし…香奈君たちはまだか…」
 そのつぶやきが聞こえないかのように、
「教授、もうニュースやってますよ」
 と、シゲは手の中の液晶テレビを見て、笑うようにして言った。
 液晶に映る山下公園には、巨大な投光器が列をなして並んでいる。その頭上を飛ぶヘリコプターも、海を照らしてエネミーを探しているようだ。
「どうも、エネミーは浦賀水道を北上中のようですね」
 ぱちぱちとチャンネルを切り替えながら、
「あ。TBSのヘリが、頭を捕らえた映像を流してますよ」
 シゲは、実に楽しそうな声をあげて言った。
「横須賀に立ち寄る気配はないんだな?」
 と、教授。
「今のところ、なさそうですね」
「でも──早く着かないのかしら」
 そう言って、明美助教授も腕時計を見た。零時まであとわずか。早く着いて欲しいのは香奈と一也であって、エネミーではない。
「いつでも動けるようにはなってるんだろ?」
「教授。システムの正常稼働を確認するのに五分はかかるんですよ。早く着いてくれることこしたとは──」
「あ、来ましたよ」
 シゲの声に顔を上げると、香奈に連れられて、一也が少しおぼつかない足取りで歩いてきていた。
「すっ…すみません!」
 ぺこぺこ頭を下げながら香奈。教授たちの所へと歩み寄ってくる。
「急いできたんですけど、途中で警察の人に捕まっちゃって…警察の人、道を封鎖してるんですもん」
「なんと言って切り抜けてきたのだ?」
「緊急事態だって言って…」
「──よく通してくれたな」
「一也君、気分はどう?」
 明美助教授の微笑みに、一也はかすかに笑って答えた。
「最悪です…頭がガンガンしますよ」
「麻酔が抜けきってないところをたたき起こしてきたんで…」
 えへへと笑う香奈。
「拒絶反応は?」
「大丈夫です。一也、強い子だもんね」
「この頭が痛いのが拒絶反応と言わないのなら、大丈夫です…」
「じゃ、平気だ」
 と、あっさりきっぱりと言う教授。一也が白濁視していることなど、気づきゃあしない。
「エネミー、本牧岬ににかかりました!全チャンネルで、エネミーの全体像を映していますよ!!」
 シゲの声に、全員が小さな液晶テレビを覗き込んだ。初めて間近に見るエネミーの全体像。
「こりゃ…まるで巨神兵(注*32)じゃないか…」
 と、平田教授が漏らせば、
「ラピュタにでてくるロボットの方が似てません?」
 と、明美助教授が反論する。
「使徒だ使徒」
 興奮気味なのはシゲ。
「じゃ、一也。がんばるのよ」
 他人事のように──他人事か──香奈。
「あの…本当に倒せるんですか」
 心配そうに一也が言えば、
「心配するな。負けることを」
 教授は胸を張って言った。


「ああっ!なんだあれは!!」
「おおっ!やっぱり出たかっ!!」
 警察、自衛隊の手によって封鎖された、横浜は山下公園。ここに集まった命知らずな人々は、今、歴史的なワンシーンに直面していた。
 投光器が動く。カメラのフラッシュがばちばちと瞬く。
 その向こう──
 大桟橋に停泊していた巨大な船が、いつの間にか煙幕に包まれていた。そしてその煙幕を、内側から輝かせる光。ぼやっと、浮かび上がる巨大な影。
「なっ…あれは…」
「巨大ロボットだっ!!」
 煙幕が晴れると、その中からサーチライトの光に照らされた、巨大ロボットが姿を現したのであった。
 頼もしいばかりの鋼鉄の巨体が、投光器の光の中できらりと輝く。
「みなさん!ご覧いただけますでしょうか!やはり、我々の期待していたとおりに、巨大ロボットが現れてくれました。これぞ、人類の夢が叶った瞬間であります!!」
 テレビPの報道アナウンサー、新士 哲平は、声を荒げて捲し立てた。
「センちゃん!ちゃんと撮ってる!?」
「バッチリっすよ」
「視聴者のみなさま!ご覧いただけるでしょうかッ!?」
 叫び続ける新士 哲平。彼は、こうも見えても報道アナウンサーである。外からの事件報道は、基本的にレポーターの仕事であるということは言うまでもないが、彼はこの一生に一度とも言える『大事件』に、スタジオになんかいられなかったのである。
 沸々と体の中で沸く血を抑えきれずに、彼はスタジオを飛び出したのであった。幼い頃に胸に抱いた想いを、今一度確かめるために。
 そしてその想いは、今も枯れていなかったことを、新士は再確認していた。
「これは、今まさに歴史的な一瞬であります!瞬くフラッシュ、人々の歓声。我々は、歴史に名を残すであろう出来事を、今、眼前にしているのであります!!」
 新士は、手にしたマイクをぐっと握り直した。
「ああッ!!センちゃん!!──あ、いや──視聴者のみなさま。ご覧ください!あれが、敵が、エネミーがついに我々の前に姿を現しましたっ!!」
 くるりと振り向くカメラマン。画面が一気に一八○度パンニングされる。
 投光器の光と、頭上を飛び交うヘリコプターが、エネミーの巨体を照らし出した。
「ついに、エネミーと巨大ロボットの対面でありますッ!ここ、横浜は山下公園は、今まさに世紀の対決を目撃せんとする人々で埋め尽くされておりますッ!!この歓声、この巨大ロボットを応援する人々の声が聞こえるでしょうかッ!がんばれ巨大ロボ!!エネミーなんかに負けるなッ!!なお深夜映画『若妻は魔女』は、後日改めて放送いたします(注*33)」
 巨大ロボは、二本の足ですっくと船上に立っていた。真っ直ぐに前を向き、その方向からは、エネミーがゆっくりと近づいて来ている。
 ロボットとエネミーの距離が、二○○メートル程になろうかというとき、
「ああッ!ロボットの手が、巨大ロボットの手がゆっくりと上がっていきます!!」
 新士 哲平の言うように、巨大ロボットの手がゆっくりと上がっていったのであった。
 そして、その巨大ロボットの背中に取り付けられていたプロペラが、高速に回転を始めた。サーチライトの光に照らし出され、漆黒の闇へと舞っていく煙幕。
 両腕をまっすぐに伸ばし、ぴたりと静止する巨大ロボット。エネミーも、自分の正面に立つ巨大なモノに、その歩みを止めた。
 観客が思わず息を飲む。皆、考えていることは一つだ。
 そう──
 そしてそれは、期待通りに飛んだのである。
「ロケットパンチだあぁあああッ!!」
 暗闇の空を引き裂いて、エネミーに向かって真っ直ぐに飛ぶロケットパンチ。
「行けッ!ロケットパンチ!僕らの夢を乗せ、エネミーを打ち倒せッ!!」
 巻き起こる歓声。見守る人々の心が今一つとなり、それを受けてロケットパンチがエネミーの体にぶちあたり、大爆発を起こす。
「やった!やりました!命中です!!」
 空気を揺るがす大声援と、大爆発。
 だが、
「ああああッ!!」
 無論、エネミーには効きはしない。
「生きています!揺らぎもしません!なんと言うことでしょう!」
 漏れる嘆息。そしてその嘆息はそのまま、恐怖という言葉に飲み込まれた。
 駆け出すエネミー。海が激しく波打つ。エネミーは山下公園の人々に強烈な波の洗礼を浴びせかけ、大桟橋に停泊していた船上の巨大ロボットを、まるで大人が手にした子供の超合金ロボのように、がしりと握りしめたのであった。(注*34)
「ああッ!やられる!巨大ロボットがエネミーに捕らえられてしまいました!!あれ、センちゃん?センちゃんどこ行ったの?ただいま本放送は音声のみでお送りしています!!」
 新士 哲平。波に濡れながらでも、プロ根性もここまで来れば大したモノである。
 バキン!と、巨大ロボットの身体が折られる音が響いた。
 そしてエネミーは、その巨大ロボットを、玩具に飽きた子供よろしく、遠くの海に向かって投げ飛ばしたのであった。
「ああっ!もはやこれまででしょうか!」
 横浜港に、巨大な水柱が立ちのぼる。
「人類期待の巨大ロボットも、未知なる生物、エネミーの前に敗れ去ってしまいました。もはや私たち人類に残された道は、滅びの道しかないのでしょうか!?」
 新士哲平は、空を仰いだ。そして、その場に居合わせた人々、彼の声を聞いていた人々も、皆、そうであった。


「脇役が出しゃばるからだ」
 ふっと鼻で笑ったのは誰であろう──言うまでもなく教授である。
 教授は手にしていた液晶テレビを足下に置くと、
「やはり主役は後から登場するのが常!!」
 ぐっと拳を握りしめ、高らかに主役宣言をした。
「行くぞっ!!」


「BSS正常稼動を確認」
「両上腕部から指先にかけてスキャニングテスト実行。モニターしました」
「下半身のリンクは?」
「八四・六パーセントリンクしてます」
「明美さん。それ、シンクロ率って言い換えられないですか?」
「は?」
「一也君。気分はどうだね?」
「自分が自分じゃないみたいです」
「BSSのせいだな。明美君、全体は何パーセントリンクしている?」
「約八○パーセントのシンクロ率です。──って、これでいいのシゲくん?」
「萌え萌え」
「いけるな…どうかね、香奈君」
「最低稼動指数は六○パーセントです。いけると思います」
「よし、BSSシステム解放。機体とのリンクを開始」
「だから教授!シンクロにしましょうってば!」
「どっちでもいいじゃないの…システム解放。BSS、全機体システムをオペレートしました」
「各部アクチュエーターとマニュピレーターのシンクロ正常。起動可能」
「シゲ君、あくまでそれにこだわるのね…」
「一也君。前座は場を大いに盛り上げてくれた。あとは君がエネミーを片づければ、英雄──そして揺らぐことのない主役の座を得ることが出来る!」
「英雄とか主役とか…どっちにしたって、やらなきゃこっちがやられるんでしょ」
「わかってるじゃない。よし、起動だ!」
「最終安全プログラム解除。起動します」
「そうだ。教授、ずっと気になってたんですが…」
「なんだね?」
「このロボット。名前はなんていうんですか?」
「こいつか?このロボットの名前は──」
 横浜スタジアムでゆっくりと起きあがる巨大ロボット。漆黒の空を飛ぶヘリが、その顔を照らし出す。
 教授は、満面の笑みを浮かべて答えた。
「こいつの名前は、R‐0(アール・オー)」
 投光器の光に、R‐0の全身が照らし出された。


つづく








   次回予告

    (CV 吉田 香奈)
 ついに動き出した巨大ロボットR‐0。
 そしてその前に立ちふさがる敵、エネミー。
 果たしてR‐0はエネミーを倒すことができるのか。
 倒せなかったら…それはそれで大変なことになるんだけど…
 R‐0。
 BSS。
 そして、エネミー。
 すべてはマッドサイエンティストたちの夢を乗せ…
 次回、『新世機動戦記R‐0』
 『初陣、横浜決戦。』
 お見逃しなく!


[End of File]