appi:「緑とか…
uxi-ta:「
緑はやめなさい。
aoiruka:「専用機…
uxi-ta:「専用機なら、
赤!
通常の3倍ッ!?*1
appi:「今が赤です。私。
spit:「ってことは、染めると1/3になるのか…
そうなんだ!?
uxi-ta:「アピさんは、赤だよ〜。
aoiruka:「静電気がひどくなりますよ?
spit:「ひでぇ言われようだ…
スピットは苦笑するように口を曲げると、立ち上がりながら、帽子をちょいとなおしました。
spit:「で?
appi:「まずは、アルベルタですね。
uxi-ta:「ええっ!? 染めるんだっ!?
aoiruka:「アピさんは、赤だと思うなぁ…
spit:「気にいらなければ、
戻す。
お前の権限かよ!?
spit:「それに、俺も染料って作ってみたいし…
aoiruka:「染めるんですか?
spit:「染めないけど…そういや、髪の毛って、いつの間に染められるようになったんだ?
uxi-ta:「コモドへのルートが出来て、髪染めの職人さんがコモドからの長期バカンスから戻ってきて…
aoiruka:「以下略。
spit:「
EP2.0からか。
世界観というものを考えてください。*2
appi:「では、まずはアルベルター!
「おー。
と、皆が返します。
appi:「
徒歩で。
ポタルありません!
そんなわけで、ウィータを残し、スピット、アピ、あおいるかの三人は、イズルードから船の乗り、一路、アルベルタへと向かいます。
appi:「まずはここで、ディトミリンとカルボーディルというアイテムの使い方を、教えてもらうそうです。
と、アピはメモを見ながら言いました。
spit:「…
飲み物じゃなかったんだ?
aoiruka:「飲んだら、死にそう…
*3
さて、一行はアルベルタの宿屋、その二階の一部屋に入りました。と、そこにはひとりの青年の姿。
アピは手にしていたディトミリンとカルボーディルを彼に見せ、なにやら話しています。
spit:「…いつの間に、こんな奴いたんだ。
ぽつり。
aoiruka:「昔からいますよ?
spit:「俺の記憶では、いない。
あんたのアルベルタの記憶は、
ベータだろう。*4
appi:「次は、ゲフェンにいって、科学者さんに合わなければいけないそうです。
spit:「ゲフェ?
スピットは首を傾げます。
spit:「その、ミリンだかしょうゆだかで、染料作るんじゃないの?
しょうゆとかマヨネーズとか、言うな。
*5
appi:「これで、混合剤と中和剤を作るのです。
aoiruka:「カプラさんにゲフェに飛ばしてもらいますかー?
アピとあおさんの話を聞きながら、スピットは小首を傾げます。
spit:「混合液なら、転職試験でつくるじゃん。
appi:「あれとは違うのですよ〜。
てくてく。
三人はアルベルタ入り口のカプラさんに向かいます。
と、アルベルタの町を歩いていたプリーストが、「お?」とスピットたちを見つけて声をかけました。
Farmei:「あ、スピさん。
spit:「おー、華ちゃん。ちわっ。
それは先日プリーストに転職した、華ちゃんでした。
華ちゃんは開口一番、
Farmei:「デートですか?
aoiruka:「俺は邪魔者だったのか!?
appi:「違いますよ〜。
spit:「そんなわけで、華ちゃんはゲフェポタある?
どんなわけとか、言うな。
と、にやり。
Farmei:「onBookによると、私の認識は、
そうらしいですし。
spit:「がくがくがくがくー!?
appi:「onBook、EP1.5は、onBookページから。
aoiruka:「誰に向かって言ってるんですか…
appi:「読者のみなさんへの、CMです。
ありがたいけど、
そういうこと言うな。*6
と、近くに座っていたプリさんが、こちらの話を聞いていたのでしょうか。
ふぃと、看板を掲げました。
spit:「ヨロ!
ぐっと親指を立てた右手を、スピットは突き出しました。
aoiruka:「闇とか、書いてありますけど…
spit:「きにしなーい。
そんなわけで、一行は、次の目的地。
ゲフェンへとたどり着きました。
appi:「えーと…
アピはゲフェンの町の中、その科学者というのがいる場所を、町の人に聞いています。
*7
Farmei:「でも、なんでゲフェンなんですか?
spit:「染料つくるんだって。
appi:「髪を染めるのです。
Farmei:「
えー。
aoiruka:「あ、やっぱりみんな同じ反応…
今、もっとも
反感の多いクエスト進行中。
*8
さて、街の人に教えてもらい、一行がやって来たのは、鍛冶屋の二階。
妙な科学者が、入ってきたスピットたちをぎょろりとした眼で見ました。
appi:「う…
と、気後れするアピに、
spit:「こいつか。
スピットは何故か身構えます。
科学者はにやりと笑うと、言いました。
「ヒヒヒヒ…くんくん…久しぶりに覚えのある肉のにおいがするな。人間、人間か。それも肉のある人間…ヒヒヒ…」
spit:「とりあえず、混合液だか中和剤だか、作ってくれ。
「ヒヒヒ…
spit:「話のつうじねぇ、ジジイだ…
というより、会話になってません。
aoiruka:「あ、スピさん、作るとしても、カルボーディルとか持ってるんですか?
spit:「あるよ。
ほらと、スピットはそれらをあおさんに見せてみます。
spit:「って訳で、よろしく。
「ヒヒヒ…人間…人間…」
spit:「作ってくれって
言ってんだろーが!!
appi:「…つくってもらいました。
そんなわけで、混合液だか、中和剤だかを手にしたアピが笑っています。
spit:「よしよし。じゃあ、俺の分も…
「ヒヒヒ…人間…人間…」
Farmei:「なんで、スピさんは作ってもらえないのでしょう…
aoiruka:「運命ですね…
spit:「次はどこだー!!
同じルートをたどっているアピには出来て、スピットには出来ないのはともかくとして、一行は次の目的地、モロクへと向かいます。
*9
spit:「たらい回しクエストめ…
aoiruka:「仕様です。
マテ。
そして、モロク北東。
少し大きな宿屋の中に、スピットたちは入っていきます。
appi:「おじましまーす。
と、その一室にいたターバンを頭に巻いた青年が、スピットたちを認めて言いました。
天気が熱い!?
spit:「世界中さがしても、そんな挨拶するやつはいない。
aoiruka:「それが重力語です。
*10
spit:「そんなわけで、染料とやらを作ってくれ。
「染料、そう、染料は僕の父が…
spit:「サンダー…
aoiruka:「スピさんは、
イベントしてないから!?
しばらくすると…
「はい、できたよ。
と、彼はアピに染料を渡しました。
appi:「おー。
spit:「って、本当に緑にする気かよ?
appi:「え? 初めからそういう話の流れだったかと…
spit:「緑は洒落だと思ってた…
苦笑するように口許を曲げ、スピットは帽子をなおしながら、宿屋を出ました。
今、もっとも
反感の多いクエストが、クライマックス!
spit:「
振り出しに戻る…
aoiruka:「たらい回しなクエストでしたねぇ…
このメンツには、特に。
appi:「最後に、プロンテラの婚礼品売り場にいる方に、染めてもらうのです。
spit:「あー、あのジェントル…
aoiruka:「そして、スピさんも、年貢の治め時、と。
spit:「
なにが?
は、ともかく、華ちゃんのポタルに乗り、一行はプロンテラは、婚礼用品売り場を目指します。
spit:「おー、おっさん。髪染めてくれ。
ばーんとドアを開けて入ってきたスピットに、ジネダインレフルという、
舌をかみそうな名前のジェントルマンが返しました。
「私は、服染めしかやってませんが…?」
spit:「…服だそうだ。
appi:「あ、あれ?
アピは口許に苦笑を浮かべながら聞きました。
appi:「か、髪染めは別の人ですか?
「髪染めは、隣のヨボビチさんだね」
appi:「隣です!
spit:「ってゆーか、その人も
変な名前。
aoiruka:「ヨボヨボのおばぁちゃん?
Farmei:「ビ○ン白髪染め…
かなり、
マテ。
appi:「と、とりあえず、行ってみましょう。
冷や汗を見せながら、一行は隣の部屋へ。
と、そこには…
aoiruka:「うら若き女性でしたね。
Farmei:「名前から来るイメージと、違う人ですね…
spit:「お嬢さん、僕とケッコ…
マテ。
appi:「では、染めてみますね。
spit:「
バ、バイブルのカドは凶器ですよ、アピさん…
うーうーうなるスピットを置いて、アピはヨボビチさんに話しかけました。
appi:「あのー…
「まぁ、お嬢さん。髪を染めてみてはいかがでしょう?もっと綺麗になれますよ!思い切って、イメージチェンジしてみませんか?」
一息で言い切ったヨボビチさんに、アピは目を丸くしました。
appi:「えーと…その、お願いします。
と、アピが言うと、
「まあ、勇気をだしましたね〜」
にっこり笑って、ヨボビチさんは続けました。
「さあ!それでは思い切って変身してみましょう!どのお色がよろしいですか?」
spit:「なんか、はきはきした人だなぁ…
頭を押さえながらのスピットに、
aoiruka:「元気な人ですねぇ。
あおさんが続きます。
spit:「っていうか、髪染めくらいで、思い切ってもなにも、あったモンなのか?気に入らなきゃ、戻せばいいだろうに…
Farmei:「スピさんは、乙女心というものが…
aoiruka:「ですね〜。
目を細める華ちゃん、あおさんの前、アピが緑色の染料を渡しています。
「それでは、緑色に染めますね」
appi:「はいっ!
と、ヨボビチさんはにっこり笑って、染料を手に、小さく魔法の言葉を唱えました。「ちちんぷいぷい…」
spit:「
センスねぇ。
Farmei:「しぃっ!
aoiruka:「決定的瞬間ですよっ!?
「乙女よ、きれいになぁれ!」
*11
ぽっと、アピの姿が輝いたかと思った次の瞬間、
appi:「おおー。
緑色になった自分の髪を、ちょっと見上げるようにして目を丸くしながらアピ。
そして、とてとてと、スピットの隣へと、歩いてきました。
spit:「お? 思ったり、明るい緑だったな。
appi:「ですね。
spit:「む…
スピットは目を細め、ちょっと口をとがらせるようにして、
spit:「いーや、聖職者らしからぬ色だな。
aoiruka:「…でも、実はうれしいんだ。
Farmei:「スピさん、口許が笑ってますよ?
spit:「笑ってなど、いない!
ふんっとそっぽを向き、スピットは頭の上の帽子を、ちょいとなおしました。
appi:「もうちょっと、ちゃんと見てくださいよー。
aoiruka:「とかいって、本当はうれしいんだ。
Farmei:「まっすぐ見られないんだ。
spit:「うるさい。
スピットはてくてくと、歩き出しました。
spit:「とりあえず、ベンチ戻るぞー。
appi:「はい。
aoiruka:「あー…
ちらり、華ちゃんを見て、あおさんは言います。
aoiruka:「俺、今日、これから狩りに行く約束があるんで、失礼しますね。
Farmei:「あー、私も、用事思い出した。
spit:「
ほーう?
aoiruka:「華苺さん、ポター!
Farmei:「ワープポータルー!!
しゅんっと立ち上った光の柱の中へ、二人は飛び込んで行きました。
aoiruka:「じゃ!
Farmei:「ガンバッテクダサイ。
spit:「
何を!?
appi:「いってらっしゃいませ。
アピは微笑みながら、手を振っていました。
spit:「…ベンチ、いくか。
appi:「そうですね。
そして…
いつものように、プロンテラベンチ。
プロンテラの陽が、傾きはじめていました。
ベンチのふたり。
スピットと、アピです。
spit:「…
ちらり。スピットは振り向きます。
アピは緑色になった髪を手で触りながら、「えへへ」とうれしそうに笑っています。
spit:「…緑あたまはへっぽこの証。
appi:「いーですよー。どうせ私もスピさんと一緒で、へっぽこですから。
spit:「…
そういわれてしまうと、返す言葉もありません。
そしてまた、会話がなくなって、沈黙。
夕暮れの風が、プロンテラの街を優しく吹き抜けていました。
アピはその風の中で、笑っていました。
appi:「そういえば、スピさん?
spit:「んー?
appi:「はじめてあった日も、夕暮れのベンチ前でしたね。
spit:「そーだっけ?
ちょいと帽子をかぶり直し、スピットは目を伏せました。
appi:「覚えてないですか。
軽く笑って言うアピに、
spit:「俺はあの時、早く帰ってご飯が食べたかったんだ。
スピットは口を曲げたまま、返しました。
appi:「おぼえてるじゃないですかー。
spit:「…俺は、記憶力がいいぞ。
帽子を直し、スピットは目元をちょいと隠して、言いました。本当は口許まで隠してしまいたかったのですが、ちょっと、スピットの帽子では、つばの長さが足りなかったのでした。
spit:「お前は、あんときも俺の真似っこをしたんだ。
appi:「なんかしましたっけ?
spit:「俺は、記憶力がいーぞ。
spit:「あの日も、そーいや、こうしてだらだらしゃべってたなぁ。
appi:「いつもですけどねぇ…
spit:「ま、そっか。
ふと思い出した懐かしいシーンに、スピットは暮れゆく空を見上げました。「あ、もう、一年も前か…」
「スピットさん、みてて」と、まだ駆け出しのアコライトだったアピが、笑いながら言ったその台詞が、スピットには昨日のことのように思い出せました。
spit:「一年か…
appi:「長いですね〜。
オレンジ色の陽光が照らすベンチに、スピットは軽く息を吐き出しました。それはため息でもなく、嘆息でもなく、少し、笑う感じで。
appi:「スピットさん。
その光の中で、アピが微笑みながらいいました。
spit:「…アピに、スピットさんなんて言われたのは、いつ以来だ?
appi:「私も覚えてません。
appi:「でも、はじめはそうよんでましたよね?
spit:「ん。そう呼んでいた。そして、俺ももっとパーティリーダーとして、敬っていた。
appi:「それはどうか知りませんが…
spit:「なんだよ?
肩越しに振り向いて、スピットはアピを見ます。
アピはにっこり笑って、言いました。「もう一回、言っておこうかと思いました」「なにを?」
「わたしも一緒に、冒険させてください」
「はぁ!?」
答えるスピットに、夕日に照らされたアピは笑っていました。「イメチェンして、緑になったので、しきり直しということで」
「アホか…」
言って、スピットは帽子をなおしながら、すっと立ち上がりました。
「ま、一緒に冒険してやってもいいが、俺たちの冒険は、ちょっと他とは違うぜ?」
「一日一死は基本ですか?」
「基本だ」
「突貫大好きですか?」
「もちろんだ」
「全滅もおそれない?」
「死んだら、その時だ」
「それなら…」
アピは笑いました。
「今までの一年と、変わりませんね」
「だな…」
仕方がなくて、スピットも笑いながら、帽子をちょいとなおしました。
「じゃ、私はくっついてきます」
すっと、アピも立ち上がりました。
スピットは笑います。そして、
「つーか、アピはアコライトになったあの日から、俺たちにかかわっちまう運命だったんだろうけどな」
言いました。
アピは、ちょっと小首を傾げました。
「スピさんとはじめてあったのは、アコライトになったあと、このベンチでですよ?」
「そーだっけ?」
笑い、スピットは言いました。
「俺は、記憶力はいーぜ?」
「物忘れは激しいですが…」
「忘れた、フリだ」
「そうなんですか?」
「さて、アピ。んじゃ、暇だし、ぷらりとプロンテラでもぶらつくか?」
「そうですね、次の冒険の、お買い物でもしましょうか?」
夕暮れの街に、スピットは歩き出しました。
その後ろを、アピがとことこと、追いかけてきます。
「そーいや、あの日も、こんな夕暮れだったなぁ」
「そーですねぇ」
返すアピの「あの日」と、スピットの言うあの日は、ちょっと、違っていました。
電波が届きました。「おーい、どこにいんだよ?」「迷子だー」「プロで迷うなよ…」「ったって、冒険者になったからって、プロを冒険したことはねぇんだぞ?」「っていうか、街なんか冒険しない」「あー、いつか街、冒険しような」「で、どこだよ?」「ここは…大聖堂ってゆーのか?僧侶らしき人が、一杯いる」「じゃ、大聖堂だな」「お、ノビがいる。ここ、転職所かな?」「アコ!?」「アコさんいっぱいいるし、そうじゃね?」「女の子?」「うん」「ナンパだ!リーダー!!」「なんでだよ」
「ここは、アコライトの転職所ですか?」
帽子をなおしながら聞く魔法士に、近くにいたアコライトの女の子が答えました。「そうです。今から、そこのノビさんが、転職するようです」
「ふーん…」
スピットはすっと脇によけ、その赤い髪の女の子を見ました。
と、女の子が真剣な眼差しで神父さんと話ていたかと思うと、ぽっと、その身体が輝き…
「おめー」
「おめでとー!」
「これから、みんなを癒しまくってくださいっ!」
「おめー。そして…」
「サンダーストーム!」
「マテ!そこのマジ!?」
その女の子は走り抜けた雷に、目を丸くしていました。
「え…?」
「祝福、兼、こうげき」
「あ…あー…」
「魔法士ギルド流の、全力の祝福だ」
「そ、そうだったんですかっ!?」
その子は目を丸くして返しましたが、すぐに笑い、そして、笑いながら言いました。
「んじゃ、俺はたまり場に待ってる奴らがいるんで、おいとましますわ。がんばってくださいね」
「がんばります!」
「…あ、俺らのパーティ、アコライトいないんで、一緒に冒険できたらいいですね」
「その時は…」
「よろしくお願いしますね」
大聖堂の鐘の音は、あの日と変わらずに、一日の終わりを告げるようにプロンテラに鳴り響いていました。
そして吹き抜ける風の中、
彼女の翡翠のような輝きをした髪が、楽しげに踊っていました。
*12