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寒い。
視界は黒。
喧騒はなく静かだった。
・・・俺は闇の中に居るんだな。
偽りの光を追いかけて裏切られるぐらいなら、ずっとこの中でもいい――――
顔面にもふっとした感触がするものにのしかかれて、俺は意識を取り戻した。
「・・・・・・」
最悪の気分になっている俺は、この温いものをおもむろに掴んで引き剥がした。
その手に掴まれていたのは猫だった。
まだ大人に成り切っていない、小さな黒猫。
見詰め合うと猫は一言「な゙ー」と、可愛いとは言いがたい声で俺に挨拶をした。
朝飯を済ませて自分の住んでいるアパートの屋上に登った。
都会と田舎の中間のようなこの町を、冬の太陽が緩い光で照らしていた。
その光景を眺める俺の膝の上には猫が居た。
「なー、お前どっから入ってきたんだ?」
脇に親指を差し込んで抱き上げると、猫はくすぐったそうに目を細めた。
冷え切った指が、猫の温い体温で温められているのを感じた。
不意に、風が吹いた。
手の内にもふっとした感触がしない。
いやに掌を冷たく感じた。
「こんな所に居たんだ・・・・」
声がする。
振り向くとそこには黒猫を抱えた少女が居た。
「・・・ねえ、知ってる?猫は寂しい人が分かるんだよ」
緩い光が、彼女を照らしていた。