あとがき
あの巨匠、宮崎 駿氏は、以前こんな事を何かの誌上で言っていた。
「25歳で自分が父親になったとき、子供に見せたいと思うアニメがなかった。だから、アニメを作った」
僕はアニメが好きだし、マンガも、小説も、音楽もゲームも、およそ娯楽と呼ばれている物のすべてが好きだ。
だから、それらが好きだから、何となく、宮崎 駿氏の言った言葉の意味がわかる。
もし、僕に子供が産まれたとしたら、僕はその子にどんなアニメを見せるだろう。どんな本を読ますだろう。どんな音楽を聴かせるだろう。
そう考えたとき、R‐0を書かなくちゃいけないと思うようになった。
でっかいことを考えた訳じゃない。──もちろん考えなかった訳じゃないけど──ただ単純に、今自分の思っていることを書き留めておきたかった。そして出来れば、それを自分の子供に見せたいと思えるような物にしたかった。
自分の子供に見せたいと思える物──ないならやはり自分で作ってみるしかない。
結果として──
その試みは失敗したと言っても過言ではあるまい。
こんなの子供が見たって、面白くないって。(笑)
と、言うことであとがきです。
始めましての方には、みなさん始めまして。いつもお世話になっている方には、いつもお世話になってます。って、なんだか変な挨拶ですねぇ。
いかがでしたでしょうか、『新世機動戦記R‐0』しかも『復刻版』。
この作品自体は、色々なところでも触れているように、1997年の3月19日より週刊で連載された作品の復刻版だったんですね。
今回、復刻版を作るにあたって、色々と加筆修正を加え、全体の流れなどもきっちりとまとめ直しましたが、いかんせん、長いっすね。
もともと、僕は長い作品を作ることはほとんど苦ではないのですが、このR‐0ばかりは、ホント、苦労しました。
なにしろ、週刊連載小説なんて、今まで一度も書いたことがなかった。今じゃ、こうしてホームページ上で色々と作品を公開していて、Web作家のみなさんの動向なども感じ取らせてもらっているのですが、当時の僕は、ほとんどこのWebの世界とは接点がなかったんですよ。
週刊連載をしている方も、結構Web上にはいらっしゃいます。けど、みなさんに対して一言だけ言えることがあります。
一話、短めにしといた方がいいです。(笑)
いや、本当に。
この作品、『新世機動戦記R‐0』は、週刊版の当初、30分アニメの尺で考えて書き始めました。大体、40字×20行で一話、30枚くらいでしょうか。原稿用紙で、60枚ほどです。
ところがこれ、書き始めてみると書きたいことが増える増える。もともと、増やすのは得意なものなので、気がつくと、40、50は当たり前なページ数に…
でも、初めの頃はよかったんですよ。ストックがあったし、結末なんて考えないで書き続けていたし。けどですねー…
後の方で、どんどん自分の首を絞めていくことになりした。張った伏線も、どこにどう流れていったかわかんないし、今まで40、50ページで書いていたものを、いきなり一話20ページには出来ないでしょう。
もう、週刊版の発行日、毎週水曜日が怖かったですね。前日にあがるなんてざらでした。
それでも、途中で目が見えなくなったり、マシンが壊れたりしましたが、合計で4週ほどの落としただけで、(だけ?)なんとか、結末を迎えられたんですね。
それが、週刊版新世機動戦記R‐0。
はっきり言って、僕の代表作といっても過言ではない出来でした。キャラもよく立っていたし、ストーリー自体も、書きたいことがかけた。
ただ、どうしても、やり残していたことがいくつかあったんですね。
で。この『復刻版』です。
週刊版でやり残してしまったこと、しっかりと終わらせられなかったこと、あんまり評判がよくなかったこと、全部を、この復刻版で加筆修正しました。
お陰で、さらに長くなってしまいましたが…それでも、胸を張って世に送り出せる作品になりました。「どうだすげぇだろう。こんなに長いんだぞ」って。(笑)
だって、ディスク1枚に入りきらないんだもの。
新世機動戦記R‐0は、あくまでギャグ・パロディです。
最終回付近とか、ずいぶんシリアスじゃないって話も聞きますが、あくまで、これも僕の中ではギャグ・パロディなんですよ。シリアスをナメて笑うという感じの。
僕は、シリアスとギャグの綱渡りという作品が、実は一番好きなんです。そんなわけで、R‐0はかなりのお気に入りなんですね。
これはシリアスだ!だけど、本当はギャグなんだよって感じでしょうか。
これが、比較的違和感なく作れたんじゃないかなと思うんですけど、みなさんはどう感じましたでしょうか。
なんだかんだ言ったって、もともとは、パロディなんだろって?
いえ、違います。挑戦です。(笑)
いろんな意味で、いろんなものに対する、挑戦です。(笑)
勝ち負けはともかくとして、この叩きつけた色々な意味での、色々なものに対する挑戦状、みなさんはどう受け止めましたでしょうか。
ま、結局はR‐0を読んで下さったみなさんが、「面白かった」と思っていただければ、僕らはそれがなにより嬉しいことなんですけどね。そして、この小説の中の言葉の一節でも、あなたの気に入った一文でも、その記憶の中に残していただければ、それに勝る喜びはないのです。
さて、いかがでしたか?小説『新世機動戦記R‐0』。
映画、インディペンデンスデイの話題から、「もし地球に宇宙人が襲ってきたら、どうなると思う?」と言う友人の問いに、「絶対巨大ロボットが現れて、世界を救う」と、本気で答えた僕の、答えとも言える作品です。
この歳になっても、そんなことを本当に、疑うことなく信じているロボット好きの男が、同じようにロボット好きなあなたに──または、幼い頃にはそれと同じ想いを抱いていたはずなのに、いつの間にかそれを無くしてしまったあなたのために、この作品を送ります。
その想いを忘れそうになったとき、きっと再び会いましょう。
1997/10/22 未明 週刊版完結
1998/12/21 夕 加筆修正 完
[End of File]