studio Odyssey


P.S.P.D - 01


       
 
 時に2007年。初春。
 東京湾岸都市、台場。
 20世紀末には都市博の見直し、中止により大分開発の遅れた場所ではあったけれど、祝21世紀というムードも落ち着いてきた最近には、横浜、品川、千葉とを結ぶ列車、道路の両パイプラインの完成もあって、新宿に次ぐ副都心として急速な発展を遂げていた。
 そんな港区台場に建つビル。
 TOKYO-NETWORK-BANK──通称TNB本社ビルの3階にある大会議室で、その会議は執り行われることになっていたのであった。
 eM──つまり、電子マネーの統一規格を作るための会議である。
 20世紀末から21世紀初めにかけて、急速に加速していった通信ネットワーク──インターネット──の普及にともない、欧米各国は、独自の電子マネーの規格をいくつもいくつも生み出していった。
 それは、必然とも言える状況であった。
 が、本来国境のないネットワークである。
 統一の通貨概念を誰でもが欲していたということは、言うまでもなかった。
 そしてそこに目を付け、企業を興したのが、このTNBである。
 TNBは世界中の通貨をTNB独自の貨幣単位、eMにネットワーク上で擬似的に換金し、そのeMによって、ネット上でいかなるものでも購入できるようにしたのである。
 ドルからeMに、円からeMに、eMからユーロに、本来ならば一般企業には決してできないことを、『ネットワーク上でTNB口座に振り込まれた金額より、規定された数値分のeMを発行する。もしも──あくまでもしも──発行されたeMをTNBへ申請すれば、手数料を取った差額分を、指定の口座へ返金する』という、一種の抜け道的な考えから作りだされたこの電子マネー──eMは、自然と、ネットワーク全体に流通していったのであった。
 そして今日──
 デファクトスタンダードとなりつつあったeMを、ついにネットワーク上での基本通貨として制定すべく、このTNB本社ビル3階の大会議室にて、統一規格制定の会議が執り行われることとなったのであった。





       
 
 そのTNB本社ビルを、モニターの向こうに見る男達の影。
 元の白がわからなくなるほどに薄汚れてサビ付いたバンの中で、6人の男達は屋根に取り付けたCCDカメラの送る映像を見ながらにささやき合った。
「じきに、会議が始まる。場所は、3階の大会議室だ。潜入するまでの手段は打ち合わせの通り」
 リーダーである男が言う。彼らが言うところのコードネーム──正確にはハンドルネームなのだが──『風切り』である。
「社内ネットワークには、もう『トロイの木馬』は送り込んである」
 言ったのは『B-man』。誰一人として彼にそのこと──彼の背広にはTNBの社員バッジがついていた──をいう者はいなかったが、このB-manが今日の『計画』を言いだした人物であることは、すでに皆に周知のことであった。
「約束通り、PSを3体持ってきた」
 と、言ったのは『野郎』。彼が持ってきたPS──パワースーツ──は、工事現場などで使用されている、大型のパワータイプのものだった。
「これ、どうやって使うんだ?」
 最年少の青年、『はっか』が言う。
「なんだ、『はっか』はPSを見たことがないのか?」
 眼鏡をひょいとあげ、『管理者』は笑う。
「PSは、専用のボディースーツを着て、そこにPS本体から伸びた情報ケーブルを繋ぐんだ。そうすると、自分の動きにあわせて本体が油圧ケーブルなんかを通して動作補助をしてくれる。こいつは、工事現場なんかで使うために作られた、PS-4s。通称、アトラスだね」
 『管理者』は笑いながら言ったけれど、『野郎』はそういうことはよく知らないのか、
「パワーだけなら、超強力だぜ。鉄骨だって、こいつ一体で十分持てる」
 そういって、豪快に笑って見せた。
「こレなら、使エます」
 微妙なアクセントで言ったのは『wow』。東南アジア系の顔立ちの彼は、『野郎』の友人だ。
「なんか、掃除機引っ張ってるみたいだな」
 率直な感想を、笑いながら言う『はっか』。思わず『管理者』は吹き出しそうになる。「よし、じゃ──」
 リーダーとして『風切り』は皆に向かって言った。
「PSは『野郎』と『wow』、それからオレが身につけることにしよう。オレは、昔空手もやってたことがあるからな。あとの奴らは──」
「待っテくだサイ」
 『wow』が口を挟む。
「今日のたメに、トモダチから、借りてキました」
 『wow』がコンビニのビニール袋の中から、新聞紙に包まれたそれを皆の前に開け広げて見せた。
「トカレフだね」
 『管理者』が「ほぅ」と感心するようにして言う。新聞紙のなかから出てきたのはオートマチックピストル、トカレフが3丁。
「そうデス。お金、手に入っタら、彼にモ僕カら、お金渡しマス。よケれば、使ってくだサイ」
「構いはしないさ」
 そう言って、『B-man』はトカレフを手に取った。慣れた手つきでマガジンを落とし、中に入っている実弾を見つめて笑う。
「この計画が上手くいけば、eMという名の金を、いくらでも作り出すことができるようになるんだ」
「所詮は、データ上の数値。圧縮コードとセキュリティーコードさえわかっちゃえば、これほど簡単にできる偽造はないよ」
 笑いながら、『はっか』もトカレフを手にする。
「もう一丁は?」
「じゃ、僕がもらおう」
 と、『管理者』。
「実は僕も、行動しながら社内のコンピューターをいじれるように、自前のPSを持ってきていたんだけどね。なんせ、こいつはウェアラブルPC機能を強化させただけのタイプのものだから、パワーはないんだ」
 言いながら、『管理者』はウェアラブルPCではもはや当たり前となった強化プラスティックタイプ片眼モニターを右目につけた。
「一発でも撃てれば、照準修正ができて、命中率が上がるんだけどな」
「撃ちたきゃ、会議室突入の時にでも撃ってくれよ」
 『風切り』は笑う。
「じゃ、『管理者』に会議室のセキュリティカメラの破壊は任せる」
「わかった。引き受けよう」
「『はっか』、TNBのホストコンピューターとは?」
「繋がってるよ。Enterを叩けば、『トロイの木馬』が動き出して、ぼんっ」
 『はっか』は軽く笑いながら、おどけて見せる。
「よし、『野郎』と『wow』もPSを装備してくれ」
「わかった」
「わかリまシタ」
「『B-man』、進入経路の確保は?」
「万全だ。抜かりはないよ」
 トカレフをいじりながら、『B-man』は顔も上げずに返す。
「よし──じゃ、そろそろ行こうか」
 『風切り』はちらりと腕時計に視線を走らせた。
 1時58分。
 すべては、今まさに始まろうとしていたのであった。





       

 2時00分。
 その会議は定刻通りに始められた。
 TNBの今までのネットワーク電子マネー、eMの使用データを元に、今後のスタンダードとするeMのデータ発表である。
 各国の通信、造幣を担う省の代表者達、万全のセキュリティによって守られてきたeMの詳細なるデータが、ついにその者達の前に公開され始めたのであった。
「これが、我が、TNBが研究、開発し、ネットワークマネーのデファクトスタンダードといわれるまでになった、eMの仕様です」
 TNB、研究開発局局長の声が、大会議室に響きわたった。


 TNB地下駐車場に乗り入れたバンより降り立った6人の男達は、足音を忍ばせ、誰にも気づかれないように専用エレベーターのある警備員の詰め所にまで身を進ませた。
 先頭を行っていた男──『風切り』だ──が、詰め所の扉へと張り付き、続く背の小さな男──『はっか』だ──に、「いけ」と言うようにジェスチャーする。
 こくりと頷き、『はっか』は手にしていたノートパソコンのEnterキーを叩いた。
 「ぶん」と言う音がして、詰め所にあった何十という数のモニターディスプレイの光が一斉に落ちる。
「なんだ!?」
「どうした!?」
「停電か?」
「システムが落ちたんだ!!」
 詰め所にいた4人の警備員達か、一斉に声を上げた。
 すかさずPSに身を包んだ『風切り』が、詰め所のドアを思い切りに蹴り飛ばす。轟音を立てて、その鉄の扉は反対の壁にまで勢いよく吹っ飛んだ。
 扉の前にいた警備員を一人、巻き込んで。
 鮮血が対面の壁に散る。一瞬のうちに、その壁から破壊されたドアの方へと視線を走らせる警備員達。
 その目に──破壊されたドアから、PSに身を包んだ『野郎』と『wow』が飛び込んでくるのが映った。
 人間の速さを越えたスピードで二人は警備員達に詰め寄ると、それぞれに自分の目の前の警備員の顔を右手で殴りつけた。
 まるで鉄球に横殴りにでもされたかのように、警備員の頭蓋が吹き飛ぶ。飛び散った赤い血が、光のなくなったモニターに、びちびちと張り付く。
「ひっ…!!」
 最後に残った一人が、顔面を蒼白にして、暴漢対処用トンファーを手に取る。が、明らかにそんなものは、この者達の装備に比べれば、おもちゃ以下の道具でしかなかった。
「な…なんだきさ──!!」
 トンファーを構えた警備員の男の台詞が、最後を結ぶことはなかった。
「やれやれ、リミッターを外すと、アトラスもこんなに力が出てしまうものなんだ」
 そういいながら、『管理者』が右手の甲で──つまり裏拳で──彼の顔面を撃ったからである。
「自分でも、つくづく恐ろしいものを設計したと、今実感したよ」
 ざくろのような人の頭だったものの残骸を見て、『管理者』は思わず吹き出しそうになった。
「PSの犯罪利用、つくづく、恐ろしく感じるね」
「第一関門は突破だな」
 警備員専用エレベーターのボタンを、『B-man』はトカレフの先で押していた。
「3階へは、このエレベーターを使えば簡単に侵入できる」


 一通りの説明の終わった大会議室では、一人の女性が開発者に向かって質問をしていた。
「このような電子マネーにおいて、最も心配されることはハッカーやクラッカーの手による偽造の問題ですが、その辺りのセキュリティ問題について、実際のこれまでのeMのデータを元に、ご説明願えますか?」
 その女性の疑問は誰もが抱えていたものだったのだろう。同時通訳のイヤホンを耳に入れた各国の代表者達も、しきりに彼女の台詞に頷いていた。
「えー…あなた、お名前は?」
 開発者である男は、優しく微笑みながら言った。彼女の質問に、好感すら抱いたように。
「私ですか?」
 その女性は警察の礼服に身を包んでいた。eMには、先に彼女の言ったような犯罪問題も絡んでくる。よって警察関係者の姿がこの大会議室にないというわけではなかったが、彼女のように若く、美しい女性の姿は、はっきり言って、なかった。
 彼女は質問のために立ち上がった姿勢のままで、軽く微笑みながら言った。
「私は、警視庁特殊車両1課科学強行班係係長、柏木三菜です」
「科学強行班?」
 男は首を傾げて逆に聞き返す。
「聞かない班ですね」
「ええ、ですが、前身はネットワーク犯罪課です。新しい犯罪の元となる可能性がこのeMにもあるのでしたら、我々も無知のままではいられませんから」
「なるほど」
 開発局の男は大きく何度か頷いた。見ると、警察関係者の者達が彼女の台詞にうんうんと頷いている。
「確かにeMにも偽造などの問題が絡んでくるでしょう。過去に、偽造されなかった紙幣がなかったように。ですが、このeMは最新のセキュリティーと圧縮技術を使っています。このコードは我がTNBのホストマシンのみが解析でき、言うなれば──」


「確認しておく」
 上昇するエレベーターの中、『風切り』は言う。
「大会議室前にも、警備員がいるはずだ。その警備員は、オレと『野郎』で片づける。残りの3人は一気に中になだれ込んで、『管理者』はセキュリティカメラを破壊、『wow』は抵抗するものがいたら、そいつらを片づけろ。『はっか』と『B-man』は、すぐにeMのセキュリティーデータのコピーだ。わかったな!」
「わかった」
「わかりマシた」
 『野郎』と『wow』が、薄笑いを浮かべながら答える。
「アトラスのリミッターを解除したパワー、気に入ったみたいだね」
 トカレフをもてあそびながら、『管理者』は笑う。
「パワースペックは、たしかにPSの純粋な評価基準だと僕も思うよ」
 彼の腰から伸びたケーブルの先にあるPSの本体は、パワーよりも計算や情報処理能力を高めた自作のものだ。決して彼らの使っているPS、アトラスに劣っているとは思っていないけれど、純粋なるパワースーツのパワーを見せつけられると、流石に彼も苦笑い気味にもなってしまう。
「ああ、こいつさえあれば、どんなことだってできる気がするぜ。今まで、真面目に現場で働いていたのがバカみたいだ」
 薄笑いのまま『野郎』は言う。
 つられるようにして笑いながら、『B-man』も言った。
「eMのコードさえ手に入れば、バカみたいに毎日毎日、バカな上司の下で仕事する必要もなくなるさ」
「3階だ」
 点滅し、鳴った電子音に『風切り』は呟くようにして言った。
「行くぞ」
 エレベーターの扉が左右に開ききるのよりも速く、『風切り』はその扉を無理矢理にこじ開けた。彼のまとっていたリミッターを外したPSにとって、それは、あまりにも容易な行動であった。
「なっ…なんだ!?」
 大会議室の前にいた3人の警備員達が、一斉にエレベーターの方へと振り向いた。


 男の悲鳴が響き、皆が「何事か」と思った次の瞬間、大会議室の巨大な扉は一撃のもとに蹴破られた。けたたましい音をマイクが拾い、大会議室中に響きわたらせる。
「なっ…!?」
 柏木三菜は目を見開いた。
 撃ち破られたドアから、PSを身にまとった男が真っ先に飛び込んで来た。そして、手にしていた銃を天井に向けて乱射した。
 耳を打つ轟音に、とっさに頭を伏せる大会議室の中にいた者達。
 頭を伏せながらも、とっさに見た男のPSに、三菜はわかっていた。男はセキュリティカメラに向かって銃撃をしているのに違いない。あのPSは自作だけれど、センサー系のレイアウトが、情報処理系のものだった。
 銃声の轟音が、ゆっくりと消えていく。
「しばらく、お騒がせするよ」
 トカレフを手にした『管理者』は、3台のセキュリティカメラを破壊し終えて、笑った。
「このやろう!」
 銃声がやんで、会議室内にいた数人の勇敢な警備員達が、彼に向かってトンファーで殴りかかった。が、残念ながら、彼にトンファーを振り下ろす前に、彼らは別のPSをまとった男にその頭を、文字通り殴り飛ばされてしまったのであった。
「生身で、PSにはかなわないよ」
 『wow』に殴られたざくろを見て、『管理者』は笑う。
「失礼」
 大会議室、巨大な薄膜スクリーンの前に立っていたeM開発者にトカレフを突きつけ、
「eMのセキュリティーコードと圧縮コードをコピーさせてもらいに来た」
 『B-man』は笑う。そして、開発者の胸についたIDカードを奪い取って、『はっか』に手渡す。
「『はっか』、すぐにコピーだ」
 『B-man』は知っていた。eMのセキュリティコードと圧縮コードを入れたホストコンピューターのフォルダには、今日、この日の2時から3時の間だけ、このIDカードを用いてのみ、外部からアクセスできるようになっていたのである。
「デモンストレーションの予定が、仇になったな」
 トカレフを突きつけたまま、『B-man』は再び笑った。
 大会議室の中に、両手を赤く濡らした『風切り』と『野郎』が入ってくる。
「急げよ!いつ、警備員たちが気づくとも限らない!」
「わかってるよ!わかってるけど──」
 IDカードをノートパソコンに挿入し、キーボードを叩きながら『はっか』は言う。
「でも、データが大きすぎるよ!ダウンして、コピーするの、そんなに速くはできないよ!」
 言いながら、『はっか』はポケットから8cmDVD-RAMを取りだして舌を打つ。
「12cmでも入りきらないかも知れないのに…」
「直接回線を使った方がいい」
 言いながら、『B-man』は会議室前面にある台の上に『はっか』を導く。そしてその上にあったパソコンを片手で薙ぎ払い、そこにある光ケーブルコネクタを指さして、
「一応、ペタネット対応だったはずだ」
 言う。
「それなら、いくらか速い!」
 『はっか』はコネクタにケーブルを差し込むと、矢のような速さでキーボードを叩き始めた。


 突然に大会議室の中になだれ込んできた賊、6人に、警視庁特殊車両1課課長、岩田正五郎警視は、真っ先に机の下に頭を伏せたのであった。
 が、やはりそこは警視庁の特殊車輌1課長、部下に向かってはき然とした態度で、
「かっ…柏木くん!何とかしたまえッ!!」
 と、机の下で頭を抱えたまま言ったのであった。
 特殊車輌1課科学強行班係係長、柏木三菜警部は困ったように眉を寄せる。
「何とかといわれましても…」
「きっ…君らは、こういう犯罪のエキスパートだろう!今働かないで、いつ働くというのだね!!」
 「いつもしっかり働いていますが…」と三菜はよほど言ってやろうかとも思ったが、大人げないので止めた。大人げない課長を相手に、大人げない発言をしてもしょうがない。
 不意に、警報音が鳴った。
「なんだ!?」
 賊、6人が一斉に声を上げる。
 冷静に、三菜は言った。
「誰かが気づいて、通報したみたいですね。救出されるのを待ちましょう」
「柏木くん、君ね──!!」
「課長」
 柏木三菜警部は、岩田正五郎警視をじっと見据えて、言った。
「相手はPSを装備しています。生身で出ていっても、無駄に命を落とすだけです。課長が先陣をきるというのなら、私は止めませんが。それでも行きますか?」
「あ…いえ、結構です」
 三菜の視線に押されて、岩田正五郎──あくまで、警視であり、課長である──は、小さく頷くようにして呟いた。
 警報音が響く会議室の中、賊、6人が激しく言い合っている。「どういうことだ!?話が違うじゃないか!!」「まだコピーできないのか!」「なんでこんなに遅いんだよ!ここのホスト!!」
 三菜はその怒号を耳にしながら、左手にした時計のジョグダイアルをくるくるとまわしていった。文字盤に、11桁の数字が流れていく。
 そして目的の数値を見つけだすと、彼女はその電話番号にアクセスを開始した。
 最新型PHS搭載腕時計が、ダイヤル先の相手を捜す。ほどなくして、その回線を捕まえた三菜の時計から、部下の声が聞こえていた。
「もしもし?その声は麻生巡査ね。私、柏木。ちょっと、まずいことになったわ」
 「まずいことになった」と言っておきながらも、三菜は、その口許を微かに弛ませていたのであった。
 そして、言った。
「緊急事態よ、P.S.P.D.の出動を要請します」








 時に2007年。初春。
 PS──パワースーツ──は小型化、低価格化が進み、災害救助や工事現場、身障者の補佐的使用など、あらゆる分野で急速的な発達を遂げていた。
 そしてそれはそれだけでなく、ウェアラブルPCの一端末としての利用も可能と言うことから、都市の至る所で20世紀末のモバイルコンピューターと同様に、めざましい勢いで普及し始めていったのであった。
 しかし、機械の助けを借り、人間以上の力を引き出すことのできるPSは、その使用者達を、容易に犯罪に走らせもした。
 リミッター解除の裏コードが流出し、そのコードによってリミッターを切られたPS。その力に魅了され、流され、増加するばかりのPSを用いた犯罪。
 その、人の力を越えた力を乱用する犯罪者を取り押さえるために、警視庁は対PS犯罪専用の特殊機関設立を決定した。
 Power Suit Police Department。
 通称、P.S.P.D.である。