studio Odyssey


第十五話




 時に西暦1997年。
 3月19日。
 地球に初めて飛来した未知の生命体──エネミー──は、いわゆる『お約束』と呼ばれる展開に従い(注*1)日本に襲来した。
 横浜に上陸するエネミー。そして、その前に立ちふさがった巨大ロボットは、R‐0一体ではなかった。
 君は、覚えているだろうか…
 あの港に立ち上がった、一体の巨大ロボットを。
 そう、あのロケットパンチを放った巨大ロボットである。
 たとえ他の者に、「前座」だの「やられキャラ」だのと言われようとも、そこにも巨大ロボットにロマンを見いだし、その半生を捧げた者がいたことを、忘れてはならない。
 そう、夢を追い続けた、科学者がいたことを忘れてはならない。


「総員第一種戦闘配備!!」
 3月19日。
 横浜に近づくエネミーの情報に耳を傾け続けていた一人の男は、今がまさにそのときだと確信すると、声を張り上げてそう叫んだ。
「総員、第一種戦闘配備!」
 艦のブリッジ。通信士の若者は、男の命令を艦内全域に流し、ついにその赤いボタンに手をかけた。
「R・R、起動準備開始ッ!!」
 きゅうーんと、合成された電子音の警報が艦内に鳴り響く。この音は外には決して漏れていないはずだ。そう、今警報音が外に漏れてしまっては、今までの苦労が水の泡になってしまう。
 厳戒態勢のひかれた横浜港に入り、待ち続けること数時間、ついに敵が姿を表したのだ。この時を…どれだけ待ちこがれたことか…
 白衣に黒縁眼鏡の、少し年をとった男は、ふっと遠い目をして微笑んだ。長すぎた…ああ…長すぎたぞ…
「設楽(したら)、ついにこの時が来たな」
 男の脇に立っていた老人もまた、遠い目をして微笑む。
「ついにこの時が来たのだな…私も、金を出し続けた甲斐があったというものだ…」
 老人は自嘲するように笑った。金──そう、どれだけの金を使ったのだろう…この巨大ロボット、R・Rに。
「御納得のいかれる物には、仕上がりませんでしたかも知れません。ですが、私の持てるすべての物を注ぎ込みました。私の…最高傑作です」
 ロボット工学では名を馳せた科学者、設楽 信之はそう言って眼鏡をあげる。十数年前に学会より姿を消して以来、歴史の表舞台に立ったことは、一度としてない。
「私も、死ぬ前にこいつが動くところを見れて、本当によかったと思っている。感謝するよ、設楽」
「それは、私にではなくて、エネミーに対してでしょう?南条さん」
「それは、そうかも知れんな」
 老人──南条 秀樹は、ブリッジからゆっくりと動き出すクレーンを眺めていた。


「立ち上げ作業開始!(デッキアップ)」
「了解(ラジャー)、立ち上げ作業開始!」
「作業急げ!!」
 甲板の整備員達は暗がりの中、インカム越しに叫びあっていた。
「R・R、背面固定完了!作業開始!」
「了解!ロック解除、デッキアップします!」
 ばしゅっという圧力の解放された音に、ウインチを巻き上げる力強い音が続く。
「よし…いいぞ…」
 覆い被されたシートが、その包まれていた物が立ち上げられるのに比例して、ゆっくりとずり落ちていく。
 微かな月明かりに、巨体が鈍く輝いていた。
「見つからないだろうな…」
 心配そうに言う整備主任に、
「どうせ山下公園の取材陣は、怪物しか見えてないさ。その間に俺達はこいつの起動準備をし、奴を一気に叩く!そして、俺達は英雄だ!」
 肩を軽く叩いて、彼の友人の整備員は返した。
「そうだな…よし!」
 主任はインカムに手をかけて叫ぶ。
「R・R、デッキ上にて方向転換!方位90、作業完了後に対衝撃緩和用プロペラの装備開始!!」
「了解、R・R方向転換。方位90!」
 ゆっくりと動き出す回転デッキ。その上にすっくと二本の足で立つ巨大ロボットは、その凛々しい顔を、暗闇の向こうに居るであろうはずのエネミーへと向けた。
「方向転換完了。これより対衝撃緩和用プロペラの装備にかかる。クレーン、準備はいいか!?」
「いや…今プロペラの固定を…完了しました。準備完了!いつでもどうぞ!」
「プロペラ装備作業開始!」
 高速回転するウインチドラム。特殊鋼のワイヤーによって巻き上げられるのは、R・Rの背面に装着される対衝撃緩和用プロペラだ。
「プロペラ固定位置まで、誤差.02!」
「一番から七番までの固定完了。続いて八番からの固定作業開始」
「よし、保護用スポーク装備。留め金はしっかり止めておけよ!」
「了解!」
 クレーンに吊られた保護用スポークが最後に装着されると、R・Rの背中には巨大な扇風機が──いや、対衝撃緩和用プロペラの装備が完了した。
「ようし!完全装備完了!!」
 主任は意気揚々と、インカムに手をかけて叫んだ。
「演出用煙幕、サーチライト!抜かりはないなッ!」
「ばっちりです!!」
 と、心強い答えがインカムへと返ってくる。(注*2)


「創(はじめ)、こっちへおいで。おじいちゃんと一緒に、R・Rの晴れ舞台を見ようじゃないか」
 南条 秀樹は、そう言ってかわいい孫を呼び寄せた。
「うん」
 大きく頷いて南条に駆け寄る創。まだ小学三年生の創には、ロボットの難しいことなどはよくわからないけれど、おじいちゃんが一所懸命になって作っていたロボットがついに動くというので、もう心臓はドキドキ。今にも爆発しちゃいそうだ。
「とうとう動くんだね?」
 きらきらと目を輝かせて創が言う。南条はその孫の顔を満足そうに眺めて、
「そうだよ。とうとうだ…」
 自分が幼い頃から思い描いていた物を孫に見せることが出来て、自然と目頭が熱くなった。
「創…よく見ておくんだぞ」
 設楽に目配せをする南条。設楽はこくりと頷いて、通信士に耳打ちした。「起動だ」
「うん。僕、ちゃんと見てるよ」
 創は大きく頷いた。
 窓の向こうで煙幕がたかれる。演出用サーチライトが漆黒の闇の中をさまよい、ついに巨大ロボットR・Rは起動を開始した。
「おじいちゃん!このロボットの名前は、なんて言うの!?」
 創は興奮して、小さな手をぎゅっと握りしめたままで聞いた。
「これか?このロボットはな…」
 南条と設楽はお互いの目で確認しあうと、
「ロケットパンチロボ。通称R・Rだッ!!」
 二人同時に、その名を呼んだ。


「ああっ!なんだあれは!!」
「おおっ!やっぱり出たかっ!!」
 警察、自衛隊の手によって封鎖された、横浜は山下公園。ここに集まった命知らずな人々は、今、歴史的なワンシーンに直面していた。
 投光器が動く。カメラのフラッシュがばちばちと瞬く。
 その向こう──
 大桟橋に停泊していた巨大な船が、いつの間にか煙幕に包まれていた。そしてその煙幕を、内側から輝かせる光。ぼやっと、浮かび上がる巨大な影。
「なっ…あれは…」
「巨大ロボットだっ!!」
 煙幕が晴れると、その中からサーチライトの光に照らされた、巨大ロボットが姿を現したのであった。
 頼もしいばかりの鋼鉄の巨体が、投光器の光の中できらりと輝く。
「みなさん!ご覧いただけますでしょうか!やはり、我々の期待していたとおりに、巨大ロボットが現れてくれました。これぞ、人類の夢が叶った瞬間であります!!」
 テレビPの報道アナウンサー、新士 哲平は、声を荒げて捲し立てた。
「センちゃん!ちゃんと撮ってる!?」
「バッチリっすよ」
「視聴者のみなさま!ご覧いただけるでしょうかッ!?」
 叫び続ける新士 哲平。彼は、こうも見えても報道アナウンサーである。外からの事件報道は、基本的にレポーターの仕事であるということは言うまでもないが、彼はこの一生に一度とも言える『大事件』に、スタジオになんかいられなかったのである。
 沸々と体の中で沸く血を抑えきれずに、彼はスタジオを飛び出したのであった。幼い頃に胸に抱いた想いを、今一度確かめるために。
 そしてその想いは、今も枯れていなかったことを、新士は再確認していた。
「これは、今まさに歴史的な一瞬であります!瞬くフラッシュ、人々の歓声。我々は、歴史に名を残すであろう出来事を、今、眼前にしているのであります!!」
 新士は、手にしたマイクをぐっと握り直した。
「ああッ!!センちゃん!!──あ、いや──視聴者のみなさま。ご覧ください!あれが、敵が、エネミーがついに我々の前に姿を現しましたっ!!」
 くるりと振り向くカメラマン。画面が一気に180度パンニングされる。
 投光器の光と、頭上を飛び交うヘリコプターが、エネミーの巨体を照らし出した。
「ついに、エネミーと巨大ロボットの対面でありますッ!ここ、横浜は山下公園は、今まさに世紀の対決を目撃せんとする人々で埋め尽くされておりますッ!!この歓声、この巨大ロボットを応援する人々の声が聞こえるでしょうかッ!がんばれ巨大ロボ!!エネミーなんかに負けるなッ!!なお深夜映画『若妻は魔女』は、後日改めて放送いたします」
 巨大ロボは、二本の足ですっくと船上に立っていた。真っ直ぐに前を向き、その方向からは、エネミーがゆっくりと近づいて来ている。


「来たな…エネミー」
 設楽は不適に微笑んだ。
「R・Rの力を、見せてやる…」
「やるか、設楽」
 南条も、設楽ににやりと微笑みかけた。な…なにが起こるんだろう…ごくりと唾を飲んむ創。期待に目をらんらんと輝かせ、心臓は今にも張り裂けそうだ。
「よし、ではいくぞ!設楽ッ!!」
 南条は大きく頷いて叫んだ。


 ロボットとエネミーの距離が、200メートル程になろうかというとき、
「ああッ!ロボットの手が、巨大ロボットの手がゆっくりと上がっていきます!!」
 新士 哲平の言うように、巨大ロボットの手がゆっくりと上がっていったのであった。
 そして、その巨大ロボットの背中に取り付けられていたプロペラが、高速に回転を始めた。サーチライトの光に照らし出され、漆黒の闇へと舞っていく煙幕。
 両腕をまっすぐに伸ばし、ぴたりと静止する巨大ロボット。エネミーも、自分の正面に立つ巨大なモノに、その歩みを止めた。


「側距完了!エネミーに対し、ロックオン!」
「重力、風力、誤差確認。修正可能領域内です。いつでも撃てます!」
「よし…」
 設楽は大きく頷くと、
「南条さん、ご命令を」
 と、南条に向かって笑いかけた。
「いや…しかし設楽。これは君が作ったのだろう。君がやりたまえ」
「何を言います。私は、あなたのお陰でこれを作ることが出来たのです。それだけで、私には十分ですよ」
「設楽…」
 男の友情に、南条の目頭は熱くゆるんだ。
「ありがとう…設楽…」
 呟いてから顔を上げた南条に、もう迷いはなかった。(注*3)
「よしっ、準備はいいなッ!!」
「いつでもいけますッ!!」
 ブリッジに威勢のいい返事が響く。
 その威勢のいい返事に、創は再び唾を飲んだ。握りしめた手が、じんわりと汗ばんでいる。すごい…ぼくはすごいところにいるんだ。
「創!その目でしっかりと見るんだぞッ!!」
「うん!!」
 おじいちゃんの声に、創の声も知らずのうちに大きくなる。
 そして、南条は魂の迸りに任せて叫んだ。
「ロケットパンチ発射あぁぁああぁッ!!」


 時に西暦1997年。
 日本に、初めてエネミーが襲来した日の出来事であった。(注*4)








 第十五話 狂科学者(マッドサイエンティスト)たちの協奏曲(コンチェルト)。

       1

 そして4月。
 ここ、横浜は元町の少し奥まったところにある屋敷では、一人の新人メイドがその仕事に精を出していた。
「〜♪」
 鼻歌を歌いながら掃除機をかけている女の子──笹沢 藍花。ちょっとおっとりとした、女の子である。
 女の子、というのは少しおかしいかも知れない。こう見えても藍花はもう20歳になるのだし、それなりに男の子との恋愛も経験してきた。けれど──
「あいたっ!」
 後ろ向きに掃除機をかけていた藍花は、本棚にお尻をしたたかに打ちつけ、
「あ…いた!いたい!いたい!!」
 その本棚から崩れ落ちてきた本たちに、頭をぽこぽこと叩かれた。きゃあとばかりにしゃがみ込んで、頭を押さえる藍花。
「…いったぁ」
 毛足の長い絨毯にぺたんと座り込んだまま、藍花はしゅんと眉を寄せた。
「どうしていつもこうなの?」
 藍花は半泣きになりながら、トレードマークの眼鏡をひょいとあげる。
 さて、彼女の台詞からもわかるように、藍花はいつも「こんな」なのである。それ故、彼女を『女』と言うのには少しの抵抗を覚えるので、彼女に対しては年のことを完全に無視して、『女の子』と言う表現を用いることにする。
「はぁ…また仕事が増えちゃった」
 藍花は自分の周りに散乱する本を眺めて、小さくため息を吐き出した。
 藍花の仕事場──南条家は、明治の頃から一流の財閥として有名だった。(注*5)
 彼女だって、ここに来る前から名前を知っていたくらいに有名だ。一流の大金持ち、南条財閥。いつどこで聞いたのかまではよく思い出せないけれど、きっとTVか何かだろう。
「早く片づけなくっちゃ。創くんが、帰って来ちゃう」
 立ち上がって、藍花はメイド服のスカートをぱんぱんとはたいた。本棚から落ちてきたのは読まれていない本だったのだろう、陽光の中で、無数の埃が宙に舞っていた。
「けほけほ」
 と堰をしながら、再び部屋の掃除を始める藍花。
「けほけほ…創くんも、もうちょっとは自分でお掃除してくれればいいのに」
 藍花の言うように、この部屋は南条家の跡取り息子、南条 創の部屋なのである。
 大きな窓に面したオークの机。ロココ調の椅子に、バロック調のベッド。家具はどれも一級品ばかりだが、その部屋に散らばっている玩具は、小学四年生の持つそれと相違なかった。
「まずは玩具より何より、これを何とかしなくっちゃ」
 これ──藍花は自分で散らかした無数の足元の本を見つめた。掃除しに来たんだか、散らかしに来たんだか、このままではわからなくなってしまう。
「とりあえず本棚に戻そう」
 藍花は「うん」と大きく頷いて、隙間だらけの本棚に、適当に本を並べていった。
 壁一面埋め込まれた本棚はまだ隙間だらけだ。ああ…この本棚がいっぱいになる頃には、創君も大きくなって、きっとかっこいい男の子になって…あ…でもそれは見てみたいような…ちょっと悲しいような…
 藍花は本棚に本を戻しながら、勝手な妄想に浸っていた。創くん…今のままでも十分かっこいいけど、創くんが結婚できるような年の頃には、私は28で…あら。ちょうどいい年かも…そのころには創くんも──って。きゃっ♪
 自分の勝手な妄想で頬を赤くする藍花。
 そしてさらに妄想はつづく。(注*6)
 そうよねそうよね。それくらいの年の男の子って、──な訳だし。きっと──で、──なんて。それでそれで、──とか!きぁあーっ♪
 しかし、あまり藍花の勝手な妄想につきあっている暇はないので、
「あら?」
 本棚に本を並べていた藍花の手が、やっとその本にぶつかったことにする。
「あれ?どうしてこの本、動かないのかしら?」
 どう本を並べたらよいのかわからなかった藍花は、とりあえず右側から順に本を入れて並べていっていた。だが、こつんと手の甲に当たった本が一冊、どうしても本棚のその位置からずれないのである。
「なんでだろう?」
 と、藍花はその本に手をかけた。
「『巨大ロボットと科学者たち』?創君、こんな本も読むのかしら?」
 中をちょっと見てみようと、藍花はその本を引っぱり出した。
 まさか──と思うような出来事がその直後に起り、藍花は目を丸くせずにはいられなかった。
 そう、壁一面の本棚が、音もなく左右に開いたのである。(注*7)


 いけない。
 とは思っていても、好奇心に勝てるほど藍花は大人ではない。
「ああ…ごめんなさい」
 と、とりあえず誰かに謝っておいてから、藍花はその奥をのぞき込んだ。
 真っ直ぐに下に向かって階段が延びている。石造りの、この建物が出来たときからずっとここにあるような雰囲気だ。
 こんな所があるなんて、聞いたこともなかったわ。一体、何があるのかしら…
 藍花はこの先になにがあるのか、頭の中でいろいろと想像してみた。藍花の想像した物を文章にしてもよいのだが、すべてを文にしてしまうと、R‐0が違う方向に行ってしまいそうなので止めることにする。
「まさか創君!」
 自分の勝手な妄想に、藍花は息をのんで口を押さえつけた。
 まさかとは思っていても、一度でも頭の隅にそんなこと(注*8)を思い浮かべてしまったら、もう後戻りは出来ない。加速度的に妄想は進み──
 たっ…確かめなくっちゃ…
 と、なるわけである。
 藍花は、ゆっくりとその石造りの階段を下り始めた。
「どれくらいの深さがあるのかしら…」
 こつこつと響く足音と、藍花の心細さから生まれるつぶやき。
 見つかったら私…どんな目に遭わされちゃうのかしら…
 こんな目──藍花の頭の中は文に出来ないので、辺りの描写をする事にする。(注*9)
 石造り階段は、ずっとずっと下へと続いていた。もちろんそのまままっすぐ下に向かって階段が続いていたら大変なことになってしまうので、途中で何度か踊り場で折り返し、どれくらい深く潜ったのだろう。
 やっと最深部らしきところまでたどり着くと、そこには鉄製の頑丈な扉があった。
「こっ…この向こうで狂乱の宴が…」
 行われてはいないので、それは安心してよい。
 藍花はそおっと、扉のノブに手をかけた。ひんやりとした感触のノブを、ゆっくりと捻って押す。
「あれ?」
 引き戸だ。
 ぽっと頬を赤くする藍花。そんな…私が悪いんじゃないわ。(注*10)
 気を取り直して──と、藍花はそのドアをゆっくりと引いた。
「うん…?」
 予想外に明かりが乏しい。天井が高いのね…それに、水銀灯もずいぶんと古い物だし…
 藍花は、くるりと辺りを見回してみた。
 どこか体育館を彷彿させるような鉄骨剥き出しの天井。足元も冷たいコンクリートだし、空気自体も、地下らしくひんやりとしているようだ。
 藍花の立っているところは、どうやら中二階の通路らしい。
「この下に…何が…?」
 好奇心に駆られて、藍花は通路の欄干に歩み寄った。少し身を乗り出すようにして下を見て、
「ええっ!?」
 そこにある巨大なモノに、目を丸くせずにはいられなかった。
 なっ…何これ…
 弱い水銀灯の明かりに、鈍く輝く巨体。
「あ…ああ…こ…これは、見ちゃいけないモノだったんじゃ…」
 おずおずと後ずさる藍花。
 そうよ…そうに違いないわ…だって、コレ…
 藍花はくるりと振り向いて、すぐさまその場から逃げ出そうとした。だって、ちっちゃい頃見たテレビアニメとかだと、こういうのを見ちゃった子は捕まっちゃって…
 安心してよい。
 R‐0はまさにそう言うモノなのだから。(注*11)
「あっ!」
 藍花はいつの間にか扉の前に立ちふさがっていた老人を見て、ごくりと唾を飲んだ。
「見てしまったようじゃな…」
 老人──藍花だって馬鹿じゃない。家の先代当主の名前くらい知っている──南条 秀樹は、ふうと小さくため息を吐き出して言う。
「君は、たしか今年から入ったメイドだったな」
 目を丸くしたまま、
「い…いつの間に…」
 呟く藍花。
「くだらん事にはこだわるな」
 と、南条の脇に立っていた白衣の男──設楽だ──が有無を言わさずつっこむ。
「さて…困ったな…」
 目を伏せて、南条は思わせぶりに首を振った。
「このままにしておくわけにもいかんし…」
「秘密を…知ってしまったわけですからね」
 設楽は黒縁眼鏡をつっとあげて、思わせぶりに口元をゆるませた。
「さすがに、放ってはおけんでしょう」
 後ずさる藍花。そのお尻が、冷たい手すりに当たる。
 あ…ああ…私…これからどうなっちゃうのかしら…
 目をうるうるさせて、藍花は眉を寄せた。
 こういう展開って…ええっ!
 やっぱり──!?
 藍花の妄想が危険な方向へ暴走してしまう前に、物語は場面を変えてしまうことにする。


 5月。
 五月雨が葉桜を濡らす頃、それは完成した。
「早く早く、藍花お姉ちゃん!」
 藍花の手を引っぱって走っているのは南条 創。南条家の、跡取り息子である。
「はっ…創くん。そんなに走らないで」
 もちろん創と藍花とではコンパスの長さが違うのだが、藍花は元々走るのが得意ではない。創に手を引っぱられて、彼女は少し息を弾ませ始めていた。
「ど…どこへ行くんですか?」
「いいところ!」
 そう言って、創は笑う。
 いいところ…?いい所って…こっちは創くんの部屋のほう…も…もしかして創くん…私を──でも心の準備が…
 ぽっと、藍花は勝手な妄想に頬を赤らめた。
「地下だよ!」
 創は楽しそうに言って、自分の部屋のドアを押し開けた。そのまま本棚に駆け寄って、『巨大ロボットと科学者たち』をぐいと引っぱる。
 音もなく開く本棚を眺めながら、藍花はまた頬を赤くした。嫌だわ、私ったら何考えてるのかしら。創くんがそんなコト、するわけないじゃない。
 気を取り直して、藍花は創に聞いた。
「地下で、何かあるんですか?」
 創は大きく頷いて、
「うん!二号機が完成したんだ!」
 石の階段を駆け下り始めた。
「あ。そうなんですか」
 おずおずと、藍花もその後に続く。
「設楽サン!」
 創は一気に階段を駆け下りると、ドアを開けて地下プラントに飛び込み、中二階の通路から階下の設楽を呼んだ。
「設楽サーン!」
「あ?ああ!なんだい創くん!」
 設楽は中二階の回路通路から身を乗り出している創を見つけると、少し微笑んで、大声で創に返した。
 創はにこにこ顔で下に降りてきて、
「ロボットができたんでしょ!」
 と、設楽とその脇に立っていた南条の元へと駆け寄った。
「今度のロボットは、この前の奴より強いよね?」
 設楽と南条の立っている集中管制室の窓ガラスの向こう、ケージに横たわっている巨大ロボットを見て、創はうれしそうに言った。
「この前の奴は、すぐにやられちゃったから」
 子供というのは、時としてものすごく残酷なことをさらりと言う。しかも本人は悪いと思っていないので、なおさらたちが悪い。
「い…いや、創くん。あのな」
 言葉を濁す設楽の視線に向かって、
「今度のロボットは、歩ける?」
 創が、設楽のプライドをざっくりと傷つける言葉を言った。
「うっ…!」
 歩けないのである。
 くそ…なんでだ。なんでR‐0は歩けるのだ。ロボット工学の世界的権威とも言われたこの私がなしえなかったことを、何故あのロボットはいとも簡単に…
 と、設楽は握りこぶし。
「創、いいかい?」
 屈辱に怒りを燃やしている設楽を放っておいて、南条は孫の頭に手をおいて言った。
「巨大ロボットを歩かせるには、ものすごい技術力が必要なんだ。オートバランスシステムと言ってね。それを作り出すことは、ものすごく大変なことなんだよ」
「ふぅん…」
 だけど、R‐0は歩いているじゃないか。と、言おうと思って創は止めた。何となく聞いちゃいけないような気がしたのである。じぃっと彼を見つめる、設楽の視線から。
「あ…あのさ。今度のロボットも、アレがついてるんでしょ?」
 創は人差し指を立てて、おじいちゃん──南条に聞いた。
「ああ。もちろんだとも」
 と、南条はにやりと微笑む。微笑みながら視線を走らせた先、そこにいた科学者、設楽も、ふっとばかりに微笑んで黒縁眼鏡をあげた。
「今度こそ。エネミーに勝てるよね?」
 小さなこぶしを、ぎゅっと握りしめる創。
「もちろんだ」
 頷く南条。
「ああ。今度のこいつは、一号機とは比べ物にならないほど多彩な装備が施されている。絶対に負けんよ」
 答える設楽。
「奴が次に横浜に襲来したとき、そのときが勝負だ」
 大きく頷いて、三人はケージに横たわる巨大ロボットに視線を走らせた。それぞれが、それぞれの想いを胸に。
 そして、三人は巨大ロボットR・Rが、エネミーに勝利する時を夢想した。
 それは、再びエネミーが横浜に襲来した時。
 今度こそは…
 と、三人が自分に酔っている時に、
「ふぅ…ふぅ…ああ…つかれた」
 藍花は、やっとの事で地下プラントにたどり着いたのであった。
 あれ?
 そして、遠い目をしている三人を見て思ったのだった。
 何かあったのかしら?(注*12)









       2

「なんだと!」
 Nec本部、指令室に響いたその警報に、平田教授達は我が耳を疑った。
「冗談じゃない!いくら何でも無茶ですよ!」
 スピーカーからの声に文句を言うR‐0のハードウェア設計者、中野 茂──通称シゲ。
「無茶でも何でも、やるしかないわ!」
 こうなればもう半分自棄よ!と、助教授西田 明美助もスピーカーを睨み付けた。
『防衛庁別室、Nec本部より入電中。現在、新たなエネミーが降下したとの情報を受信。総員第一種警戒態勢。繰り返す…』
「くそっ、今のR‐0で連戦なんて出来るわけないじゃないか!」
 富士山で新種のエネミー──超硬化薄膜を持つもの──との一戦を終えたばかりのR‐0は、ひどいダメージを受けていた。バズーカの残段数はゼロ。シールド大破。モニターは左右を除く三つが焼き付きでまともに見られない。
 ちいと舌打ちをしてから、シゲは無線に手を伸ばした。
 くそっ…こんな状態でR‐0はエネミーに勝てるのか?
「遙ちゃん?」
 シゲはごくりとつばを飲み込んでから、マイクに向かって呼びかけた。
「新型じゃないことを祈りましょうか」
 そう言って、明美助教授はひょいと肩をすくめて見せる。今のR‐0の火力じゃ、旧型だって危ういけどね。
「エネミー降下──か。その場所はどこだ?」
 教授はぽつりと呟いて眉を寄せた。スクリーンの中のマッドサイエンティスト、道徳寺 兼康も、彼の言葉に小さく頷いている。何かを、期待しているかのように。
 そして、スピーカーの声はエネミーの降下地点を告げた。
『エネミー、観音崎灯台にて降下を確認。降下地点は浦賀水道上。誤差50』
「ようしっ!」
 教授と道徳寺 兼康は、そう叫んで握りこぶしを付けた。
「は?」
 と、口を半開きにして固まるシゲと明美助教授。なにがよし?
「観音崎だな!観音崎なんだな!じゃあエネミーは横浜に向かうな!」
 教授は答えを強要するように言って、明美助教授の眼前に指を突きつけた。
「ま…まぁ…その可能性は高いと思いますけど…」
「ならば問題はない!」
 叫んだのは道徳寺 兼康。にやりと笑うその顔は、確実に勝利を確信していた。
「問題ないって…どういう事ですか?」
 ぱちくりと瞬きをするシゲの言葉に、ふっと教授は軽く笑う。
「横浜には奴らがいる」
 そう言う教授の顔は、一種異様な自信に満ちていた。(注*13)


「来たッ!!」
 南条はその情報に目を爛々と輝かせた。
「ついに来たか…」
 設楽も小さく、しかし満足そうに頷いて漏らす。
「ついに二号機の出撃なんだね!」
 創も、少し興奮していた。
「そうだ。ついに来たのだ」
 設楽は満足そうに微笑み、
「R・Rが、R‐0の上に立つときが」
 教授が聞いたら憤慨するであろう台詞を、さらりと言ってのけた。
「おあつらえ向きに、R‐0は現在富士山演習場で大ダメージを受け、こちらのエネミーには手が回せないようだ!」
 と、握りこぶし。
「ねぇ、藍花お姉ちゃん?」
 創は、脇に立っていた藍花にだけ聞こえるような、小さな声で聞いた。
「はい、何でしょう?」
 いつの間にか創のお着きのメイドになり、R・Rプロジェクトにも深く首を突っ込んでしまった藍花は、今日も地下ケージで、創の横にぴったりとくっついていた。
「なんですか?」
 と、腰をかがめて、創の口元に耳を持っていく。
「あのね」
 藍花の耳元でぼそりと創が呟く。
「あっ…」
 耳元で微かに揺れ動く空気に、藍花はぴくりと身を震わせた。
「あ…藍花お姉ちゃん?どうしたの?」
「いっ…いえ。何でも…」
 藍花は頬を少し赤らめて、眼鏡をかけ直す。い…いやだわ。もぅ…
「あのね、藍花お姉ちゃん」
「はい?」
「『おあつらえ向き』って、どういう意味?」
「『おあつらえ向き』ですか?えーと、ですね…」
 藍花はちょっと考えてから、創の目を見て、
「あっ…と」
 目が合っちゃったので、ひょいと視線を逸らしてから、創に説明した。
「『あつらえる』って言う言葉に、『お』がついた言葉なんですね。『あつらえる』っていうのは、『服をあつらえる』っていうふうに使う言葉で、自分の希望通りになるっていう、そういう意味ですね」
「ふーん…じゃ、設楽サンはR‐0がやられちゃうのを期待してたんだ」
「そう言うことになりますね」
「そこ!妙な分析をしない!!」
 一応二人につっこんでおいてから、
「では!R・R二号機…」
 っと、溜めて、
「出撃ッ!!」
 地下ケージ中に響くように、設楽は熱血絶叫した。
「むむっ!」
 南条が腕を組んでうなる。
「今度こそは、奴に目にもの見せてくれようぞ!」
「その通りです南条さん。勝利の女神は、今度こそ我々に微笑むでしょう!」
 南条と設楽。その自信はどこから来るのであろうか。(注*14)


「急げセンちゃん!とれ撮れトレ!」
「わぁってるって!撮ってるって!!」
「みなさん!ご覧いただけるでしょうか!エネミーですッ!」
 横浜は山下公園。
 テレビPアナウンサー、新士 哲平は久々の出番に──燃える展開に──熱血絶叫していた。もちろん、カメラマンのセンちゃんとて、それは例外ではない。
「みなさま、あのエネミーが、またも横浜へと襲来してきましたッ!人類最初のエネミーが上陸した街、横浜。再開発も徐々に進み、人々も絶望の淵からはい上がり始めたというのに、ああ!なんと言うことでしょう!!」
 テレビ画面がパンされると、新士 哲平のバストショットから、横浜ベイブリッジにさしかかろうとするエネミーのアップへと切り替わった。
「宇宙(そら)より来たりし未知なる生物、エネミー。(注*15)その目的はいったい何なのか!エネミーは、我々人類を滅ぼそうというのでしょうかッ!!」
 そして再び画面は新士のバストショットに切り替わり、沈痛な面もちで、手にしていた一枚の原稿を読み始める新士を映す。(注*16)
「我々の手に入れた情報によりますと、現在R‐0は、先に富士山付近に現れたエネミーを殲滅に向かい、そこで多大なるダメージを受けてしまい、こちらのエネミーには手が回せるかどうかと言う、危機的状況にありまして…あッ!!」
 新士はけたたましい音に振り向いて目を丸くした。立ち上る水柱。エネミーが、横浜ベイブリッジを右手で邪魔だとばかりに叩き壊したのである。
「ああっ!なんと言うことでしょう!!これ以上、エネミーの跳梁(注*17)を許してよいのでしょうかッ!?いえ!!良いはずがありません!!国は、自衛隊は何にをしているのでしょうか!!我々一般市民は、エネミーの前に為すすべも──」
「ししししし…新士さんッ!!」
 突然、AD大橋が声を震わせながら叫んだ。何だよ大橋ぃ!そんな大声出したら、マイクが拾っちまうじゃないか!
「ああッ!!」
 しかし、新士もAD大橋の指さす方を見て、絶叫せずにはいられなかった。音声の梶川が、メーターが振り切れるほどの声に目を白黒させる。
「センちゃ…いや!みなさま!ご覧くださいッ!!」
 エネミーから、大桟橋の方へ、画面が180度パンニングされた。そしてそこには、
「そうです!忘れてはいけません!!あの時、人類最初のエネミーがこの街に襲来したときに、勇敢にもその未知なる生物に立ち向かった、あの巨大ロボットのことを!!」
 大桟橋客船ターミナルに停泊していた船から、あの時とまさに同じように、一体の巨大ロボットが立ち上がろうとしていたのであった。


「準備はいいなッ!!」
 設楽が船のブリッジで叫ぶ。
 それを腕を組んで見ている南条。小さなこぶしを握りしめて、興奮気味に唾を飲む創。
「す…すごい…」
 ただ呆然と、その言葉を吐き出すことしかできないでいるのは藍花だ。そりゃそうだろう。いくら藍花が一般人と違う感覚を持っているとしても──そんなことを言ったら藍花は怒るかも知れないが、読者のみなさまには周知の事であるからして…──どちらにしても、普通巨大ロボットが動くところを目の当たりにしたら、どんな人間でも驚きを隠すことなどできはしまい。(注*18)
「いくぞ!R・R二号機!!」
 設楽は握りこぶしを付けて叫んだ。
「新兵器!エネミーに対し、ロックオン!!」
「なにいッ!いきなりいくか設楽ッ!!」
「もちろんでしょう!南条さんッ!!」


「ああっ!巨大ロボットの胸が、巨大ロボットの胸が左右に開いていきます!」
 新士が叫ぶように、ゆっくりと、R・R二号機の胸が左右に開いていった。そしてその胸の装甲が完全に開ききると、そこにR・R二号機のメカニカルなボディ内部か露わになった。(注*19)
「あああッ!ご覧ください!!」
 新士の絶叫にズームアップされる画面。そこには、R・R二号機の胸に納められた、鈍く輝く弾頭が映っていた。
「まさか…あれは対エネミー用ミサイル!?ロシアやアメリカがすでに開発に成功しており、日本にも何発か装備されていると聞いていますが…あれを用いればッ!!」
 ぐいいいっと、画面が無理矢理にパンニングされてエネミーに切り替わり、
「エネミーの足を止めることも可能ッ!!」
 と、そこで新士が絶叫。
「さあ!いけ!ロケットパンチロボッ!!エネミーを倒すのだッ!!」
 新士のその台詞を待っていたかのように、彼の絶叫の直後に、R・R二号機の胸から、無数のミサイルは打ち出された。
「いけぇぇえええぇぇッ!!」
 白い軌跡を描きながら飛ぶミサイル。もちろん、ただ真っ直ぐにエネミーに向かって飛んでいっても面白くもなんともないので、ミサイルは四方八方に拡散して飛び出し、きゅるきゅると渦巻き状に回転しながら、エネミーの巨体にぶち当たっていった。(注*20)
 何十もの爆発が、数秒にわたり続く。
「どうだッ!!これだけの爆撃を食らえば──」
 だが、南条のその考えは、あまりにも浅はかな考えだった。
「なっ…なにィ!!」
 と、後ずさる設楽。爆煙の向こうで、巨大な影がゆらりと動く。ば…馬鹿なッ!!
「きっ…効かないなんて!」
 ブリッジの窓ガラスに駆け寄り、創はそこに両手を押しつけて叫んだ。
「そんな…どうしてッ!?」
 創は、真剣な表情でエネミーを直視した。
「エネミーって、元々ミサイルは効かないんじゃ…」
 ぽつりと、ものすごく冷静に呟く藍花。あっ…しまった…と急いで口を押さえてうつむくが、幸いにもその声は誰に耳にも届かなかったようだ。(注*21)
 より正確には、彼女以外はそれどころではなかったのだろう。南条も、設楽も、創も、船のクルーも、一点だけを凝視して固まっていたのだから。
 爆煙の向こうから再び姿を現したエネミー、ただその一点見て。
 はっと、設楽は何かにはじかれるようにして顔を上げた。そして、右手を振るってクルー達を叱咤する。
「恐れるな!R・R二号機の新兵器はあれだけではないッ!!」
「おおっ!と言うことは設楽。ついにアレを使うのだなッ!!」
「その通りです南条さん!!いきます新兵器第二弾ッ!!エネミーに対し、ロックオン!!」
「今度こそエネミーを討ちくだくッ!!」
「もちろんでしょう!南条さんッ!!」
 いくつ新兵器が──などとは、もちろん聞いてはいけない。


「ああっ!エネミーが動きますッ!!」
 爆煙の中から姿を現したエネミーは、その身体に傷一つ負ってはいなかった。それどころかむしろ、怒りともとれる形相をその顔に浮かべ、大桟橋に立つ巨大ロボットに向かって駆け出すのであった。
 振り上げられるエネミーの巨大な腕。響く咆哮。激しく波打つ海面。
 そして、その波に飲み込まれるテレビPスタッフ。(注*22)
「ぬぅあぁっ!くっそぅ!!オレはプロだぞ!!」
 と、何とか公園の手すりにしがみついて流されるのだけはこらえた新士が、
「オレは負けないッ!!」
 何に負けないのかはともかくとして、熱血絶叫した。
「ただいまより、本放送は音声のみでお送りしますッ!!」
 さすがプロ。新士は波に濡れた髪をなでつけて、なおも叫び続けた。
「さあ今、大桟橋に立つ巨大ロボの頭めがけて、エネミーがその手を伸ばしますッ!!」
 エネミーの巨大な手が空を引き裂く。真っ直ぐに伸びる、開かれた手。その手がR・Rの顔面に届こうかという時──
「なっ…なんとッ!!」
 新士は、目を見開いて叫んだ。
 エネミーの手がR・Rの顔面に届こうかという時、R・Rのその目がギラリと輝き、そこから一条のビームが放たれたのである。
「目からビームッ!?」
 輝く一条の閃光は、エネミーの指と指の間をすり抜けて、その顔面に命中した。閃光に、エネミーが片目を閉じて、空を引き裂く咆哮をあげる。
「効いた!?」
 かに思えたその一撃は、エネミーの闘争心に火を付ける、最悪の一撃となった。
 咆哮をあげながら頭を振るい、力任せにエネミーがR・Rを握り、潰す。飛び散る金属片が、海面に次々と水柱を立ち上らせていった。
「な…なんということでしょう…いっ…一撃のもとに」
 目を丸くする新士。はらりと落ちた前髪にも手をかけず、ただ小さく口を動かした。
「もはやこれまで…」
 そしてエネミーは、R・Rをまるでその辺りに生える雑草だとでも言わんばかりに、一号機と同じくして、二号機も海の藻屑へと変えたのであった。
「こ…今回も…前回と同様にして敗れ去ってしまった期待のロケットパンチロボ。R‐0も現れない今、もはや我々人類に残された道は、滅びの道しかないのでしょうか…」
 新士の声を掻き消すように、エネミーは再び大地をも揺るがす咆哮をあげた。


「な…なんと言うことだ…」
 設楽は、へなへなとその場に崩れ落ちた。
「私の…私のR・Rが…」
「二号機も破れたか…」
 遠い目をして南条。
「しかも、R・Rの名を受け継いでいたのに、ロケットパンチを撃つヒマもなく…」
 そんなところに悔いを残しても意味はない。(注*23)
 創は、小さな手をぎゅっと握りしめ、窓ガラスの向こうのエネミーを再び睨み付けた。
「R・Rは…エネミーを倒すことができないの?」
「創くん…」
 藍花は創の絞り出すような声に、胸が熱くなった。そんな…そんなことないわ創くん!たとえまともに歩けなくったって、たとえまともな武器を持ってなくったって。創くんが応援しているんだもの!きっといつかは、R・Rがエネミーに勝つときが来るわ!!
 最後の方の台詞はともかくとして、始めの方の「たとえまともに──」の辺りは、藍花にしては声に出して言わなくて正解だったろう。
「R・Rは…エネミーに勝てんのか…」
 崩れ落ち、膝をついて呟く設楽に、その声が頭上のスピーカーから降り注いだ。
『よくぞここまでがんばったな、設楽よ』
「なっ…!」
 聞き覚えのある声に顔を上げる設楽。この声は…まさか!
 突然、R・R管制用モニターにノイズが走ったかと思うと、そこに、一人の老人の姿が映し出された。
「どっ…道徳寺!」
 設楽はかばっと立ち上がり、ずり落ちた黒縁眼鏡をさっとあげた。
「貴様…何の用だ!」
『ページがない。単刀直入に言う』
 道徳寺に「何の用だ」と聞く奴も聞く奴だが、質問を完全に無視して、『ページがない。単刀直入に言う』と言う奴も言う奴だ。(注*24)
「貴様…相変わらず人の話を聞かないな」
『ほめるな。何も出ん』
「理論的に物事を考えろ。ほめていないことくらいわかれ」
 設楽の言葉を、道徳寺は笑った。
『理論か…相変わらずちっぽけな物にこだわっておるのだな。そんなことだから、まともなロボットも作れんのだ』
「よけいなお世話だ」
 設楽は歯を食いしばって、反論する。
「何の考えもなしに、何の理論の裏付けもなしに訳のわからん物を作りおって…そんなことで、科学者の名を語れると思っているのか」
『いったな…』
「何度でも言わせて貰うぞ」
 ロボット工学の世界的権威、設楽 信之。
 機械工学で名の知れた天才科学者、道徳寺 兼康。
 二人は、若かりし頃からのライバルであった。ともに、狂科学者の名を欲しいままにした、ある意味で真の、仲間であった。
 一人はロケットパンチに。一人は合体に。その生涯を捧げた、狂科学者であった。
『設楽よ…よくぞここまで戦った』
 一人の狂科学者、道徳寺 兼康は遠い目をして言う。
『お前の仕事は終わった。後は、我々に続く者に任せようではないか』
「R‐0か…」
 設楽もまた、遠い目をして返す。
「確かに、我々の時代は終わったのかも知れんな…あのロボットはすばらしい…多彩な武器を操る器用さ、そして、人のような俊敏な動き…」
『あれが、BSSの完成した姿だ』
「なっ…」
 道徳寺の言葉に、設楽は目を丸くした。BSS。なんと懐かしい響きだろう…もう、その言葉を聞かなくなって、どれだけの月日が流れたか…
「すると…あれは平田が!?」
「報告します!」
 設楽の呟きは、ブリッジクルーの声に掻き消されてしまった。(注*25)青年は声を張り上げて叫ぶ。
「現在、R‐0を搭載したイーグルがこちらに向かっています!後3分足らずで、直上に到達する模様」
『聞いたろう設楽。後は、R‐0に任せよう…』
 道徳寺はそう言って微笑んだ。我々の時代は、もう終わろうとしているのだ。
「道徳寺…」
 設楽は、自嘲するようにふっと笑った。オレ達の時代が終わったなんて、そんなことは誰にも言わせんぞ。
「そうだ…」
 オレ達は…まだまだいけるッ!!
 顔を上げると、設楽は、腕を振るって力の限りに叫んだ。
「死して屍拾う者なし!負けません、勝つまではッ!!」
『なにッ!!』
「R・R、三号機発進ッ!!」
「ええっ!!」
 南条、創、藍花、そして著者は、同時にそう叫んだ。(注*26)


「みなさま!ご覧いただけるでしょうかッ!!」
 新士は再び熱血絶叫した。
 カメラマンのセンちゃんもやっと見つかって、撮影用機材も何とか生きていて、再び映像とともに新士の声が電波に乗った──その一発目に飛び込んできた映像が、
「新たなる巨大ロボットですッ!!」
 船の上にすっくと二本の足で立っている、R・R三号機の雄姿だったのである。


「行けっ!R・R三号機!!三度目の正直だッ!!」
 握りこぶしで熱血絶叫しているのは、もちろん設楽。
『二度あることは三度あるとも言うが…』
 ものすごく可哀想なことを言っているのはもちろん道徳寺 兼康だ。さすがにそこまで可哀想なことは藍花も言えない。考えてはいたが。
「R・R三号機新兵器ッ!!」
『ぬおっ!次から次へと…流石は設楽!!』
「エネミーに対し、ロック・オオォォォオンっ!!」
「今度こそ間違いなくエネミーを倒すぞ設楽ッ!!」
「もちろんでしょう!南条さんッ!!」
 R・R三号機を乗せた船は、ゆっくりとエネミーの見える位置まで移動した。専用船の後部に立つR・R三号機。喫水線ぎりぎりを、白波が打つ。
 咽を鳴らしながら、エネミーがゆっくりとR・R三号機に振り向いた。
「エネルギー充填開始…」
 つっと眼鏡をあげる設楽。
「了解!エネルギー充填開始」
 ブリッジクルーがコンソールパネルの赤いボタンを押すと、R・R三号機から、きゅいぃぃいんという高周波の音が響き出した。
 それを不愉快と感じたのか、エネミーが再び咆哮をあげる。まるで威嚇するかのように。
「まだか…」
「まだです。後9…8…」
 エネミーが、ゆっくりと身体をかがめる。その巨体に力がみなぎっていくのが、誰の目にもはっきりとわかった。
「来るぞ…まだかっ!」
 クルーに向けて叫んで、設楽はちいと舌打ちをした。チャージ不足では意味がない…しかもこの一撃を撃てなければ…R・R三号機の存在の意味すら、なくなってしまう!!
「まだなのかッ!」
 設楽の目に、その動きを止めたエネミーが映った。
「来るぞ設楽ッ!!」
 叫ぶ南条。
「設楽サン!」
 エネミーを直視していた創が設楽に振り返る。
 駄目かッ!!
 設楽は歯を食いしばって、エネミーを睨み付けた。間に合わないのか──!?
「チャージ完了!行けますッ!!」
 クルーのその声が、ブリッジの空気を揺さぶった。
「よし!行くぞぉッ!!」
 緊迫した空気の中、誰もが息をのむその空気の中で、設楽は魂の迸りにあわせ、声の限りにR・R三号機の必殺技を叫んだ。
 これで終わりだッ!!
「ブレス○・ファイアァァァアアっ!!」


 強烈な閃光。
 雷にも似た強烈な閃光を、R・R三号機はその胸から迸らせた。
 誰もがその強烈な閃光に目を閉じる。
 設楽も、南条も、創も、藍花も、そしてエネミーも。
 エネミーの苦悶の叫びが、空を引き裂いた。雷鳴のようなその叫びに、人々は思ったことだろう。
 勝った──と。
 だがしかし、R・R三号機の「ブ○スト・ファイア」は、単にそれだけだった。
 そう、R・R三号機の「ブレ○トファイア」は、強烈にまぶしいだけだったのである。


「敵はひるんだ!R・R三号機、新兵器第二弾!!」
 そろそろ設楽の声もかれてきた。が、その程度のことで今止まるわけには行かない。今一気にたたみかけなくては、R・R三号機に勝利はない!
「衝撃緩和用プロペラ、二重反転モードで高速回転!!」
『なんだと!』
 設楽の言葉に、道徳寺 兼康は目を丸くした。なんだと!二重反転ローターだと!!…と言うことは、R・R三号機は…
『空を飛べるのかッ!?』
「その通りだッ!!」
 R・R三号機の背中に付けられていた対衝撃緩和用プロペラが、そのタガの外されたバシュッという音とともに回転し、二倍の長さ、十メートル以上の長さにまで伸びた。
「行けっ!飛べっ!R・R三号機!!」
「今度こそエネミーを倒せるんだね!」
「はい!私もなんかそんな気がしてきました!!」
 汗ばむ手をぎゅっと握りしめる創と藍花。
 R・R三号機の背中に取り付けられた、ヘリコプターのプロペラのような二重のそれは、高速で互いに逆向きの回転を始め、巨大な船をも揺さぶった。強風に海面が激しく波打つ。巻き上がる海水が、設楽たちの乗る船をも濡らす。
「飛べR・R三号機!そして、今度こそエネミーを討ち砕けッ!!」
 南条の言葉に、設楽は確信とともに返した。
「もちろんでしょう!南条さんッ!!」
「R・R三号機、飛びます!」
 クルーの声に重なるように、R・R三号機の右手は、ゆっくりと遥かな大空へと向けられた。
 一瞬の沈黙──
 そして、R・R三号機の背中に取り付けられたロケットエンジンが火を噴いた。
「R・R、ロケットジャンプ!!」
 設楽の言うように、飛んだ──のではない。あくまで、R・R三号機はジャンプしたのである。
『意味はあるのか!』
 道徳寺のくせに、何を言う。
「当たり前だ!」
 設楽はにやりと笑って、眼鏡をあげた。
「あのまま最高点でプロペラを使い、姿勢を安定、その後エネミーに向けて急降下だ!」
「了解!R・R自動制御システムにて、姿勢安定!」
「よし。では行くぞ!R・R三号機、最強最後の超必殺技ッ!!」
 設楽は叫び続ける。力の限り。
 R・R三号機は最高度で姿勢を安定させると、飛ぶときの格好──右手をつきだした格好のまま、エネミーに向かって急降下を開始した。
「ロケット・ジャンピング・パァアアァァンチッ!!」
 設楽が叫ぶ。『ロケット・ジャンピング・パンチ』。自重と、重力による加速度、ロケットパンチの爆発力、それら全てをあわせた強烈な一撃である。この一撃を持ってすれば、いかにエネミーといえども、ひとたまりもあるまいッ!!
「これは行けるッ!」
「やった!勝った!!」
「今度こそ勝ちますねっ!」
 手を握る南条、創、藍花。
 だがしかし、その彼らの目の前で、
「なにッ!!」
 R・R三号機は、エネミーに向かって勢いよく突っ込ん行ったところを、ぺしりと平手で叩き落とされたのである。
「あ…」
 その様は、まるでうるさい蠅がぺしりと叩き落とされる様に似ていた。
 ぼちゃんと、むなしく海面に水柱が立ち上る。
 そしてその次の瞬間、激しい爆音と閃光ともにR・R三号機は巨大な水柱を横浜港に立ち上がらせただけで、海の藻屑へと変わったのであった。
「…終わった」
 設楽は、ぽつりと呟いた。
 そう…全ては終わったのである。


 爆音に続いて、大地を揺るがす振動が新港埠頭に響いた。アクチュエーターの駆動音が、さらにそれに続く。
「行ける?」
 大空を飛ぶ巨大な輸送機、『イーグル』のパイロット、村上 遙はインカムに向かって問いかけた。
「FCSは死んでない。ビームライフル一発なら撃てるよ」
 新港埠頭に降り立った巨大ロボット、『R‐0』の中で、パイロット吉田 一也は補助モニターをのぞき込んで呟いた。ビームライフル残弾数よし…FCSロックを確認…
「一也、大丈夫よ。いけるわ。被害が出る前に、さっさと終わらせましょ」
 遙はインカムに向かって言いながら、軽く微笑んだ。連戦をしている一也を気遣って言ったのであって、決して南条や設楽に対する皮肉ではない。
「わかってるよ」
 一也は小さく頷いて、口の中でカウントをとった。三…二…
「行きますっ!」
 R‐0がビームライフルのトリガーを引き絞ると、銃口から白く輝く閃光が放たれた。
 そしてその閃光は、真っ直ぐに空を引き裂き、エネミーの胸板を貫いた。


「ふぅ…」
 肩を落として、一也は大きくため息を吐き出す。
「任務完了♪」
 笑って言う遙。
 所要時間、わずか30秒であった。


 大桟橋客船ターミナル。その展望室の外。
 横浜港が一望できるこのバルコニーにて、設楽は大きくため息を吐き出していた。
 我々の時代は、やはり終わったのか…
 ため息を吐き出す設楽に、南条はなんと声をかけたらよいのかわからなかった。その脇に立っている孫の創も、心配そうに眉を寄せている藍花も、南条と全く同じ気持ちだった。
 ただ沈黙の時が流れ、風が吹いた。
 潮の香りを乗せた風が、三体の巨大ロボットの沈んだ海の上を駆け抜けてくる。
 時代は変わったのか…我々は…それに取り残されたのか…
 再びため息を吐き出す設楽。
 そんな設楽を見て、南条はその場にいたたまれなくなったのか、くるりときびすを返し、歩き出した。
 展望室への自動ドアがツーと開く。南条は弱く微笑んで、一人の少年と入れ替わりに展望室へと入った。
「そこにいる黒縁眼鏡の男がそうだ」
 南条が言うと、
「あ。どうもすみません」
 その少年は、気持ちのいい笑顔を彼に見せて返した。
 そうか…あの少年が…
 バルコニーの設楽達に、少年は小走りに駆け寄った。南条はそれを肩越しに確認すると、下へと降りるエレベーターの中へ、姿を消した。
 R‐0のパイロット、吉田 一也か。
「ご協力、感謝します」
 一也は設楽に向かって、敬礼でもしそうな勢いで言う。
 その言葉に、目を丸くする設楽。
「協力…?私は、何もしていないよ。ただ自分の作ったロボットを、二台オシャカにしただけじゃないか。時代遅れの、駄目ロボットをね」
「そんなことはないですよ」
 一也は笑った。
「貴方のロボットのお陰で、横浜の街に被害が出ずにすんだんじゃないですか。もし貴方方のロボットが戦っていてくれなければ、横浜の街は再々開発が必要になるところだったのかも知れないんですよ」
 真摯な声で言う一也の言葉を、設楽は可笑しそうに笑って聞いていた。
「だが所詮は前時代のロボットだよ。君も見たろう?あの負けざまを」
 自嘲する設楽。
「ええ。でも、それでもあのロボットが意味がなかったとは、僕は思いません」
 設楽は、一也の言葉に訝しげに眉を寄せた。一也が事も無げにそう言って、微笑んだからである。
「どうして、君はそう思う?」
「え?だって、貴方はあのロボットに夢を見ていたんじゃないんですか?勝ち負けはともかく、あのロボットは現実にそこに存在して、戦ったじゃないですか。少なくとも、一つの夢を叶えたわけでしょう?」
 一也は、軽く笑いながら言った。ちょっと自分でも恥ずかしいことを言ったかなと、ぽりぽりと頭を掻く。
「君は、ずいぶんと面白いことを言うんだな。いや、しかし君の言葉を、そのまま受け止めることにしよう」
 設楽も、やっと本当の笑い顔を一也に見せた。心から可笑しそうに笑って、言う。
「ありがとう。君のその言葉を聞いて、幾分心が軽くなったよ」
 一也に細く笑いかける設楽を見て、創と藍花はほっと胸をなで下ろした。そこには、いつもと変わらない科学者の設楽がいたからである。
「いや…そんな…」
 一也は照れくさそうにうつむいて、くしゃしくゃと頭を掻いた。
「いや…その…僕は思ったままを言っただけで…」
「R‐0と言ったかな?」
「へ?」
 一也は自分の方──より正確には一也の後ろ、新港埠頭にしゃがみ込んでいるR‐0の方──を見て言う設楽に、ぽつりと聞き返した。
「何がですか?」
「あの巨大ロボットだよ。平田が作ったんだろ?」
 設楽はうつむきがちに笑って、黒縁眼鏡をつっとあげた。
「やれやれ、流石は道徳寺の教え子と言ったところか」
 皮肉じゃないな。そう思って、一也も設楽に笑いかけながら、言った。
「はい。大したもんです」
 一也の言葉に、思わす吹き出す設楽。
 そして、憂いを込めた瞳で、設楽はR‐0へと視線を走らせた。
 一也も、創も、藍花も、その設楽の視線を追ってR‐0に振り向く。
「オレ達が想い描いていたもの──オレ達が夢に見ていたものは、これから先、あのR‐0が叶えてくれる事になるのかも知れないな」
 そう言って、設楽は眼鏡をつっとあげて、微笑んだ。
 ──そう、オレ達ではなくて、まだ若い少年たちが。


                                     つづく








   次回予告

(CV 村上 遙)
 「総理襲来!」
 なんのつもりだか知らないけど、突然Necに視察に来るんだって。
 冗談じゃないわ!
 あ。もしかして忘れてる人もいるかも知れないから言っておくけど、
 総理って私のパパなのね。
 嫌だなぁ…あんまり顔あわせたくないのに。
 しかも、よりにもよって総理がNecに訪問してるときにエネミー襲来!
 教授はお約束と言うけれど、私そんなの全然うれしくないぞッ!!
 頼むから、面倒なことはおこらないでっ。
 って、私の願いは、むなしく終わるんだろうな…
 と。言うわけで、次回『新世機動戦記R‐0』
 『Nec訪問。』
 見ないと絶対に後悔しちゃうから!


[End of File]